竹下雅敏氏が監修した、
美術品と言える 優美なカレンダー
ができました!
制作の舞台裏を紹介します!
今回は最終回として、デザインの奥義 の続き、「デザインの真髄」をお届けします。スタッフが竹下氏から聞いた話をまとめたものですが、デザインに関わる多くの方々に読んで欲しいと思っています。
写真を加工するということ
写真などの作品には本来の作者の意図というものがある。それなのに、例えば、大きく回転させたり(※)、上下を逆にしたり、反転(ミラー)させたりすることは、作者の意図を無視してしまうことになる。見た目にはまったくわからないが、エネルギー的な不自然さを引き起こしてしまう。
※少し傾ける程度は問題ないだろうとのこと。
今回、花の写真を周りのデザインに合わせるために左右反転していたものが製作過程にあった。デジタル画像処理の世界ではよく使われる方法だが、非常に問題がある。意図的に不自然な雰囲気を作り出すなどの特殊な場合以外、つまり通常の美しい作品を作ろうと思えば、こうした加工は使うべきでない。
花に影を付けたり、明るさを調整したりといった加工は通常よく行われるが、加工者がどのような意識でこれを行なったかが問題だ。それが成功するためには、その対象物ーー今回のカレンダーであれば花ーーの美しさを活かすという感覚で行われる必要がある。そうでなければ、人為的な加工は本来の美しさを損なう結果となる。
美しいものを活かす、より美しくするというプロセス
例えば今回のカレンダーのデザインは、先に花を中心とした絵の部分、次に右のカレンダーを調整した。その後文章を当てはめ、文字の位置・間隔や文章の微修正を行なった。そして最後に文章の色を決めた。それらのどの段階であっても、主役である花の美しさが失われないようにして進めた。
元々の花自体が美しいはずだ。そこから先のどのプロセスにおいても、その美しさが損なわれてはいけない。完成した時が美しければよいというのではなく、本来のデザインであれば、途中過程のどこを取ってもすべてが美しいはずだ。途中過程で美しさが失われていれば、それは何か見落としや失敗が起こっている。
シンプルなデザインほど難しい
今回は1月と12月に、単一色の背景に花だけという最もシンプルなデザインを持ってきた。 実はこのような余計な飾りがまったくないデザインで美しさを出すことはとても難しい。同時にこれが、芸術家が最後に到達する地点でもある。
誰もが色々と飾りや模様を付けてデザインをしようとする。しかし例えば、背景色に花だけというデザインのところへストライプ(縞模様)を持ってくるとしよう。それを美しくしようと思えば、ストライプの幅は何mmか、色はどうするかを、きちんと決めなくてはならない。
すると、先に述べたシンプルな基本のデザインよりも何倍も難しいことは容易に想像できる。基本さえもできていないのに、どうしてそれよりも難しい表現ができるのだろう。人々はそこまで深く考えずに、余分な装飾を色々と入れてデザインしてしまう。主役が引き立たず、調和がない灰色のような絵になる。