中国が「ジャオユイダオ」と呼び、領有権を主張している尖閣諸島を巡る情勢が、緊迫化している。中国の船舶は周辺海域へ航行を続け、航空機は尖閣諸島領空への接近を続けている。日本は、戦闘機を緊急発進させたほか、尖閣諸島を防衛するために特別部隊を創設する。中国の有力紙「環球時報」は、「ジャオユイダオ」周辺における日本の自衛隊と中国軍との軍事衝突の可能性を除外していない。
台湾は最近、尖閣諸島を巡る両国の緊張緩和について提案した。これについて
台湾の在モスクワ代表部アントニオ・チェン部長は、VORのインタービューに対し、
尖閣諸島(ジャオユイダオ)に関する台湾の立場は、中国とは異なっていると指摘し、次のように語っている。
「ジャオユイダオとその周辺海域は、台湾古来のものであるが、領有権は中国にあり、これについては、いかなる疑いもない。これは、歴史的および地理的事実、そして国際法によって証明されている。ジャオユイダオの領有権に関する台湾と中国の立場は、本質的に似ている。だがご存知のように、台湾は中国と一緒に領有権を主張することができない。また、領有権の主張にあたり、中国が考慮していない重要な要素もある。
日清戦争で、清朝が敗北したあと、清朝に属していた台湾とそれに付属するジャオユイダオを含む島々は、1895年の下関条約に従って日本に譲渡された。これは、日本がジャオユイダオの領有権を主張できる唯一の法的根拠だ。第二次世界大戦後の1952年、台北市で、中華民国と日本によって平和条約が締結された。この条約の第4条では、日本が台湾とジャオユイダオを含む隣接する島を中華民国に返還することが述べられている。
なお、これにより下関条約の効力は停止されている。
中華民国と中国は、互いに認め合っていないため、1972年に日本と中国の間で国交が正常化された際、中国は日本に対して、この平和条約を無効にするよう求めた。中国は、自国の領有権を主張する際に、この重要な要素を考慮していない。
なお台湾と中国の立場は異なっている。台湾は、東アジア地域の繁栄と安定を維持する目的において、領有権問題に関する論争をやめ、ジャオユイダオ周辺の天然資源をすべての国が共同で使用し、各国の平和的関係を維持するよう呼びかけている。これが、馬英九大統領が提案した『東シナ海平和イニシアチブ』の本質だ。」
中国は、天然資源の共同開発に関する対話を開始する条件として、尖閣諸島を巡る領有権問題の存在を認めるよう日本側に求めている。だが日本政府は、問題の存在を認めていない。この袋小路から、どのように抜け出せばよいのだろうか?
チェン部長は、次のように語っている。
「私たちは、日本政府が問題の存在を認めていないことを非常に残念に思っている。世界の多くの国は、この問題が存在しており、地域の平和的状況や経済発展にとって深刻な障害となる恐れがあると考えている。全ての関係国が問題の存在を認めないうちは、問題を解決することは不可能だ。
『東シナ海平和イニシアチブ』は、領有権を主張する一方で、論争を止めて、
平和的で互恵的な条件のもと、資源を共同開発することを提案している。領有権の分割が不可能ならば、資源を分割できる可能性がある。そのため関係する全ての国に、理性的で落ち着いた対話を呼びかけている。世界の多くの国や学術界の代表者たちが、この提案を高く評価した。」
チェン部長は、台湾が、日本にこの提案を検討させることができたならば、領有権問題を巡る緊張を緩和させることが可能だと指摘した。