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ジョン・ロバート、ピーター・シモンズ
2012年10月9日
先週、ビルマの反対派勢力の指導者アウン・サン・スー・チーは並々ならぬ17日間のアメリカ合州国訪問を終えたが、その間、彼女はアメリカ政界に祝宴でもてなされた。
僅か12カ月前まで、ビルマの将軍連中は除け者で、政治弾圧を糾弾されていた。今やワシントンは、ビルマを芽を出しかけている民主主義として称賛している。
スー・チー熱烈歓迎の背後にあるのは、中国とは距離を置き、欧米と、より緊密な経済的、軍事的つながりを求めるという軍事政権の決定だ。オバマ政権にとって、これは中国の影響力を弱めることを狙う全アジアにおける外交・戦略攻勢における重要な要素だ。
訪問先の至る所で、スー・チーはビルマ“民主主義の偶像”としてもてはやされた。ヒラリー・クリントン米国務長官はスー・チーを“友人”として抱擁し、大物共和党上院議員ジョン・マケインは彼女は“自分にとって個人的な英雄”だと断言した。国際通貨基金のクリスティーヌ・ラガルド理事長は、自分は滅多に気後れすることはないが“今晩アウン・サン・スー・チー氏を紹介するのに気後れしています。”と語った。
スー・チーと彼女の国民民主連盟(NLD)は、軍による経済・政治支配により、権益が損なわれているビルマの資本家階級を代表している。NLDは、
外国、特に欧米の資本向けの低賃金労働基地として、ミヤンマーを開放することを長らく主張してきた。
深化する経済危機に直面し、
ビルマ軍事政権はスー・チーや他のNLDメンバーを軍主導の国会に選出するのを可能にした上辺だけの政治改革を演じながら、現在外国からの投資を奨励している。スー・チーは即座に同調した。
彼女は軍事政権に対する批判者というよりは、その大使として、アメリカを周遊したのだ。USIPで講演した際、彼女は元将軍のテイン・セイン大統領の政治・経済“改革”を称賛し、アメリカによる経済制裁の更なる緩和を呼びかけた。
アメリカの大企業はビルマ国内で開かれつつあるあらゆる機会をとらえ、低賃金労働と原料を利用しようとしたがっている。とはいえ、スー・チーとビルマで起きている変化への熱狂は、アジアにおける中国の影響力に反撃することを軸とする、より広範な戦略的課題に深く関係しているのだ。
1988年の大衆抗議行動とストライキに対する軍の強烈な弾圧と、NLDが勝利した1990年の選挙を破棄した後、
欧米による経済制裁が課されて以来、中国は主要な投資者であり、軍事政権の支持者だった。ビルマは中国にとって原料供給源であり、また代替輸送・インド洋から中国南部への直接パイプライン経路を申し出ていた。
軍事政権がワシントンに向いたため、こうしたことが今では全て怪しくなった。経済関係に加え、何十年にもわたって非難し続けてきた軍事政権との軍事的連携を、アメリカは狙っている。
軍事協力が前向きに検討されている。“これまで論議されている提案には、東南アジア諸国連合ASEANや、アメリカのシンクタンクや軍の学校等のような既存ルートを経由して、統合訓練も含まれている”とフィナンシャル・タイムズは説明している。
アメリカは1960年代や1970年代の昔から、ひそかにビルマ軍との関係を回復しており、そうしつつ、中国軍がビルマの基地を利用するあらゆる可能性を無くしてきた。
専制的な権力を維持し続けている軍事政権に対する、スー・チーによる承認の御印籠は、オバマ政権のひねくれた策略にとって、極めて重要な政治的煙幕になっている。