[NNNドキュメント] 2つの“マル秘”と再稼働 国はなぜ原発事故試算隠したか? 【前半】

竹下氏からの情報提供です。
 国が隠し続けてきた2つの原発事故試算が暴露されています。冒頭でその2つの試算について軽く触れられていますが、前半は原発事故が起こった時、その損害を賠償するため、被害予測を試算したレポートに光が当てられています。
 試算の結果、その損害額は最大で、当時の国家予算の2倍以上にあたる3兆7000億円(現在の貨幣価値で59兆円)にもなるようです。この試算が、なぜ39年間も隠されたのかですが、“原賠法を審議していた当時(1961年)、用意できる賠償額は最大で50億円だった。ところが、資産の単位は、億ではなく兆だった”からのようです。原子力の憲法ともいえる原子力基本法には、“自主・民主・公開” の三原則が盛り込まれており、“日本にまだ原発が一基もない時代に既に破られていた”ことになります。
 この調子なら、たとえ“原発施設の地下部分は核弾頭製造工場になっており、…すでに2000発の核弾頭を日本は所有しており、いつでも発射できる状態にある”としても不思議ではなく、むしろそんな気がしてなりません。
 後半の“原発が攻撃されたらどんな被害が出るのかを研究したレポート”の方は明日、取り上げます。
(編集長)

注)以下、文中の赤字・太字はシャンティ・フーラによるものです。

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NNNドキュメント 2つの“マル秘”と再稼働 国はなぜ原発事故試算隠したか?
転載元)

文書名:「原子炉施設に対する攻撃の影響に関する一考察」 1984年2月 財団法人 日本国際問題研究所

文書名:「原子炉施設に対する攻撃の影響に関する一考察」
1984年2月 財団法人 日本国際問題研究所


今年、外務省への情報公開請求で、ある秘密報告書が開示された。原発が攻撃されたらどんな被害が出るのかを研究したレポートだ。最悪の場合、18000人が死亡、とある。

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しかし、今年まで30年以上、秘密にされていた。唯一の被爆国日本で原子力を進めるには、国民の理解が欠かせない。そこで、原子力基本法に、”自主・民主・公開” の三原則を盛り込んだ。原子力は原爆と違って安全なのだから、隠し事はしないと。

だが、福島原発事故が起きた後でさえ公開されることはなかった。さらに、”公開” の原則は、日本にまだ原発が一基もない時代に既に破られていた。

文書名:大型原発の事故の理論的可能性および公衆損害額に関する試算

文書名:大型原発の事故の理論的可能性および公衆損害額に関する試算


これは、原発が日本で事故を起こしたら、どれほどの被害が出るのか、1959年 国が試算させた報告書だ。損害額は最大で3兆7000億円とある。これは、当時の国家予算の2倍以上にあたる。

1959年度国家予算 1兆4950億円

1959年度国家予算 1兆4950億円



この報告書(文書名:大型原子炉の事故の理論的可能性及び公衆損害額に関する試算)も、1998年まで39年間、闇の底に置かれた。


現在、20基の原発で進められている、新規制基準への適合審査。そこにも大きな食い違いが残る

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原子力規制委員会 田中俊一委員長「基準への適合性は見ていますけれども、安全だっていうことは、私は申し上げません」

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安倍首相「世界でも最も厳しい安全基準に則り/安全だという結論が出ればですね/再稼働を、ま、進めていきたいと」

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(川内原発ゲート前抗議活動の映像。警察と市民の対峙。コールしているところ。)

再稼働の鍵を握る二人には大きな隔たりがある。この状況で原発を再稼働して大丈夫なのか。

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鹿児島読売テレビ 内田記者「午前10時半、ひときわ大きな声が上がっています。たった今、新たな規制基準の下、全国で初めて川内原発が起動されました」

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倉澤治雄さん「私が今手にしていますのは、1959年に当時の科学技術庁が、日本原子力産業会議に委託した、ある試算です。「大型原子炉の事故の理論的可能性及び公衆損害額に関する試算」という文書。目的は、原子力損害賠償法を制定する為で、事故が起きたときの被害予測を試算したレポートです。」

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国がこの試算を始めた年(1959年)、皇太子様がご成婚。日本は高度成長への急坂を猛スピードで駆け上がるまっ只中だった。

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1960年、日本で初めてとなる原発の建設が始まった。今後日本で原発事故が起こったら、損害を賠償しなければならない。国会では原子力損害賠償法の策定が始まっていた。そのために作り上げた試算。16.7万kWの原発が事故を起こし、2%の放射性物質が出た想定だ。

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放射性物質は放射能雲となって移動し、汚染を広げることが書かれ、さらに体内に入った放射性物質による、臓器の内部被ばくにも踏み込んでいる。新生児から10歳までの4段階に分け、食べ物からの被曝量を推定。

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亡くなった人には葬式代として5万円。そして、福島事故では耳にしなかった多くの放射性物質も分析している。

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倉澤さん「この試算は、原子力損害賠償法の根拠となるはずでしたが、国会に提出されたのはわずか18ページだけでした。226ページに及ぶ詳細なデータは、ついに、国会に提出されませんでした。その背景にはいったい何があったのでしょうか。

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国会に提出された18ページと、マル秘とされた226ページが積んである。暑さで違いが一目瞭然。詳細な226ページが隠された痕跡がある。隠された報告書の目次にある、附録A~Gが、国会に出されたものにはない。

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国会に提出された18ページ分:
まえがき
第1章 公衆災害の伴う大型原子炉の可能性 1
第2章 損害資産の基本的考え方と仮定 6
第3章 試算結果とその評価 15

マル秘とされた226ページ:
附録A 事故の種類と規模 21(数字はページ数)
附録B 想定する原子炉設置点と周辺の状況 31
附録C 煙霧の拡散、沈下 49
附録D 放出放射能の人体及び土地使用に及ぼす影響 87
附録E 放出放射能の農漁業への影響 189
附録F 物的、人的損害額の試算基礎 207
附録G 大型原子炉事故から生じうる人的物的の公衆損害の試算結果 235

また、本文中に数カ所ある、附録に関する記録も消去されている。

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倉澤さん原子力の憲法ともいえる原子力基本法には、”自主・民主・公開” の三原則が盛り込まれています。しかし政府は、原発が稼働する前から、公開の原則を捻じ曲げていました。

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1999年に国会で、隠された試算について質問する共産党 西山登紀子議員(当時)にインタビュー。「この試算はどこかの原発を想定したものですか?

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西山登紀子さん東海原発1号炉(日本初の原発)を念頭においたものであるということは、この試算書を克明に見ますとね、わかってまいります」

気象観測のページには、東海村付近とある。さらに原発から20kmに、当時人口10万人の水戸市、120kmに人口600万人の東京。

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聞き手「すごい想定ですね。大都市東京にまで影響が及ぶかどうか最初に試算してあった

西山さん最大の損害額っていうのが3兆7000億。当時の日本の一般会計予算が1兆7000億ですから、2倍以上のとてつもない損害額を想定している報告書だったわけです。

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事故での死亡者は最大720人、「要観察者」は最大で400万人と推定。

西山さん:国会できちんと糺しておく必要があると、原本を持ってきてもらったらマル秘の判子が押してあるのでびっくりして。慌てて写真に撮っておきましょうよと、中から鍵かけて(写真を撮った)。
なぜ隠してたのかと質問をしたわけです/40年も前のことなのでなんで隠したのかようわかりませんということです」

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1994年に国会でこの問題を追及した、公明党の加藤修一さんにインタビュー

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公明党の加藤修一さん「原賠法を作る過程でやったことですから、マル秘になったということは、情報を開示したくないということですね。公開という観点からも法律に著しく抵触することをなぜやったのか

原賠法を審議していた当時(1961年)、用意できる賠償額は最大で50億円だった。ところが、資産の単位は、億ではなく兆だったのだ。 

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公明党の加藤修一さん「すくなとも日本の国民は、広島・長崎の関係で放射線被曝について非常に大きな関心を持っている国民ですから、そういうことがあるとするならば、大変だねと、そういう世論が起こる事の警戒はあったんじゃないかと思いますね。」

西山登紀子さん「権力というのは、手段を選ばない。安全だと思わせてこれを進める。そのためにこれが一番邪魔なものだったんじゃないか」

その後、日本全国に54基の原発が作られていった。原発事故が起きると甚大な被害が出ると、国は最初から分かっていたのだ。

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文字起こし: http://togetter.com/li/864775?page=1

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