※今回の記事は、かんなまま様のご主人様(小児科医)からの寄稿です。
“こどもにとって遊びとは何だろう”と改めて考えてみると、年齢によって違いはあるでしょうが、寝るとき以外は殆どその延長上にあるように思います。食べているときでさえもです。
それ程こどもにとっては不可欠なことですが、時としてネガティヴな意味合いとして使われることがあります。例えば“うちの子は遊んでばかりで勉強はちっともしません”などです。でも、自分が子どもだった頃を思い出してみてください。兄弟や友達と遊んだ楽しい思い出がいっぱい蘇ってくると思います。
とくに自然の中で遊ぶことにはたくさんの効用があります。子供たちは楽しければいくらでも遊びます。あえて大人たちが介入しなくても自分たちで創意工夫しながら自発的に集中して遊ぶし、一緒に遊べる仲間がいればもっと楽しくなります。遊びの中で自然に人間関係を学んでいくし、時には耐えたり、譲り合ったり、協調したりする社会性も学ぶことになるでしょう。自分の意志を伝えるコミュニケーション能力も必要になります。
外遊びでは自然に運動能力やバランス感覚が身についてくるし、時には痛い思いをしたり、ケガをしたりします。特に男の子はスリルのある危なっかしい冒険遊びが好きです。しかも、それを上手く成し遂げたときの感動、達成感、満足感は何事にも代えがたいものがあります。一生忘れられない思い出になります。
でも、そこに至るまでは何度か失敗もしますが、次に同じことを繰り返さないように自分なりに一生懸命考えて工夫します。そのような思考回路を遊びの中で育てることは大人になってから自分で招いた事は自分で解決する自己完結型の行動規範を身に着けることにつながっていくと思います。
さらに、自然の中で遊ぶときには気候条件、例えば気温、風、日差し、そして湿度など五感を通して自然に自律神経系の発達を促すことで耐熱性、耐寒性を身に着けていくことができます。具体的には暑い時にたくさん汗をかいて体温の上昇を防ぎ、寒い時には筋肉を小刻みに震わせて熱を発生させ寒さに耐えるはたらきです。これは、赤ちゃんの頃からエアコンの中で養育されたら育たない体の仕組みです。
また、自然の中で五感をフルに使って遊んだ体験は潜在意識の中に残っていき大人になってからの発想の原点の一部分になるように思います。これは、私の体験からも言えることです。
ここで少し私の子どものころの話しをしてみたいと思います。いわゆる団塊の世代です。物はあまり無かった時代ですが、仲間と時間と空間は周りに当たり前のようにありました。毎日、日が暮れるまで仲間と一緒に遊んだものです。野原や田んぼをはだしでかけまわったり、木登りしたり、川で泳いだり体をフルに使っていました。唱歌“故郷”の歌詞そのものの生活です。 そのようにして総合的な運動能力や体のバランス感覚も養うことができたと思います。
今までに何度か危険な目に遭いましたが、何とか事なきを得たのはそのお陰だと思っています。本来人が自然界で生きていくために備えた能力のはずなのですが、現代社会はその能力を削ぐ方向に進んでいるとしか思えません。
例えば子どもの遊びに必要な三つの“間”(時間、空間、仲間)が有りますが、これらは戦後高度成長期を迎えた頃から急速に失われてきました。さらに少子化が拍車をかける結果になっています。また、子どもを取り巻く環境も年々外遊びを自由にすることが難しい状況になってきています。
親の価値観も時代とともに変わってきているようで、幼少のころから読み書き、英語、算数などを習う早期教育が良いことのような風潮がありますが、小児科医の立場では“その時間があったら子供の好奇心を満たしてあげる様なことを思い切りさせてあげてください”と言いたいです。
知識は後から必要になったときに学んでも遅くないですが、いろんなことに好奇心を持ってそれを自分で満たそうとする探求心はそんな遊びなどを通して身についてくるものではないかと思います。本当はしたくもないことをさせられるのとは全く違うものです。大人の価値観や、基準で管理された育児より、子供の目線に立った“放牧”の育児の方に賛成します。
(挿絵:あい∞ん)
3件のコメント
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時間 空間 仲間
しっかり、胸にきざみたいと思います。
今は親がこの大切な間をコントロールしていると思います。
クラスでたわいもないことがおこる→
ママ友のあいだでメールがまわって加害者が悪者認定!
非暴力につながるので、私は後ずさりするように圏外にいました。そのせいで子供はクラスで淋しいこともあったようです。なんかおかしいけど、これが子供社会です。
少しずつでも竹下先生の思い、かんなママ様のパパ様の思いが広がればと願いたいです。
「五感を通して自然に自律神経系の発達を促す」
人間の成長の上で、もっとも重要なことだと思います。
実在しない幻を追いかけて、ゲットで満足、
ゲームの中の相手をやっつけて、達成感。
そういう仮想体験の元で育っていくことが、どんなにおそろしいか、
かんなぱぱ様は、警鐘を鳴らされていると思いました。
全国的に子どもが自由に遊ぶ場所(プレイパーク)が広がっています。
すてきな本を紹介したくなりました。
子どもが遊ぶことの価値を社会的に高め、実践していらっしゃる方の本です。
「よみがえる子どもの輝く笑顔」天野 秀昭著 すばる舎
~遊びには子どもを育て、癒す力がある~