欧米の価格上限を超えるロシア産原油を購入している日本 ~「どの面を下げてそんなことを日本はできるのでしょうか?」

竹下雅敏氏からの情報です。
 ウォール・ストリート・ジャーナルが、「ロシア産石油を上限超えで購入 足並み乱す日本」という記事を出したのですが、それは“G7(主要7カ国)が設定したロシア産原油の1バレルあたり60ドル(約8000円)の上限価格について、日本が例外規定を利用して上限を大幅に上回る1バレル=70ドル前後で取引を続けている”というものです。
 ShortShort Newsさんの動画では、“今夜は、ロシアの勝利について、お伝えしたいと思います。…日本はアメリカの親密な同盟国です。日本は西側諸国と一緒になってロシアに制裁を課しましたが、今度はその日本がロシアの石油を買うことにしたのです。どの面を下げてそんなことを日本はできるのでしょうか? …これは、ロシアを封じ込めようとする米国の計画を頓挫させるものです。…日本は欧米の価格上限を超えるロシア産原油を購入しています“と伝えています。
 岸田首相は3月27日の参議院本会議で、「サハリン・プロジェクトについては、我が国のエネルギー安全保障上重要であり、権益は維持する方針だ」などと、“どの面を下げてそんなことを日本はできるのでしょうか?”という態度を示しました。
 日本とすれば、一般的なロシアからの輸入ではなく、“日本のサハリンにおける権益分を受け取っている”だけなので、「まったく問題ない!」ということなのでしょう。これこそが日本の外交です。
 論理的な思考力にたけているインド人などは、“どの面を下げてそんなことを…”と気が狂いそうになるでしょうが、長い間「まったく問題ない」「そのような指摘はあたらない」という菅官房長官語を聞きなれた日本人は、0と1の両方が同時に併存している「量子力学的外交」は想定内のことなのです。
 米エネルギー省のデイビッド・ターク副長官は、“日本はG7で合意した上限価格を超える値段でロシア産原油を輸入しているものの、この事態は上限価格に関する合意に当初から盛り込まれたものであり、パートナー国の合意を得ている”と表明しています。
(竹下雅敏)

注)以下、文中の赤字・太字はシャンティ・フーラによるものです。

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露産石油の上限価格 日本は事実上の「順守破り」 国益優先の例外規定
転載元)
G7(主要7カ国)が設定したロシア産原油の1バレルあたり60ドル(約8000円)の上限価格について、日本が例外規定を利用して上限を大幅に上回る1バレル=70ドル前後で取引を続けている。米紙「ウォールストリートジャーナル」が伝えた。アナリストらは、この「免責」の事実はロシア産化石燃料への日本の依存を示すものであり、なぜ日本はウクライナへの全面的支援に躊躇するのかを説明してもいると報じている。

米国や日本を含むG7は2022年12月5日から、露産石油に対する1バレル=60ドルの上限価格を導入した。一方で、日本の商社も参画する「サハリン2」で生産された石油については、日本のエネルギー安全保障の観点から規制の対象外とされた。他にも、EU、豪州などが上限価格措置を適用している。

「ウォールストリートジャーナル」が日本の財務省による貿易統計のデータをもとに伝えたところによると、日本は1~2月、74万8000バレルのロシア産石油をおよそ69億円で購入(約5200万ドル)。単純計算すると1バレルあたり70ドル弱で購入したことになり、上限価格を大幅に上回っている。同紙はこの事実を「日本が米国の石油同盟から脱退」「アジアで最も米国に近い同盟国が、上限価格以上で露産石油を買っている」と、日本に対して批判的な論調で伝えている。

さらに同紙は、日本は「サハリン2」プロジェクトのロシアのLNG供給については「免責」を獲得していたと指摘している。日本が購入する天然ガス輸入のうち、ロシア産は10分の1。だが、日本がロシアから購入するエネルギー量はこの1年間で4.6%増加したという。アナリストらの見解では、ロシアからのエネルギー資源の供給を日本は拒否することもできるものの、それは望んでいない。

米国防総省のジョン・カービー報道官は、ロシア産エネルギー資源への価格制限の導入について、決してロシア産石油の市場からの完全排除を意図したものではないと繰り返し述べている。

発展途上国はロシア産の安価なエネルギー、食料、肥料へのアクセスを開くことに重大な関心を寄せている。まさにこうした諸国がまず、ロシアのような有益なパートナーとの生産的な関係を手放すことを望んでいない。
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配信元)

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