【第16回】 かんなままの子育て万華鏡  ~泣ききったKちゃん~

Kちゃんママのおなかの赤ちゃんが突然亡くなりました。そのショックでママは茫然自失。無情にも強制的に分娩することになりました。

それで上の子2人を預かることになりました。ママの悲しみもわかる。2人の寂しさもわかる。私もつらいけど向き合うしかありません。昼間は外で思い切り遊んで気持ちを紛らしているけど夜になるとママが恋しくなります。3歳のKちゃんはママと手を握って寝たくなり、1歳の妹のSちゃんは耳たぶをさわりながら眠りたいのです。

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3日入院の予定だったのですがなかなか赤ちゃんが出てきてくれません。
とうとうママに会いたい気持ちが募って部屋の隅っこに隠れて泣き始めました。私がどんなに頑張ってもママの代わりにはなれません。Kちゃんを抱きしめて「ママに会いたいのね」と聞くと頷き、とうとうしゃくり上げながら泣き始めました。「がんばったねえ、会いたいよねえ」と言いながら泣かせました。

ママも泣いてばかりの様でした。会いに来たら帰りがもっと辛くなるから来ないでと言われていたのですが「KちゃんもSちゃんも頑張っているよ。でも限界みたい。ママに会いたがっているから連れて行ってもいい?3人のママ!」と言って励まし、会いに行くことにしました。

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Kちゃんには行く前に「会いに行くけど、ママは一緒には帰れないよ。ちゃんとバイバイできる?」と確認しました。もちろん「うん!できる」です。
ママのベッドの上に2人並んで片時も離れません。その嬉しそうなこと!私もホッとしました。でも時間はすぐに過ぎてしまいます。ママが処置室に呼ばれました。赤ちゃんが出てきてくれないので別の方法を考えましょうとのこと。いよいよ帰る時間です。

最初は「うん」と言って2~3歩行ったのですが、だんだん足が止まり、ママの手をぎゅっと握りしめ、ママの膝にしがみつき・・・とうとうエレベーターに乗る時には大声で泣き始めました。体中で抵抗しましたが引き離されて「ママがいい!ママがいい~!!!」と言いながらエレベーターに押し込まれました。ママも泣いています。私は力いっぱいKちゃんを抱きしめることしかできませんでした。やっとのことで下の階に降りてもKちゃんは収まりません。エレベーターホールの所で大暴れ!周りの人は何事かとびっくりです。まるで虐待しているかのよう!

でも私は切なくて切なくてKちゃんの気持ちと一緒になっていました。いつの間にか恥ずかしさも忘れて「泣きたいよね、泣きなさい!もっと泣きなさい!」と大暴れで泣いているのを応援しました。「もっと大きな声で!ママに届くように!」「ママあああああ~~!」と絶叫です。泣き続けて泣き続けて・・・ガクッと重くなりました。力が抜けたようです。顔がすっきりしています。

しばらく抱いて「帰ろうか」と言いました。
「Kちゃんの好きな飛び切り怖い話しようかなあ。今日は一番怖い話だよ。大丈夫かなあ~」と聞きました。Kちゃんはすっかり普通のKちゃんに戻って目をキラリとして「平気だもん」と言いながら私の手を握って歩き、車に乗りました。私はホッとして思い切り怖い作り話しをしながら帰りました。

その後、ママからメールが来ました。あの後すぐに赤ちゃんが出てきてくれたそうです。 それまでママは赤ちゃんを見る心の準備ができていませんでした。でも、けなげにママの帰りを待っている子ども達に会ってから、親心がよみがえって「私はおなかの赤ちゃんも含めて3人のママ。早く元気になってあの子たちの所に帰ろう」と思ったそうです。Kちゃん達がママスイッチを入れたのです。だから赤ちゃんも出てきてくれたのでしょう。そして、ちゃんと掌で小さな小さな赤ちゃんを抱き、さよならを言えたそうです。 16_3 名前は「ゆうき君」。ママに勇気を与えてくれたからだそうです。

Kちゃんにも「もうすぐママが帰って来るよ、よく頑張ったね」と伝えました。それからしばらくしてママが退院してきました。子ども達の嬉しそうな顔!きっとその夜はママの手と耳たぶをさわりながら夢の中に入って行ったことでしょう。ママもひと回り大きくなりました。だって試練を越えて3人のママになったのですから。

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3歳のKちゃんはママと離れて悲しさと寂しさでいっぱいでした。こんな時は思い切り受け止めて、そのエネルギーを出してあげることです。まわりがどう思おうと構いません。それは私が引き受ければいいことです。ここで我慢させたり、その行為を叱ったりしたら他のネガティブなエネルギーに変換するだけでもっと厄介です。受け入れられて、発散できたら子どもも現実を受けとめて理解します。そして、乗り越えられたことを「出来たね」と褒めます。

(挿絵:あい∞ん)

Writer

かんなまま様プロフィール

かんなまま

男女女男の4人の子育てをして孫が6人。今は夫+愛犬で静かに暮らしているが・・・
週に2日、孫達がドッとやってくる+義理母の介護の日々。
仕事は目の前の暮らし全て。
いつの間にか専業主婦のキャリアを活かして、ベビーマッサージを教えたり、子育て支援をしたり、学校や行政の子育てや教育施策に参画するようになった。

趣味は夫曰く「備蓄とマントラ」(笑)
体癖 2-5
月のヴァータ
人生一巡り+1歳

2件のコメント

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  1. メープルEY on

    かんなまま様&あい∞ん様

    KちゃんママとKちゃんとSちゃん、それぞれの切なさが伝わってきて、何とも言えない気持ちになりました。
    でも、読み進むにつれて、それぞれが悲しい気持ちから立ち直り、明るくなられたこと、ホッとしました。

    かんなままさんの、冷静かつあたたかな対応にいつも感心しています。

    また、「ゆうき君」が優しく見守っておられることをとても優しく表現されているあい∞んさん、ステキです。

    子供たちの笑顔を見ると、とても幸せな気持ちになりますね。

  2. フィオレンテな女 on

    かんなまま様

    涙無くしては読めない、とても素敵な内容でした。。。
    きっと、私も含め、同じような体験をいつかするよね。。
    そんな時に、かんなままさんの今回の経験を思い出せれば良いな。。。

    Kちゃんママ、Kちゃん、Sちゃん、ゆうき君、本当に良かったね。。

    あい∞∞様の温かいイラストに今回も癒されました。
    ありがとうございました。

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