[櫻井ジャーナル]米国で上位0.1%は富を急速に膨らませ、庶民の間では職を失う人が急増

竹下雅敏氏からの情報です。
 これは簡潔にして明瞭、実に見事な文章で、よくこのような記事が書けるものだと感心しました。ウクライナ情勢以降、櫻井ジャーナルは注視しているのですが、非常に優れた記事で、日本のジャーナリストの中では、群を抜いた知見だと思います。
(竹下雅敏)

注)以下、文中の赤字・太字はシャンティ・フーラによるものです。

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米国で上位0.1%の富豪はイカサマ博打で富を急速に膨らませ、庶民の間では職を失う人が急増
転載元より抜粋)
 富の集中が問題になって久しい。「1%」対「99%」とも表現されているのだが最近の研究によると、実際は「0.1%」対「99.9%」なのだという。「0.1%」の中でも、その上位10%、つまり全体の「0.01%」に富は集まっているようだ。その一方、アメリカでは2008年に就業人口が激減、今では全世帯の20%は家族全員が職を失った状態だという。

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 富を独占している人びとは消費や投資といった形で築いた財産を社会へ還元するわけではなく、投機市場へ投入し、カネにカネ儲けさせようとしている。要するに博打。相場に失敗して損をしたなら、「大きすぎて潰せない」ということで庶民にツケを回すことができ、蓄財の過程で不正があっても、「大きすぎて処罰できない」ということで許される。つまりイカサマ博打。これでカネ儲けできないはずはない。社会に貢献して報酬を得ているわけではなく、社会を破壊しているわけだ。


 そうした仕組みの「理論」になっているのが新自由主義。シカゴ大学の教授だったミルトン・フリードマンが広めた一種の「経済宗教」で、論理の矛盾は「信じなさい」で誤魔化す。その軸は全てを市場が解決してくれるという教義だ。その「功績」により、フリードマンは1976年にノーベル経済学賞を授与されている。

 フリードマンの先輩にあたる人物がフリードリッヒ・フォン・ハイエク。イギリスの首相になったマーガレット・サッチャーと親しい。ハイエクは1930年代にも投機/博打を推進するべきだと主張してジョン・メイナード・ケインズと衝突していた。当時、ハイエクに学んだ学生の中にはデイビッド・ロックフェラーも含まれていた。戦後、ハイエクも一時期、シカゴ大学で教えている。

 富豪上位「0.1%」に富が集中し始めるのは1970年代の後半。その理由と考えられているのは、リチャード・ニクソン米大統領が1971年に発表した金とドルとの交換停止。通貨の固定相場制は崩壊して1973年には変動制へ移行、通貨が投機の対象になった。ドルを発行するアメリカは通貨を操作することができ、他国に比べて圧倒的に優位な位置に立った。今ではNSAを使い、様々な相場を操作していると言われている。ロシアや中国がドルを基軸通貨の地位から引きずり下ろしたなら、アメリカは一気に崩壊する可能性もある。

 1970年代にはロンドン(シティ)を中心にしたオフショア市場のネットワークが整備され、資産を隠す仕組みができあがる。それまでもタックス・ヘイブンは存在していたのだが、新しいシステムは近代的で、資金の追跡が非常に難しい仕組みになっている。

 そのネットワークは大英帝国の支配下にあった地域、例えばジャージー島、ガーンジー島、マン島、ケイマン諸島、バミューダ、英領バージン諸島、タークス・アンド・カイコス諸島、ジブラルタル、バハマ、香港、シンガポール、ドバイ、アイルランドなどで構成されている。

 この仕組みによって富豪や巨大企業は資産を隠し、課税を回避することが容易になり、投機市場が肥大化していく。「カジノ経済」の時代に入ったとも言えるだろう。巨大資本は国家という軛から解放され、逆に国家を支配しようとしている。ボリス・エリツィン時代のロシアはそうした社会で、「オリガルヒ」と呼ばれる侵攻の富豪が出現している。

 このオリガルヒの力を押さえ込み、政府を中心とした政治を復活させたのがウラジミール・プーチンである。プーチンと対立したオリガルヒのひとりがボリス・ベレゾフスキー(後にプラトン・エレーニンへ改名)。2004年から05年にウクライナを新自由主義化した「オレンジ革命」にカネを出していたひとりだ。

 そのウクライナで新自由主義派の政策は破綻、アメリカの巨大資本やネオコン(親イスラエル派)はウクライナの略奪を本格化しようとしていたのだが、そこでプーチンの逆襲が始まっていた。そして今回のクーデターだ。クーデターの実行部隊としてネオ・ナチを「西側」は育ててきたが、東部や南部の住民はファシストに負けていない。

 ウクライナの闘いは「0.01%」との闘い方を示している。

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