マイナンバーカードと健康保険証が一体化へ 改正法可決・成立

マイナンバーカードと健康保険証の一体化や、マイナンバーの利用範囲の拡大などを盛り込んだ関連する法律の改正法が、2日の参議院本会議で賛成多数で可決・成立しました。

健康保健証は来年秋に廃止へ

改正法の成立によって健康保険証は来年秋に廃止されマイナンバーカードと一体化されます。

一方で、カードをなくした人なども保険診療を受けられるように「資格確認書」を提供し、現在の健康保険証も廃止後、最長1年間は有効にする経過措置を設けることなどが盛り込まれています。

利用範囲拡大で可能になることは

マイナンバーは法律で社会保障と税、それに災害対策の3分野に利用できる範囲が限定されていますが、今回の改正法によって自動車に関わる登録、国家資格の更新、外国人の行政手続きなどの分野にも、範囲が広がります。

例えば、自動車の登録では引っ越しで住所が変わり、車の保管場所の証明などを申請する際、マイナンバーカードを使ったオンライン申請が可能になり、住民票の写しを取得する必要がなくなります。

美容師や建築士などの国家資格では、資格を更新する際にオンラインでの申請が可能になります。

これまでは法律でマイナンバーを使える行政機関やその内容などが規定され、新たに追加する場合は、そのつど、法律の改正が必要でした。

今後は法律で規定されている3つの分野と、今回新たに定められる分野ではすでに法律に規定されている事務に「準ずる事務」であれば法律の改正をしなくても省令などで定めれば利用の範囲を拡大できるようになります。

河野デジタル大臣「国民生活の利便性の向上に」

マイナンバーの改正法などの成立を受けて河野デジタル大臣は、閣議後の会見で、「今回の法改正によって各種の事務手続きや添付書類の省略など、マイナンバーカードの利用の促進が実現され、国民生活の利便性の向上につながっていくと思います」と述べました。

マイナンバーカードのトラブル相次ぐ

マイナンバーカードをめぐっては、トラブルが相次いで明らかになっています。

政府は、今の健康保険証を来年秋に廃止し、マイナンバーカードに一体化することを目指していますが、マイナンバーカードと一体化した健康保険証に他人の情報が登録されていたケースが、7312件確認されています。

厚生労働省は、主な原因は、健康保険を運営する組合による、加入者情報の入力ミスだったとして先月23日に、およそ3400ある全国すべての組合に対し、これまでの入力作業でルールを守っていたか点検を要請しています。

点検の結果、ルールを守っていなかった場合は入力された情報が正しいかどうか、改めてデータの照会をかけて確認を行い、来月末までに報告するよう求めています。

マイナンバーカードを使い、コンビニで住民票の写しや戸籍証明書などを交付するサービスでは、別人の証明書が発行されるトラブルが、あわせて14件起きたほか、システム設定の誤りで住所変更が反映されず、古い証明書が発行される不具合が1日、新たに9件確認されています。

また、すでに登録を抹消した印鑑登録証明書が誤って発行されるトラブルも、13件確認されています。

マイナンバーにひも付けて登録することで、国の給付金などを受け取ることができる「公金受取口座」をめぐっては、別の人のマイナンバーに登録されるトラブルが相次いでいます。

これまでに15の自治体であわせて21件に上っていて、関連するシステムの総点検を実施するとともに、誤った登録を防ぐためのシステム改修を進めています。

さらにマイナンバーカードの取得などで、ポイントがつく「マイナポイント」が、誤って他人に付与されたケースが97の自治体で、あわせて121件確認され、デジタル庁では本人確認を厳格に行うシステムに改修を進めています。

住民票の写しに旧姓が記載されない不具合も

こうした中、松本総務大臣は閣議のあとの記者会見で、おととし9月、さいたま市内のコンビニで、住民票の写しに旧姓も一緒に記載するよう申請したにもかかわらず、旧姓が記載されない不具合があったと明らかにしました。

住民票のデータの一部がシステムに反映されていなかったことが原因で、すでにシステムを改修したということです。

河野デジタル大臣は「この法律の審議中にマイナンバーカードに関する一連の事案が明らかになり、国民の皆様に不安を与えていることを大変申し訳なく思っている。既存のデータシステムの総点検を行うとともに、新しくこうした事案につながらないよう防止策を徹底していきたい」と述べています。

総務省はマイナンバーカードをめぐって不安や疑問がある時は「マイナンバー総合フリーダイヤル」に問い合わせてほしいと呼びかけています。番号は、0120-95-0178です。

松野官房長官「国民に不安を与えていることは大変遺憾」

松野官房長官は、午後の記者会見で「国民に不安を与えていることは大変遺憾だ。信頼確保に向け、関係省庁が一丸となって不安解消への対応を講じているところであり、引き続き、デジタル社会の基盤であるマイナンバーやマイナンバーカードの利活用拡大に取り組んでいく」と述べました。

2日の国会では

2日の参議院本会議では、マイナンバー法などの改正をめぐって、討論が行われ日本維新の会の猪瀬直樹氏は賛成の立場で「マイナンバーカード制度は行政の効率化、国民の利便性の向上、公平公正な社会の実現のための社会基盤で、今回の改正法案は、そのゴールに向けたプロセスとして重要な1歩だ」と述べました。

また、立憲民主党の杉尾秀哉氏は反対の立場で「さまざまなトラブルが増加する中で浮かび上がったのがマイナンバーというシステム自体が抱える根本的な問題だ。問題の根底にあるマイナンバー制度とマイナンバーカードに対する国民の不安と不信を解消することが先決だ」と述べました。

2日の参議院本会議では、このほか行政手続きのデジタル化のため、戸籍の氏名に読みがなを付ける戸籍法の改正法も賛成多数で可決・成立しました。

この中では読みがなをカタカナで表記するとしていて「氏名として用いられる文字の読み方として一般に認められているものでなければならない」という規定を設けています。