シャンティ・フーラのブログ

2015年11月23日 の記事

【第3話】 17年前に建てた小さな家のお話
~竹下氏が設計に携わった家 ~

第2話からの続きです。


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まずは建物の正確な方角、周りの建物、川などの状況をお伝えしました。その時初めて方位磁石を使ってドキドキしました。

奥様の泰子さんを介して細かい指示が送られてきました。
プロですか?というような図と解説つきでした。

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まずは土台です。 敷石に柱を乗せる工法ですが、これが難問でした。
は地盤が豆腐のように柔らかいので無理だと業者さんが言うのです。この地域では認められないとのことでした。

ベタ基礎では効果がないので譲れないということで協議を重ねて、結局コンクリートのベタ基礎に穴をあけるアイデアで収まりました。
最初は穴も少なかったので「だめ」ということでかなりの穴を開けました。 そして、北側に2坪拡張して、その部分の基礎は束石を使いました。
やっと先生からOKが出ました。

そのあとは湿気通気対策、柱の上下、根太と垂木のサイズ、木の組み方、釘の打ち方、断熱材の入れ方。コーキング、防腐処理に至るまで細かな指示がありました。

床板は28ミリ以上必要だということでしたが、これは間伐材の松が35ミリもあり、褒めていただけました。

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以下に、いくつかの注意点を示しますので、業者とよく話し合って下さい。

(1)土台について

通常のログハウスは、布基礎のコンクリートの上にアスファルト・ルーフィング(紙あるいは布にアスファルトをしみ込ませたもの)を敷き、その上に土台(防腐処理をした角材)を乗せ、その土台の上に1段目のログを乗せていく。
これは、コンクリートが湿気を吸うので、1段目のログを腐朽から守るために行うのだが、業者によっては、この土台を置かないことがあるのです。これは、ログの耐久性を著しく損なうので必ず土台を置いてもらうこと。

また、「小さな家」の場合は、特に基礎の高さが30cmと低いので、高さの確保のためにも土台が必要です。この土台を据えるときの注意点ですが、図(ロ)のように必ず土台は布基礎よりも0.5mmから1mm外に出なければならない。これは雨が土台部分に当たった際の水切りをよくするためです。 基礎がでたらめであると、この部分がきっちりと出来ない可能性が高いので、よく業者に注意を出しておき、出来ていない場合はやり直させること。

(2)炭を床下に入れることについて

床と断熱材受け板の間に、炭を入れるつもりだと思いますが、この部分では、必ず結露が発生する。炭が水分を含んだ場合、逆に周りに湿気を供給してしまう。この部分に炭を入れることは疑問がある。この心配はないのかどうかを業者に確認して欲しい。

(3)断熱材について

床下と屋根に断熱材(最低100mmは必要。できれば150mmあればよい)をいれると思うが、図(ハ)のように断熱材は、床板、あるいは天井板に密着して、断熱材受け板側や野地板側には空気の層が必要である。この空気の部分が断熱性を高めるのである。ところが床部分には直接断熱材を置いてしまい、天井部分は野地板に直接タッカーで打ちつけてしまうという施工が多いので気をつけて欲しい。

(4)根太と垂木のサイズについて

根太、垂木の双方とも、50×150(mm)(通常は、50×50(mm))あればよい。断熱材の項でも記したように、厚い方が断熱効果が高く、結局のところ、省エネになるからである。

厚い断熱材を入れられるように、このサイズが必要なのである。また、屋根の断熱は、冬の寒さもあるが、むしろ夏の天井からの熱気を防ぐ意味の方が高いと考えて欲しい。
ただ、このサイズは日本では贅沢なので、業者とよく話し合って欲しい。

(5)ログウォールについて

先にも記したように、雨の当たる面だけでも、カンナがけをしてもらった方がよい。ログウオールは、強度からも防腐面からも中心材が確実によい(図(ニ)を参照)
また、ログ幅は断熱性の面から、9cm以上あるのが望ましい。

(6)玄関部分について

図面を見ると、室内に玄関部分はなく、くつはテラスで脱いで、くつ箱にくつを入れるようになっていると思われる。この場合、雨が強く降ると、玄関先のくつも、くつ箱のくつも、すべてを濡れることを考えておかねばならない。玄関部分には、部分的にテラス屋根が必要と思われる。

(7)天井板について

天井板は、通常、図(ホ)のように、スクリュー釘で垂木に垂直に打ちつけてゆくものだが、図(ヘ)のように打つと、全く釘を表面に出さないで美しく仕上げることが出来る。出来ればこの方法で天井板を打ってもらうとよい。

(8)床板と野地板について

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床板のサイズは、28mmあるとよい。通常は10mmから15mmであるが、床板としてはこれでは厚みが足りないので、根太の上にコンパネ(厚めのベニヤ板)を打ちつけ、その上に床板を乗せる方法をとっている。これは安く仕上げるためであるが、コンパネは湿気に弱いので出来れば使わない方がよい。

また、野地板も図(ト)のようなちゃんとした物を使うべきである。
出来れば断熱性のため、より厚い方がよい。安く仕上げるために野地板としてコンパネを使うことが多いが、先にも記したように、屋根は結露の生じる部分であり、湿気に弱いコンパネは使うべきでない。

(9)屋根材について

屋根材は前の手紙に記したように、断熱効果の高い材を使うべきである。

(10)面戸板について(図(チ)を参照)

面戸板の上部を必ず1cmから2cmあけて、屋根内部の通気性を確保しなければならない。また、この部分から鳥や虫の進入を防ぐため、内側から網をタッカー(大きめのホッチキス)で取り付けてもらうこと。

(11)垂木部分について

屋根内部の通気性のため、1本1本の垂木の上部数カ所に 直径5mm程度の穴を開けること。但し、妻側(北面と南面)のログに接する垂木に開けた穴から虫が入りこむので、この部分の穴を網で防ぐ処理をしてもらう必要がある。

(12)通しボルトについて

ログの4角、窓の上部(図(リ))に必ず通しボルトが必要である。中には通しボルトどころか、ログとログをつなぐダボ(図(ヌ))すら入れない業者もあるので注意すること。

(13)ノッチ部分のコーキングについて

図(ル)のログとログの重なりの部分に雨が当たると、ここから雨が中に侵入する。この部分にコーキングをしてもらうこと。

(14)防腐処理、防水処理について

防腐用塗料を安いものにすると、1年もたたないうちにカビが生えてくるので少々高くても質の高いものを使った方がよい。塗料は最低でも2回以上重ね塗りすること。

1年でカビが生えて、カビ処理と防腐処理を業者に頼むと10万円は下らないので、この部分は安く仕上げない方がよい。断熱材受け板や垂木、野地板、天井板の裏側には、防腐剤を塗るとよい。

(15)メンテナンスについて

ログは横方向に(繊維に垂直な方向に)縮んでくるので、3年から5年でログハウスの家の高さが5cmから8cm下がってくる。(セトリングという)
例えば、窓の部分の通しボルトなどは、時々 締め直さなければならない。また玄関部分のテラス屋根はセトリングに合せて高さを調整しなければならない。

塗料も3年に1度は塗り直さねばならない。これらメンテナンスのことを業者と話し合うこと。

以上の注意点は、出来れば全てを満たすのが望ましいが、日本の建築事情では少々困難であろうと思われる。天井板、床材の厚いものは、特に高価(輸入材では床材28mm 天井板15mmは標準である)なので、コストを下げるために厚みを少なくするか、合板で済ませることがほとんどである。

この場合、先にも記したように床としての厚みが足りないので、床板の下にコンパネを敷くのであるが、コンパネは湿気に弱いため、断熱材とコンパネの間に防湿シートをはるのが一般的な施工となっている。防湿シートは大地からの気の流れを遮断するため貼るべきではない。

そこで対策として、水分は通さないが空気の流通を妨げない特殊な加工をした紙(メモ書き:エアーシート)、またはシートを貼ることが考えられるが、かえってコストがかかるのではないかと懸念される。

問題はこれだけではなく、断熱材は通常片側に防水加工を施しているので、断熱材を敷くことで気の流れを遮断してしまう可能性が非常に高いという点である。従って、両面共に防水加工をしていない ただの断熱材を使った方がよいと思う。
ただこの場合、床下や屋根の結露対策について、業者とよく相談して欲しい。

私の考えでは防水加工の施していない厚い断熱材を正しくはり、床材を28mmのものを使えば、防湿シートは不要ではないかと考えている。もちろん床下(ベタ基礎のコンクリートの上)に炭を敷きつめることで湿気を防ぐのである。どのようにしても結露は発生するが、床下の換気が十分であれば、さほど問題にならないのであろうと思われる。(床下に換気扇をつけるのは、非常に効果が高いと考えられる)この部分を十分に業者と話し合ってもらいたい。

竹下雅敏

第4話へ続きます!

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