本物探しの旅
旭川での滞在中は、アイヌ記念館の他、博物館、美術館、作家さんの工房などを中心に見て回りました。
優佳良織は、染織作家、木内綾さん創出による毛織物だそうです。
(詳しくは優佳良織工芸館ホームページへ)
私も詳しく知らなかったのですが、祖母が昔使っていた優佳良織のストールを譲り受けたことから、興味を持ち、こちらの美術館に足を運びました。祖母は「これはとても良いものだから、大切にしなきゃだめだよ。」と言って私にそれをくれました。(…正確に言うと、私が箪笥の引き出しに眠っているのを見つけ、その温かみのある素敵な雰囲気が気に入り、使われていないのがあまりにももったいなかったので、もらっていいかと頼み込んだというもの。)
ものに溢れた現代では、ストールでも何でも、安く簡単に手に入ってしまうので、「大切にする」「長く使う」という価値観が薄らいでいるように感じます。
私は大学でプロダクトデザイン(製品デザイン)を学んだ時にも、そのことを強く感じました。現代は昔に比べてデザイナーの可能性や受け皿が広がった反面、あらゆるものが量産的で、移ろいやすく、常に新しさや斬新さが求められています。
“新しいもの”を作れば作るほど、世間(市場)はより新しいものを求めていて、それは、なんだかまるで乾きが乾きを呼ぶような、とても空虚なサイクルにも思えました。まるで古くなること、時代に取り残されることを恐れているかのようです。逆に市場はそういった消費者心理を意図的に作り出し、利用してきたのではないかなと思います。
プロダクト製品において言えば、そういっためまぐるしいサイクルの中でも、たまに「名作」が取り上げられて、デザインの辞典に乗ったり、美術館のコレクションに収蔵されたりします。それは、時に、ある一部の人のステータスや、シンボルとしても利用されます。
いったい誰が、どういった基準で「名作」や「流行」を決めているのかというのは、素朴に疑問に感じるところでした。
社会の中でも、華々しい世界に近づけば近づくほど、本当に純粋に、そのもの自体が気に入られて、購入されることよりも、ある種その背景にある“ブランド的魅力”によってそのものが利用されているケースのほうが、多いような気もします。言ってみればそれは、飾りであり、値段が高くて“有名な〇〇がデザインした”ということの方が重要だったりもするのです。
私がデザインを学んだ環境において、学生の多くは大概、そういったある種の“ステータス”を生み出すような側になることを望んでいる人が多かったように感じますし、学校サイドもそれを当たり前に推進していたように感じます。
私が進みたい道や、本当にしたいと思うことは、少なくともそういった華々しい世界に向けた方向性のものではないということは、学生の時にも漠然と感じていたことでした。一方で職人さんや、作家さんによる、手仕事に強く惹かれ、憧れていました。
優佳良織は、とても芸術性の高い工芸品です。
優佳良織工芸館に展示されている作品は、北海道の自然をモチーフに織られており、どれも本当に美しいものばかり。一反の織布は、まるで絵画のようであり、一遍の詩のようでもありました。こういったものを「本物」と呼ぶのではないかなと、私自身は感じています。「一枚の布にこんなにも感動できるものか」と思えたのは、本当に素晴らしい体験でした。
この工芸館自体が建材などに、とてもこだわって建てられており、まるで教会にいるような厳かな雰囲気が感じられる空間でした。
同敷地内には『雪の美術館』もあります。生涯をかけて雪の研究をされた、北海道大学低温科学研究所の 小林禎作教授の研究資料をもとに構成された美術館なのだそうです。
大雪山に降る雪の結晶のスライド写真が壁面にはめ込まれた部屋
雪の結晶をモチーフに作られた六角形の螺旋階段
音楽ホール(天界の学校ってこんなかんじ?)
旭川に行かれた際は是非足を運んでみられることをおすすめします♪
3件のコメント
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毎回連載を楽しみにしています。
前回のアイヌ文化の紹介もとっても良かったのですが
今回はさらに素晴らしい~!!
織りや雪の結晶など私の大好きなものばかり取り
上げられていてうれしいです!
優佳良織の事、はじめて知りました。
北海道の風景を織り込んであるのですね。
なんて素敵なんでしょう!
ひろぱんさんのイラストのマフラーが
とっても色がきれいで暖かそうです!
優佳良織工芸館と雪の結晶美術館、
行ってみたくなりました(*^_^*)
私も、北海道の優佳良織工芸館や雪の美術館を初めて知りました!
私は雪の結晶をモチーフにした螺旋階段に魅かれました。
美しい自然からインスピレーションを受けて作られたものって
なんにせよ美しいものなのですね。。。
私も機会があれば行ってみたい場所です♪
南に住む私は、北の地方にこれまであまり縁がありませんでした。
1回だけ、猪苗代湖の近くに行ったことがあるのですが、
その”寒さの程度”の違いにカルチャーショックに近いものを感じました。
そして北海道の旅に関する記事は、
やはり目を見張るものがあります!
アイヌのことも、同じ日本でありながらどこか遠い世界のことでしたし、
今回の旅の美しさったら!!!!!
猛暑のなか、すきとおった風が吹いたような気がしました。
そして、六角形の螺旋階段の静かな空間に、
コツンと一歩、自分が足を踏み入れたような、そう思わせてくれる、
イラストは言うに及ばず、素晴らしい筆致の記事でした!