【第24回 果樹園でのWWOOF】 hiropanのAfter 3.11 ~震災後に見えてきたこと~

移住後の仕事

いざ島に住むことを決断したはいいけれど、大きな問題は、やはり「仕事」でした。
美術系の大学を出たからといって、何か特別な資格を持っているわけでもなく、特技といえば、少しパソコンがいじれて、フォトショップやイラストレーターといったデザインソフトが多少扱える程度。自分で仕事を創り出せる程の技量も、経験もありませんでした。島(田舎)はいいところだけど、仕事を見つけるとなると、その種類はかなり限られてくると思いました。自分の場合、特に「正社員」にはこだわりがなかったので、適当なアルバイトを見つけて、とりあえずは、ここでの生活を始めてみようと思いました。あとは得意の「なんとかなるだろう。」という楽観的な考えでした。

そんなことを考えながら、カフェでのWWOOFを続けていた頃、お世話になっていたホストが一時、一週間ほど島を離れるということで、その間「家にいて留守番しててもらってもいいけれど、島内にもう一件WWOOFのホストをやっている農家があるから、そちらに行ってみてはどうか?」と、提案してくださいました。幸い、もう一件のホストもウーファーの空きがあったので、私は1週間だけ、そちらでお世話になることにしました。

新しいホストは、柑橘やブルーベリーを栽培する農家で、そこにいる間は、レモンや柚子のマーマレードづくり、柑橘の収穫等を手伝いました。

レモンやみかんの木を間近で見たのは、その時が初めてで、レモンの木には鋭い刺があるということ、果実をもいだ瞬間、それまで嗅いだことのないような、爽やかな香りが、ぱっと弾けて広がること、もいだばかりのみかんの瑞々しさ、口に入れた一房のその、甘ずっぱくて美味しいこと!知らなかったことが沢山あって、たくさんの驚きと感動がありました。

その場所からは、海は全く見えません。「島」というと「海」とご想像される方も多いと思いますが、ここは割と大きな島ですから、中の方に入ってくれば、緑の山や谷が広がっています。島の内陸にいるときは、もうほとんど、ここが「島」であるということを忘れてしまいます。

季節は1月の、寒い冬。みかんの木が植えられている谷の斜面で、手足の冷えに耐えながら作業をしていると、チラチラと白いものが降ってきました。雪でした。島にも雪が降るのです。この時期に降る雪は「風花」と言うんだと、俳句を嗜むホストが教えて下さいました。
空からは、少し晴れ間も覗いていて、時折、陽の光が差し込み、みかんの木々が揺れる緑の谷間に、白い綿雪がふわふわと舞う様子は、どこか遠い記憶の中で見たような、とても綺麗で不思議な光景でした。

風花みかん谷のコピー

仕事を終えて、奥さんが作ってくださる温かい夕食が並んだ食卓をホストファミリーと一緒に囲みながら、いろいろな話をしました。そんな中で、もちろん自分がこの島への移住を考えていることもお話したところ、農園で夏場のアルバイトを探しているというお話をいただきました。聞くと、この島では夏場がブルーベリーの最盛期で、加工や選別に多くの人出が必要なのだそうです。春先や、冬場も、わずかながらジャム作りのバイトがあるといことで、私は迷うことなくその有り難い申し出を受け入れ、アルバイトとして雇っていただける約束を取り付けました!そのことで、ここでの生活が、より具体的に想像できるようになってきました。

それと、これは、不思議だなと思うのですが、実は、ここでウーフすることが決まった時点で、私には「恐らくここで仕事が見つかるのだろう。」ということが、なんとなく分かっていました。どうしてなのかはわからないけれど、すでに「決まったこと」として、自分の中で具体的なイメージが頭の後ろの方に浮かんでいたのです。
思うのですが、恐らく、人は旅をすると、知らない土地や、不確かな状況の中で、生存本能が働いて、感覚が研ぎ澄まされ、それまで眠っている潜在能力が動き出すのではないかな、という気がしています。学生の頃、女友人と二人だけでインドに行った時も、英語がほとんどわからないはずなのに、インド人から訛りの効いた英語で話しかけられる言葉のあれこれ、相手の言わんとすることが、感覚的に理解できているような経験がありました。海外渡航歴もほとんどないくせに、いきなりインドの深みに飛び込んで、ごちゃごちゃした危険だらけの町中で、気を張り詰めていると、普段は平和な暮らしの中で埋没している感覚が浮き立ってきて、意識がものすごくはっきりとしてくるような感覚になりました。恐らく、人間の中には、私達が思っている以上に非常に高度な能力や才能が眠っているのだろうということが、こういった経験からも、なんとなく想像できるのです。

おまけ動画 hiropan大学時代のインド旅

Writer

hiropan

佐々木ひろこ(hiropan)

1988年、埼玉県川口市生まれ。福島県会津地方北部の自然豊かな裏磐梯(北塩原村)に育つ。2010年、東北芸術工科大学デザイン工学部プロダクトデザイン学科卒。

2011年、東日本大震災、原発事故を機に、社会の在り方と自分の生き方の方向性を見つめ直し、転換する。2012年、福島から一人旅で たまたまふらりと訪れた広島県の離島、大崎上島へ移住を決断。
現在、小さな畑で野菜や柑橘を育て、ニホンミツバチを飼いつつ、絵や文章を書きながらスロウに暮らす。

http://utsukushimaai.blog.fc2.com/ 「しましま」

6件のコメント

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  1. いつも、ハッ!とするくらい、
    hiropanさんのイラストは胸に飛び込んでくるのだけれど、
    今日のイラストは、は〜〜〜っ♪でした!

    後半のインドの動画は、
    食い入るように観てしまいました!
    感覚が研ぎ澄まされに、海外、行ってみたーーーーーい!

    ちなみに、
    近辺でなかなかドイツビールが売っていなくて
    この間高知市内へ出た時、
    ドイツビール専門店で飲みました。
    それ以来、
    “旅がしたい〜”系の話をすると必ず夫は、
    「ドイツに行ったじゃん!」と言うようになりました、、

  2. あきしょう on

    毎週楽しみに読ませていただいています。。毎回思うのですが,洞察力,感受性が高く,とても読みやすく丁寧な文章,表現に感心してしまいます。濃厚なもぎたて100%みかんジュースみたいな感じです。(←これが言いたかった・・・)生き方,人柄が出るのでしょうね~。。。もちろん絵も明るくほわっとした温かいもので,素敵です。毎週ありがとう。

    • はちコ様
      コメントありがとうございます!

      たまには海外に飛び出してみるのもいいですよ!
      自分の”常識”や、観念が覆されます。インドでは、ほんとに大きなカルチャーショックを受けて帰ってきました!(お腹も壊したけど!笑)お陰で肝がすわったと思います。
      行ってよかったなと思います。一人で旅したり、一人移住したりできるようになったのは、ある意味その経験があったお陰なのかもしれません。
      だって、日本国内なら、とりあえずは言葉が通じるんだもの!!!!!!(重要です)

      >感覚が研ぎ澄まされに、海外、行ってみたーーーーーい!

      8種のはっちさんに言ったら、「だったら瞑想したほうが早い」とか言われちゃうのかな~なんて想像しています(笑)

  3. あきしょう様
    コメントありがとうございます!
    >洞察力,感受性が高く,とても読みやすく丁寧な文章,表現に感心してしまいます。
    そう思っていただけると、とても嬉しいです!

    >濃厚なもぎたて100%みかんジュースみたいな感じです。(←これが言いたかった・・・)

    ごめんなさい。
    一番仰りたかったであろう肝心なところの意味が全くわからなくて戸惑いましたが( ゚ ▽ ゚ )ボー
    有り難いお褒めの言葉としておいしく頂戴いたしますね。
    残り数話ですが、引き続き、濃厚もぎたて100%みかんジュースをどうぞよろしくお願いいたします。

  4. 絵が本当にきれいで、藤城なんとかさんの影絵のようです。
    島に降る雪と時折差し込む陽の光。
    海の見えない谷間に揺れるみかんの木。
    とても美しいお話です。
    その後急にインドのお話でびっくりしました。
    毎週楽しみにしております。

  5. インドへ行かれたことがあるのですね~♪
    私も以前、海外旅行をした折に観光地でない場所、
    一般人の生活圏が見てみたい!ということで、
    普通の住宅街や裏通りを一人で歩いて見て回ったのですが、
    あと時ほど自分自身、そして360度すべてに
    意識がいっていたことはないだろうと思います。
    もしかしたら、表面では気づいていないことも
    内側では様々な事を感じているのかもしれませんね~

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