前川喜平氏の見解から 〜 公安警察出身の杉田官房副長官が105名の身辺調査で6名を絞り込み、菅首相は詳細を見ぬまま任命拒否か

 任命に当たって新会員の推薦名簿を菅首相が「見ていない」と驚愕の発言したことから、さらに混乱を生みました。「見ていない」のが本当であれば日本学術会議法の「推薦に基づいて」に首相が違反し、また首相以外の誰かが6名を除外したことになることから政府も違法行為を行ったことになります。さすがにマズイと思ったのでしょう、加藤官房長官が「詳しくは見ていなかった」と苦しい言い訳をしました。さらに12日、政府関係者により、6名除外の判断には杉田和博官房副長官が関与していたことが明らかになりました。いいぞ、どんどんリークしてほしい。それによると推薦リストから外す6人を選別したのは杉田官房副長官で、菅首相はそれを確認したとあります。その一連の流れを官僚の経験から裏付けられたのが、文科省事務次官だった前川喜平氏でした。13日の野党合同ヒアリングでの要請に応え、前川氏ご自身がかつて杉田官房副長官から差し替えを指示された経験があり、しかもその理由を「こういう政権を批判するような人物を入れてもらっては困る」とはっきり言明された経験を語られました。また、今回の任命拒否に至る推論も非常に説得力がありました。まず杉田官房副長官が105名の推薦会員全ての身辺調査を行い、6名を絞り込む。菅首相はその人選を「詳しく見ずに」拒否するという安倍政権からの強権体質がよく分かるものでした。今回の件は、菅首相が「学問の自由など精神的自由への認識が希薄だった」のか、あるいは寺脇研氏の指摘するように「反発を承知で学問の自由を狙ってきた」のか。これまで表立って批判にさらされることのなかった公安警察出身、官邸ポリスの中心人物・杉田和博官房副長官の存在が大きく取り上げられたことは注目です。
(まのじ)

注)以下、文中の赤字・太字はシャンティ・フーラによるものです。

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配信元)
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菅首相、「6人排除」事前に把握 杉田副長官が判断関与―学術会議問題
引用元)
 日本学術会議が推薦した会員候補105人のうち6人が任命されなかった問題で、菅義偉首相がこの6人の名前と選考から漏れた事実を事前に把握していたことが分かった。除外の判断に杉田和博官房副長官が関与していたことも判明した。関係者が12日、明らかにした。
(中略)
関係者によると、政府の事務方トップである杉田副長官が首相の決裁前に推薦リストから外す6人を選別。報告を受けた首相も名前を確認した。首相は105人の一覧表そのものは見ていないものの、排除に対する「首相の考えは固かった」という。
(以下略)
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菅首相「6人排除」の裏に“官邸ポリス”杉田副長官が暗躍
引用元)
(前略)
元文科官僚で前川氏とも親しい寺脇研氏(京都芸術大客員教授)はこう言う。

今回は、杉田氏に連なる内閣情報調査室や公安などが組織的に動いたとみられます。それこそ、105人のリストの一人一人の著書などを調べ上げ、『〇〇氏は安保法に反対』『××氏は共謀罪法に反対』と評価しているのでしょう。『△△氏は官邸前集会に何回参加した』など、組織力を生かし細かに把握しているとみられます。目的は学問の自由を侵すこと。菅首相は、官僚人事と同じ感覚で『つい手を突っ込んでしまった』わけではないでしょう。官僚や検察、警察支配を進め、いよいよ『最後の砦』である学問に、反発を承知の上で押さえにかかってきた。日本学術会議法に違反する可能性があり、許されない行為です」
(以下略)


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2020年10月13日 「学術会議任命拒否問題 野党合同ヒアリング」
配信元)


【杉田官房副長官による差し替え指示】
事務次官の時代に「文化功労者選考分科会」委員の任命に際して、杉田官房副長官から差し替えを指示されたことがある。この分科会も独自性の強いもので、任務は「文化功労者」「文化勲章受賞者」を選ぶことだ。文科省が具体的な人選を行い、大臣了解のメモを携えて官邸から了解を得る。2016年まで人選にダメと言われることはなかった

ところがこの時は一週間ほどして呼び出され、2名の差し替えを指示された。1人は安保法に反対する学者の会に入っていた人、もう一人はメディアで政権を批判する発言をした人。
こういう政権を批判するような人物を入れては困る」と差し戻され、結果的に人選で2名を差し替えられた

官邸は、それまでも官僚人事や審議会の委員の任命、独立行政法人の人事など閣議にかけられるものにダメ出しを行い、選別が常態化していた。今回の行為はその延長線上にあると言える。

ただ、これまでの他の場合は実質的任命権は政府にあるものだった。当・不当はあっても違法ではない。

しかし今回は日本学術会議法という歴とした法律があって、日本学術会議の推薦に基づいて任命する。
この「基づいて」という法令用語は極めて強い拘束性を表す。基づかない任命は原則許されない
百歩譲って任命しないということが有りうるとすれば、非常に強い説明責任が生じる
(中略)

【杉田副官房長官の仕切りは菅首相の意向】
推薦名簿が届いた時点では、菅総理は官房長官だった。その在任中にすでになんらかの相談があったのではないか。学術会議議事務局からの名簿を受け取って時間をおかずに官邸に相談に行っているはず。その時には菅官房長官だったと思われる。

実際に仕切っているのは杉田官房副長官だが、彼の一存で決めることはできるはずがない。先ほどの分科会の差し替えも、杉田官房副長官が自分の判断で差し替えろと言ったとは思っていない。
菅官房長官まで上げているとしか考えられない

今回の場合も、杉田官房副長官が判断して差し戻したとは考えられない
しかし菅首相も杉田官房副長官も、学術会議の独立性や自律性にどこまで認識があったのかは疑問だ。
いち審議会のように安易に考えていたのではないか。例えば、総合科学技術イノベーション会議、経済財政諮問会議のような。
官僚人事、審議会人事、独立行政法人、日銀、NHK、最高裁裁判官の人事など、これまで官邸の実質的な任命権を発揮することが繰り返し行われてきたので、それと同じ感覚だったのでは。

逆に言えば、学問の自由というものに対する認識が希薄だったと言える

(中略)
【任命拒否のプロセスの推察】(34:26〜)
菅氏が見ていないということは本当か?見ていたと思う。
官房長官の時に見ていた可能性が高い
99人は見ていなくても6人は見ているのでは。検証のしようがないが。
任命の下準備、意思決定のための情報を収集し、意思決定に資する原案を考えるのは杉田官房副長官だが、しかし彼の一存では決定できない。上司である官房長官には必ず上げているはず。

まず、105名の推薦名簿を杉田官房副長官が受け取った。
その上で、杉田氏がその105名について調査を(内調か警察庁かわからないが)指示して、恐らく105名全員について「どういう言動があったか」調べたのではないかと思う。
その中で6人が浮上してきたのではないか。
その6名に決めた1次的な判断は杉田氏の可能性が高い

それを官房長官にあげたのだと思う。自分は総裁選の前と想像するが、105名について全員調べるのはそれ相当の時間がかかるので、総裁選の後だった可能性もある。
決済の前に、総理、官房長官と相談する機会があったはず。
ただ具体的な人物の名前までは菅総理の関心事項ではなかったかもしれない。
「批判的な人間を外す」という一致した考えで、具体的な作業を杉田氏がやったのではないか

動かぬ証拠となるような文書には残っていない可能性が高い。口頭で行われただろう。

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配信元)

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