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この世で、運命のねこに出会うことがあります。
私はずっと犬が好きで、ねこはきらいでした。一生、ねこと仲良くなることはないだろうと思っていました。ところが運命の出会いによって、ねこの方がもっと好きになりました。
うちの診察室には裏口のドアがあります。
ある年の６月ごろ、裏でミーミーと鳴き声がしました。ドアを開けると、すみっこに貧相な子ねこが見えました。近寄ると警戒して遠ざかります。でもお腹がすいているのでしょう。
「ねこは一度エサをやると住みつく」と、人は言います。ためらいましたが、ついに根負けして、エサを与えました。
以来、私は彼の命の恩人となりました。
「れいちゃん」と名づけました。「れいちゃん」と呼ぶと、「にゃあああ」と返事をくれます。ねこが返事する！と驚きました。ねこのこと、何も知らなかったと思いました。
それからは、毎日れいちゃんがエサをねだります。子ねこのふわふわのやわらかい毛、ぴょんぴょん飛び回るしぐさのかわいらしさ、そして、ドアをバタンと閉めた後も、どうしてるかな？と思ってのぞくと、ふつうに毛づくろいをしたり、散歩に出かけたりしている。犬みたいに寂しがらない。なんて楽なんだろう、自由なんだろう！と感動しました。
がんの患者さんを診て疲れたとき、ドアを開けるとれいちゃんがいて、抱っこするとホッと疲れが取れる。きっと、私を助けるために来てくれたのね、と思いました。
れいちゃんが５歳くらいのとき、3週間間くらい留守をしました。帰ってきて、すぐにれいちゃんを探しましたが、いつもの場所にいません。私がいない間は、エサをねだりに来なかったそうです。
れいちゃんがなついていた、隣の店のご主人に尋ねると、店の奥で寝ていると言います。ずっとエサも手をつけず、ぐったりしているので、もしかしたら「ねこ白血病」かもしれないと言うのです。そのご主人は前に飼っていたねこを、それで亡くしているのです。
れいちゃんは、店の隅でかごに入って丸くなっていました。そして私を見ると、「ふみゃあ」と軽くあいさつすると、のっそり起き上がり、よろよろと歩き出しました。どこに行くの？と思いながらついていくと、なんとそこはいつもの、ドアの前です。そこで私に「入れて」と言います。ここに来たかったのね！
私は水とエサをそばにおいて、診察室のソファに一晩、彼を入院させることにしました。そして翌朝、早めに出勤すると、すでに彼はいませんでした。スタッフが出してくれていたのです。エサは空っぽになっていました。
「私がいなくて寂しかったんだ。」と、思うと、もうただのねこではなくなりました。運命のねこだと感じました。
その後のれいちゃんは、クリニックの工事で一時いなくなり、またある日、ふらっと帰ってきたと思ったら来なくなりました。５～６軒先の家で見かけてことがありますので、きっとそこでエサをもらっているのでしょう。
（挿絵：あい∞ん）
Writer
白木 るい子（ぴょんぴょん先生）
１９５５年、大阪生まれ。うお座。
幼少期から学生時代を東京で過ごす。１９７９年東京女子医大卒業。
１９８５年、大分県別府市に移住。
１９８８年、別府市で、はくちょう会クリニックを開業。
以後２６年半、主に漢方診療に携わった。
２０１４年１１月末、クリニック閉院。
現在、豊後高田市で、田舎暮らしをエンジョイしている。
体癖７－３。エニアグラム４番(芸術家)
5件のコメント
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こんなネコさんに出会ったら、もうたまりませんね～❤
れいちゃんが、ぴょんぴょん先生のことをとっても好きなのが
ズンズン伝わってきました。
とても綺麗なネコさん。きっととても幸せだったのでしょうね♪
じつは、かなりのさびしがりやなので、このにゃんこの気持ちはよくわかります。
最近は、さびしいって感じることはなくなりました。。
広島でお世話になっている方々のおかげですね。
いつも、愛せるこころをもって、いきていきたいです。
れいちゃん、ご飯も食べずに待っているなんて！
我が家にも娘が拾ってきたニャンコが２匹います。
先住猫はれいちゃんと同じ白黒のぶちなんですよ(*^_^*)
人間が思っている以上にこちらの思いは伝わっているし、敏感なところがありますね。
動物さんの純粋な愛には頭が下がります。
ぴょんぴょん先生、運命の猫と感じる「れいちゃん」に出会われてよかったですね。
猫のすごいところは、こちらが感動でウルウルしていても、いつも今に生きているところではないでしょうか。
先生が、「きっとそこでえさをもらっているのでしょう」という結びの言葉にも感心しました。
互いに自由であるから、かっこいいのですよね。
あい∞んさんも猫がお好きなのではないですか。優しさがれいちゃんの目に感じられました。
いつも素敵なイラストありがとうございます。
ぴょんぴょん先生
れいちゃんがすごくすごく可愛いくて、感動しました（涙）
運命の出会いは、人間だけではないのですね～。
ぴょんぴょん先生のお優しい気持ちも、れいちゃんに伝わっているでしょうね♪
私も以前、のら猫ちゃんたちと出会ったことがあって一生忘れられないです。
いつもいつも、癒されてばかりでした。
あい∞んさんのイラストもとても可愛らしく、大好きです。
心が温か～くなるお話をどうもありがとうございます。