今ヨーロッパでは、グローバリズムへの対抗手段として、地域に根付いた自治的な市民主体の政治「ミュニシパリズム」が始まっています!

 はじめて聞く言葉でしたが、今ヨーロッパでは、地域に根付いた自治的な民主主義としての政治「ミュニシパリズム」が始まっているとのことです。
 ヨーロッパにおいては、数十年続く新自由主義の下で、多くのEU各国の中央政府は多国籍企業のために便宜を計り、国民の貧富の差はどんどんと広がっています。こうした1%が支配するグローバリズムの実態に気づきはじめた人々の怒りは、イエローベスト運動として反グローバリズムの動きへとつながっているわけです。こうした状況の中でミュニシパリズム(municipalism)という革新的な市民主体の政治が、搾取する政治から脱するための具体的な希望として急成長しているというのです。
 中でもフランスのグルノーブル市の取り組みは興味深いものです。学校給食にて地元産の100%有機食材使用を目指す市は、地元の農家と食材提供の契約をしようと思いましたが、地元の有機農産物を優先的に購入するのは差別的だということで、画一的な給食サービスを提供する多国籍企業も入札させなくてはいけないことになったのです。これに対しグルノーブル市は「小学校の生徒が学習の一環で給食の食材がどこからくるのか勉強するために農場を訪問するので、地域内のサプライヤーでなくてはならない」との創造的な解決策を見出したというのです。(こうした動きは韓国でもありますし、日本でも稲葉光圀さんにより千葉のいすみ市で実現されています。ぜひ広まってほしいものです)
なおEU各国の各市における具体的実例はぜひ引用元をお読みください。
 オランダ、アムステルダムを拠点に、公営水道サービスの民主化のための政策研究などをされていて、水道の再公営化のドキュメンタリー映画「最後の一滴まで~ヨーロッパの隠された水戦争」の日本語版監修をされた岸本聡子さんからのレポートです。

 日本においても、新自由主義という名の下に様々な悪法が国会でのまともな議論もないままに成立していて、「デモクラシーは死んだ」かのごとくです。
 しかしこうしたEUにおける、反グローバリズムの市民運動は、何周も遅れている?日本においてもヒントになることが多々あるとおもわれます。1%のための政治ではなく、地域に根付いた自治的な市民主体の政治が問われているわけですから。「辺野古米軍基地建設のための埋立ての賛否を問う沖縄県民投票」や「築地市場移転問題」、「種子法廃止の問題」、「水道法改正の問題」等々は、日本が市民主体の政治へ向かうための、それぞれが重要な一歩になっているといえます。春の地方統一選挙、夏の参議院選挙に向けて。まだまだとはいえ。
(しんしん丸)

注)以下、文中の赤字・太字はシャンティ・フーラによるものです。

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第1回:ミュニシパリズムとヨーロッパ  その1(岸本聡子)
引用元)
 いま、ヨーロッパでは、バルセロナ(スペイン)、ナポリ(イタリア)、グルノーブル(フランス)などの革新的な勢力が市政につく自治体が「ミュニシパリズム」(municipalism)という言葉を掲げてつながりを強めている。
 近年の極右の台頭、新自由主義による格差の拡大、既存の左派政党の転落、気候変動といった複数の危機において、この聞き慣れない言葉が確かな希望として急成長している。(中略)

 ミュニシパリズムは、緊縮財政、若年層の失業、政治の腐敗、違法な債務に対して市民が立ち上がる機運の強いスペインで特に力強くネットワークしている。
...(中略)国家主義や権威主義をかざす中央政府によって、人権、公共財、民主主義が脅かされるつつある今日、ミュニシパリズムは地域で住民が直接参加して合理的な未来を検討する実践によって、自由や市民権を公的空間に拡大しようとする運動だといえる。

...(中略)ミュニシパリズムは普通の人が地域政治に参画することで市民として力を取り戻すことを求め、時にトップダウンの議会制民主主義に挑戦する。政治家には、地域の集会の合意を下から上にあげていく役割を100%の透明性をもって行うことを求める。

 私は、ヨーロッパでの「進歩的な」政治運動を称賛したいのではない。EUというプロジェクトが国際競争を最大化する新自由主義で統合された結果、ヨーロッパ域内は日本では想像を超えるくらい市場開放が進み、行くところまで行ってしまったのだ。そしてその影響は労働者や若者に深く広く浸透している。
EUという組織の構造的な非民主性はいかんともしがたい中で、戦略的な対抗手段としてミュニシパリズムが成長しているのである。(以下略)
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配信元)
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第2回:ミュニシパリズムとヨーロッパ  その2(岸本聡子)
引用元)

日本でも芽生える地域主権


 日本では、2018年に安倍政権によって、種子法が廃止された。...(中略) これに対し、2018年12月、岐阜県議会が「種子条例」を制定すると報じられた。岐阜県は種子の安定供給に国に代わって県が責任を持ち市場任せにしないことを明確にしたことになる。埼玉県・新潟県・兵庫県・山形県も...(中略)種子の安定供給を促す条例をすでに制定し、長野県では、2019年6月に条例制定の予定だという。

 また、12月には多くの懸念を残しながら、コンセッションを含む改正水道法が成立した。これに対して...(中略)新潟県がコンセッション方式の導入は水道法の目的である公共の福祉を脅かす事態となりかねないとはっきりと決議で述べ...(中略)住民の権利に言及したことはすばらしい。

 このような地域主権、地域自治の表明は、民主的な議会での議論や地方自治をないがしろにし続ける強権的な中央政府を持つ国では特に重要である。(中略)

自治体のリーダーシップをEU議会へ


 さて、2019年は日本もヨーロッパも選挙イヤーとなる。(中略) バルセロナ・コモンズはEU議会議員選挙に向けたミュニシパリストビジョンの原則を発表した。地域主権の視点をヨーロッパ政治に反映させるもので、...(中略)多国籍企業の脱税を許さないなど20の原則を定めている。(中略)
 ミュニシパリストビジョンはバルセロナを超えて、多くの自治体のリーダーシップをEU議会に送ろうとする共同のプロジェクトとして発案された。(中略)

 「強権的で新自由主義が長年独占的なEUの民主的な改革を目指すか、改革不可能なEUを解体するべきかで左派は分裂してきました。しかしこの終わらない上から目線の議論を続けるよりも、EUをミュニシパリストビジョンの原則で運営したらどうなるかという具体的な議論にシフトしていきたい

 ヨーロッパ議会議員選挙では、ミュニシパリストビジョンを掲げる候補者を多くの国から立てられるか、どこまでミュニシパリストの政策をEU選挙の政策議論のテーブルにあげられるか...(中略) が注目される。
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配信元)

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