注)以下、文中の赤字・太字はシャンティ・フーラによるものです。
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「万引き家族」を巡るニュースやコメント
【話題作】是枝裕和監督『万引き家族』、公開7日間で興収10億円突破https://t.co/Gy7EQjYeRf
— ライブドアニュース (@livedoornews) 2018年6月13日
カンヌ映画際で最高賞パルムドールを受賞した同作。公開7日間での大台突破は今年公開の実写邦画で最速記録だという。 pic.twitter.com/1OSOCnONBV
記事の一つは、日本人がカンヌ映画祭の最高賞を受賞したにもかかわらず、日本政府、いや安倍首相が「おめでとう」の言葉もなく無視している、というものでした。
その後、批判が強まり、遅ればせながら林文科相が祝意を示したいと述べたことに対し、是枝監督が祝意への辞退を表明した記事がありました。
さらに、それがきっかけで「国から補助金を受けて制作したのに、辞退するとは失礼」という、主にネット上での非難が起こりました。このような意見に対して、映画と補助金、日本の文化育成の問題など、元々の作品への感想に加えて、様々な意見が飛び交いました。
一つの作品が、これほど多くの問題提起をしてしまうのも珍しいことでした。
日本政府が無視したかったのは、日本政府の冷たさ
作品自体は、素直に映画を観る喜びがありました。
達者な俳優陣が、言葉以上の思いや背景を伝えてくれます。
ここに描かれた、実際には有り得ない奇跡のような「家族たち」の清らかさは、是枝監督のメッセージそのものでした。日本が失ってしまったものをリアルに、言葉によらず感じさせ、同時に、なぜ、この大切なものを日本は失ってしまったのかを自らに問わざるを得ない、奥行きのある鋭い作品です。
「なぜ失ってしまったのか」の答えは一つではなく、もちろん「安倍政権」は答えの一つに過ぎないのでしょう。
しかし、しかし、安倍政権は、この映画で描かれる日本を無視したかった。
作品の受賞を祝うなど、したくなかった。
それはとりも直さず、国に責任があることを知っていたからでしょう。
正直でよろしい。
たとえかりそめでも、ここに肩を寄せ合った人々の瞳には、真実の光がともっている。
— 映画『万引き家族』公式 (@manbikikazoku) 2018年6月22日
小川洋子(作家)#万引き家族コメント#小川洋子 pic.twitter.com/xvMdtQIIYZ
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カンヌ映画祭で最高賞パルムドールを受賞した日本人是枝監督に対して、不思議なことに日本政府からは「おめでとう」の一言もないという記事、また是枝監督が文化庁から受けていた映画制作の助成金を巡っての記事でした。
これらをどのように取り上げようかと考えていたところ、一連の流れへの回答に繋がる、是枝監督のインタビュー記事を見ました。是枝監督は、これまで作品以外の様々な質問にも真摯に気さくに答えようとされ、誤解を恐れず語りかけてこられます。それらの答えから、あらためて映画に込められた思いが見えてきます。
政治的な思想信条で語る「大きな物語」ではない、小さな子に向けて語るように作る「小さな物語」が映画の多様性、文化の多様性を生み出すのではないか。そして、多様な「小さな物語」を発信することは、どんなに否定しても政治性と無関係ではいられない、そのような恐らく昔の映画監督ならば言わずと持っていた矜持が見えるのです。
メディアはこうした熱い思いを右から左に流すだけでなく、深く豊かに耕しながら擁護し、文化を育てる義務があるのではないかなあと思います。