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子ども達の成長には目を見張るものがありました
夏休みが終わり、久しぶりに娘の家に手伝いに行きました。
1年前に死の宣告を受けて闘病中の娘婿。一日一日、家族と共に暮らすことを頑張っています。
でも家の中は明るくにぎやかです。私が娘の家に着いた時も、リビングのソファで5歳になったばかりの孫がお父さんにじゃれついていました。
「お父さんはもうすぐ死ぬかもしれない」と言われたときは「so sad」とお父さんの顔を小さな手で包んで悲しそうな顔をしますが、ケロッと忘れて遊びます。
でも、お父さんが立ち上がろうとすると、手を取ってサポートしてくれるようになりました。「この子がいるから救われる」と娘が言うのもうなずけます。
ここに至るまでの一年間、何もかもが大変でしたが、子ども達の成長には目を見張るものがありました。
4人の個性あふれる子ども達
お姉ちゃんは高校受験生です。習っていない科目がたくさんある中で日本の高校に合格するのは大変です。日本語も小学4年生レベルで止まっていました。歴史、地理、社会に至ってはゼロ。持ち前のノー天気さで楽しそうに学校に行っていましたが、それだけでは通用しません。
宿題のない自由な公立中学校を選んだので、自学が全てです。親に勉強を教えてもらうことも、塾の送り迎えも頼めないことを知っています。
だから、自習室を自由に使える個別指導の塾があるのを見つけて、学校の帰り道に勉強して帰ることにしました。自分で高校のオープンキャンパスに行き、学校の方針や授業を体験して、行きたい学校を選びました。幸い帰国子女枠がありましたので、やる気が出たようです。
6年生のお兄ちゃんは芸術的で、繊細な子です。字も絵も自分のイメージ通り完ぺきに仕上げないと気がすみません。宿題をやるにしても、字がうまく書けないだけで自分に怒り、学校に行かないと言い出します。
でも、読書家(英語)で自分の世界の中で空想して遊び、絵で表現できる子です。日本の学校に慣れてくれるのか?娘が一番心配していた子で、寝る前のおしゃべりと読み聞かせを頼まれました。でも3か月ほどで必要なくなり、私から卒業していきました。
ところが、先日久しぶりに電話がかかってきました。「どうしたの?」と聞いたら「僕、コロナになった。だから5日間部屋から出られない」と言うのです。
お父さんに感染させたらいけないので娘が孫を隔離して、食事だけ部屋に運んでいるようです。私を思い出してくれたのが嬉しくて、できる限り付き合うことにしました。
パソコンの画面をOFFにして声だけのおしゃべりです。体がだるいので寝ながら耳だけで聞いているようでした。「センス オブ ワンダー」(レイチェル・カーソン)、「森はだれがつくったのだろう」(ウイリアム・ジャスパソン文、チャック・エッカート絵、河合雅雄訳)を読んで今まで出会った自然、生き物についておしゃべりをしました。
次にお兄ちゃんが今一番はまっている冒険ファンタジーの「The Land of Stories」(クリス・コルファー)のお話になりました。
読んだことがない私はお兄ちゃんからお話を聞きました。赤ずきんや白雪姫などの有名なおとぎ話の、その後の世界を冒険ファンタジーにした物語のようです。
私は昔、子ども達と日本のおとぎ話のその後を想像しあって遊んでいたことを思い出しました。1人ずつ交代で続きの話を作っていくのですが、思いもかけない展開が広がって笑いころげたものです。
これを孫とやってみようと思いつきました。孫にどんなふうに想像するの?と聞いたらカラーの映像付きで思い描けるというのです。「それってすごいことだよ。電子メディアなしで自分の世界をいつでもどこでも作れるのよ。映画やゲームなども人の想像のパクリだからね」と言いながら、楽しい時間を過ごしました。
お兄ちゃんの体調も日に日に良くなり、また私は失業しました。でも、そのころからお兄ちゃんの中で何かが変化して、自分で選んだ中学校に行きたいと言い出したようです。
アメリカの学校によく似た教育をしているバカロレア教育の学校です。国立なので無料、家から近いのです。
でも、小学1年生レベルの日本語で止まっていて、日本の教科書で社会も、理科も習ったことのないお兄ちゃんにとって、気が遠くなるレベルの試験があるようです。帰国子女枠も無く、英語を話せることがどのくらい評価されるのか未知数です。
受験に有利になればと思って英検2級を受けたらスピーキングで落とされました。本当はスピーキングが一番得意なのですが、対人ではなく機械で質問された内容が微妙で、質問の意味にこだわりすぎて無言で終わったそうです。深読みのお兄ちゃんなのです。
この個性を活かせる学校があったらいいのにと思います。ただ、やる気を出したお兄ちゃんはお姉ちゃんと同じ個別指導の塾に自分で行き、日本の試験に挑戦しようとしています。私は「お兄ちゃんにとって必要なことしか起こらないから合格してもしなくてもOKだよ」と言っています。
小学3年生の弟は、天使です。すべてがゆっくりでポジティブです。侍ジャパンの試合を見ていきなり大谷翔平のファンになりました。野球を習うと言い出して、家で素振りばかりしています。
日曜日にどこにも連れて行ってあげられない娘は、考えた末、自分で行くという条件で学校のグラウンドで練習している少年野球チームに入らせました。試合も出ないでいい緩いチームです。
毎週末、朝から夕方まで練習です。夏休みはほとんど毎日、朝の6時から12時まで練習。炎天下の中を歩いて通います。叱咤激励がとびかい、のんびりの孫は下級生からも馬鹿にされるようです。
それでも、楽しいと言う孫。相変わらず家で素振りをして、買ってもらったグローブを抱いて寝ます。そして次の日も朝早くから歩いていくのです。時々娘に「なぜ、コーチはいつも怒鳴るの?みんなは僕を馬鹿にするの?」と聞くそうです。
野球が好き。楽しい。それだけで行く孫。・・・やめる気配はありません。娘曰くゆっくり確実にうまくなっているそうです。
日本の少年野球やサッカー、バスケット等、あまりにも過酷です。土日は束縛されて、家族で遊びに出かけることもできません。休むとレギュラーから外されます。友人の子は試合中にあくびをしただけでレギュラーから外されていました。成長期に特定の運動をやりすぎると体を壊します。そこまでやるか?と思うのですが、アスリート魂で、もっともっと!とベクトルが向かいます。
そんなアスリート集団の中で、ただ好きなだけで練習している孫。最近は友達もできたらしく、試合にも行くようになりました。ただし、ずっとベンチ。暑い中を一生懸命、本気で友達を応援しているようです。そして「楽しかった」と帰ってきます。
孫には孫の時間が流れていて、人の冗談を「すごい!ほんと?」と感動する感受性も持っています。どうか傷つかないで育ってほしいと思います。
一番下の弟は、6か月の時アメリカに行き4歳で帰国しました。帰国と同時にお父さんの病気がわかったためにお母さんは忙しすぎて構ってあげられなくなりました。
上3人が学校に通い始めてからも幼稚園が決まらなくて独りぼっちで過ごしていました。とうとうiPadがお友達になりました。もちろん時間制限やアプリ制限をしていましたが、暴れればママが手渡してくれるのを覚えました。
スクリーンタイムが長くなり、誰とも遊ばなくなりました。YouTubeでキッズ制限をかけていてもハギーワギーなど闇の世界、暴力的なものが混在しています。それを見つけて娘は大決心しました。
上3人はゲームもテレビも見ないので問題はありませんが、みんなで協力して家族一緒に見るテレビ番組を決め、それ以外は見ないことにしました。iPadは没収。そのかわり時間を作ってお母さんとボードゲームをすることにしました。
ボードゲームは幼児から99歳まで一緒に遊べます。記憶ゲームなどは誰よりも得意で面白くなってきたようです。もともと構ってほしかっただけ。それから一度もiPadに触れることなく、外へ向かう好奇心が出てきました。
毎朝、行き渋っていた幼稚園にも楽しく通うようになり、日本語でお友達に手紙を書きたいと言い出したようです。
子どもの成長は自らの準備ができたら一気に開花します。この1年間、一人ひとりの子ども達の不安、怒り、ストレスがぶつかり合いました。子ども自身ではどうすることもできない問題ばかりで、翻弄される自分の気持ちも言葉にできなかったと思います。
そのおかげで家庭の中も喧嘩が絶えなかったし、幼稚園や学校に行かないと言い出す理由も様々で、毎日毎日、子ども4人分の訴えが娘を襲いました。娘が偉かったと思うのは、物事を客観的に捉えて誰にも当たらなかったし、子どもから目を離さなかったことです。
ただ、目の前にやることが山積して、思わずため息が出ます。娘婿が「そのため息は僕のせいだね」と申し訳なさそうに言ったときに「ため息は出るものです。私にはため息をつく権利があるのよ。気にしないで」と言ったそうです。
元をたどれば誰も悪くない。娘婿の病気も隠さず話していますし、同時進行で今を乗り切っている娘家族です。その中で生きている子ども達は成長とともに理解し、理解とともに成長していきました。
私は親の死を前にして傷ついた孫の気持ちを支えるためにグリーフケアを学びましたが、必要なかったようです。
問題を抱えていたとしても、6人家族の暮らしは今を生きることに満ち溢れています。事件あり、喧嘩あり、笑いありです。娘は子どもが多い分大変ですが、逆に子どもの存在がどれだけ娘を助けてくれているか・・・。今回の滞在で子どもの存在は希望である事を実感しました。
でも、読書家(英語)で自分の世界の中で空想して遊び、絵で表現できる子です。日本の学校に慣れてくれるのか?娘が一番心配していた子で、寝る前のおしゃべりと読み聞かせを頼まれました。でも3か月ほどで必要なくなり、私から卒業していきました。
ところが、先日久しぶりに電話がかかってきました。「どうしたの?」と聞いたら「僕、コロナになった。だから5日間部屋から出られない」と言うのです。
お父さんに感染させたらいけないので娘が孫を隔離して、食事だけ部屋に運んでいるようです。私を思い出してくれたのが嬉しくて、できる限り付き合うことにしました。
パソコンの画面をOFFにして声だけのおしゃべりです。体がだるいので寝ながら耳だけで聞いているようでした。「センス オブ ワンダー」(レイチェル・カーソン)、「森はだれがつくったのだろう」(ウイリアム・ジャスパソン文、チャック・エッカート絵、河合雅雄訳)を読んで今まで出会った自然、生き物についておしゃべりをしました。
次にお兄ちゃんが今一番はまっている冒険ファンタジーの「The Land of Stories」(クリス・コルファー)のお話になりました。
読んだことがない私はお兄ちゃんからお話を聞きました。赤ずきんや白雪姫などの有名なおとぎ話の、その後の世界を冒険ファンタジーにした物語のようです。
私は昔、子ども達と日本のおとぎ話のその後を想像しあって遊んでいたことを思い出しました。1人ずつ交代で続きの話を作っていくのですが、思いもかけない展開が広がって笑いころげたものです。
これを孫とやってみようと思いつきました。孫にどんなふうに想像するの?と聞いたらカラーの映像付きで思い描けるというのです。「それってすごいことだよ。電子メディアなしで自分の世界をいつでもどこでも作れるのよ。映画やゲームなども人の想像のパクリだからね」と言いながら、楽しい時間を過ごしました。
お兄ちゃんの体調も日に日に良くなり、また私は失業しました。でも、そのころからお兄ちゃんの中で何かが変化して、自分で選んだ中学校に行きたいと言い出したようです。
アメリカの学校によく似た教育をしているバカロレア教育の学校です。国立なので無料、家から近いのです。
でも、小学1年生レベルの日本語で止まっていて、日本の教科書で社会も、理科も習ったことのないお兄ちゃんにとって、気が遠くなるレベルの試験があるようです。帰国子女枠も無く、英語を話せることがどのくらい評価されるのか未知数です。
受験に有利になればと思って英検2級を受けたらスピーキングで落とされました。本当はスピーキングが一番得意なのですが、対人ではなく機械で質問された内容が微妙で、質問の意味にこだわりすぎて無言で終わったそうです。深読みのお兄ちゃんなのです。
この個性を活かせる学校があったらいいのにと思います。ただ、やる気を出したお兄ちゃんはお姉ちゃんと同じ個別指導の塾に自分で行き、日本の試験に挑戦しようとしています。私は「お兄ちゃんにとって必要なことしか起こらないから合格してもしなくてもOKだよ」と言っています。
小学3年生の弟は、天使です。すべてがゆっくりでポジティブです。侍ジャパンの試合を見ていきなり大谷翔平のファンになりました。野球を習うと言い出して、家で素振りばかりしています。
日曜日にどこにも連れて行ってあげられない娘は、考えた末、自分で行くという条件で学校のグラウンドで練習している少年野球チームに入らせました。試合も出ないでいい緩いチームです。
毎週末、朝から夕方まで練習です。夏休みはほとんど毎日、朝の6時から12時まで練習。炎天下の中を歩いて通います。叱咤激励がとびかい、のんびりの孫は下級生からも馬鹿にされるようです。
それでも、楽しいと言う孫。相変わらず家で素振りをして、買ってもらったグローブを抱いて寝ます。そして次の日も朝早くから歩いていくのです。時々娘に「なぜ、コーチはいつも怒鳴るの?みんなは僕を馬鹿にするの?」と聞くそうです。
野球が好き。楽しい。それだけで行く孫。・・・やめる気配はありません。娘曰くゆっくり確実にうまくなっているそうです。
日本の少年野球やサッカー、バスケット等、あまりにも過酷です。土日は束縛されて、家族で遊びに出かけることもできません。休むとレギュラーから外されます。友人の子は試合中にあくびをしただけでレギュラーから外されていました。成長期に特定の運動をやりすぎると体を壊します。そこまでやるか?と思うのですが、アスリート魂で、もっともっと!とベクトルが向かいます。
そんなアスリート集団の中で、ただ好きなだけで練習している孫。最近は友達もできたらしく、試合にも行くようになりました。ただし、ずっとベンチ。暑い中を一生懸命、本気で友達を応援しているようです。そして「楽しかった」と帰ってきます。
孫には孫の時間が流れていて、人の冗談を「すごい!ほんと?」と感動する感受性も持っています。どうか傷つかないで育ってほしいと思います。
一番下の弟は、6か月の時アメリカに行き4歳で帰国しました。帰国と同時にお父さんの病気がわかったためにお母さんは忙しすぎて構ってあげられなくなりました。
上3人が学校に通い始めてからも幼稚園が決まらなくて独りぼっちで過ごしていました。とうとうiPadがお友達になりました。もちろん時間制限やアプリ制限をしていましたが、暴れればママが手渡してくれるのを覚えました。
スクリーンタイムが長くなり、誰とも遊ばなくなりました。YouTubeでキッズ制限をかけていてもハギーワギーなど闇の世界、暴力的なものが混在しています。それを見つけて娘は大決心しました。
上3人はゲームもテレビも見ないので問題はありませんが、みんなで協力して家族一緒に見るテレビ番組を決め、それ以外は見ないことにしました。iPadは没収。そのかわり時間を作ってお母さんとボードゲームをすることにしました。
ボードゲームは幼児から99歳まで一緒に遊べます。記憶ゲームなどは誰よりも得意で面白くなってきたようです。もともと構ってほしかっただけ。それから一度もiPadに触れることなく、外へ向かう好奇心が出てきました。
毎朝、行き渋っていた幼稚園にも楽しく通うようになり、日本語でお友達に手紙を書きたいと言い出したようです。
子ども達は成長とともに理解し、理解とともに成長してきました
子どもの成長は自らの準備ができたら一気に開花します。この1年間、一人ひとりの子ども達の不安、怒り、ストレスがぶつかり合いました。子ども自身ではどうすることもできない問題ばかりで、翻弄される自分の気持ちも言葉にできなかったと思います。
そのおかげで家庭の中も喧嘩が絶えなかったし、幼稚園や学校に行かないと言い出す理由も様々で、毎日毎日、子ども4人分の訴えが娘を襲いました。娘が偉かったと思うのは、物事を客観的に捉えて誰にも当たらなかったし、子どもから目を離さなかったことです。
ただ、目の前にやることが山積して、思わずため息が出ます。娘婿が「そのため息は僕のせいだね」と申し訳なさそうに言ったときに「ため息は出るものです。私にはため息をつく権利があるのよ。気にしないで」と言ったそうです。
元をたどれば誰も悪くない。娘婿の病気も隠さず話していますし、同時進行で今を乗り切っている娘家族です。その中で生きている子ども達は成長とともに理解し、理解とともに成長していきました。
私は親の死を前にして傷ついた孫の気持ちを支えるためにグリーフケアを学びましたが、必要なかったようです。
問題を抱えていたとしても、6人家族の暮らしは今を生きることに満ち溢れています。事件あり、喧嘩あり、笑いありです。娘は子どもが多い分大変ですが、逆に子どもの存在がどれだけ娘を助けてくれているか・・・。今回の滞在で子どもの存在は希望である事を実感しました。
帰る時に「ありがとう、さようなら」と心の中で意識するようになりました。いつお別れの時が来てもいいように・・・。
100歳を超えて、うとうとまどろんでいる時間が長くなった母。起こして挨拶すると「よう来たね」と笑い、すぐ寝ます。散歩に行って花を摘んで手渡すと目を開けないで「きれい!」と言う母。目を閉じてどんな花を見ているのでしょう。