ユダヤ問題のポイント(終編) ― 第8話 ― 偽ユダヤの始まり

 ユダヤ問題の根本をたどると、当然ながら古代イスラエル(ユダヤ)民族の始祖ヤコブに突き当たります。ヤコブは“『旧約』の主”から祝福を受けたアブラハムの孫であり、天使との相撲を経てイスラエルと改名します。このヤコブは兄のエサウになりすまして、エサウが受けるはずの長子としての家督権を乗っ取ってイスラエルの祖となったのです。
 長子権を奪われたエサウはヤコブ(イスラエル)に激怒しますが、それでもやがて二人の兄弟は和解。しかし旧約聖書偽典ヨベル書では、最後はヤコブにエサウは殺され、エサウの一族はヤコブの一族の奴隷となっています。『旧約』でも、エサウを祖とするエドム人やアマレク人はユダヤ人の敵対者と描写されています。ヤコブの家庭内でのなりすましと乗っ取り、そのカルマの影響でしょう。
 イスラエル・ユダヤに関連しては、常に「なりすまし」「内部乗っ取り」の問題がついて回るのです。このシリーズの最初期に、ユダヤ問題の本質は「なりすまし」「内部乗っ取り」と指摘した通りです。
 ただし、このユダヤ問題は、ヤコブ以前に問題として現出する基流となるものがありました。これは「ノアの方舟」にまで遡ります。ノアの3名の息子兄弟、セム(黄色人種)、ヤペテ(白人種)、ハム(黒人種)。この中のセムの血統がアブラハムそしてヤコブ(イスラエル)に繫がるのです。よって、本来はイスラエル・ユダヤ民族はセムの血統です。しかし、セムの血統ではないもの、具体的にはハムの4男のカナンがイスラエルを名乗っていくのです。今回は、なぜそうなったか?については置いておき、事実だけ見ていきます。
(seiryuu)
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ユダヤ問題のポイント(終編) ― 第8話 ― 偽ユダヤの始まり

イエスを殺害した一族は?



今年もクリスマス(Xmas)が近づいてきました。陰謀論者と呼ばれるような人々にとって、XmasはXの称号を持つ男ニムロデの誕生祭であることは常識的なものです。無論、世界中ではイエス・キリストの誕生日がXmasとされ、毎年恒例の一大お祭り日になっているのですが…。

クリスマスの起源 // 古代ローマの悪魔崇拝とサタンのキリスト教会

世界民衆に対するカバールによるイエスに関する意図的な、そして長期間に渡る幻想の刷り込みは、内容としては初歩的なものながら極めて大きなものです。これがユダヤ問題に大きく絡んでもいます。

現在でも、米国で多数を占める成人のキリスト教原理主義信仰者が、イエスの処女懐胎をそのまま信じているのには少なからずの驚きがあったのですが、他のイエス関連の刷り込み情報でも、次のようなものが一般常識化しています。

Author:Sailko
[CC BY]
左はシェア・インターナショナル誌 2009年12月号に「ベンジャミン・クレームの師は、この絵がイエス覚者によって現されたことを確認した」として掲載されたイエスの肖像画。
右はコラン・ダミアン「ラザロの復活(1450-1460頃)」に描かれているイエス。詳細はこちら(57分頃〜)を参照。

  • ★ イエス・キリストは白人の長身細面の美男。
  • ★ イエス・キリストは世界人類の救世主。
  • ○ イエス・キリストと呼ばれるナザレのイエス、彼はダヴィデ王の血統を引く血統ユダヤ人です。つまりイエスは人種的にはアラブ人です。色は浅黒く背がまがり短躯、顔も肖像画とは全く異なる容姿でした。
  • ○ キリストとはメシアのギリシャ語読みです。メシアとはごく簡単にはユダヤ王を意味します。イエス存命当時、ユダヤ国家はローマ帝国の属領でした。ユダヤの民はローマ帝国からの解放を導くメシア(ユダヤ王)を待望しており、イエスはメシア(ユダヤ王)を目指したのです。民族長のメシア・ユダヤ王と人類全体などは全く無関係です。
また、更に種々の問題を孕む刷り込み説が次でしょう。
  • ★ユダヤ人がイエス・キリストを殺害した。だからユダヤ人が迫害されるようになった。
  • ○学生時代、この説を聞いて首をかしげたことを思い出します。この説の理屈は、世界の崇敬を集める人物をユダヤ人が殺害したからユダヤ人は迫害されるとのものでしょう。しかしこの理屈はおかしいのです。前述したようにイエスはユダヤ人です。説の理屈上は、そもそも世界から崇敬を集める人物をユダヤ人が輩出しているのですから、たとえユダヤ人がその人物を殺害したところで、ユダヤ人が迫害される理屈は成立しません。事実として世界でユダヤ人が嫌われたのは、ユダヤ人(偽ユダヤ人が多く含まれますが)が、「裏切り・騙し・乗っ取り」と嫌悪される行動をとったから、それが理由になるでしょう。

それに前説が更に問題なのは、そもそもイエスを殺害したのは本当のユダヤ人ではないことです。

誰がイエスを殺害したのか?

重要なヒントがあります。『悪魔に愛された女』にて、主人公のクロチルドが嫁いだ悪魔、龍に変身する獣の霊の男性が、自分がガラリアの男つまりイエスを殺害したと述懐しているのです。この男性がイエスを物理的に殺害したならば、方法はこの男性が当時は人間に転生して殺害実行したか、自分の一族子孫に命じてイエスを殺害したか、いずれかです。

この男性はブラック・ロッジの地獄の太守ですが、法則上この男性が転生するとしても、自分の子孫一族の中に転生しているはずです。いずれにしても、どの一族がイエスを殺害したのか?ということになります。


サンヘドリンの主


パリサイ派とイエスの論争
Wikimedia Commons
[Public Domain]

イエスが忌み嫌い「蛇よ、マムシの裔よ」と罵ったグループがあります。ユダヤ教の宗教権威となっていたパリサイ(ファリサイ)派がそうです。このパリサイ派ですが『an east window』というサイトの2016-10-20記事にユダヤ神学の権威の言葉として次のようにあります。

パリサイ主義はタルムード主義となり、タルムード主義は中世ラビ主義となり、中世ラビ主義は現代ラビ主義となった。

パリサイ派のラビからバビロニア・タルムードが出てきて、そのタルムードに従って、パリサイ派のラビたちは、中世から現代までユダヤ教を展開させたということになるでしょう。タルムードは、ユダヤ教と言うよりはユダヤ教ラビの聖典であり、同時にブラック・ロッジの聖典であることは既に見てきています。ブラック・ロッジ、地獄の太守がパリサイ派のラビにタルムードを降ろしたということになります。

そして、このパリサイ派が現世の物理的意味でイエスを殺害(霊的にはイエスの磔刑の意味は別にあり、これについては「宗教学講座 初級コース 第167回」をご視聴ください。)しているのです。イエスは、最終的にはサンヘドリンで裁かれて磔刑となるのですが、ウィキペディアのサンヘドリンには次のように記述があります。

ローマ帝国支配下のユダヤにおける最高裁判権を持った宗教的・政治的自治組織。71人の長老たちから構成され、一人が議長、一人が副議長、69人が議員であった。メンバーは祭司たち、法学者、ファリサイ派などからなっていた。
(中略)
イエス逮捕はこの最高法院による陰謀であり、最高法院のメンバーがイスカリオテのユダを買収しイエスを捕縛。
(中略)
本来のサンヘドリンは神殿崩壊とともに消滅したが、やがてファリサイ派の指導者たちによって新しいサンヘドリンが作られ...(以下略)

サンヘドリン(最高法院)の様子
Wikimedia Commons [Public Domain]

上の記述から、サンヘドリンは実質的にはパリサイ派が仕切っていて、その上でイエスを捕縛し、磔刑に持っていったことが見えるでしょう。サンヘドリンは表のイルミナティ(ブラック・ロッジ地上部隊)を指す言葉になっていることにも留意すべきです。つまり、地上でのブラック・ロッジの拠点がサンヘドリンであり、サンヘドリンの中心がパリサイ派であったことも窺えるのです。

ユダヤ教の権威でありながらタルムードと一体化し、ブラック・ロッジの地上部隊の中心と見られるこのパリサイ派とは?

カナンの呪い』p.61に答えが出ています。

カナン人の政治的集団としてはパリサイ人、サドカイ人、ゼロテ党、エサイン派、アンシン派、ヘロデ党、律法学者が挙げられる。

パリサイ派とはカナン人であり、カナン人の政治的集団の「いの一番」に挙げられています。そして、他のカナン人の政治的集団メンバーの多くもサンヘドリンのメンバーでしょう。ユダヤ最高法院サンヘドリンを司り、イエスを物理的意味で殺害したのはカナン人です。イエス殺害は本当のユダヤ人ではないのです。



ユダヤに混じり潜る


カナン人はいうまでもなく地獄の太守であったカナンの子孫一族です。カナン人の政治的集団のパリサイ派にタルムードが降ろされたのですが、『カナンの呪い』p.53次の注目すべき記述があります。

カナンは実によこしまな人間だった。子供たちに残したその遺言は悪の教義であり、「(おなじ種族のあいだでのみ)互いを愛しなさい。盗みを愛しなさい。姦淫を愛しなさい。主人を憎みなさい。真実を語ってはなりません」と記されている。注目すべきこの文書「カナンの遺言」は、世界中の神話を探しても、バビロニアの<タルムード>でしか見いだせない。

カナンの子孫一族への遺言・指示がバビロニア・タルムードの原点であるということです。カナンの指示であるタルムードの実践指導者がカナン人の政治的集団のパリサイ派などであり、彼らがユダヤ教の権威・律法学者として、イエスの時代にはユダヤ教を乗っ取っていたことになります。元祖「偽ユダヤ」がカナン人です。

シオニズムやイスラエルに対して抗議する正統派ユダヤ教徒

カナン人は、後にはフェニキア人などともなるのですが、カナンのウィキペディア記事には「カナン人は実際にはイスラエル人と混住し通婚した。」とあります。カナン人は、互いには同族であることを強く認識しながらイスラエル人の中に婚姻などで混じりこみ、イスラエル人を名乗り、なりすましをしていたのです。

このカナン人の子孫一派として、少し横道にそれますが、前述の『カナンの呪い』p.61の続きは以下を示しています。

のちの一派、エサウの子孫エドム人はその後トルコ人と交わりトルコ系エドム人を生み出した。また、ユダヤ人学者アーサー・ケストラーによれば、現在イスラエルを占拠しているハザール人として知られる人々はこの流れを汲むとされる。

イスラエル・ユダヤ民族の始祖ヤコブ(イスラエルに改名)の兄エサウ、エサウは確かにエドム人の祖とされ、彼の3人の妻はいずれも『旧約』でカナン人とされています。エドム人はカナン人の一派となっていたことになります。そしてアーサー・ケストラーによれば、そのトルコ系エドム人からハザール人が出たとのことです。

紀元前9世紀頃の約束の地カナンに現在のイスラエルを重ね合わせたもの
Author:FinnWikiNo [CC BY-SA]

ハザール人の血統についての事実確認はできませんが、種々のことを勘案していけば、ユダヤ教に改宗することでユダヤ人を名乗ったハザール人のユダヤ教とは、カナン人のユダヤ教、つまりタルムード・ユダヤ教と見ると種々の辻褄が合います。

タルムードと一体化したパリサイ派がユダヤ教の権威となり、ユダヤ教の多数派になってもいたので、ハザール人がタルムード・ユダヤ教に改宗したとしても何らの不思議はありません。もともとハザール人の文化・行動・宗教とタルムードが親和的であったとも思えます。アーサー・ケストラーの言うようにカナン人がハザール人になった可能性もあります。


Writer

seiryuu様プロフィール

seiryuu

・兵庫県出身在住
・いちおう浄土真宗の住職
・体癖はたぶん7-2。(自分の体癖判定が最も難しかった。)
・基本、暇人。(したくないことはしない。)
・特徴、酒飲み。アルコールには強い。
・歯が32本全て生えそろっている(親不知全て)原始人並み。

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