【第10回】 ぴょんぴょん式 ねじれの医学 ~静かな穏やかな心~

医 者 「今日はどうされたのですか?」

Kさん 「咳が出て止まらないのです。」

医 者 「ほお、それは良かった。生きている証拠です。咳が、肺の中の汚れを出してくれているのですね。」

Kさん 「でも、きたない痰もたくさん出て止まらないんです。」

医 者 「それはよごれを痰でくるんで、外に出そうとしてくれているのです。必要なだけ出たら終わります。

Kさん 「夜、寝ているときに、咳が出て困るんですけど。」

医 者 「具合が悪くなってから、一日じっと寝ていた日はありますか?」

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Kさん 「いいえ、毎日仕事がありますから、そんな日はありません。」

医 者 「横にならないと、汚れが取れない場所もあるんです。だから、夜になった、やっとそこの汚れが取れるぞって、体も張り切っているんです。」

Kさん (張り切ってるって・・こっちは苦しんでるのに・・)

医 者 「ところで、アスベストで肺がんになったってニュースでやってたでしょう?」

Kさん 「はい。」

医 者 「アスベストなんて、吸いこんだら細い針みたいに肺に刺さるんですよ。それを咳で出そうとしてもなかなか出ない。だから、かなり激しい咳をしてたはずなんです、最初。でも苦しいでしょう。医者に行くでしょう。そして咳止めを出されますね。苦しいから飲むでしょう。咳は軽くなりますよね。さあ、アスベストは肺から出てきたでしょうか?

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Kさん 「いや、まだ出ていません。」

医 者 「そうです。咳が出ないので出せなくなったのです。そうして何年も、時々咳で出そうとしては咳止めを飲んで止める、ってことを繰り返しているうちにがんになったんだと思いますよ。」

Kさん 「じゃあ、咳で出した方が良かったんですね。」

医 者 「それしか方法はないじゃないですか。または、体は高熱も出して、針を抜こうとしたかもしれません。それもふつうは解熱させるでしょう? 体は精一杯いろんなことをしたはずですよ。それをすべて止められた時に、その針を包むように、がん細胞ができたんじゃないですか?」

Kさん 「なるほど!」

医 者 「わかりましたか? 体は大変よくやってくれているのですよ。それを、いらん世話して邪魔しているのは私たちなんです。」

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こんなふうに、「治すのは薬ではなく、あなたの体だ。」ということを、わかりやすく説明しようと心がけています。そうすると、体が出してくる症状を恐れるのではなく、受け入れることができるようになります。それは体への信頼、そして安心です。

静かな穏やかな心。それが治癒にはとても必要なことなのです。

(挿絵:あい∞ん)

Writer

ぴょんぴょんDr.

ぴょんぴょん

1955年、大阪生まれ。うお座。
幼少期から学生時代を東京で過ごす。1979年東京女子医大卒業。
1985年、大分県別府市に移住。
1988年、別府市で、はくちょう会クリニックを開業。
以後26年半、主に漢方診療に携わった。
(クリニックは2014年11月末に閉院)
体癖7-3。エニアグラム4番(芸術家)

1件のコメント

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  1. ぽれぽれ on

    治癒にとって、何より大切なものは静かな穏やかな心。
    以前飼っていた犬も猫も鳥もハツカネズミも(もっといろいろ飼っていましたが…)体調が悪い時は静かにうずくまっていました。本当に静かに。
    人間だけなのですよね、やみくもに「楽」を求めバタバタとあがいてしまうのは。
    自身に対しては少しは上手に対処できるようになった気もしますが、家族が目の前で苦しそうにすると、つい「どうやって治してやろうか?」と、「穏やかな心」を置き忘れてしまいます。
    まさに今がそうだったので、ちょっと反省です。

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