【第1回】きっと役立つ乳酸菌学  〜メリーベのために〜

 皆さん、こんにちは!「地球に優しい方の微生物学者」という者です。長年、勝手にシャンティフーラさんのファンをやらせていただいております。この度は光栄にも編集長にお声がけいただき、筆を執らせていただきました。諸事情あってペンネームですが、微生物、特に乳酸菌の研究者をやっております。その専門性を活かして、乳酸菌とその機能性について皆さんの役に立つような情報を数回に分けて掲載していきたいと思っています。(体癖に捻れが入っているため、所々笑いを取りに行ってスベっておりますので、その点はご了承下さい。笑)。
 「乳酸菌=微生物」ではなく、「乳酸菌=食べ物」と理解されている全国のメリべの方々は、きっと乳酸菌のことも大好きなはずです!私はメリべ民の味方ですので、「メリーベのために」できるだけ専門用語は避け、意味を補足しながら平易な文章を心掛けて書こうと思っています。堅苦しさを避け、所々、口語的な文章で書かせていただきます(誰か「メリーベのために」というテーマ曲を作って下さい。笑)。
 これから頑張って執筆していきたいと思いますが、十分時間が取れませんので、超不定期掲載となることを予めご了承ください。興味があればご覧いただき、健康ライフにお役立ていただければ幸いです。
(地球に優しい方の微生物学者)
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きっと役立つ乳酸菌学 〜メリーベのために〜

Bifidobacterium adolescentis
Author: Y-tambe


【はじめに】


 最近、乳酸菌やプロバイオティクスという言葉をよく耳にするようになりましたが、皆さんはこれらがどういう菌なのか分かりますか?

 乳酸菌は「何となくカラダに良い」というイメージだけの人も多いのではないでしょうか?まずは乳酸菌とはどういう菌なのかを簡単に知っていただきたいと思います。


【乳酸菌って何?】


 乳酸菌ってどんな菌なのでしょう?

 「広義の乳酸菌」は、「最終代謝産物として乳酸を沢山作る菌」です。そう、乳酸を沢山作るから乳酸菌なのです。非常に単純なネーミングですね。この定義でいくと、ビフィズス菌も乳酸菌の仲間となります。ですが、様々な違いがあるため、「狭義の乳酸菌」には、ビフィズス菌は含まれません。乳酸菌とビフィズス菌の特徴の違いは下記のとおりです。

《乳酸菌の特徴》 
・ブドウ糖から「乳酸のみを作る菌」と、「乳酸+アルコール+炭酸ガスを作る菌」がいる
・通性嫌気性菌(酸素があっても生きられる)
・球状、または桿状(棒状)の形をとる
・主に小腸、大腸、様々な発酵食品中に存在

《ビフィズス菌の特徴》 
・乳酸より酢酸を多くつくる(乳酸:酢酸=2:3)
・偏性嫌気性菌(酸素があると生きられない)
・(短)桿状、Y字状、V字状などの形をとる
・主に大腸に生育(大腸はほぼ無酸素状態)

 このような違いがあるため、厳密には乳酸菌とビフィズス菌は区別されています。乳酸菌には、研究者の私も「本当かな?」と思えるぐらい沢山の機能性がありますが、実は、虫歯菌で有名なミュータンス菌も乳酸菌ですし、人食いバクテリアと呼ばれる恐ろしい菌も乳酸菌です。一般的に言う「乳酸菌」にはこれらの菌は含まれませんので、ここで登場する「乳酸菌」は安全性の高い、身体に良い方の乳酸菌とお考え下さい。


【プロバイオティクスって何?】


 プロバイオティクスとは、簡単に言うと「適切な量(十分な量)を摂取すると身体に良い働きをしてくれる生きた微生物」です。乳酸菌やビフィズス菌が代表的なプロバイオティクスと言えます。「生きた微生物」でないとプロバイオティクスとは呼びませんので、殺菌した乳酸菌や胃酸や胆汁酸で死ぬ乳酸菌はプロバイオティクスではありません。いわゆる「生きたまま腸に届く有用菌」がプロバイオティクスです。


pixabay[CC0]



【死んでいてもOK?】


 定義上、生きていないとプロバイオティクスとは言えませんが、実は乳酸菌は死んでいても効果があります。厳密には、生きていた方が良い機能性と、死んでいても問題ない機能性があります。菌体成分(タンパク質、多糖、核酸など)が機能性に関わっている場合は、死んでいても問題ないということになります。例えば、一部の菌体外多糖には免疫力を高めてくれる効果が知られていますが、菌体外多糖が既に作られているヨーグルトなどは、その後に菌が死んでも効果が期待できるということは理解していただけると思います。一方で、生きている乳酸菌が代謝により作り出す物質が機能性に関与している場合や生きて腸管内である程度増えてくれた方が良い場合などは生きている必要があるということになります。具体的な機能性については次回以降ご紹介したいと思います。


【色んなところに乳酸菌】


Author: jules


 乳酸菌は様々な場所で活躍しています。参考までに、下記にどのようなところで乳酸菌が検出または利用されているかを記載しました。

《食品》 
発酵乳製品・・・ヨーグルト、チーズ、発酵バター、ケフィアなど
発酵肉製品・・・発酵ソーセージ、熟成ハムなど
醸造製品・・・日本酒、ワイン、マッコリ、馬乳酒など
大豆発酵製品・・・味噌、醤油、発酵豆乳(豆乳ヨーグルト)など
漬物・・・日本の漬物、キムチ、ピクルス、ザワークラウト(ヨーロッパでよく食べられる酸っぱいキャベツ)など
その他・・・サワーブレッド(酸っぱいパン)、発酵野菜ジュース、発酵茶、馴れ鮨など

《その他》 
ヒト・・・口腔、胃、小腸、大腸、皮膚、膣、糞便など(ごめんなさい、シャンティフーラの読者さんは「う○こ」という表現が好きでしたね。笑)
家畜・・・飼料(サイレージなど)、堆肥、う◯こなど
その他・・・土壌、海産物など

 このように、乳酸菌は様々な場所で生育しています。これは様々な場所で利用できるということなので、応用性の広さとも言えます。今回はイントロダクションということで、「乳酸菌とは何か?」についてご紹介しましたが、次回以降は、もう少しお役に立てる具体的な情報を掲載していく予定です。お楽しみに〜(気長にお待ち下さい)。

Writer

地球に優しい方の微生物学者

主に自然科学関連の記事へのコメントと「きっと役立つ乳酸菌学 〜メリーベのために〜」という記事を寄稿しています(滞りがちでスミマセン)。大学で微生物(乳酸菌)の機能性研究を行っています。最新の知見もご紹介しながら、魅惑の菌ワールドに皆さんをお連れしたいと思います。

何故か「う○こ」担当みたいになっていますが、非常に不本意です(※)!!専門は乳酸菌ですので、汚くないスマートな記事をお届け致します。できるだけ専門用語は避け、解説をしながら分かりやすくお伝えできるように頑張ります。
※私は8種体癖です(笑)


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