【第17回 結論】 hiropanのAfter 3.11 ~震災後に見えてきたこと~

新しい旅のきっかけ

北海道には結局1ヶ月と1週間ほど滞在し、私は再び小樽港から新潟港行きのフェリーで福島への帰路につきました。帰る頃にはさすがに疲れを感じ初めており、福島の家に帰れることにホッとしている自分がいました。

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北海道での滞在を経て、わたしは自分の中のはっきりとした答えを自覚していました。

「フクシマを離れる。」

それが、私が出した、私にとって、本当に偽りのない自然な結論でした。
移住をするということは、それそのものが、国や県に対するひとつのデモであり、周囲の人々に対する危機感の喚起であり、私にできる最大の意思表示、自己表現になると考えました。
そして何よりも、フクシマで、放射能を気にしながら、風や水や土と距離を置くような生活は、私にはもうできないと思いました。そうかと言って、ソレを全く「気にしない」という生き方や、「仕方がない」と言って諦めるような生き方も、私には絶対にできないと思いました。汚染されていなきれいな水と、空気と、土、安全な食べ物のある、人間らしい当たり前の暮らしがしたいと、切実に感じていました。
「もし北海道に移住をするなら、きっとあの森のある町に住むことになるんだろう。」
そんな風に思っていました。自分の育ったふるさとの自然を思わせる、ちょっと懐かしくて、雪深い、美しい森のある町。

しかし、北海道への移住を決める前に、実はもう一箇所、行ってみたいと思っていた場所がありました。それが、広島でした。

私は、2006年の頃、このShanti Phulaの前身であるUnity Designで、竹下雅敏氏のことを知りました。友人に借りた講演のカセットテープ(確か、カルマ・ヨーガだったような。)を初めて聞いた時、私はまるで、乾いた砂漠の大地が、降り注ぐ雨水を一瞬にして吸収するかのように、食い入るように、テープから流れてくる話に耳をそばだて、聞き入っていたのを覚えています。決して力まず淡々としていながら、その言葉には非常に説得力のある、真実の響きが感じられました。

一つのことがずっと続かない性格の私が、以来、気づけば8年以上も、竹下氏の教えの元で人間関係や、心についての学びを続けてくることができたのは、先生のおっしゃっていることの真実性を、一つ一つ自分の身体で実感し、確かめながら、理解することが出来たからだと思います。ただひたすら、波立つ自分の心を見つめ、心に釣り糸を垂らし、答えを見つけるということを繰り返してきましたが、気付けばそれは、自分自身の精神的な成長だけでなく、人や、社会、自然に対する洞察力と感受性を磨き、物事における根本的な理解力に繋がっていると思います。ただじっと、自分の心に耳を澄まして、自分の内側の世界に、自分自身を苦しませている本質的な原因や答えを見つけることが出来た瞬間の「わかった!!!」という気付きの大きな喜びと、開放感が、私にはとても重要で、意味のあることでした。
それまで、わけもわからず苦しんでいたことに、明確な理解と答え、そして的確な対処方法を知り得ることが出来て、やがて、生きることに、大きな安らぎと、幸福を感じることができるようになりました。そしていつしか、竹下氏が開示して下さった一つ一つの「霊的な科学」は、自らの体験において、疑いようもない事実として、理解できるようになっていました。

とても大切なヤマ・ニヤマ(禁戒・勧戒)や心の見つめ方(瞑想の仕方)、自分自身を本当の幸福に導くための、ものの考え方など、わたしの人生においては核となる、重要な指針を与えてくださった先生が、広島に住んでいるというのを知っていたので、いつかは広島へ行ってみたいという思いが、心のどこかにあったのだと思います。北海道での滞在中、一月後にKojikaBooks主催のイベントがあると知って、この際だから行ってみようと思い立ち、ホームステイ先の牧場から申し込みをしました。それが、私が広島に来ることになった、一番最初のきっかけでした。

Writer

hiropan

hiropan

埼玉県生まれ。自然豊かな福島県会津地方に育つ。美術大学にてデザインを学ぶ。
2011年、東日本大震災、原発事故を機に、社会の在り方と自分の生き方の方向性を見つめ直し、転換する。2012年、福島から一人旅で たまたまふらりと訪れた広島県の離島、大崎上島へ移住を決断。
現在、小さな畑で野菜や柑橘を育て、ニホンミツバチを飼いつつ、絵や文章を書きながらスロウに暮らす。

1件のコメント

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  1. 一ヵ月余りも北海道を旅されたのですね!
    ゆったりとした時間の中で、自分の心をじっくり見つめるのに
    とてもよい期間だったことと思います。
    自分の心の中の声(本心)や問題の根を見つけるには
    周りの声などに揺らされず、自分から逃げないで
    じっくり見つめ続けるしかないですよね。
    地道にその努力を続けてこられたこと、本当にスゴイ!と思いました。

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