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心の状態は、否定的なものから肯定的なものへ、さらに調和的なものへと成長し、ついには心の止滅へと向かっていきます。心を肯定的な状態へと成長させることに成功した人は、人生を創造的に生き、単に社会の歯車となるのではなく、社会に対して積極的に働きかけるようになっていきます。だが見ための華やかさとは裏腹に、心は常に戦いと不安の連続で、不安であるがゆえに、より多くを望むようになり、いっそうの富と力を得ようと悪戦苦闘をすることが多いようです。これは一見して充実したよい人生のように見えますが、実際には片時も心の安らぐ間のない、激性に充ちた人生といえるでしょう。
こうした人生経験を通して、心は平安を求めるようになり、人は外界ではなく自らの心をコントロールすべく、苦闘するようになっていきます。このような苦闘の末に、調和的な心の状態を確立した人は、ついに自らの心の主人となり、理想的で模範的な豊かな人生を送ることが出来るようになります。このような、豊かで理想的な人生経験を通して、人はついに、この世界には永続するものは何もなく、真の幸福はありえないことを悟ります。そして真実でないあらゆるものの激しい放棄へと至り、心はついに止滅の方向へと向かうのです。欲望が満たされることによって、心は一時的に静止状態になります。この心の状態のことを一般に、幸福とか満足とか呼んでいるのですから、心が止滅して常に静止状態にある人は、永遠の幸福を手にしていることになります。この心の状態の実現を、自己実現あるいは解放と呼ぶのです。
教育の目標は、自己実現にあります。それは、まがいものの幸福である富や力や名声を手にいれるように子供たちを方向付け、叱咤激励するのではなく、真の幸福を手に入れるための正しい方向と、それに向けての努力を教えなければなりません。真の幸福は、獲得ではなく放棄にあります。心は、真実と真実でないものを識別し、真実でないものを放棄することによってのみ成長するのです。
そのための極めて重要で貴重な一歩は、自分自身に対して誠実であること、自らのうちに正義を確立すること、常に心の平安を保つこと、そして他者への愛といたわりを育むことです。現代の混乱は、この一見して当たり前の真実が見失われていることによるところが大きく、だからこそ教育の根本理念にこれらを据えることが重要なのです。
(竹下)
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