乳幼児の時からメディア漬けになっている子ども達が小学校に入学してきます。
11年間小中学校に関わっていた私の印象ですが、以前の1~2年生は一生懸命先生の話を聞こうとしていました。最近は教室がざわざわして人の話を聞かず動き回って集中できない子が増えました。
考えてみると、今の子ども達は小さい頃から預けられ、集団の中で人に合わせて遊び、読み書き、音楽、絵、体育、英語まで指導されています。そして家では「早く!」という言葉で追い立てられ、暇な時はメディア漬けです。
又、学校に入る前から押しつけの授業を受けているので知的好奇心も枯渇しています。それに大好きなゲームと違って先生は刺激的ではないし、ビームも発しません。
実はそうではない子の方が多いのですが教室がざわざわしてくると一気に流されて同調していきます。
ベテランの先生は自分のやり方が通用しないので戸惑い、新米の先生は途方にくれます。子どもになめられたり、保護者からのクレームで押しつぶされそうになっています。
県の調査ですが、H12年469,000人の生徒中4,223人が特別支援学級だったのが、H26年は419,000人中12,275人に増えています。この増え方は普通ではありません。メディア漬けや生活の2次障害があるのではないかと感じています。
又、メディア漬けで学力が落ちることは明らかですが、文科省は落ちた学力を挽回するために「授業数を増やす」。やる気が出るように「ICT授業」。規範意識がないという事で「道徳の教科化」。国際化のために「英語授業」を推進しています。このような部分追求の対処法で解決するとは思えません。
そもそも勉強する時間がメディアに奪われて学力が落ちるのではなく、総合的な考える力が育っていないのです。これは自発の本物の体験で培われるものです。
今や小、中、高生のスマホの所持率は3、5、9割。ゲームは小学生9.5割。女子高校生の使用時間は平日7時間という現状で、目の前にいない人と四六時中関わり、大切な家族との時間、睡眠時間も奪われています。
そして、気持ちを伝える力も自制心も育っていない子どもがネット上で短い文字とスタンプで友達を作った気になり、既読機能に振り回され、無責任な同調、炎上の書き込みで束縛し合っています。
その上、世界中に発信していることも知らないで写真などの個人情報も無防備にアップしています。又、恋愛ごっこで親に見せられないような写真や動画を送り、別れてはリベンジポルノでネットに拡散。深く傷ついてしまいます。性が成熟する前に過激な性描写にショックを受けて本当の恋愛ができなくなる子も多いとか。
最近グループインタヴューした中学生は「恋愛や結婚は相手に合わせなきゃいけないからイヤだ」「子育ては無理」と言っていました。人間関係は人に合わせるものと思っているのでしょうか?自分はどこ?でもヴァーチャル・リアリティがあるから安心?
大人社会は自分達がメディア漬けで育っていないのでこの深刻な問題を想像すらできません。保護者もネットに依存しているか、実態を知らなすぎるのか、立ち止まって子どもの問題を見ようとしていません。一億総依存症でしょうか。
7年前から小中学校に入って子どもや保護者向けにメディアとの付き合い方の授業を始めました。
子どものメディア漬けの問題は大人社会の問題であり、生き方の問題です。皆寂しいのです。自分不在のままネットで300人の友達を作っても心は満たされません。
本当の友達が欲しいなら自分の本心に向き合い、行動を一致させること。
竹下先生がいつもおっしゃっている「傷つきたくないなら誰も傷つけない」「騙されたくないなら嘘をつかない」「よき人に出会いたかったら徳を積む」のような話をすると真剣に聞いてくれます。多分、そんな話を聞いた事がなかったのだと思います。
将来を考え始める大切な自立の時期にどの学校に入るのかより、恋愛とは?家庭とは?仕事とは?など自分の大切なものを問う話をするのが一番必要な進路指導だと思います。
・「親時間」とは1日の中で子どもに向き合う時間です。仕事、食事、家事、睡眠の時間はあるのに、親時間を確保している親はどの位いるのでしょうか。
・○○モンGOは「ハーメルンの笛吹き」を思い出します。利用規約を読むと事故を想定して保険に入りなさいと書いてありますが、拡張現実の世界で子どもが壊れますよとまでは書いてありません。
(挿絵:あい∞ん)