タンス預金は大丈夫?預金封鎖・紙幣変更(新札発行)より怖いもの

タンス預金をしていると、預金封鎖や新札発行で、お金の価値がなくなってしまうんじゃないかと、心配している人がいるかもしれませんね。

でも、実は、預金封鎖や新札発行より、もっと怖いものがあるんです。今回は、タンス預金に、将来起こりそうなことを、紹介していきます。あと、一番最後までお読みいただいた方には、タンス預金よりも、はるかに良い方法を提案させていただきます。

1.タンス預金事情

タンス預金とは、生活費の支払いのために、一時的に家に置いている現金を除いて、貯金目的で家に置いている現金のことをいいます。

日本銀行のデータによると、2021年12月時点で、家計にある現金は107兆円。一人当たりだと、85万円です。そのうち、仮に半分がタンス預金だとしても、50兆円もあります。

マイナンバーと銀行口座の紐付けが始まっていますので、国に財産を知られたくなくて、タンス預金をする人が増えているという噂もあります。

2.戦後の日本での預金封鎖と紙幣変更

預金封鎖がこわいから、タンス預金をする、なんていう人もいるそうですが、そもそも、預金封鎖とは何かについて、簡単におさらいしておきます。

預金封鎖をすると、国民は銀行からお金を引き出せなくなるか、または、引き出せる金額に制限がかかります。そのうえで、預金に財産税をかけることによって、事実上、財産没収をすることができます。

2-1.1946年の預金封鎖

海外の事件として耳にすることはあっても、日本でそんなことはあり得ないと思われるかもしれませんが、実は、日本でも、預金封鎖がありました。

1946年2月17日、日本政府は、突然、預金封鎖を実施しました。引き出し制限を設けまして、世帯主は300円、世帯員は100円までとされました。現在の価値に直すと、それぞれ、約12万円、約4万円です。そして、最大90%の財産税をかけ、財産税を徴収した後に解除されることになりました。

なぜ、こんなとんでもないことをしたかといいますと、当時、日本政府は戦争でかなりのお金を使っていて、借金がGDPの2倍以上に膨れ上がっていました。戦後、需要は回復してきたのに、工場が焼けて生産ができずに供給が追いつかず、ハイパーインフレが発生していました。そこで、政府の財政の立て直しと、インフレの抑制という目的のもとに、預金封鎖が行われたのです。

2-2.紙幣変更

預金封鎖をされても、タンス預金をしていれば大丈夫、と思われるかもしれませんが、政府は、当然、そのようなことも考慮していて、古い紙幣を廃止し、新しい紙幣に変更したのです。古い紙幣は使えなくなりましたので、通貨の切り替えといって良いかもしれません。

意図的な通貨の切り下げ・切り上げはなかったようですが、物価が切り上がってしまいましたので、事実上、デノミネーションともいえます。3月2日までに交換しないと無効になりましたので、タンス預金をしていた人は、大変な目にあったことでしょう。

2024年新札の渋沢栄一は、当時の大蔵大臣の渋沢敬三の祖父

ちなみに、このとき預金封鎖をおこなったのは、当時の大蔵大臣であった、渋沢敬三でした。2024年に発行される新1万円札に描かれるのは、渋沢栄一ですが、実は、さきほどの、渋沢敬三の祖父にあたる人です。

預金封鎖をおこなった人の祖父が、新しい紙幣に印刷されるということは、単なる偶然ではなく、将来の預金封鎖を暗に示している、なんて噂をしている人もいるようです。

3.現在の日本で預金封鎖はありうるのか?

財務省が発表しているデータによると、2020年時点の日本の借金は、GDPの2倍を超えていて、戦後と似た状況だとされています。それで、預金封鎖がありえると、言っている人たちもいます。これからの日本で、本当に預金封鎖はありえるのでしょうか?

【出典】財務省:債務残高の国際比較(対GDP比)

ここからは、独自の見解になりますが、今後の日本では、よほどのことがない限り、預金封鎖がないのではと考えています。なぜなら、戦後と現在では、あまりにも状況が異なるからです。

戦後と現在の状況の違い

まず、戦後は、焼け野原になって、さらに男性の多くが戦死したことで、生産力も労働力も足りずに、本当に供給が需要に追いつかない状況でした。一方、現在は、物がじゅうぶんに足りていて余っていますし、高齢少子化で、どちらかというと、需要よりも供給のほうが過剰です。

また、財政面でみると、戦後は、戦争にお金を使い尽くしていましたので、財政が本当に大変な状態でした。でも、現在は、国債を日銀が半分保有していますし、残りのほとんども、日本の金融機関が保有していますので、本当に困ってはいません。

また、戦後は、ほぼすべてが混乱の中にありましたので、「えいや!やってしまえ」みたいなノリで、預金封鎖をできましたが、現在の日本は、経済も治安も安定した国家ですので、混乱は避けたいはずです。

あと、細かい説明は省略しますが、預金封鎖は経済への影響が大きいわりには、効果が少ないということもあります。なんだかんだいって、お金をおろせずに一番困るのは、金持ちではなく庶民です。ですので、個人的な見解としては、近い将来に、日本政府が預金封鎖をするとは考えにくいのです。

4.2024年の新札発行

ところで、タンス預金をしている人が、もうひとつ気になるのが、2024年の新札発行です。

今の、1千円札、5千円札、1万円札は、2024年から、新しい紙幣が発行されます。1千円札には、北里柴三郎、5千円札には、津田梅子、1万円札には、渋沢栄一が描かれます。

ただ、古い紙幣もそのまま使用可能ですので、特に慌てることはありません。ちなみに、ここにあげた過去の旧札は、現在も使用可能なのです。今はほぼまったく流通していない、聖徳太子の100円札でも、今でも使えるのは、びっくりですよね。ただ、大量の旧札を持ち込むと、目立ってしまいますので、タンス預金は使いづらくはなると思います。

【出典】国立印刷局:過去に発行されたお札

5.インフレーション

それでは、預金封鎖も紙幣変更も怖くないとすると、本当に怖いのは、何でしょうか?それは、インフレです。

5-1.世界各国でインフレが進んでいる

世界の消費者物価指数の推移を見ますと、昨年1月くらいから、アメリカやヨーロッパでインフレが進行しています。今年の1月には、アメリカでは7.9%、ヨーロッパでは5.9%と、かなりの勢いですね。日本は、あいかわらず、インフレ率が0.9%と、低い状況ですが、今後、ずっとそうであるとは限りません。

一方、日本の物価指数の推移を見ますと、確かに消費者物価指数は0.9%と低いですが、企業物価指数は9.3%と高騰しています。企業物価指数とは、企業の間で取引される際の価格の指標のことで、2002年までは、卸売物価指数とも呼ばれていました。企業物価指数が高騰しているのは、海外の各国のインフレに伴って、輸入する資材の価格が高騰しているからです。

一方、消費者物価指数とは、8%も開きがありますが、これは、消費者に販売するときの価格を、あげることができていないからです。日本の企業が、仕入値の上昇を、企業努力でなんとか吸収している状況です。

5-2.インフレで下がるタンス預金の価値

インフレが起きると、紙幣の価値が下がります。仮に、1億円のタンス預金があったとして、10年後の価値がどうなるか見てみましょう。

たとえば、インフレ率1.3%、これは、2020年時点での日本の今後10年間の予測ですが、この場合、8788万円に価値が減ってしまいます。もし、インフレ率3.5%、これは、2022年のアメリカのインフレ率の予測ですが、この場合、7089万円に減ってしまいます。もし、インフレ率が7%だったら、10年で半減してしまいます。

インフレ率金額備考
1.3%8,788万円2020年時点の日本予測
3.5%7,089万円2022年アメリカ予測
5%6,139万円 
7%5,083万円10年で半減!
10%3,856万円 

インフレが進む状況では、タンス預金を放置していると、ただの紙切れになってしまうのです。銀行に預金していても、インフレが起これば同じでは、と思うかもしれませんが、インフレが起これば、経済を引き締めるために金利が上昇しますので、預金に利息がつきます。インフレ率より金利が低ければ、預金の価値は減りますが、それでもある程度の利息はつきます。しかし、タンス預金だと、まったく利息がつきません。

5-3.今後の世界展望

今後の世界展望を見てみます。

ロシアのウクライナ侵攻をきっかけとして、今後、戦争や争いは増えていく傾向にあり、各国での軍事費も増える傾向にあります。

また、エネルギー、原油価格や、小麦などの食糧価格が高騰しており、輸入に頼る日本は、今後、確実に物価があがっていくと予想されます。

また、アフターコロナで、来日する外国人が再び増えていくはずですが、インフレが進んでいる海外から見ると、日本は割安ですので、日本での高額な消費が増えていくでしょう。

これらを総合的に判断すると、日銀の黒田総裁が目指していた、インフレ率2%は、案外、簡単に達成されてしまい、逆に行き過ぎてしまうかもしれません。日本は今まで30年以上にわたり、低インフレ状態が続いてきましたが、それも終わりを迎え、高インフレに苦しむときが来るかもしれません。

6.資産に課税

インフレの他に、もうひとつ怖いものとして、資産課税があります。

6-1.国は国民の財産を簡単に把握できる

マイナンバーと銀行口座の紐づけが始まっていますが、現在、金融機関は義務ですが、預金者は任意です。ですので、銀行からは、マイナンバーをご記入くださいと案内されますが、記入するしないは自由です。

しかし、近い将来、完全に義務化される可能性もあります。そうなると、政府は、国民の財産を把握しやすくなります。そうすれば、預金封鎖のような荒っぽいことをしなくても、所有している資産に課税することで、事実上の、資産没収ができてしまうのです。

6-2.資産を持っている人は一部のみ

そんな無茶苦茶なこと、国民がゆるさないと思うかもしれませんが、その前に、こちらのグラフをご覧ください。全世帯の金融資産保有額、簡単にいえば、貯金額の割合です。

【引用】金融広報中央委員会:家計の金融行動に関する世論調査[総世帯]令和3年調査結果

平均は1395万円と、高そうに見えますが、中央値で見ると、わずか300万円です。さらに、なんと、4分の1の世帯で貯金がまったくありません。1000万円以上貯金があるのは、3割のみの世帯です。

要するに、国民のほとんどは資産を持っていないのです。その人たちにとっては、金持ちは目の敵。金持ちが持っている資産に課税して、たくさん税金をとるのは、きっとみんな大賛成することでしょう。選挙で票も得られやすいはずです。タンス預金をするほど、資産を持っている人は、マイノリティです。自分の資産は自分で守る覚悟が必要ですね。

6-3.タンス預金ならバレないか?

それでも、銀行にお金を預けなければ、バレないから大丈夫でしょ、と思った人もいるかもしれませんね。

それではここで、タンス預金のお金の流れを整理してみましょう。現金は突然、空から降ってくるわけではありません。もともとは銀行にあって、それをおろしてきて、タンスに入れますよね。そして、そのお金を使って家を購入すると、取引先の会社はそれを銀行に預けます。つまり、タンス預金で貯金するとき、銀行からの出金記録が残るし、タンス預金を利用すると、取引先に入金記録が残るので、結局、バレてしまうのです。

7.何か対策はあるか?

タンス預金以外で、何か良い方法はあるでしょうか。株や不動産、仮想通貨などは、誰がいくら持っているか、把握されてしまいますので、結局、資産課税の対象になります。

外国に資産を移動すれば大丈夫と思うかもしれませんが、各国同士の情報共有で、ほぼすべての海外資産は把握されてしまいます。

金や貴金属に交換するという方法もありますが、200万円を超える取引は、税務署に報告されてしまいます。結局のところ、政府から財産を隠すのは、ほぼ無理に近いことがわかりますね。

実は、絶対に没収されない財産があります。それは、「知恵」です。

どんなものでも、目に見える財産は、いつかは消えてなくなります。しかし、先人の長年の努力により培われた知恵は、決してなくなりません。

子どもたちに、財産を残すのではなく、一から財産を築く方法、スキルと、精神、スピリットを教えましょう。そうすれば、たとえ、あなたが、今持っている財産をすべて失ったとしても、子孫の世代で、再び取り戻すことができます。

どの時代、どの国、どんな境遇でも、迫害されながら財産を築いてきた、ユダヤ人の知恵が参考になるかもしれません。

監修
税理士相談Cafe編集部
税理士ライター、起業経験のあるFP(ファイナンシャル・プランナー)、行政書士資格者を中心メンバーとして、今までに、相続税や相続周りに関する記事を500近く作成(2023年4月時点)。
プロフィール この監修者の記事一覧
この記事が役に立ったらシェアしてください!