竹下雅敏氏が監修した、
美術品と言える 優美なカレンダー
ができました!
制作の舞台裏を紹介します!
前回の続きです。スタッフるぱぱがお届けします。
竹下氏がデザインに指示を出していくうちに、「右のカレンダー部分が不自然だ。どうも文字・数字の位置が各月によって違うようだ。」と気づきました。
カレンダーを制作してきたこじかさんに聞いてみると、手作業で地道に同じような位置になるよう合わせた上で、あとは月ごとに微妙な調整をしてきたとのこと。
文字・数字の位置は全12ヶ月のカレンダーで統一されている必要があるようでした。見た目だけじゃダメで、0.1mmといったレベルで…。竹下氏は「どうもおかしい」と思って何と印刷したカレンダーの紙を、重ねて透かしてみてまでチェックしていたとのこと!
「過去のカレンダーで、私も気づいていたよ」という方はコメント欄にお書き込みください。ただし景品は出ません。(笑)
*
『ある月のカレンダーを基準として、これが美しく見えるように微調整の指示を出すので、その後すべての月のカレンダーを統一するように』という指示が出ました。
私はデザインの工程において、真っ白なキャンバスに何か描けと言われたら困ってしまうのですが、こういう「全部同じ位置揃える」「完全に等間隔」「0.1mmのずれもない」という、数値や計算を使う面白さのある作業はムクムクとやる気がでてきます。
こじかさんには他のデザイン作業に専心してもらい、私がこのカレンダー部分を担当することにしました。
*
まずこうした作業をするには、デザインソフトのデータがその作業に適した状態になっている必要があります。印刷会社さんに確認を取りながら、データの作り方を新しいものにやり変えました。
次に、各数字の位置を決めます。デザインにおける「位置」は座標という数値であらわすことができますので、これをすべて決めました。
座標を決めた後に、竹下氏に微調整指示をお願いします。さっそく、0.01mm単位の調整が書かれたファックスがやってきました。
指示に従って新しい座標値を決め、それに数字や文字を揃えます。間違えないように、慎重に…。
調整を終えたものを提出すると、竹下氏から調整は成功との回答がありました。『見た目には違いがありませんが、明らかに気が出ています。』とのこと。
この座標値をもとにして、すべての月の、完全に統一された右のカレンダー部分が完成しました。
今回のカレンダーは、このような普通は「見た目は同じだから、前年のものをほとんどそのまま使えばいいだろう」という場所にまで、制作者の意識が行き届いています。
*
次回に続きます。カレンダーのご注文は下のバナーからどうぞ♪
◇
◇ トリビア:デザインソフトと数値の精度 ◇
実は当初、このカレンダー部分については竹下氏から 0.001 mm 単位の指示があったのですが、残念ながらその指示はやり直しをお願いすることになりました。その理由のひとつが、数値の精度の問題でした。
デザインソフト自体は 0.001 mm 単位の調整ができるのですが、実際はその精度の数字を入力しても、何かの拍子に0.001〜0.002mmずれてしまうのです。なぜ!?
実は私たちが通常位置や長さの指定に使う単位はmm(ミリ)ですが、印刷機やデザインソフトの内側ではすべてpt(ポイント)という単位を使ってデータを保持し、処理を行っています。
ポイントとミリの間は 1pt = 254/720 mm = 0.352777.... mm という基準で換算します。実はコンピュータは小数の正確な計算は苦手です。きれいに換算できず、 mm → pt → mm → pt と何度も変換が生じるうちに、誤差が生まれてしまいます。
そこで今回竹下氏には 0.01 mmまでの精度で指定をお願いしました。
なぜこんなマニアックなトリビアを書いたかというと、もし竹下氏の今回の手法を受けて、「私はもっと細かい精度で調整するぞ!」という方がおられましたら、すべてのデザインをミリではなく「pt(ポイント)単位」で行えば可能かも知れないということなんです。ぜひ挑戦してみてください。