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概要
前回は仏教の4種類の認識論を解説した。今回は、大乗仏教を事実上大成したシャーンタラクシタの理論と、これに対立するラトナーカラの理論を認識論の立場から見ていく。ここを理解し、大乗仏教の全体像を把握することで、後に扱う唯識論を明晰に理解することができ、さらに仏教の誤りや認識論の限界も明確になる。
目次
1.仏教諸派の序列化 (00:00:00)
後期中観派のシャーンタラクシタは仏教哲学体系を、外界と心の世界を共に実在とする二元論の(一)有部・経量論、外界を否定し心・認識のみを実在とする一元論の(二)有形象唯識論と(三)無形象唯識論、心・認識すら非実在とする(四)中観派に大別し序列化することで大乗仏教論理を大成した。
2.矛盾しているから実在である (00:22:52)
シャーンタラクシタは「すべてのものは…矛盾する二つの性格をもつため…実在するとは言えない」という原理に基づき、上述の(一)~(三)を批判してすべてを空とする中観派を最上位に置いた。ここで、彼の批判原理とは逆転している私(以下、竹下氏を指す)の立場を、量子力学者ボーアの思想を紹介しながら説明する。
3.自性の展開(竹下氏の理論) (00:44:23)
自性をわかりやすく理解するために、以前紹介した私の理論(「自己の観照により自性が意識[主体]と心・物[客体]に展開する」)を再度確認する。
4.ラトナーカラ:照明そのものは実在する (00:51:30)
中観派のシャーンタラクシタは、無形象唯識論の光り輝く心も越えるべきとしたが、10~11世紀、無形象唯識派のラトナーカラシャーンティ(略称ラトナーカラ)は、中観と唯識は一つのものだと強調した。ラトナーカラの論敵に対する議論を通して、彼の立場を見ていく。
5.今回の結論 (01:09:51)
シャーンタラクシタは絶対的な空を最高の真実としたが、ラトナーカラは光り輝く心が最高の真実だと主張した。この論争に対する梶山氏の極めて優れた結論を紹介し、この混乱に対する私の解答を簡潔にまとめる。
終わり(01:25:02)
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参考文献
- 「中観と空Ⅰ」梶山雄一著作集 第四巻、春秋社
2件のコメント
実在とは相対的により高いものを探しているだけで、結局は始めから全部あるとのこと。実在には程度があると考えることもできますね。
自性から展開する意識・心・物の実在の本質について、より理解が深まりました。
また「認識」についても良く分かりました。
自性→意識の展開はサーンキャ哲学が説明しており、自性→物の展開は現代物理学・宇宙論が
説明しようとしているが、自性→心の展開はポッカリ抜けているとのこと。
誰かやってくれたらいいのにと思いましたが
意識と心の混同という、本質的な誤りに気付かない限り無理ですよね。
早く哲学者の方々が、本講座を見てくれたらいいなと思いました。
実在とは基本的に矛盾していることであり、人間は皆心の中で矛盾したものを持っているとのこと。
夫婦(42)で解説された、体癖・ドーシャ・エニアグラム・星座といった各身体の性格分類や
東洋医学セミナー雑談集(11)で、基本的に相互に矛盾するこれらの性格を、
トータルにどうやって上手くまとめて、調和とバランスを取って生きていくかが、
この人生の修行であるというお話とつながりました。
矛盾の中にも調和を見出し、上手く自分と付き合っていきたいと思います。