[ポール・クレイグ・ロバーツ]新たな景気後退と、アメリカの傲慢さ抜きの新たな世界?

竹下雅敏氏からの情報です。
 内容はこの通りだと思いますが、文中興味深いところが、“アメリカ経済を海外移転してしまったので、アメリカは経済成長することができない”という部分です。今、日本の中小企業が壊滅状態に追い詰められているのですが、アメリカの後を追うアベノミクスの結果は、日本経済の破壊なのです。また“未曽有の量的緩和も、経済回復に失敗した…。そうなると一体何が経済を回復できるだろう?”とありますが、経済が破壊された国では、戦後の日本が復興を成し遂げたように、強力な信用統制による資本の配分を行わなければならないでしょう。
要するに未来に向けて新しいヴィジョンに基づいた産業を興さなければならないのですが、軍事技術を民間に転用することで十分にこれが可能だと考えています。例えば医療にせよ、農業にせよ、地球にとって自然で害をもたらさない形で科学技術を応用することが、いくらでも出来るはずなのです。
 こうした人類の繁栄プログラムを阻んでいるのが、文末に描かれているようにアメリカであり、そのアメリカの延命に寄与しているのが、日本の様な属国のインフレ政策なのです。世界を平和にしたければ、FRBから米ドルを刷る能力を取り上げるよりないのです。それなのに、日本はアベノミクスで円を大量に刷り、その円でアメリカの国債を買うという形で、アメリカに資金提供をしています。アメリカ国債は売ることが出来ないので(中川昭一の様に殺されてしまいます)、事実上アメリカに寄付している(本当は恐喝されている)のと同じです。このようなアメリカに言いなりの連中を愛国者だと思っている人が多いのは、情けない限りです。
(竹下雅敏)

注)以下、文中の赤字・太字はシャンティ・フーラによるものです。

————————————————————————
新たな景気後退と、アメリカの傲慢さ抜きの新たな世界?
転載元より抜粋)
Paul Craig Roberts

2014年6月25日

2014年第一四半期の、本当のアメリカGDP成長率最終数値が今日発表された。数値は無知なエコノミストが今年1月予想した成長率2.6%ではない。数字はGDP-2.9パーセント減だ。

-2.9パーセントというマイナス成長率は、そのもの自体控えめな表現だ。この数値は、インフレの度合いを少なめにして、名目GDPを小さくすることで得られたものだ。クリントン政権時代、ボスキン経済諮問委員会は、社会保障受給者を騙して、生活費調整を避けるためにインフレ度合いを操作した。食料、燃料なりなんなりを購入する人々ならインフレーションは公式に報じられている数値よりずっと高いことを知っている。

第一四半期の本当のGDP落ち込みは、公式数値の三倍の可能性がある。

ウオール街に押された大企業が、アメリカ経済を海外移転してしまったので、アメリカ経済成長することができないのだ。アメリカの商品は、海外で生産されている。服、靴、食べ物や、調理器具、コンピューターなりなんなりの商品ラベルをご覧頂きたい。ソフトウエア・エンジニアリングの様な、アメリカの専門的な仕事は海外移転された。海外移転した経済は、経済ではないのだ。こうした全てが丸見え状態で起きているのに、たんまり謝礼を貰った自由市場宣伝担当者連中は、アメリカ人は、アメリカ中流階級の雇用を、中国やインドに渡すことで恩恵を受けてきたと力説している。

私はこうしたウソを十年か二十年あばき続けてきたので、それが、私がもはやアメリカの大学やアメリカの経済団体で講演をするよう招かれない理由だ。経済学者は、ウソをついて、頂けるお金が大好きだ。

景気後退の結果を想像願いたい。これは長年の未曾有の量的緩和も、経済回復に失敗したことを意味する。長年のケインズ流の財政赤字も、経済回復に失敗したことを意味する。財政対策も通貨策も機能しなかった。そうなると一体何が経済を回復できるだろう?

反米大企業が海外移転してしまった経済を元に戻すよう強制する以外、何も無い。

アメリカの暗い経済見通しのおかげで、アメリカの二大産業ロビー団体-アメリカ商工会議所と、全米製造業者協会(あるいは、その残滓)が、オバマ政権の更なる対ロシア経済制裁という威嚇と対立するに至った。

ブルームバーグ・ニューズによれば、明日から(6月26日)、ニューヨーク・タイムズ、ウォール・ストリート・ジャーナルとワシントン・ポストに、実業団体があらゆる更なる対ロシア経済制裁に反対する広告を載せる。アメリカの実業団体が、経済制裁は彼等の利益を損ない、アメリカ労働者のレイオフを招くと言っているのだ。

かくして、アメリカの二大実業団体、政治運動献金の重要財源が、とうとうドイツ、フランスとイタリア実業界の意見に合わせ、主張をするようになったのだ。

洗脳されたアメリカ国民を除く全員が“ウクライナの危機”は丸ごとワシントンの仕業であることを知っている。ヨーロッパとアメリカの実業界は問うている。“一体なぜ我々の利益と、我が国の労働者達が、ワシントンの対ロシアプロパガンダの為に打撃を受けなければならないのだろう。”

オバマに答えは無い。おそらく彼のネオコン下司共、ビクトリア・ヌーランド、サマンサ・パワーズやスーザン・ライス等が答えを思いつけるだろう。オバマはニューヨーク・タイムズ、ワシントン・ポスト、ウオール・ストリート・ジャーナルや、ウィークリー・スタンダードが、ワシントンのウクライナ横領が脅かされずにすむ為に、一体なぜ何百万人ものアメリカ人やヨーロッパ人が苦しむべきなのか説明してくれると期待できるのだ。

ワシントンや、ヨーロッパ内のチンピラ・ワシントン傀儡支配者への異議は広がりつつある。ドイツでの最近の世論調査では、ドイツ国民の四分の三が、ポーランドとバルト諸国内の恒久NATO基地に反対している。旧チェコスロバキア、現在のスロバキアとチェコ共和国は、NATO加盟国でありながら、領土内のNATOとアメリカ軍と基地を拒否した。最近、ポーランド外相が、ワシントンを喜ばせるには、見返り無しで、無料オーラルセックスをしてやる必要があると発言した。

ワシントンの阿呆連中がNATOにかけている負担は、この組織を崩壊させる可能性がある。そうなることを祈ろう。NATOの存在理由は、ソ連が23年前に崩壊して、消滅しているのだ。ところがワシントンは、北大西洋条約機構の国境を遥かに超えてNATOを拡張した。NATOは今やバルト諸国から、中央アジアにまで至っている。NATOの高価な作戦を継続する口実を作るため、ワシントンはロシアを敵に作り替えざるを得ないのだ。

ロシアには、ワシントンなりNATOなりの敵であろうとする意図は皆無で、それをはっきり表明している。ところが、四苦八苦しているアメリカ納税者の金を毎年約1兆ドルを使い尽くしているワシントンの軍安保複合体は、この利益を維持する口実が必要なのだ。

不幸にして、ワシントンの阿呆連中は危険な敵を選んでしまった。ロシアは核保有大国だ、膨大な領土の国であり、中国との戦略的同盟もある。

傲慢さと思い上がりに溺れた政府か、精神病質者や社会病質人格連中に運営されている政府しか、そういう敵を選ぶまい。

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、ヨーロッパに、ワシントンの中東とリビア政策は、単なる大失敗ではなく、ヨーロッパとロシアにとって壊滅的な害をおよぼすことを指摘した。ワシントンの愚者連中は、聖戦戦士達を押さえていた政府を取り除いてしまったのだ。今や暴力的な聖戦戦士達は解き放たれた。中東で、聖戦戦士達は、第一次世界大戦直後にイギリスとフランスが設定した人為的国境の引き直し作業中なのだ。

ヨーロッパ、ロシアと中国にはイスラム教徒の国民がおり、今多くの人々がワシントンが解き放った暴力が、ヨーロッパ、ロシアや中国の各地に不安定化をもたらすのではないかと心配している。

アメリカの政治的な問題に加えて、米ドルも苦境に陥っている。ドルが破綻せずにいるのは、金融市場を操作し、ワシントンが属国諸国に、自国通貨を印刷し、ドルを購入してドルの価値を維持しろと圧力をかけているおかげだ。ドルを破綻せずにおく為には、世界の多くをインフレ状態にする必要がある。最後に人々が気がついて金になだれ込めば、すべてが中国の思い通りになる。

プーチン大統領顧問のセルゲイ・グラジエフは、米ドルを破壊する反ドル同盟だけしか、ワシントンの侵略を止めることができないと、ロシア大統領に言った。これは長らく私の意見だった。ワシントンが更なる札を印刷して、戦争の資金にすることができる限り、平和はありえない。

中国政府が述べた通り、“世界を非アメリカ化”すべき時期なのだ。

ワシントンが、より人間味のある指導部で置き換えられない限り、地球上の生命に未来はない。

Comments are closed.