【第2回】 ぴょんぴょん式 ねじれの医学 ~風邪のメカニズム~

西洋医学では風邪といえば、ほとんど同じ薬が処方されます。風邪=急性上気道炎ですから、その症状を緩和する対症療法しか行われていません。
ところが漢方では風邪にも段階があり、種類があります。

東洋には陰陽という思想がベースにあり、風邪にも陰陽があります。陽の風邪は寒気、熱、発汗など症状が表に出ます。陰の風邪はあまり表に出ません。これは最初に風邪にかかった経絡が陰か陽かによって決まります。しかし西洋の風邪薬は、陽の風邪にしか対処できません。

次に表裏です。つまり、風邪が体のどこで戦っているかを診断します。表は皮膚や粘膜で、寒気や熱感、発汗の異常、のどの痛み、頭痛などが起こります。裏は内臓などの深い場所です。便秘、激しい高熱、うわごとなどの症状がみられます。さらに半分表、半分裏という半表半裏があります。これはおもに横隔膜付近で戦っている状況です。ここには肺、肝臓、胃がありますので、咳や消化器の症状が見られます。

東洋の医療

陰陽、表裏のほかには、(体力が足りないために邪気が出ない)、(邪気が旺盛で治らない) も診ます。

風邪でうちに受診する方はたいてい半表半裏 (咳、むかむか、食欲がない、だるい、朝は平熱なのに夕方は微熱)の段階に入っています。西洋の風邪薬は表にしか対応していないので、半表半裏の人が飲んでも治りません。

つまり一般的に病院で出される風邪薬は、表で、陽の風邪にしか対処しないことがおわかりになると思います。

それでは表と陽の風邪以外の人が、一般の風邪薬を飲み続けるとどうなるか。表は裏に転じ、陽は陰に転じます。つまりもっと深い、治りにくい風邪になります。そうなると風邪と似ても似つかない、うつ病のような状態に転じます。この状態の風邪薬は西洋にはありません。たぶん、ステロイド剤か、抗うつ剤が出されているはずです。

しかし昔から、漢方でも誤治、逆治ということがあり、陰を陽と間違えたり、裏を表と間違えて死に至らしめるという話が出てきます。
現代はそれが西洋薬によって見られます。たとえば子供が風邪をひいて寝ている。風邪薬を与える。でも熱が下がらずさらに上がる。解熱剤を与える・・・そしてそのまま急死という場合もあります。

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これはどういうことかと言うと、その熱が陽の熱ではなかったからなのです。ここが非常に難しいところです。体温計の熱がいくら高くても、内側では冷えていることがあるのです。内側が冷えているから外に熱が逃げだしているという方がわかりやすいでしょう。それなのに、外の熱だけを見て解熱するとどうなるか。全身の体温が下がりすぎて死んでしまいます。この場合は内を温める薬を必要としているのですが、またもや西洋薬には温める薬はありません。西洋薬はすべて冷やす薬と思った方が間違いありません。

ですから風邪の治療は非常にデリケートで、医者にとっても難しいのです。風邪で寝ている子供をわざわざ病院に連れて行き、そこで間違った治療をされるよりは、何も飲ませずに寝かせていた方がはるかに安全なわけです。

(挿絵:あい∞ん)

Writer

ぴょんぴょんDr.

白木 るい子(ぴょんぴょん先生)

1955年、大阪生まれ。うお座。
幼少期から学生時代を東京で過ごす。1979年東京女子医大卒業。
1985年、大分県別府市に移住。
1988年、別府市で、はくちょう会クリニックを開業。
以後26年半、主に漢方診療に携わった。
2014年11月末、クリニック閉院。
現在、豊後高田市で、田舎暮らしをエンジョイしている。
体癖7-3。エニアグラム4番(芸術家)

東洋医学セミナー受講者の声

8件のコメント

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  1. ぴょんぴょん先生、貴重なお話をありがとうございます。
    初めて聴くお話に、びっくり!しています。
    こういうことだったんですね。。
    ものすごく納得いたしました。
    「西洋薬はよくない」ことは知っていましたので、
    自分は飲みません。
    しかし、この事を第三者に伝えるとき、
    ぴょんぴょん先生のように事実に裏打ちされた事を知っていない私の言葉は、
    中途半端にしか届かず、歯がゆい思いをしていました。
    ほんとうにありがとうございました。
    しかし、なぜ多くのお医者さんは効かない、或は毒になり得る薬を出す事に
    疑問を感じないのでしょうか。
    自分の患者さんを診ていればわかると思うのに、不思議です。

  2. 「ほ~」「なるほど~」と頷きながら、読ませていただきました!
    細かいことはわからないけど(メリべ)、とりあえず、寝ておけばいいんですね!
    こういったことをほんとによく理解されたお医者さんに出会えたら、幸いだな~と思います。
    ぴょんぴょん先生が病院を閉じてしまわれることが惜しいです。

  3. ぴょんぴょん先生、今回も貴重なことを教えてくださってありがとうございます。
    薬を飲む必要もないくらい健康体にうまれたことを両親に感謝しています。
    そのため、体の弱い方に適切なアドバイスができなかったのですが、ぴょんぴょん先生のお話をお聞きするうちに、きっと説得力ある話し方ができるようになると感じました。
    風邪についてこれだけのことを教えてくださるお医者さんはいらっしゃらないと思います。
    シャンティフーラさん、ぴょんぴょん先生の連載企画してくださって本当にありがとうございます。
    来週もまた楽しみにしています。

  4. 久実ちゃん on

    先生、ご無沙汰してます!
    先生にお会い出来なくなって【ハクチョウ会クリニック】まだ半月ですが、先生の笑顔が忘れられません!
    先生は、私の安定剤でした、お会いすると、悩んでたことを、消してくれました、また何処かで講演する時は、お知らせ下さい、これからも、悩んでた時は、先生の笑顔と、大丈夫、大丈夫と言う言葉思い出して頑張ります!

  5. 良い話しをありがとうございます。私の子供の頃は、少し風邪気味だとすぐ薬を飲まされました。薬が効いている感じを実感出来なかったのはこんな理由があったのですね〜
    自分の子供たちたちには、風邪薬はほとんど飲ませたことありません。だってしばらく寝れば元気になりますもの^_^我が家の救急箱には頭痛薬と絆創膏しか入ってないです。

  6. 今日の貴社の時事ブログの中で、竹下先生のコメントを拝見し、それでここにたどり着いた。ぴょんぴょん先生のことはニックネームだけは何となく存じ上げておりました。とにかくここの記事の内容がなんだかすごいので、驚いてしまった。とても納得した。自然療法の1つであるエドガー・ケイシー療法と漢方薬がどうも自分には一番合っていると、これまでずっとそう思ってきたが、そういうことも含めて、ぴょんぴょん先生の今日のお話にとても関心した。今日、ここに来れてよかったと思った。ありがとうございました。

  7. 今さっき、ふと、気づき、それでまたここに戻ってきました。ぴょんぴょん先生は、もしかしたら竹下先生の東洋医学セミナーを卒業されておられるのでしょうか? 私は漢方の先生のアドバイスを基に、これまでずっと体質改善をしてきました。だから、私は新薬は一切服用しないし、蚊に刺されても市販薬もつかわない。漢方の五臓六腑とか、そういう話も分かるんです。今後の記事も楽しみにしています。

  8. じゅんさん on

    ぴょんぴょん先生、いつもagressive.正義感が強く眼差し優しく、ずっと尊敬してます。日本が自由な言論ができる国であることを信じてますし望んでます。でもアベがきれいな人間の訳ありません。ご自愛ください。ペンネームをお使いくだされ。

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