【第9回】 かんなままの子育て万華鏡  ~私と息子のマントラ?~

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胎児は子宮の中で皮膚という境界線を意識することなく、温かい羊水を身にまとってママと一体になって存在しているそうです。耳も聞こえるのでママの声も知っているし、感情も一緒に体験しているそうです。

そしてママが幸せであれば自動的に赤ちゃんもエンドルフィンやオキシトシンなどの幸福ホルモンの血中濃度が高くなり、一生幸福を感じやすくなる素因ができるそうです。逆のストレスホルモンもしかりでしょう。胎児期の環境は本当に大切だと思います。

これは4人目の息子を身ごもった時のお話しです。 当時私は31歳。5歳4歳2歳の子どもを抱えての妊娠でした。もともと流産しやすい体質で、すぐにおなかが張って出血します。その上、その頃は子育てと同時に小児科医院の開業準備で忙しく、引っ越し、開業、転園、入学と超多忙でした。とうとう無理が重なって大出血をしてしまいました。

腹痛と出血で動けないほどでしたが覚悟しながら3人の子どもを連れて病院に行きました。でも、不思議な事にどこか冷静で、奥の方から「大丈夫」という感覚がするのです。タクシーの中で「大丈夫よね、大丈夫よね」と必死でおなかの子に話しかけていました。

診察の結果、子宮膜の外の出血で赤ちゃんは無事だということでした。奇跡の様だけど「やっぱり」と思いました。でも、安静が必要とのこと。・・・絶対に無理です!「安静にしなければ」と思えば3人の子ども達のお世話さえも負担になり怒ってばかりになってしまいます。

その時の苦肉の策が「お医者さんごっこ」でした。どんな時でもお腹が張ってきたら「先生!お熱が・・、足が痛い・・」など言いながら横になります。すると子ども達は嬉々として診察鞄を持ってきて念入りに診察して包帯を巻いてくれます。ちいさな手であちこち触ってくれるのが気持ちよくて何度も横になりました。幸せなひと時でした。
あとは神様に祈るだけです。そしておなかの赤ちゃんに「大丈夫、大丈夫・・・」と声をかけるのが日課になりました。祈るような気持ちで唱え続けた私だけのマントラです。

そんな中、又早産しそうになりました。実は4度目の帝王切開で子宮破裂の危険がありました。母子ともに危険なので救急車でいらっしゃいと言われていたのですが夫の車で横になりながらずっと「大丈夫、大丈夫」とおなかを抱きしめていました。やっと38週目に出産しました。

ホッとしたのもつかの間・・・毎日洗濯4回、3度の食事の用意、子どもの世話、夜中の授乳、その上経理の仕事・・・目が回るようでした。でも、赤ちゃんの可愛い事!近くに住む夫の両親、親戚、もちろん夫や子ども達も可愛がってくれて、まるで皆を繋ぐ架け橋の様でした。

09_3 その子が2歳になったある晩の事です。なぜか息子と2人きりでした。私は経理の仕事で机に向かい、息子はその横で遊んでいました。すると突然「ママ、だーじょーぶ、だーじょーぶって言ったもんねー。ママのぽんぽん(おなか)あったたかったよ(温かかったよ)」と言ったのです。「えっ?」と聞き返したのですが「だーじょーぶ、だーじょーぶ」と言うのです。初めは何のことかわかりませんでしたが「はっ!」としました。

この言葉はおなかの息子と私だけが知っている祈りのマントラ。「ああ、通じていたんだ!」と思いました。私は忘れないように、そこに在った広告紙の裏にこの言葉を書き留めました。

ただこれだけの事ですが、おなかの中に居る息子とのつながりを確信しました。無事に生まれてきてくれたのも奇跡のようなものです。不安な胎児期だったでしょうが、きっと二人はこの言葉で支え合っていたんだなあと思います。

今、息子は29歳。ムーミンの国に住んでいます。時々、「元気?」と発信すると息子は逆に「どうしたん?大丈夫?」と返事をくれます。ただそれだけですが離れていても繋がっていると感じます。

(挿絵:あい∞ん)

Writer

かんなまま様プロフィール

かんなまま

男女女男の4人の子育てをして孫が6人。今は夫+愛犬で静かに暮らしているが・・・
週に2日、孫達がドッとやってくる+義理母の介護の日々。
仕事は目の前の暮らし全て。
いつの間にか専業主婦のキャリアを活かして、ベビーマッサージを教えたり、子育て支援をしたり、学校や行政の子育てや教育施策に参画するようになった。

趣味は夫曰く「備蓄とマントラ」(笑)
体癖 2-5
月のヴァータ
人生一巡り+1歳

3件のコメント

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  1. メープルEY on

    かんなまま様

    4人目のお子さんとのマントラのお話、心温まる、そして納得のいくお話でした。
    2歳になられた時の息子さんのお言葉、かんなママさんがどれほど喜ばれたかを想像するとこちらまで嬉しくなってきました。
    母と子のマントラは正に愛のマントラですね。
    ムーミンの国に住んでいらっしゃる息子さんは、心の優しい方なのですね。

    あい∞ん様

    かんなままと息子さんのそれぞれの表情とてもよく描けていますね。
    妖精さんも祝福しているステキなイラストです。
    黄色の使い方がとてもお上手です。

  2. フィオレンテな女 on

    かんなママさまへ、

    あ〜〜、なんと温かい母子の絆でしょう。。。
    ウルウルとしてしまいました。。
    現在、ムーミンの国にお住いの息子さん、それは優しく思いやりのある大人に
    なられていること簡単に想像できました。。♪

    妊娠中には 一度は母子の絆を感じる瞬間があると思いますが、
    私は、長男が生まれる瞬間に、長男と私と先生の三人の力が見事に合わさっての
    素晴らしい産みの体験をしたことを今でも感動の中で思い出します。

    その絆が今でも続いているように思います。

    大丈夫、大丈夫。。。良いマントラですね。。。

    あい∞∞んさまへ

    こんなに温かいイラストを描かれるあい∞∞んさまも
    とっても温かい方なのでしょうね♪

    今回もありがとうございました。

  3. 心温まる記事に私もウルウルです。
    私も切迫流産の経験がありますがその時の子供は今は社会人に成長しています。
    本当にありがたいことです。
    それにしても読んだだけでも目が回りそうなお忙しい子育てをされたのですね!
    それでも知恵を絞って危機を乗り越えられてきたこと素晴らしい。

    子離れしないといけない時期ですが離れていても心は繋がっていること大切にします。

    今回もあい~んさんの優しいイラストに癒されました。

    毎週木曜日が楽しみです(^^)

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