アニメーションの至宝、ユーリ・ノルシュテイン作品・映画「霧の中のハリネズミ」〜 ロシアとソ連の映画トップ100から

 いつも殺伐とした記事をアップしているので、日曜日は少し息抜きを。
 ロシア・ビヨンドというサイトに「ロシアとソ連の映画トップ100」という特集がありました。ソ連やロシアの映画を観る機会にさほど恵まれていなかったのですが、それでも過去の記憶にある作品があるかしら、どんな作品が人気なのだろうと100位から順に興味深く眺めました。
(まのじ)

注)以下、文中の赤字・太字はシャンティ・フーラによるものです。

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 もう何年も映画を観ることなく過ごし、ましてハリウッドの息のかかっていない作品に触れる機会はなかなかありません。さらにロシア映画ともなるとほぼ皆無に近いのですが、幸いさっそく96位に現れた「不思議惑星キン・ザ・ザ」というSF作品はかつて観たことがありました。とても愉快で恐ろしく、そして美しい感慨を残した作品でした。ネジレ体癖にはたまらない皮肉もたくさんあって、またいつか観たいと思う作品でした。これが96位に登場ということは、上位の作品への期待はいやが上にも高まります





100位の中には、古いロシア文学が映画化されたものがいくつもあり、名作への敬慕の念を感じます。ペレストロイカ時代の世情を感じるもの、私には未だにナゾなアンドレイ・タルコフスキーの作品、黒澤明のロシア語作品、料理が楽しそうなコメディ作品などなどバラエティ溢れるライナップでした。超絶長回しが有名な「エルミタージュ幻想」はどこにもなかったので、あれは西側ウケするものだったのかしら。




 そんな中、6位に輝いていたのは、まのじ的不朽の名作「霧の中のハリネズミ」というアニメーションでした。「アニメーションの神様」とも言われるユーリ・ノルシュテイン1975年の作品です。アニメが大好きなぴょんぴょん先生も以前にソ連時代の作品を取り上げておられて、見入ってしまいましたが、こちらの作品もとても素晴らしいです。ハリネズミのヨージックが親友のこぐまの家に行った時、深い霧の中で道に迷ってしまいます。不安で泣きそうな思いの中、いくつもの神秘的なちょっと怖い存在たちと出会い、やがて不思議な美しい世界に包まれていくヨージックの心情を一緒に体験するような作品でした。素朴なヨージックのつぶやきや動きが切ないほど可愛らしく、ヨージックの中に自分を見つけた時、周りの全ての自然の深遠をも感じられる夢の中のような作品でした




 ユーリ・ノルシュテインの他の作品も記憶にありますが、いずれも何かしら戦争の気配を感じるものでした。ソ連からロシアを通じて、平穏な暖かい時代がかけがえのないものだというユーリの想いが込められているかのようです。殺人や背徳の現実を見つめつつ、なおも高い精神性を求める気質がロシアには確かにある。翻って日本はどうかしら。高い技術とアニメを愛する心を持った人たちが本当に創り出したいものを作れているだろうか。
 
 1941年生まれのユーリ・ノルシュテインは、すでに80歳を超えていますが、なんと30年以上も前からゴーゴリーの「外套」をアニメ化しようと作成中なのだそうです。きっと原作を超えた重層的な作品になるのではと期待します。未だ完成が見えず、待てないファンは仕方なくメイキング作品を上映したらしい。無事にお披露目する日が来ますように


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