ままぴよ日記 113 「時は流れて、いつの間にか夢が実現していた!」

 母が101歳になりました。ほとんど夢の中にいますが、会いに行くと楽しそうに作り歌を歌ってくれます。何歳になっても遊び心を持っていたいなあと母を見て思います。

 私も、娘が帰国してから無我夢中で過ごしてきた1年半でしたが、一方で子どもの遊び場を作りたいという思いが市に届いて一気に実現していきました。
(かんなまま)
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親の立場での話し合い


子ども家庭庁ができて「子どもをまんなかにして社会全体で成長を見守る」と言っていますが、現場の意識はなかなか変わりません。

我が町でも子どもの数が減り学校の統廃合が進んでいます。主体者である子どもの意見はもちろん、保護者抜きの話し合いで学校再編の基本計画が進み、やっと各地域で説明会が開かれました。

そこで出る質問は「学校をどこに作るのか?」「学童保育のお迎えはどうなるのか?」「スクールバスは利用できるか?」と、親の都合ばかりです。

あるママが勇気を出して「どんな学校ができるのか?」と今後の教育内容を聞いて「廃校になった場所を子どものフリースペースにして欲しい」と提案したら、その話し合いの会ではありませんとシャッターを下ろされたそうです。

いったい、いつ子どもの立場での話し合いができるのでしょうか?学校跡地に企業誘致するなどの話も聞こえてきます。

こんな時代だからこそ、「子どもが健やかに育つ権利」「意見を聴かれる権利」「子どもにとって最も良いことを考えてもらう権利」「自由に遊ぶ権利」を尊重していきたいと思います。


子どもからのSOS


まずは、子どもたちを自然の中で遊ばせてあげたい!今の子どもは自由な時間も共に遊ぶ友も、場所も無いのです。

親も、子どもの遊び場はテーマパークや遊園地だと思っている人が多く、安全管理された場所で条件づけて遊ばせています。自然豊かな世界に住みながら窓を閉め切っているようなものです。

そして、家に居ながらいつでも簡単に遊べて、友達とも交流できて、刺激、冒険心が満たされるメディアの仮想空間が子ども達を虜にしています。小学生の1日(平日)のメディア接触時間が1時間以内4・4%、5時間以上35%です(令和4年内閣府調査)。コロナ禍で一気に増えました。

日本体育大学の野井真吾先生は「最近の子どもは、すぐ疲れたという。朝起きられない、夜眠れない、首や肩の凝り、すぐキレる、鬱傾向にある」という調査結果を発表されました。今まで子どもには見られなかった症状です。今どきの子はけしからん!と言われそうですが、これは子どもからのSOSなのです。

育つ環境が自然豊かであればその体験も豊かなものになるでしょう。そして、そこに自然や生き物に対する共生のまなざしがあれば、その後の人生においても大きな影響を与えることでしょう。子どもたちは野山を駆け巡り自然の中でいろいろな体験をし、生き物に出会い、五感を働かせて自分の世界を広げていくのです。

私も自然の中にいれば子どもたちがご機嫌になるのを経験しました。親も楽でした。


追い風が吹いてきた


そんな思いで自然の中で自由に遊べる冒険遊び場づくりを18年間作り続けてきましたが、スタッフだけが年を重ね、参加者はいつまでもお客様状態。市は任意団体がしていることで、個人的な遊びに市の予算はつけられないというスタンスでした。

でも、あきらめなくてよかった!追い風が吹いてきたのです。

2年前、子育て広場を新築移転したとき、課長が置き土産で「子どもの遊び」のための予算をつけてくれたのです。

同時に、あるママが冒険遊び場を作ってほしいと市に直接お願いに行きました。もちろん撃沈して帰ってきました。市は10月までには来年度の事業計画と予算案を出し、審査があり、4月から実行します。市民がいきなり声をあげても対応できないシステムになっています。

思えば、私も何度も撃沈しながら行政の壁に向き合ってきました。

そんな時、教育委員に推薦されました。びっくりしつつも私の意見を言える場を与えられたと思って引き受けました。神聖な気持ちで良心に沿って意見を言おうと心に誓いました。

でも、教育行政の壁はもっと厚かった。学力向上至上主義で、見ているのは子どもたちの姿ではなく、いかに全国共通のカリキュラム通りに、一斉に、同じことを、同じやり方で指導するかが話し合われていました。

増え続ける不登校や先生の離職も学校に戻る支援ばかりが検討されました。

私は子育て経験のあるただの主婦です。教育を子ども主体の立場で見ている私と文科省の教育指導要領に従って指導という立場で見ている教育行政とでは違うものを見ていたのです。

結果が決まっているものに意見を言っても無力でしたが、私には乳幼児期からの育つ環境と生身の子どもの姿が見えていたので揺るぎませんでした。

3期務めて任期満了で辞めて5年たちます。コロナ騒動で子どもの置かれている環境がもっと深刻になっていきました。そして、やっと、その時発言していたことが理解されるようになりました。蒔いた種が芽吹き始めたのです。

教育委員会で私の意見を黙って聴いてくれていた係長クラスの方々が課長、部長に昇進していました。

学校現場もしかりです。生徒の代弁者になり、現場の先生を励ましてきた結果、当時は教諭だった先生が教頭先生や校長先生、教育長になって、何のしがらみもない私に教育のことを本音で話してくださるようになっていました。


子ども課でも子育ての事で何度も審議会に出席して意見を言い、行動してきた事がじわ~っと「この人の意見なら聞こうか」という信用になっていきました。

話を元に戻しますが、子どもの遊び場を作りたくて市に直談判して砕け散ったママを見て、私でよかったら応援したいと思いました。行政といい関係を築けている今の私なら役に立つかもしれないと思ったのです。

子育てを真剣に考え、子どもの代弁者となり、それが行政にも届いて世の中を変えられるという自己有能感を持ってほしかったのです。

ママ達を集め、どんな遊び場が欲しいのか語り合いました。自分たちの意見が行政に届くと思っていなかったママ達です。具体的にどんな遊び場が必要か?行政にしてほしいこと、地域の人に協力してほしいこと、自分たちでできることを整理しました。そして、私も同行して市に話を聞いて欲しいとお願いしました。

逆に市から予算があるので企画書を作ってほしいと頼まれました。

早速、直談判に行ったママを中心にして話し合いました。まずは講師を呼んで座学で子どもの遊びの重要性を学び、公園で火を起こしたり、何もないところでどんな遊びができるのか実践したいと提案しました。そして、今年度だけでなく、毎年予算をつけて欲しいとお願いしました。

フライヤーもママが作り、市の話し合いにも参加しました。講座には子育て中のママ達、学童保育の先生、育休中の学校の先生など子どもに関わる専門家が集まり、行政職員も子育て課と青少年育成課が協力しあって一緒に学びました。


「子どものこんな笑顔、見たことない」


遊びって不思議です。年齢や立場に関係なく、子ども心に火がついて無邪気にしてくれます。ニックネームで呼び合うので、行政職員も心が解放されて一気に仲良しになりました。今では市役所でスーツ姿の職員に会ってもお互いニヤッと笑ってしまいます。

その勢いに乗って毎月、自主的に、冒険遊び場を開催するようになったのです。

ママ達との話し合いはZOOMかSNSです。子どもが寝静まった夜の9時半から始めます。名付けて「パジャマで会議」。子どもと一緒に寝落ちした人も情報を共有します。

そして、市に報告するために毎回写真付きの報告書を作ります。どんな遊びをしたか?よかったこと、危なかったこと、出会った植物・虫・魚、子どもの気持ちや意見も聞きとります。


会を重ねるごとに、1人ではできないと思っていたママ達が仲間になりました。親から離れなかった子ども達も顔なじみになり、子ども達だけで遊ぶようになりました。「毎回参加するのは面倒で続かない」と言っていたママも「子ども同士で遊んでくれるから楽になった」「子どものこんな笑顔、見たことない」と、嬉しそうです。

夢中で遊ぶ姿から子どもの知らなかった面も見えてきました。「意外と逞しい」「意外と優しい」と。ゲームばかりしていた子がゲーム機の存在を忘れて遊びます。火を起こすのも子ども達。昼ご飯はそれぞれに持ってきたものを焼いて分け合って食べます。何だか家族になった気分です。

雨の日も遊びたい子ども達。あきらめきれずに屋根付きの場所を探して遊びます。猛暑の夏は朝の7時から9時まで。森で一緒に朝ご飯を食べるだけでしたが子ども達は大喜び。ママ達も仲良くなってお互いの子どもを見守り、赤ちゃんを抱っこし合うので、赤ちゃん連れのママも増えました。

早朝の公園で朝ごはん

五平餅

落ち葉のおひめさま

同じ色集め
ここには自然との出会いがあり、驚きに満ちてアートが生まれます。
子育ての孤立もありません。いつの間にかパパも合流して遊んでいます。何て素敵な光景でしょう。


ママ達だけの集い


先日、今までの反省会も兼ねてママ達だけで集まりたいという声が上がりました。そういえばママのそばにはいつも子ども達がいます。その日だけはパパに預けてわが家に集まってきました。

何と、夜の8時集合です。子どもを寝かせつけてそっと抜け出してきたママ達。こんな事初めてです。みんな素の自分に戻り、自己紹介をすることにしました。自分のことを話したことがなかったのです。

そして、延々と4時間!自己紹介だけで終わりました。それが新鮮で楽しくて嬉しくて・・・。

私も初めはみんなを支援しようと思って関わっていましたが、こんなおばちゃんでも仲間に入れてくれて、何て幸せ者だろう!と思います。

もしかして、これって、18年間灯し続けてきた想いが実現したってこと?・・・きっとそうです。子どもを真ん中にして家族が、そして社会が動き始めたのです。夢のようです!


Writer

かんなまま様プロフィール

かんなまま

男女女男の4人の子育てを終わり、そのうち3人が海外で暮らしている。孫は9人。
今は夫と愛犬とで静かに暮らしているが週末に孫が遊びに来る+義理母の介護の日々。
仕事は目の前の暮らし全て。でも、いつの間にか専業主婦のキャリアを活かしてベビーマッサージを教えたり、子育て支援をしたり、学校や行政の子育てや教育施策に参画するようになった。

趣味は夫曰く「備蓄とマントラ」(笑)
体癖 2-5
月のヴァータ
年を重ねて人生一巡りを過ぎてしまった。
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