アーカイブ: 里山”社屋”主義

里山社屋主義(21) 軒の出と越境

軒の出と越境
前回、屋根の出を切ったお話です。

今回の建築でのこだわりのひとつは「軒の出を91cm(3尺)取りたい」ということでした。

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昔の家に比べれば短いですが、それでも30〜60cm程度か極端には全く軒の出が無いという住宅も多い現代では、十分過ぎる長さです。(参考記事:軒はあった方がいい(ルーフパートナーのサイト)逆にこれ以上軒を長くすると、太い垂木を使わないと軒先の瓦の重みを支えられません。材料コストがぐっと上がってしまいます。

設計当初ではこのような理想でしたが、色々な過程の中で実際は平側は80cm程度の軒の出となりました。



しかし、建前のときに初めて気付いたことが…

「このままだと軒先が越境(土地の境界をはみ出ること)する!?」

越境?
すぐ大工さんが調べてくれ、実際は越境するかどうか微妙な程度だったのですが、田舎とはいえ人がそれなりに通る道。パッと見た目でも「これ越境してるんじゃないか?」と思われるような建て方は控えたいものです。それで話し合って、軒の出を少し犠牲にして事態を収めることにしました。

今回の建築では、測量・土地のどこに建物を建てるか(図面作成)・縄張りの部分は、セルフで行いました。ちゃんと収まるはずが、プロにお願いしなかったためミスがあったのか?? それで図面を見返してみました:

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何とまあ、最初っからギリギリで想定していました…。(笑)これは仕方ありません。ちなみに、軒先から離れた点線のところが軒先から50cm離れたところ(柱芯から91cm+50cm = 141cm)でして、もしここが境界と重なる位だったらまず越境の心配はありませんでした。

今回は建てる敷地自体が狭く、その中で十分な広さを取りたかったため、軒の出を犠牲にしてもこれで良かったと思います。

でも、図面でもギリギリだったなら、なんで地縄を張った時にチェックしなかったのでしょう。建前の日に気付くなんて。「いつ気付いたの。えっ、今日?」…などと、つまらんことを申しまして、きょうの記事は終わりです。

(スタッフ・白井薫)

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里山社屋主義(20) 屋根仕舞い

屋根仕舞い
建前の翌日、次は屋根仕舞いです。日本瓦を使う屋根の場合、このような構造になっているらしいです:

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「屋根を仕舞う(=処置する)」は、アスファルトルーフィングを張るまでの工程です。

垂木(たるき)を取り付けています:

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突き出している母屋(もや)の一部を切って、屋根の出を調整しています。これはある事情で、当初の想定より短く切ることになってしまいました、理由は次回で…:

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野地板を打つ位置の墨出し。細い1本の垂木の上に両足を…すごい体勢です。(*o*):

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しばらく現場から目を離していたら、野地板が貼られていました。その次に破風板(はふいた)を付けている所です:

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この野地板ですが、小さな家のお話(“建築に関する詳細アドバイスを読む”をクリックし「(8)床板と野地板について 」を参照)ログハウスのセルフビルド連載でも情報が出されてきた通り、一般には湿気・結露に弱い合板が使われることが多いようです。今回の社屋も合板ゼロの方針としたので、野地板は12mmの杉板となりました。

ルーフィングを貼って、屋根仕舞い完了です:

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次は瓦工事です。

(スタッフ・白井薫)

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里山社屋主義(19) 建前です[後編]

建前です[後編]
建前もいよいよ後半です。

小屋組(屋根の部分)を組み始めました:

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軽々と高所の作業をこなしている大工さん達。私はハシゴに上って、足を震わせながら撮影するのがやっと。(*o*;)

これは別の大工さんから聞いた話ですが、『昔は落ちたら自分が怒られて、ケガしても治療費も自分もちだった。だから真剣だったよ。今の大工は足場を組んでても落ちることがある…ずいぶん集中力が落ちていると思う。』とのこと。

三角屋根の形が見えてきました:

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一番上に突き出た木が「棟木」、これが組まれた時を棟上げといいます。今回、棟木は3列に分かれているので、最後の3列目が収まった時を棟上げということにしました。

作業も進み、残ったのは真ん中の1列。いよいよ棟上げです:

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竹下氏始めスタッフに「もうすぐ棟上げ!」と電話して、集まってもらいました。スタッフ全員が見守る中、棟木が上がりました:

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これで建物の骨組み完成です:

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この状態の建物に入り、どんな間取りになるかスタッフ全員に説明しました。骨組みだけでも、各部屋の広さがわかって実感が湧くものですね。

建前は1日で無事終わりました。この後は屋根の工事です。

(スタッフ・白井薫)

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里山社屋主義(18) 建前です[前編]

いつもご愛読をありがとうございます。先日、パータのスタッフ日誌(全国各地上映会のご紹介)にて、瓦までの建築費用を紹介しましたのでこちらもぜひご覧ください。
(スタッフ・白井薫)
建前です[前編]
さて、土台敷きの次の日、いよいよ建前です。

建前というと、上棟式を思い浮かべる方が多いと思います。私たちも、大工さんの晴れ舞台だからと思って行うことを考えていたのですが、「今の時世ではしないほうがいいよ」とのこと。

それでも建前の朝には、工事の安全を願っての「仕事はじめ」は行います。大工さんの指示で、御神酒とイリコと塩を用意しました:

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大工さん達が御神酒とイリコをいただき、仕事開始! 最初の木組みを作り:

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クレーンとともに上げていきます:

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この繰り返しで、家の四方の骨組みができます。大分建物の形になってきました:

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続いて建物の内側を組みます。ロフトの床と屋根の重さの両方を担う「胴差し」が入りました:
(本来の建築用語の胴差とは少し違い、二階梁と荷持を兼ねた部材です)

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これ、6m以上もある太い松です。普通の建築でこんな材料を使ったら高いんだろうなあ…と想像します。大工さん自身が思いのままに地元の山から材料を選んで使えるというのは、里山の恵みそのものだと思います。

私は安全なときを見計らって入り、実際に建った構造材の位置を確認。それをもとに間取りを再検討しました:

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昼を過ぎたあたりで、ここまで組み上がりました:

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これからいよいよ小屋組(屋根の部分)、棟上げに向けての作業です。

(スタッフ・白井薫)

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里山社屋主義(17) 基礎パッキンがパッキ〜ン?[後編]

基礎パッキンがパッキ〜ン?[後編]
前回、長期の建物の寿命を考えて御影石の基礎パッキンを検討したことを話しました。

大工さんに「これを使いたいんですが」とご相談して、その時はOK。しかし、刻みが進んだ後日…「無しにしてくれ」ということでした。なぜでしょう? 2つ理由がありました。


【理由その1:コマ置きは難しい!】

実は、基礎パッキンの使い方には、「全周施工」と「コマ置き(本来の名称は不明)」の2つがあります。

画像の引用元:基礎パッキン製造元であるJOTO社のホームページの画面より
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筆者注)全周施工


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筆者注)コマ置き


こちらの2つの写真を見ていただくと、「全周施工」は基礎の上にびっしりパッキンが置かれています。対して「コマ置き」は、所々にしか置かれていません。

基礎パッキンは元々「コマ置き」しかなかったのですが、次の問題を解決するため「全周施工」が出てきた…らしいのです。

  • 所々しか置かないと、そこに荷重が集中する。(その影響がどれほどのものかですが、中越地震で基礎パッキンを使用した住宅の基礎が破壊したという情報があります。ただ正しい情報なのか単なる噂かは分かりません。)
  • 実際の現場で、作業者が正しい場所に気をつけて置くということが難しい。もし場所を間違えると大変なことになる。(全周施工なら何も考えずに全部敷き詰めればよい)

ともかく、一般の基礎パッキンは、どちらのタイプも用意されています。しかし御影石基礎パッキンは価格が高く、しかも1個1個が重いので、現実的に「コマ置き」でないと施工ができません。

しかし、コマ置きは実際現場では難しいのです。土台を基礎の上に敷く作業をしている時に、事前にパッキンをきちんと置いていても必ずズレてしまいます。作業を進めながら、この位置を直すことにも同時に神経を使うというのはかなり難しいです。このことは実際に土台敷きの現場に立ち会って、十分すぎるほど実感しました。


【理由その2:パッキ〜ンってなったらどうしよう】

御影石は天然物だから長持ちは確実だと思っていたのは、あくまでひとつの視点。逆に大工さんは、石だから割れたらどうしようと不安だったそうです。

建前では、柱を上からゴンゴン叩き込みます。その真下にまさに御影石のパッキンがあるのです。もし衝撃で割れたりしたら大変です。作業を一時中断、アンカーボルトで固定してしまった土台をわざわざ外して、予備のパッキンを入れる…ということになります。

ただ、販売元の工務店は10年これを使って建てているそうで、実際はそんな事はほぼ起こらないのでしょう。でも大工さんが不安だというのに、やってくださいとは言えません。

というわけで折衷案として大工さんが取った方法がこちら:

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屋根の防水に使う改質アスファルトルーフィング(ゴムアス)を、土台の下に敷くことにしました。

これで基礎からの湿気が土台に上がってくるのを遮断できます。また、今回の基礎は、普通に比べて風通しがよくなるよう工夫しているので、床下に湿気がこもる点も心配無用でした。

基礎パッキン1つをめぐって、こちらも大工さんもそれぞれパッキ〜ンが心配だった…というオチでした。

(スタッフ・白井薫)

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