宗教学講座 初級コース 第64回 大乗仏教(説一切有部:永遠の本体)

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概要

前回は説一切有部の五位七十五法を説明した。今回は、前回よりさらに難解な「刹那滅」や「永遠の本体」などを説明していき、有部の真意を探る。次回、全体を総括することで有部の思想の概略が理解できると思う。

目次

1.導入 (00:00:00)

説一切有部の人達は、自分が何を言っているか正確には分かっていなかったと思われる。従って、今回の講義を聴いて「よく分かった」と言う人は少しおかしい人である。

2.説一切有部登場前後の仏教理論 (00:03:30)

仏教は輪廻と因果応報を認めたが、その主体と考えられる自己(アートマン)は存在しないと主張したため、他派(外道)から攻撃された。そこで説一切有部を含む様々な部派が、この矛盾を回避する理論を作り出した。

3.矛盾回避の妙案「刹那滅」 (00:17:53)

仏教の「諸行無常」と、説一切有部の75法を実在とする「法体恒有」は一見矛盾している。この矛盾を回避するための「刹那滅」の思想を映画に譬えて説明する。さらに私(以下竹下氏)なりに有部の真意を汲み取った解説を試みる。

4.永遠なる本体 (00:38:30)

無我を主張すると、同一性を保って永続する本体は存在しないことになる。従って、例えば「家に猫を飼っている人が昨日見た猫と今日見た猫は同一の猫か?」というバカバカしい問題が出てくる。この問題に関する有部の見解を、経量部の立場と比較しながら解説していく。

5.輪廻の主体の考察 (01:00:28)

説一切有部が輪廻の主体として説く「永遠の本体」とは、何を意味するのか? この問いに対する私の解答を示す。

終わり(01:12:47)

※詳しい目次は、映像を購入してログインすると見ることができます。

参考文献

  • 「わかる仏教史」宮元啓一著、春秋社
  • 「空と無我」定方晟著、講談社現代新書
  • 梶山雄一著作集第四巻「中観と空1」春秋社
アハンカーラ、サーンキヤ哲学、シャンカラ一元論、ナーガルジュナ、プランク時間、プルシャ、マリーコグマ、ムーラオ・カスルディン、リンガ・シャリーラ、三世実有、中観派、仮にある、妄想、実在論、幻影(マーヤー)説、微細身、思惟の時間、我執、時間の最小単位、本体の時間、無我説、現象の時間、知覚の時間、種子(しゅうじ)、認識態、認識熊、錯覚、非連続の連続
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4件のコメント

  1. 参考になった(0)

    究極的な要素や原理が不変でなく刹那滅なら、世界には脈絡や一貫性が全然なくなる、という宮元啓一氏の見解に納得しました。

  2. 参考になった(1)

    「永遠の本体」が竹下先生の定義により、無我説でありながら輪廻も、「刹那滅」も、同時に「諸行無常」と「法体恒有」も説明できて、流石にお見事です。しかし、アートマンを否定している以上、説明はできても真実ではありません。真実が腑に落ちることを鑑みれば、難解で複雑になるほど真理から遠のくように思えました。そうなった場合、前提を疑った方がいいのかもしれません。

    映画に例えて解説された、説一切有部の「刹那滅」は確かに面白いと思いました。分類法による致命的な過ちをおかすことなく、この部派が存続していれば、東洋の思想に新たな側面を残していたかもしれませんね。