広島の農業ジーンバンクは、本当にこのまま廃止してしまっていいのでしょうか?広島県さん!

 広島の農業ジーンバンクは、以前からその存続が危ぶまれていましたが、どうやら廃止されることが決定したようです。しかしなぜか検索してみても、廃止決定との報道は見あたりません。よくよく調べてみると、広島県のHPに小さく載ってはいました。2ページ目に「県ジーンバンクは令和5年3月31日をもって廃止する。」と。公式発表もせずに、このような片隅に小さく載せるだけで済まそうというつもりなのでしょうか。少人数だけを集めたという県の説明会に参加してきた方によると、予算の事情で廃止することになったと決定事項の発表があっただけだったそうです。はたして、本当の理由は何でしょうか?
 広島県農業ジーンバンクは、"借りた農家が翌年、栽培の結果の報告に加えて配布を受けた種子と同量以上の種子を返却することを条件に、種子を貸し出す"という画期的なシステムで、"伝統野菜復活を支える重要な基盤として機能してきた"ということです。"農家に直接遺伝資源(種)を還元することができる地域農業の基幹的インフラを、広島県が世界に先駆けて設立した"という世界に誇る機関です。
 このように先々を見据えた、大切な、おもいのある農業ジーンバンクを立ち上げた広島県が、予算がないから(令和3年度で330万円)という通り一遍な理由で廃止を決めたというのは本当なのでしょうか。背景に、遺伝子組み換えやゲノム編集等による登録された種による食の囲い込みを狙うグローバリストの影はないのでしょうか。食を支配しようとしている彼らにとって、管理できない伝統野菜は無くすべきと考えているでしょうから。
 とまれ、こうした食の危機に対して、ジーンバンク廃止に反対する署名運動が立ち上げられました!来年の1月20日までに寄せられた署名を県知事・県議会に提出予定とのことです。広島県が、息を吹き返してくれるといいのですが。
 また、川田龍平議員や鈴木宣弘・東大教授たちのチームが提案している「地域のタネからつくる循環型食料自給(ローカルフード)法」は、グローバリズムが推進する経済的植民地から脱却するための建設的な礎になり得るとおもわれます。命が宿っているのはこちらですから。

※たとえジーンバンクが廃止されてしまったとしても、同様の機関が失われないように、NPOを立ち上げることも視野に入れているそうです。
(しんしん丸)

注)以下、文中の赤字・太字はシャンティ・フーラによるものです。

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広島県主要農作物等種子条例に係る「特定品種」の認定基準等について
引用元)
(前略)
「特定品種」の整理に伴い,県ジーンバンクは令和5年3月 31 日をもって廃止する。
(中略)

事業内容
・地域戦略作物や新品種開発のための育種素材として,植物遺伝資源 (種子)を収集,管理,農業者等への配布を実施
種子の保存点数:18,535点

年間事業費
3,300 千円 [令和3年度決算]

(以下略)

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広島県農業ジーンバンクを守る会は
広島県東広島市にある広島県農業ジーンバンクの存続を望む団体です
(前略)
​ジーンバンクって?

ジーンバンクとは、生物多様性や農業分野などで有用な生物の遺伝子資源を保存するための施設のこと、遺伝子銀行.多くの生物資源を将来のために遺伝子レベルで保存しておくものです
広島県農業ジーンバンクは植物の種子を保存し、生きている種子を後世に継いでいくシードバンク(種子銀行)の一つでもあります。

(中略)

広島県農業ジーンバンクが世界に誇る三つの特色:

第一は広島県という地方自治体の主体性を持った関与
第二は種子の収集に農業 改良普及員 OB が深く関わったこと
第三は集められた種子を県内の農家に無償で貸し出してきていたこと
(中略)

種子条例とジーンバンク:

種苗法の廃止を受けて令和2年7月に広島県には広島県主要作物等種子条例ができました。
第一条には『奨励品種の種子の安定供給及び品質の確保を図り、もって本県農業の生産性の向上、持続的な発展及び食の安全に寄与することを目的とする。』とあります。
広島県固有の作物は広島県での育成が適しています。種子を県外に持ち出すことは第一条の目的に矛盾すると考えます。

第三条には『本県農業の競争力の強化や県民への農作物の安定的な共給を基本とし、主要農作物の品種改良並びに種子の生産、普及及び保存に当たっては、地域の気象、土壌等の生産条件、消費者の需要動向等を十分に考慮するとともに、県民の理解を促しながら、生産者をはじめ、関係者との連携及び相互理解の下に行うものとする』とあります。
ところがJAのオンライン上の新聞に2022年11月10日に鈴木宣弘氏が広島県農業ジーンバンクの存続について寄稿しているように、関係機関であるJAに対しても連携、相互理解がなかったと思われ、農業関係者が多く所属する広島県農業ジーンバンクを守る会も決議後の説明会には参加できましたが、廃止の決定がなされた県ジーンバンク運営に係る検討会には参加が認められませんでした、これは第三条に違反するものと考えます。
現在ジーンバンクを守る会でも、検討会の会議録の開示を求めています。

(以下略)

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【広島県農業ジーンバンク】存続に向けて署名ご協力のお願い!
引用元)
(前略)
国連や世界の研究者が注目し、日本が誇る【広島県農業ジーンバンク】ですが、
2022年11月24日に広島県より 2023年3月末日をもって廃止が決まったとの説明が一方的にありました。
 ※廃止に至った経緯の詳細は明らかになっていません。

これに伴い、県農業ジーンバンクにある約1万9000種の種子の殆どが国の農研機構に譲渡され、これまでの様な活用が困難になります。

ジーンバンクがあることで、当農園でも栽培する【東広島青なす】をはじめ、県内でも青大きゅうり、矢賀ちしゃ、観音ネギ、広かんらんなど、様々な伝統野菜が各地で復活中です。

ジーンバンクがタネを紹介し、無償で貸してくれ、採種や栽培の支援を行う仕組みがあることで、先人から受け継がれてきたタネを今活用することができています。

タネを活用することで、未来にもその多様性含めて引き継ぐことができます。

タネの多様性があることで、広島県の特色ある豊かな農業、そして食文化の多様性につながっています。

人類の叡智でもあるタネ。
この100年で種子の多様性は7割失われたとされています。
日本のスーパーで買える野菜の種子は9割ほどが海外で生産されているとされています。

多様性が無くなるほど、脆弱性が高まります。

タネが無くなれば、ヒトも同じです。
(中略)

【広島県農業ジーンバンク】 の存続、持続的発展に向けて、
ぜひ署名のご協力をいただけましたら幸いです。

 ※2018~2019年頃にも署名活動を行っていますがその時に署名いただいた方は今回はお控えください(二重の署名になるため)。

広島県農業ジーンバンクを守る会
署名サイト
(以下略)


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【鈴木宣弘:食料・農業問題 本質と裏側】ジーンバンクを守れるか
引用元)
(前略)
ジーンバンクの大きな役割
(中略)
 国のジーンバンクも含め一般的には研究者や育種の専門家にしか種子は渡されないが、広島の農業ジーンバンクは、借りた農家が翌年、栽培の結果の報告に加えて配布を受けた種子と同量以上の種子を返却することを条件に、種子を貸し出してきた。2009 年から実施された「広島お宝野菜」プロジェクトでは、青大きゅうり、観音ねぎ、矢賀ちしゃ、川内ほうれんそう、笹木三月子大根などが、県内の農業生産法人等に有望な品種として提供され、地域活性化に繋げられた。
 福山が原産地の青大きゅうりは、福山でも種子の入手がむずかしくなり、栽培者も消滅しかけていたが、ジーンバンクが種子を提供することで、旧世羅町で栽培が復活した。全国的に伝統野菜が人気を集めている。
 広島の農業ジーンバンクは伝統野菜復活を支える重要な基盤として機能してきた。広島県が世界に先駆けて設立した、農家に直接遺伝資源を還元することができる地域農業の基幹的インフラである農業ジーンバンク事業の継続が切に望まれる。
以上が、船越・西川報告から抜粋した要約である。

国民的運動で存続の流れを

 川田龍平議員が提案している「地域のタネからつくる循環型食料自給(ローカルフード)法」は、このような地域の在来の種を守るための財政措置の強化も大きな役割と位置付けている。
 地域で育んできた在来の種を守り、育て、その生産物を活用し、地域の安全・安心な食と食文化の維持と食料の安全保障につなげるために、ジーンバンク、シードバンク、参加型認証システム、直売所、産直、学校給食(公共調達)、レストランなどの種の保存・利用活動を支え、育種家・種採り農家・栽培農家・関連産業・消費者が支え合う仕組みをローカルフード条例として制定し、自治体予算の不足分を国が補完する根拠法として検討されている。
 この法案の早期成立を含め、国民全体でジーンバンクの存続のために、知恵を結集して行動に移す必要があるだろう。

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