危機的な林業に除草剤散布で対応しようとする宮崎県 〜 日本の森林づくりを知り、見直して、次世代が喜ぶ林業を

 宮崎県と言えば、全国に先駆けて「有機農業のまちづくり」宣言をした綾町を思い出します。日本最大の照葉樹林もある宮崎県は食材も自然環境も優れた憧れの地でもあります。その美しい宮崎に驚くようなニュースがありました。重労働の山の手入れを省力化するため、造林地に無人ヘリコプターを飛ばして除草剤を散布するというものです。来年2020年には実用化を目指すともあります。
 宮崎県で山師をされている「林業ボブマーリー」さんが、このニュースの背景にある深刻な問題点を解説しておられました。
 まず、山に農薬を散布することは、これまで宮崎県が培ってきた「無農薬・無化学肥料・有機栽培」の農業を始め、安全な水と自然環境を元にした畜産業、漁業への世界的な評価にダメージになるばかりか、当の林業においても、環境保全の木材に与えられる「国際森林認証」を得ることが不可能になってしまうと訴えておられます。それは宮崎県の一番の魅力であり「唯一の武器」を失うことになる「完全な愚策」だと。
 一方で林業には、私のようなシロウトが思いもよらない問題がありました。林業と聞くと、木を切り出して製品化するイメージがあり、そのような生産部門は機械化もされ、脚光も浴び、職業になりやすいのだそうです。しかし、伐採した後の植林・育林は、いまだに機械化が進んでいない、クワ一本、ほぼ人力で行う大変な重労働が続いているそうです。山の急斜面で一日300〜400本を背負いながらの手植えと聞いただけで目まいがしそうですが、それ以上に過酷なのが暑い時期、数カ月にわたって続く「下草刈り作業」で、精神的にも肉体的にも限界状態を体験するそうです。
その上、伐採と植林・育林とのバランスが極端に崩れた林業は経済的にも労務的にも、また政策的にも行き詰まりに来ています。「とりあえず植えた木」が大問題になるなど、本当に知りませんでした。
若者は辞めていき、高齢化が進み、ますます労働は過酷になる中、無人でヘリコプターでの除草を提案するのは、ある面、苦肉の策と言えるのかもしれません。
けれども、この歪みの中で一番苦労をされている「林業ボブマーリー」さんだからこそ、畑の草とはケタ違いに強靭な雑草を枯らすほどの農薬の怖さを知り、そうまでして残すものは何か、と鋭く問われました。「豊かな材木」のための農薬であって「豊かな森林」のためではないならば林業を辞める、農薬を撒かなくても林業を救う道があるはずと強い思いを語られています。
実情を知らないうちは「農薬散布なんてやめてほしい」で終わりそうですが、それだけでは立ち行かないほど日本の林業は危機的な状況にあるのでした。
 山林へのヘリ除草剤散布に反対し、他の解決方法を考えようという署名も集めておられるようです。
日本の宝のような環境を守りたい一人として、私もweb署名をしてみました。
(まのじ)

注)以下、文中の赤字・太字はシャンティ・フーラによるものです。

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配信元)




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宮崎からオーガニックが無くなる?農薬林業と宮崎の未来
昨年末に宮崎日日新聞でこんな記事が発表され話題になりました。
(中略)
*宮崎日日新聞 2018年11月3日 記事より抜粋
無人ヘリで除草剤散布 県、下刈り省力化へ試験

簡単に説明すると、
宮崎県では林業従事者(山師)が減っています
→ ②木を植えても手入れ(下草刈り作業)する人がいません
→ ③手入れしないと木が育ちません。手入れ不足の山になります。
→ ④きつい労働の林業は人出がどうしても増えません
→ ⑤手入れ不足を解消する為にもう無人ヘリで山に農薬撒いて下草を枯らせます
→ ⑥人手が足りなくても、これで手入れができます。これで解決。

と言う訳なんです。
とりあえず宮崎県が所有する山林で実験して、「大丈夫そうなら2020年(来年)から始めますよ」と。

いやいやいや、これは駄目でしょ!!!!!
(中略)
これは完全に「愚策」です
(中略)

山に農薬を撒いてまでやりたい林業ってなんなのでしょか?
山に農薬を撒いてまで残したい山ってなんなのでしょうか?
(中略)
ここまで読んで下さった方はもうお気づきだと思いますが、これは林業だけの問題ではありません
宮崎県に住む人間全ての人にとっての問題です!

だってそうですよね?皆さんが飲む水は山から流れてくる訳ですから
皆さんが家で使う水の話です。
皆さんが作る野菜に撒く水の話です。
皆さんが家畜の飲ませる水の話です。
皆さんが魚を獲る海に流れる水の話です。
皆さんのお子さん、お孫さんが飲む水の話なんです。

山に農薬を撒かなくても、林業を救う道はある!

(中略)
私は声を上げたい。
1人の山師として、1人の宮崎県に住む人間として、1人の親として。
山林への農薬散布は「NO」!と。

(以下略)

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