宗教学講座 初級コース 第105回 大乗仏教(唯識説:三性論)

【映像時間】

75分[500円+税]

【内容の一部紹介】

三性論という唯識論の一番難しい所を「大乗仏典〈15〉世親論集」(中公文庫)を使って説明したいと思います。三性論の意味をちゃんと理解している学者、研究者はまずいないんです。どんな解説書を見ても的が外れている。
「空と無我」(定方晟著、講談社現代新書)の三性論のところを見ると、こう書いてあります。
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 三つの存在様式。世界を認識するときに、3つの認識の仕方があるす。唯識三十頌によると、三性というのは、遍計所執性、依他起性、円成実性。ものはこの3つのあり方において存在する。私はこの教義の意味するところを次のように推測する。
遍計所執性:「外界に」という一般の人が持っている感覚。通常の認識の仕方。
依他起性:何らかの他の力によって存在。
円成実性:覚者の洞察に対応する存在様式。
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唯識論の一番難しい所なんですが、なぜ難しいかというと、唯識学派には2つの学派、有形象唯識論と無形象唯識論があるのです。この2つの学派で三性の解釈の仕方が違うのです。これが大混乱の原因です。
(講演内容を元に編集:文責シャンティ・フーラ)

【概要&目次】
今回は「三性論(三つの認識の仕方)」という唯識論の一番難しいところを、本来のマイトレーヤの見解に沿って私(以下竹下氏)が解説する。的外れな解説書しか見当たらないため、今回は経典そのものをテキストにするという初めてに近い試みであり、初級宗教講座のある意味の頂点になる。今回の講義が分かれば、初級コースにおいて今後は難しいところはない。
1.なぜ「三性論」は難しいのか (00:00:00)
  • 唯識論は元はマイトレーヤの教えであり、彼がアサンガを通して語ったことに、世親(ヴァスバンドゥ)が解説文を加え経典を作ることで世に伝えられた。実はここに、三性論が学者ですら理解できないほど難しいものになった原因があることを説明する。
2.三つの認識の仕方 (00:15:50)
  • 三つの認識の仕方とは、1.遍計所執(へんげしょしゅう)性 2.依他起(えたき)性 3.円成実(えんじょうじつ)性 と呼ばれ、2は西田幾多郎の純粋経験に近い状態、1は主・客のニ分があり外界が存在すると妄想している状態とされる。しかし、3を2の状態に留まることとする世親の解釈には矛盾があることを示し、3の本来の意味を解説する。
3.心(八識)についての世親の解説 (00:44:44)
  • 阿頼耶識・末那識などに関する、世親の少し細かい解説文を見ていく。本題から逸れるが、宗教第103,104回において私が直観により解説した内容(現行識=七識、四分説)を、図らずも今回のテキストに見ることとなった。
4.世親の立場 (01:06:55)
  • 「悟った人は言語化なしに物を見ている(根本識と形相は実在)」と考えるのが有形象唯識派だが、無形象唯識派は「悟った後には『法性=照明作用=自覚』のみ真実であり、見えているものは幻影」と捉えている。世親がいずれの立場にあるかを明確に示す文章を最後に紹介する。
終わり(01:15:43)

【参考文献】
  • 「大乗仏典〈15〉世親論集 」長尾 雅人・梶山 雄一・荒牧 典俊訳、中公文庫
【キーワード】
カルマ、サーンキヤ哲学、マナス、メリベの皆さん、三分、世界の因、世親の兄アサンガ、主体、主観、仏性、他によるもの、前五識、唯識論者の認識構造、変化するという性質のないもの、大・マハット、妄想されたもの、完全に成就されたもの、実在論者の認識構造、客体、客観、影像、心・チッタ、意識、我執・アハンカーラ、果報、根源体、猫のように生きる、相分(見られるもの)、真如、種子、空間という概念、自己・プルシャ、自性・プラクリティ、自証分(自己認識)、菅政権、見分(見るもの)、覚・ブッディ、言語的表示

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4件のコメント

  1. 参考になった(1)

    もともとの教えに、イラスト入りで説明してくれていればよかったのに、と思える内容でした。
    今まで私は「無我」という単語を、「われ」と「あなた」に区別をつけないという意味だと思ってきました。
    難しい講義を聴いた後、こちらの意味の方がよかったのにと感じています。

  2. 参考になった(2)

    世親は、兄で霊能者のアサンガを通じて、マイトレーヤに唯識論を教えてもらったが、マイトレーヤは無形象唯識派で、世親は有形象唯識派であることが混乱を生んだとのこと。世親を介さずに、マイトレーヤが直接アサンガに詳しく教えた方がよかったと思います。

  3. 参考になった(0)

    今回が初級講座の難しさの頂点で、山場とのこと。これが分かったら後の宗教学シリーズは大丈夫ということで、心して挑みました。丁寧な解説で、ちゃんと理解できたと思います。三つの認識を示した図(a,b,c)が分かりやすかったです。教える人(マイトレーヤ)と、それを解説する人(世親)の見解が違うという事実には驚きました。混乱の原因が、”ただ見ている”と、”ずっと見ている”の違いだったなんて、指摘されない限り、お釈迦様でも分かるまい! という感じです。円成実性の解説において、”猫”の記述に”照明”の記述が混入されており、普通に学んでいたら、まず分からないだろうと思います。

    仏教がマナスを二つに分離したのは、彼らがすごく我が強く、”強いからこそ嫌悪してそれを排斥して、そこから自由になろうと奮闘”した結果だったとのこと。
    ずっと、無我へのこだわりからだと思っていました。彼らの無我への囚われも、原因は同じだったかもしれませんね。

  4. 参考になった(1)

    唯識論の一番難しいところで、山場ということですが、
    なんとなく理解できたような。
    でも私のわかったレベルはたぶん低いかも・・(?)

    毎回、cocoさんの完璧で優秀なコメントを前にして↑
    後はもうボケるしか・・