平成26年度の厚生労働省の調査では出産後の育休取得率は86・6%(1年取れればいい方です)。でも現実は育休を利用できる労働者は4割とも言われています。パート、アルバイト、自営業などはその制度を利用できない場合が少なくありません。途中で仕事をあきらめる人も含めて離職率は7割です。政府は少子化対策で労働力確保のために女性が出産で離職しないように対策をとり始めました。
一方ママ達も雇用保険から給付金や失業保険が一定期間出ますが夫も非正規労働などで家計が苦しくて早めに復帰する傾向にあります。ただし、子どもに合わせてパート・アルバイトが多いようです。
シングルの場合はもっと深刻で自分が働かなければ収入がありません。3人の子どもがいるシングルママはパートの仕事を2つ掛け持ちしながら頑張っているのに子どもの都合で休みが続くと職場の視線がストレスになって夜も眠れなくなりました。手取りが月に7万だとか。現実、子ども6人に1人が貧困です。3組に1組が離婚するとか。子育て世帯の貧困がとても気になります。
政府の方針は福祉に力を入れていくとのこと。でもそのほとんどは高齢者の福祉や医療費に吸い取られます。昨年から始まった「新・子ども子育て支援法」は子どもを預けて働き易くするための支援法です。私もその会議に出席したのですが、当事者支援とは名ばかりで園の増設費等にすり替わっているような気がします。その上、1歳未満児を預けると1人当たり月15万の税金が使われる計算です。その経費は増える一方です。その分、家庭で保育をしているママは国の経費削減に貢献しているわけですが、それは当たり前とみなされて何の補助もなく、割が合いません。
又、保育士不足も深刻です。せっかく増設しても保育士不足で園児を受け入れられないと言います。勉強して資格も取ったのに現場は重労働、低賃金、心身のストレスでやめる人が多いと聞きます。70万人いるといわれる潜在保育士を復帰させようと1人30万円の復帰準備金まで用意するそうです。短時間パートのシフト勤務も始まっているようですが、子どもの目線から見ればいつも違う先生が関わるので落ち着きません。
でも、都会では待機児童が深刻で、あるママは30園に申請して85人待ちだとか。これはいい方だそうです。こうなればせっかく育休制度があるのに、生まれてすぐに保育園に申し込んで、空き次第復帰するようになりました。
それに加えて祖父母世代も働いているケースが多くて昔のように預かってくれません。里帰り出産も減っているそうです。一方で、娘と孫可愛さに囲い込んでしまって、居心地がいいから里帰りから戻らないケースも増えています。子離れ、親離れできない関係です。肝心の夫婦仲が悪くなります。これまた問題です。
最近、市で子育て世代にアンケートをしました。
「この町で子育てするにはどんな支援が欲しいですか?」という問いで、多かった答えは「給付金がほしい」より「夫婦で子育てできる育児環境・休暇の充実」だったのです。そのためには育児先進国北欧のように労働者と企業と政府が一体となって働き方を変えなければ実現しません。
スウェーデンでは育児休暇取得は「子育てすることで非言語コミュニケーション能力が育ち、部下の観察、能力の見極めができるようになる」と評価されています。私もオランダとドイツに視察に行ったのですが、保育園の確保より夫婦の育児休暇の充実に力を入れていたのが印象に残りました。
それなのに日本は安易に子どもを預けて働くことばかりが美化されて、女性が輝くためには子どもが邪魔みたい。結局苦しんでいるのは当事者の子どもとママ達です。ちなみにパパの育休取得率は2・3%です。
親は余裕がないので気づきませんが、このような少子化対策は小さい子どもにとっては二者択一の無情なものです。本来は親の傍で安心して自由に遊びながら成長していくものをあきらめさせて保育園に急がせているのです。
子どもは園で我慢しているから家で発散したいし、甘えたくなります。
園から帰って赤ちゃん返りをする子どもに手を焼いて「お兄ちゃんでしょ!」「自分で出来るでしょ!」と叱っているママに「想像力を働かせて」と言ってお兄ちゃんの心理を代弁したら泣き出しました。子どもがどんな気持ちなのかに初めて気づいたのです。切ないです。ママだけでは抱えきれない社会の問題だと思います。
(挿絵:あい∞ん)
1件のコメント
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これほど子育てしにくい世界になっている、ということは、
竹下先生の言われている通り、「正しい子育て」が支配者にとって、
目のかたきであることがよくわかります。
「夫婦で子育てできる育児環境・休暇の充実」
企業がこれを推奨すれば、従業員が幸せになり、
会社にとってメリットも大きいはず。