竹下雅敏氏からの情報です。
注)以下、文中の赤字・太字はシャンティ・フーラによるものです。
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大西つねき氏(れいわ新選組)の演説を文字で読む 現代社会が抱える金融システムの不条理
転載元)
長周新聞 19/7/12
(前略)
冒頭にいった「日本は世界一のお金持ち国」であるという事実はあまり知られていない。だがこれは紛れもない事実だ。主要国の対外純資産【表参照】を調べると、日本はプラスの341兆円で1位。ドイツが2位、中国が3位。
(中略)
黒字341兆円は、実際には3兆㌦の外貨で円ではない。国際決済はドルでやってきた。原油もドルで買うし、輸出の代金もドルで受けとる。だから黒字もドルで貯まる。(中略)… では、なぜ世界一の黒字を稼いでいるのにみなさんにその実感がないのか。それはこの稼いだ3兆㌦がみなさんのために使われないからだ。この黒字は使わなければただの紙切れだから当然投資する。ドルならドルを使うアメリカに投資する。(中略)… 黒字が増え続けたとしても海外投資になるため日本のみなさんは受けとれない。だからまったく実感がない。
(中略)
それどころか、この30年間みなさんはとんでもない働き方をさせられてきた。1971年から2016年までの為替レート【グラフ参照】を見るとそれがよくわかる。1971年には1㌦=360円だった。これが今は110円くらいになっている。円の価値が3倍になり、ドルが3分の1に下がっている。その契機が1985年のプラザ合意だ。
(中略)
プラザ合意前夜に1㌦=230円だった為替レートが、2年以内で一気に1㌦=120円にまで真っ逆さまに落ちた。ほぼ半額のドル安、2倍の円高だ。(中略)… 日本の輸出企業にはたいへんな事態で、今まで200円のコストで作っていたものが1㌦で売れていたのに、2㌦で売らなければならない。海外からすればまったく同じ製品が値段が2倍になるため、日本製品は高すぎて買えないということになる。逆に、海外からの輸入では2㌦(200円)していたものが1㌦(100円)で買えるようになる。輸出がしにくく輸入がしやすいので赤字になる可能性がある。つまりアメリカに「日本の貿易収支を赤字にしろ」と要求されたのがプラザ合意だった。
(中略)
日本の経済構造は輸出企業が中心だ。彼らはコストカットを始めた。(中略)… 今まで200円でつくっていたものを100円のコストでつくれば、これまで通り1㌦で売れるという話だ。(中略)… だが、コストとは、そのまま誰かの売上であり給料だ。それを30年もずっと削り続けて3兆㌦も稼いだわけだ。半分のコストでつくるといっても人間が2倍の速度で働けるわけもなく、要するにコストカットの名の下に、みなさんが受けとるべき給料や代金がちゃんと支払われなかったということだ。
(中略)
いかにみなさんが受けとるべき給料が受けとれていなかったかは、もっと大きなデータを俯瞰して見ると一目瞭然だ。
お金の量は5倍に増えたのに給料は削減
ここに1980年から2018年までの4つのデータ【グラフ参照】がある。すべて日銀からとってきたデータだ。4本の線のうち、マネーストックM2というのは、日本中の現金・預貯金(ゆうちょ銀行や農協に預けたお金を除く)をすべて足した額だ。つまり、日本には今お金がいくらあるのかという数値だ。
(中略)
私が就職した1986年のマネーストックは340兆円だった。このとき私が会社から受けとった初任給は20万円だった。そして、私の息子が就職した2017年のマネーストックは990兆円。息子の初任給はまったく同じ20万円だった。31年たってお金が3倍に増えているにもかかわらず、大学生の初任給は変わっていない。(中略)… 600兆円のお金が増えながら、この30年間ほとんど給料は上がっていないという話だ。ではその600兆円はどこにいったのか? みなさん薄々気づいているだろう。日本の大企業の内部留保は600兆円とか、500兆円といわれる。
(中略)
この30年で日本の企業というのは給料を払うのをやめたということだ。(中略)… 小泉・竹中改革あたりから政財界は「会社は株主のもの」という明確な答えを出した。利益を上げるのがよい経営者で、利益を上げないものはクビになる。ひたすら株主のために利益を上げ続けるし、そのために従業員の給料はひたすら削り続ける。(中略)… そういう仕組みの中で、法人税を下げたり、株式売買益に対する課税が極端に低かったりする。すべて一部の株主のためだとしか思えないような国家経営をずっとやっている。
(中略)
彼らには、国家経営という概念すらない。強いていえば、「GDPを上げる」「株価を上げる」という浅はかな答えが返ってくるだろう。(中略)… 経済成長の目安にされているGDP(国民総生産)とは、1年間にどれだけのお金が動いたかというだけの指標だ。今までお金の交換でなかったものをお金の交換にすれば上がる。例えば、子育てを保育サービスにするとGDPが上がる。母親が保育料を稼ぐために外に働きに出るとGDPが上がる。それで時間がなくなったから、自分でつくっていたご飯を外で買ってくるようになればGDPが上がる。
(中略)
GDPとは、消費+政府支出+投資+純輸出だ。純輸出とは、輸出から輸入を引いた差であり、黒字になればプラスで、赤字になればマイナスだ。日本の戦後復興はこの純輸出をプラスにするところからはじまった。(中略)… 戦後復興はそれでよかったが、1985年のプラザ合意でアメリカから円高にされても基本的にやっていることは変わらない。そして、純輸出を上げるためにみなさんの給料を削った。それで売って稼いだ3兆㌦の黒字は海外に貸しっぱなしで、みなさんの幸せは置いてけぼりになっている。
(中略)
TPP(環太平洋経済連携協定)でも「これで日本の輸出が伸びる」という。そんなことをやってもみなさん幸せになれないことは30年間で証明されているにもかかわらず、いまだにそんなことを言っている。それに対して新しい提言をすべき野党が同じかそれ以下のレベルだからずっとこれが続いている。
(中略)
黒字を稼いでも使わなければ意味がない。(中略)… 政府が国家経営を誤ったために支払われなかった30兆㌦を「黒字還付金」として国民に配る。1人100万円を1億3000万人に配っても130兆円。タダ働き分の3分の1に過ぎない。
(中略)
借金でお金をつくってきた現代の経済システム
もう一つは、財政金融の考え方を根本的に間違え続けてきた。政府の借金が大変だから税金でそれを返し続けなければならないとか、プライマリーバランス(基礎的財政収支)の達成、つまり税収の範囲内で支出を抑えなければならないという発想だ。
(中略)
実は政府の借金とは、政府の無駄遣いのせいでも、税収が足りないせいでもない。もっと根本的な原因はいまのお金の発行の仕組みにある。(中略)… 「お金の発行の仕組み」とはなにか。日銀券だから日銀が発行していると思っているだろうが、それではつじつまが合わない。お金がどれだけあるのかは、さきほど見たとおり1980年に200兆円だったものが現在1000兆円を超えている。(中略)… では、どうやって800兆円も増えたのだろうか。(中略)… 1000兆円あるうち100兆円しか紙幣がないということは、ほとんどが預金でしかないということだ。
(中略)
現代のお金の増やし方=信用創造の仕組みを説明する。
例えば、Aさんが100万円をA銀行に預けに行ったとする。するとA銀行は金庫に入れ、運用もする。銀行には預金準備制度というのがあり、預かった預金のごく一部を日銀に預けなければいけない仕組みになっている。仮に預金準備率が1%とすると、100万円の預金を預かったA銀行は100万円の1%(1万円)を日銀に預けて、残りの99万円を貸すことができる。私がA銀行にお金を借りに行くと、銀行は必ず口座を持たせる。なぜかといえば私が99万円を借りると私の預金通帳に99万円と書き込むだけだからだ。これで私は自分が99万円を持っていると思う。Aさんも口座に100万円持っていると思っている。その時点でお金は199万円に増えている。ただ私は借金だからあまり自分のお金とは思えない。
だが私がB銀行の誰かに99万円を送金してしまえば、それを受けとった誰かはその99万円を純粋に売上か給料かわからないが自分の預金として認識する。これがもともと私の借金であるかなど知らないし、気にもしない。晴れてめでたく、Aさんの100万円の預金は99万円の預金とあわせて、もともと100万円だったお金が199万円に増えることになる。新たに99万円を預かったB銀行は、そのうち1%の9900円を日銀に預け、98万100円をまた誰かに貸すことができる。また同じことが起きる。これをC銀行の誰かに送金すれば、その誰かは98万100円を純粋に自分の預金と認識し、これを預かったC銀行はまた1%(9801円)を日銀に預けて、残りの97万299円を誰かに貸すことができる。もうこの時点で、私の99万円を受けとった人は99万円を持っているし、これを借りて送金した相手は99万100円を持っていることになる。もともとお金を預けたAさんはお金を1円も動かしていない。預金通帳に100万円と書かれたまま。だがお金は300万円に増えている。
これをぐるぐるとやっているうちに、貸せる金額は1%ずつ減っていくが、100万円の元預金÷預金準備率1%=1億円までお金を作り出すことができる。これが信用創造という現代のお金の発行の仕組みだ。
(中略)
実際に存在しているのではなく、銀行が誰かに借金を貸すことによって作り出した数字が電子的に回ってきて、それをみんながお金と認識し、自分のものだと思っている。みんなが一斉に銀行にお札を取りに行っても金庫にお金があるわけではない。
拡大し続ける巨大なイス取りゲーム
「借金でお金を作る」――この仕組みが意味することは、借金を返すとお金が消えるということだ。最初に私が99万円借りたときには、99万円のお金を作り出し、それを使うこともできる。だが私が返せないかもしれない…と弱気になってすぐ返したとする。返した途端に相殺してお金も消える。仮になんとか借り切ってなにかに使ったとすると、私の手元に残るのは99万円の借金だけだ。もし1年ローンだとすると、1年以内に99万円を世の中から集めてこなければ私はたいへんなことになる。だから1年後に99万円を集めて借金を返すと、同時に世の中から99万円のお金を消して自分の借金を相殺して消すことになる。
(中略)
これが意味するものは、現代のお金はほとんどが借金で生まれているということだ。だからみんなが借金を返してしまえばお金が消える。(中略)… しかも問題は、元本分だけ返すのではなく利息が付く。私も99万円返せばいいのではなく5%の利息なら104万円返さないといけない。借金によって元本分しかお金は生まれていないのにそれ以上のお金を集めようとする。それで何が起きるかといえば、お金が足りなくなる。発行されていないのだから--。
(中略)
例えばこの部屋に100人いたとして、1人100万円ずつ銀行からお金を借りて経済を回すとする。それぞれの銀行口座に100万円と記入されてスタートだ。みなさんがマッサージでも占いでもそれぞれサービスを交換し、お金を払ったり、貰ったりして経済を回す。1年後に100万円ずつ借金を返さないといけない。返してしまえばお金は消える。ここに5%の利息が付けば、みんなが1年後までに105万円ずつ集めようとするとお金が足りない。100万円×100人=1億円のお金しか回っていないのに、利息を含めて1人が105万円買えそうとすると500万円足りず、必ず誰かが破たんする。いまの金融システムは巨大なイス取りゲームなのだ。
みんなが破たんせずに105万円を返済するには、あと500万円が余分に必要だ。そのためには誰かが借金をする必要がある。ここにもう5人いて100万円×5人=500万円の新たな借金が生まれ、それがみなさんのところにいけばめでたく利息も返済できる。だがそのときはお金が消えている状態で、この5人の手元には500万円の借金しか残らない。この人たちが返すためにさらに5人が必要になる。そして、もともとの1億円のお金があった状態に戻すためにはもう一部屋必要になる。100万円お金を借りる100人だ。つまり、どんどん部屋が大きくなって増えていかなければ回らない。
人口が増え続け、借りる人も増え続け、その人たちが必要とする価値(いろんなサービスや製品)が増え続け、作れば売れ続けるような高度成長期のような状態が続けばいいが、そう長くは続かない。経済成長は必ず止まる。借金でお金を増やし続けなければいけない経済も必ず立ちゆかなくなる。
「政府の借金=お金の発行」 という仕組み
では、実際どうなったのかを先ほどのグラフで見てみたい。日本の現金・預貯金の総額である①マネーストックが200兆から1000兆円へと5倍に増えている。(中略)… 当初は、青い線の③民間銀行貸出が並行に走っており、借金がお金を作っていたことがわかる。
ところがあるときを境にこの2つの線が乖離していく。④GDPが増えなくなり、すっかり横ばいになる。そうすると銀行は誰に貸し続けるのか。1億3000万人しかいないのに同じ人たちに対して永遠にお金と借金を増やす続けることなどできない。
(中略)
だが、①マネーストックはまっすぐ増えている。では、誰が借金をしているのか。答えは赤い線②国債残高だ。民間銀行がマネーストックを支えきれなくなってから急激に日本の国債残高が上がり、いまや並行して上がっている。つまり、政府が借金をしてお金を発行し続けたということだ。
(中略)
いまや1000兆円のみなさんのお金に対して政府の借金は900兆円だ。この900兆円を返すために900兆円の税金を集めれば、みなさんの預貯金はほとんどなくなる。政府が借金でお金を作っているのだから、政府が返済すればマネーストックも道連れにして下まで下がっていく。だから政府の借金がたいへんだから税金を上げなければいけないとか、消費税を上げなければいけないというのは全部大ウソだ。まったくあり得ない世迷い言でしかない。プライマリーバランスも同じだ。でもそれを政府もマスコミも言い続けている。
(中略)
民間の信用創造、民間の借金によるお金の発行は必ず頭打ちになる。地球は一個しかないのだから、経済成長は必ず止まる。お金と借金を増やし続けるようなことが続くはずがない。この金融システムを維持するために誰かが借金をし続け、お金を発行し続けなければ立ちゆかない。
(中略)
なにが根本的な問題なのか。それは、借金でお金を発行する仕組みそのものだ。このまま借金を続けることは大きな問題があり、政府の国債のもとに年間9兆円もの利息を発生させている。利息とはお金を持っている人がお金を増やす仕組みだ。(中略)… 30年間で300兆円以上の利息が発生している。つまりそれだけお金を持っていない人からお金持ちに所得が移転されているという話だ。なぜお金という公共のもの(それがなければ経済が回せないもの)をつくるのに利息が発生し、その利息が富める者を富ませ、貧しい者から奪い続けるのか。こんなものは社会にとって意味がない。
政府通貨という発想
唯一の解決策は、誰の借金でもないお金を政府が責任をもって発行することだ。(中略)… 私が考える政府通貨とは、1兆円紙幣でいい。この1兆円×130枚を日銀に預けるとする。それを日銀は金庫に入れて、政府の預金口座に130兆円と数字を書き込む。あとはそれを普通にみなさんに送金すればいい。1人100万円ずつ。みなさんの預金口座50万円だったものが150万円になる。それを使うときにはいままで通りに送金したり、1万円札で引き出せばいい。
(中略)
政府の借金を消すときも、政府が1兆円紙幣を900枚作ればいい。それを日銀に預けて金庫に入れると、政府預金口座に900兆円と書き込まれるだけだ。あとは、それをお金を貸してくれる人に返せばいいが、政府の借金はほぼ銀行がまかなっている。銀行が国債を山ほど持っていた。「持っていた」と過去形にしたのはアベノミクスの異次元金融緩和で、日銀が銀行から山ほど国債を買ってしまっている。半分以上の500兆円ほど買ってしまっている。それでなにが起きたかといえば、なにも起きていない。インフレにもなっていないし、金融的になにも起きていない。それなら全部買ってしまえばいい。
それで何が起きるかといえば、日銀の金庫の中に900兆円の国債が入っている。これは政府に貸している分だ。日銀の政府預金口座に900兆円があり、政府から借りた900兆円の国債と政府から預かった900兆円が同じ日銀の中に両方あるという状態になる。相殺して消してしまえばいい。これは消したところでみなさんなにも感じない。おそらく蝶が羽ばたいたくらいの感覚しかない。
だが、このバタフライイフェクトは必ず大きな変化を起こす。なぜかといえば年間9兆円発生していた利息が消滅する。この30年で300兆円もの所得を移転してきた巨大な格差拡大マシーンが止まる。誰が一番困るかと言えば、それでもうけ続けてきた銀行だ。銀行はこの仕組みによって、いままで900兆円、半分買われて400兆、500兆円という利息を得てきた。
(中略)
無税国家にすることも可能だ。政府通貨でお金をつくって全部の政府支出を賄えばいい。税金をゼロにするとみなさんが余計にお金を手にして余裕が生まれ、働く時間を減らし、そのお金と時間を使って休んだり、より文化的な生活が送れる。すると消費が増え、輸入が増える。赤字になるかもしれないが、もしそれで大した赤字にならなかったら、そのまま無税国家ができる。日本は世界一の黒字国だから赤字にしていい国なのだ。
(中略)
みんなが2000万円を目指して貯金などはじめると大変なことになる。これではお金が動かず、人が動かなくなる。(中略)… 例えば、これから介護産業にものすごい人数が必要になる。この産業を大きくする必要がある。そこにはたくさんの仕事がある。若者たちに行ってほしくても、お金がなく十分な給料がもらえないからみんな行かない。そこにお金を作って投入すれば、そこで働く人が増えて、実際にそこで人が動き始め、そこではじめて価値が生まれる。価値が生まれるなら、その分のお金を先につくって注ぎ込めばいい。
(中略)
政府がやるべきは中長期的な価値の創造だ。例えば、子どもの教育や環境の保護。こういったものはすぐに利益が返ってくるものではない。子どもの教育にいくら人を使い、お金を投入しても、それが実際にお金として返ってくるのは20年後か、30年後か、50年後かわからない。そんな長期的な投資は民間企業はできない。だが教育の充実は必ず国を豊かにする。そこに絶対に価値が生まれるという信念のもとに政府がお金を作って投入しなければ、その価値は生まれない。
環境保全でもお金など戻ってこない。その価値は計算できない。だがそれは絶対に価値があるものだと信義をもってお金を投じなければいけない。そのためならお金などいくらでも作って突っ込めばいい。そういう発想をもって政府は動かなければいけない。お金で考えるから本質を失う。
(中略)
国家経営にとって大事なのはGDPでも株価でもなく、最も大事なのは人の時間と労力と貴重な資源だ。(中略)… 貴重な時間と労力をいかに大事に無駄なく使って、本当に意味あることに役立てるかというのが国家経営だ。
(中略)
なんのために働くのかという新しい価値観
もう一つ大事なのは、明確な方向性だ。国家経営の仕事として、国を成り立たせるために必要な仕事をみんなに分担してもらう必要がある。食糧の自給、エネルギーの自給、この国に無い物を買ってくるだけの十分な外貨を稼ぐことだ。この3つがなければ基本的に国として自立できない。残念ながら食料の自給とエネルギーの自給ははるか遠く及ばない。これはなんとかしなければならない。それでも外貨は世界一稼いでいる。もうやりすぎたので、お金を配って返すことによって生活を楽にし、みなさんから取り過ぎた時間を返すべきだ。
それをやったとしても、みなさんは「遊ぶより人のために役立ちたい」といって休まずに働き続けるかもしれない。それなら今まで通りの働き方ではなく、何のために働くのか(中略)… これだけの経済大国で、世界一の黒字を稼ぐ生産性を持つに至ったわれわれとしては、もはやそれを自分たちのためだけに役立てるのではなく、もっと世界中の困っている人たち、餓死寸前に置かれている10億人の人たち、壊れゆく地球環境を保全する技術、そのための生き方や社会のインフラなど、世界の問題を解決するようなモデル社会をつくるために使わなければいけない。われわれの社会が大きな使命を帯びたときに、人の生き方や働き方が変わり、何が不必要で何が必要かがみなさんの中で選別されていくだろう。カジノやパチンコ産業などがいかに無用なものであるかがはっきりしてくる。
(中略)
世界のあらゆる問題を解決するには、いまの世界がいかにおかしいかをちゃんと認識する必要がある。残念ながらいまの世界経済はすでに狂気だ。本質から経済システムがかけ離れている。経済とは、価値の生産と価値の交換だ。みなさんに必要な価値があるからそれを作り、それを互いに交換する、それだけだ。必要ないものは作らなくていいし、売らなくていい。なのに私たちは必要ないものを膨大に作り、捨てさせ、壊し続けている。いつの間にかお金を貰うために経済を動かしている。
(中略)
お金には何の意味もないことに気づかなければいけない。お金とは、交換できる実態(価値)があって初めて意味を持つ。でも実態物は、金利でお金が増えるように時間とともに増えるものではない。普通のものは時間とともに壊れたり、腐ったりして減っていくのが自然だ。だがお金が金利で増えていけば、変わらない実態物(価値)の量に対してお金が膨大に増えてバランスがとれなくなる。バランスを取るために無理矢理作って売ることをやっていれば当然地球は破壊される。追いつくはずがないのだから。
(中略)
いますべきことは、この金融資本主義の仕組みを根こそぎ変えることだ。これ以上に重要な政治課題はないと思う。すべての政治家が命をかけてとりくむべき課題だ。地球規模の大転換が迫られている。
(以下略)
冒頭にいった「日本は世界一のお金持ち国」であるという事実はあまり知られていない。だがこれは紛れもない事実だ。主要国の対外純資産【表参照】を調べると、日本はプラスの341兆円で1位。ドイツが2位、中国が3位。
(中略)
黒字341兆円は、実際には3兆㌦の外貨で円ではない。国際決済はドルでやってきた。原油もドルで買うし、輸出の代金もドルで受けとる。だから黒字もドルで貯まる。(中略)… では、なぜ世界一の黒字を稼いでいるのにみなさんにその実感がないのか。それはこの稼いだ3兆㌦がみなさんのために使われないからだ。この黒字は使わなければただの紙切れだから当然投資する。ドルならドルを使うアメリカに投資する。(中略)… 黒字が増え続けたとしても海外投資になるため日本のみなさんは受けとれない。だからまったく実感がない。
(中略)
それどころか、この30年間みなさんはとんでもない働き方をさせられてきた。1971年から2016年までの為替レート【グラフ参照】を見るとそれがよくわかる。1971年には1㌦=360円だった。これが今は110円くらいになっている。円の価値が3倍になり、ドルが3分の1に下がっている。その契機が1985年のプラザ合意だ。
(中略)
プラザ合意前夜に1㌦=230円だった為替レートが、2年以内で一気に1㌦=120円にまで真っ逆さまに落ちた。ほぼ半額のドル安、2倍の円高だ。(中略)… 日本の輸出企業にはたいへんな事態で、今まで200円のコストで作っていたものが1㌦で売れていたのに、2㌦で売らなければならない。海外からすればまったく同じ製品が値段が2倍になるため、日本製品は高すぎて買えないということになる。逆に、海外からの輸入では2㌦(200円)していたものが1㌦(100円)で買えるようになる。輸出がしにくく輸入がしやすいので赤字になる可能性がある。つまりアメリカに「日本の貿易収支を赤字にしろ」と要求されたのがプラザ合意だった。
(中略)
日本の経済構造は輸出企業が中心だ。彼らはコストカットを始めた。(中略)… 今まで200円でつくっていたものを100円のコストでつくれば、これまで通り1㌦で売れるという話だ。(中略)… だが、コストとは、そのまま誰かの売上であり給料だ。それを30年もずっと削り続けて3兆㌦も稼いだわけだ。半分のコストでつくるといっても人間が2倍の速度で働けるわけもなく、要するにコストカットの名の下に、みなさんが受けとるべき給料や代金がちゃんと支払われなかったということだ。
(中略)
いかにみなさんが受けとるべき給料が受けとれていなかったかは、もっと大きなデータを俯瞰して見ると一目瞭然だ。
お金の量は5倍に増えたのに給料は削減
ここに1980年から2018年までの4つのデータ【グラフ参照】がある。すべて日銀からとってきたデータだ。4本の線のうち、マネーストックM2というのは、日本中の現金・預貯金(ゆうちょ銀行や農協に預けたお金を除く)をすべて足した額だ。つまり、日本には今お金がいくらあるのかという数値だ。
(中略)
私が就職した1986年のマネーストックは340兆円だった。このとき私が会社から受けとった初任給は20万円だった。そして、私の息子が就職した2017年のマネーストックは990兆円。息子の初任給はまったく同じ20万円だった。31年たってお金が3倍に増えているにもかかわらず、大学生の初任給は変わっていない。(中略)… 600兆円のお金が増えながら、この30年間ほとんど給料は上がっていないという話だ。ではその600兆円はどこにいったのか? みなさん薄々気づいているだろう。日本の大企業の内部留保は600兆円とか、500兆円といわれる。
(中略)
この30年で日本の企業というのは給料を払うのをやめたということだ。(中略)… 小泉・竹中改革あたりから政財界は「会社は株主のもの」という明確な答えを出した。利益を上げるのがよい経営者で、利益を上げないものはクビになる。ひたすら株主のために利益を上げ続けるし、そのために従業員の給料はひたすら削り続ける。(中略)… そういう仕組みの中で、法人税を下げたり、株式売買益に対する課税が極端に低かったりする。すべて一部の株主のためだとしか思えないような国家経営をずっとやっている。
(中略)
彼らには、国家経営という概念すらない。強いていえば、「GDPを上げる」「株価を上げる」という浅はかな答えが返ってくるだろう。(中略)… 経済成長の目安にされているGDP(国民総生産)とは、1年間にどれだけのお金が動いたかというだけの指標だ。今までお金の交換でなかったものをお金の交換にすれば上がる。例えば、子育てを保育サービスにするとGDPが上がる。母親が保育料を稼ぐために外に働きに出るとGDPが上がる。それで時間がなくなったから、自分でつくっていたご飯を外で買ってくるようになればGDPが上がる。
(中略)
GDPとは、消費+政府支出+投資+純輸出だ。純輸出とは、輸出から輸入を引いた差であり、黒字になればプラスで、赤字になればマイナスだ。日本の戦後復興はこの純輸出をプラスにするところからはじまった。(中略)… 戦後復興はそれでよかったが、1985年のプラザ合意でアメリカから円高にされても基本的にやっていることは変わらない。そして、純輸出を上げるためにみなさんの給料を削った。それで売って稼いだ3兆㌦の黒字は海外に貸しっぱなしで、みなさんの幸せは置いてけぼりになっている。
(中略)
TPP(環太平洋経済連携協定)でも「これで日本の輸出が伸びる」という。そんなことをやってもみなさん幸せになれないことは30年間で証明されているにもかかわらず、いまだにそんなことを言っている。それに対して新しい提言をすべき野党が同じかそれ以下のレベルだからずっとこれが続いている。
(中略)
黒字を稼いでも使わなければ意味がない。(中略)… 政府が国家経営を誤ったために支払われなかった30兆㌦を「黒字還付金」として国民に配る。1人100万円を1億3000万人に配っても130兆円。タダ働き分の3分の1に過ぎない。
(中略)
借金でお金をつくってきた現代の経済システム
もう一つは、財政金融の考え方を根本的に間違え続けてきた。政府の借金が大変だから税金でそれを返し続けなければならないとか、プライマリーバランス(基礎的財政収支)の達成、つまり税収の範囲内で支出を抑えなければならないという発想だ。
(中略)
実は政府の借金とは、政府の無駄遣いのせいでも、税収が足りないせいでもない。もっと根本的な原因はいまのお金の発行の仕組みにある。(中略)… 「お金の発行の仕組み」とはなにか。日銀券だから日銀が発行していると思っているだろうが、それではつじつまが合わない。お金がどれだけあるのかは、さきほど見たとおり1980年に200兆円だったものが現在1000兆円を超えている。(中略)… では、どうやって800兆円も増えたのだろうか。(中略)… 1000兆円あるうち100兆円しか紙幣がないということは、ほとんどが預金でしかないということだ。
(中略)
現代のお金の増やし方=信用創造の仕組みを説明する。
例えば、Aさんが100万円をA銀行に預けに行ったとする。するとA銀行は金庫に入れ、運用もする。銀行には預金準備制度というのがあり、預かった預金のごく一部を日銀に預けなければいけない仕組みになっている。仮に預金準備率が1%とすると、100万円の預金を預かったA銀行は100万円の1%(1万円)を日銀に預けて、残りの99万円を貸すことができる。私がA銀行にお金を借りに行くと、銀行は必ず口座を持たせる。なぜかといえば私が99万円を借りると私の預金通帳に99万円と書き込むだけだからだ。これで私は自分が99万円を持っていると思う。Aさんも口座に100万円持っていると思っている。その時点でお金は199万円に増えている。ただ私は借金だからあまり自分のお金とは思えない。
だが私がB銀行の誰かに99万円を送金してしまえば、それを受けとった誰かはその99万円を純粋に売上か給料かわからないが自分の預金として認識する。これがもともと私の借金であるかなど知らないし、気にもしない。晴れてめでたく、Aさんの100万円の預金は99万円の預金とあわせて、もともと100万円だったお金が199万円に増えることになる。新たに99万円を預かったB銀行は、そのうち1%の9900円を日銀に預け、98万100円をまた誰かに貸すことができる。また同じことが起きる。これをC銀行の誰かに送金すれば、その誰かは98万100円を純粋に自分の預金と認識し、これを預かったC銀行はまた1%(9801円)を日銀に預けて、残りの97万299円を誰かに貸すことができる。もうこの時点で、私の99万円を受けとった人は99万円を持っているし、これを借りて送金した相手は99万100円を持っていることになる。もともとお金を預けたAさんはお金を1円も動かしていない。預金通帳に100万円と書かれたまま。だがお金は300万円に増えている。
これをぐるぐるとやっているうちに、貸せる金額は1%ずつ減っていくが、100万円の元預金÷預金準備率1%=1億円までお金を作り出すことができる。これが信用創造という現代のお金の発行の仕組みだ。
(中略)
実際に存在しているのではなく、銀行が誰かに借金を貸すことによって作り出した数字が電子的に回ってきて、それをみんながお金と認識し、自分のものだと思っている。みんなが一斉に銀行にお札を取りに行っても金庫にお金があるわけではない。
拡大し続ける巨大なイス取りゲーム
「借金でお金を作る」――この仕組みが意味することは、借金を返すとお金が消えるということだ。最初に私が99万円借りたときには、99万円のお金を作り出し、それを使うこともできる。だが私が返せないかもしれない…と弱気になってすぐ返したとする。返した途端に相殺してお金も消える。仮になんとか借り切ってなにかに使ったとすると、私の手元に残るのは99万円の借金だけだ。もし1年ローンだとすると、1年以内に99万円を世の中から集めてこなければ私はたいへんなことになる。だから1年後に99万円を集めて借金を返すと、同時に世の中から99万円のお金を消して自分の借金を相殺して消すことになる。
(中略)
これが意味するものは、現代のお金はほとんどが借金で生まれているということだ。だからみんなが借金を返してしまえばお金が消える。(中略)… しかも問題は、元本分だけ返すのではなく利息が付く。私も99万円返せばいいのではなく5%の利息なら104万円返さないといけない。借金によって元本分しかお金は生まれていないのにそれ以上のお金を集めようとする。それで何が起きるかといえば、お金が足りなくなる。発行されていないのだから--。
(中略)
例えばこの部屋に100人いたとして、1人100万円ずつ銀行からお金を借りて経済を回すとする。それぞれの銀行口座に100万円と記入されてスタートだ。みなさんがマッサージでも占いでもそれぞれサービスを交換し、お金を払ったり、貰ったりして経済を回す。1年後に100万円ずつ借金を返さないといけない。返してしまえばお金は消える。ここに5%の利息が付けば、みんなが1年後までに105万円ずつ集めようとするとお金が足りない。100万円×100人=1億円のお金しか回っていないのに、利息を含めて1人が105万円買えそうとすると500万円足りず、必ず誰かが破たんする。いまの金融システムは巨大なイス取りゲームなのだ。
みんなが破たんせずに105万円を返済するには、あと500万円が余分に必要だ。そのためには誰かが借金をする必要がある。ここにもう5人いて100万円×5人=500万円の新たな借金が生まれ、それがみなさんのところにいけばめでたく利息も返済できる。だがそのときはお金が消えている状態で、この5人の手元には500万円の借金しか残らない。この人たちが返すためにさらに5人が必要になる。そして、もともとの1億円のお金があった状態に戻すためにはもう一部屋必要になる。100万円お金を借りる100人だ。つまり、どんどん部屋が大きくなって増えていかなければ回らない。
人口が増え続け、借りる人も増え続け、その人たちが必要とする価値(いろんなサービスや製品)が増え続け、作れば売れ続けるような高度成長期のような状態が続けばいいが、そう長くは続かない。経済成長は必ず止まる。借金でお金を増やし続けなければいけない経済も必ず立ちゆかなくなる。
「政府の借金=お金の発行」 という仕組み
では、実際どうなったのかを先ほどのグラフで見てみたい。日本の現金・預貯金の総額である①マネーストックが200兆から1000兆円へと5倍に増えている。(中略)… 当初は、青い線の③民間銀行貸出が並行に走っており、借金がお金を作っていたことがわかる。
ところがあるときを境にこの2つの線が乖離していく。④GDPが増えなくなり、すっかり横ばいになる。そうすると銀行は誰に貸し続けるのか。1億3000万人しかいないのに同じ人たちに対して永遠にお金と借金を増やす続けることなどできない。
(中略)
だが、①マネーストックはまっすぐ増えている。では、誰が借金をしているのか。答えは赤い線②国債残高だ。民間銀行がマネーストックを支えきれなくなってから急激に日本の国債残高が上がり、いまや並行して上がっている。つまり、政府が借金をしてお金を発行し続けたということだ。
(中略)
いまや1000兆円のみなさんのお金に対して政府の借金は900兆円だ。この900兆円を返すために900兆円の税金を集めれば、みなさんの預貯金はほとんどなくなる。政府が借金でお金を作っているのだから、政府が返済すればマネーストックも道連れにして下まで下がっていく。だから政府の借金がたいへんだから税金を上げなければいけないとか、消費税を上げなければいけないというのは全部大ウソだ。まったくあり得ない世迷い言でしかない。プライマリーバランスも同じだ。でもそれを政府もマスコミも言い続けている。
(中略)
民間の信用創造、民間の借金によるお金の発行は必ず頭打ちになる。地球は一個しかないのだから、経済成長は必ず止まる。お金と借金を増やし続けるようなことが続くはずがない。この金融システムを維持するために誰かが借金をし続け、お金を発行し続けなければ立ちゆかない。
(中略)
なにが根本的な問題なのか。それは、借金でお金を発行する仕組みそのものだ。このまま借金を続けることは大きな問題があり、政府の国債のもとに年間9兆円もの利息を発生させている。利息とはお金を持っている人がお金を増やす仕組みだ。(中略)… 30年間で300兆円以上の利息が発生している。つまりそれだけお金を持っていない人からお金持ちに所得が移転されているという話だ。なぜお金という公共のもの(それがなければ経済が回せないもの)をつくるのに利息が発生し、その利息が富める者を富ませ、貧しい者から奪い続けるのか。こんなものは社会にとって意味がない。
政府通貨という発想
唯一の解決策は、誰の借金でもないお金を政府が責任をもって発行することだ。(中略)… 私が考える政府通貨とは、1兆円紙幣でいい。この1兆円×130枚を日銀に預けるとする。それを日銀は金庫に入れて、政府の預金口座に130兆円と数字を書き込む。あとはそれを普通にみなさんに送金すればいい。1人100万円ずつ。みなさんの預金口座50万円だったものが150万円になる。それを使うときにはいままで通りに送金したり、1万円札で引き出せばいい。
(中略)
政府の借金を消すときも、政府が1兆円紙幣を900枚作ればいい。それを日銀に預けて金庫に入れると、政府預金口座に900兆円と書き込まれるだけだ。あとは、それをお金を貸してくれる人に返せばいいが、政府の借金はほぼ銀行がまかなっている。銀行が国債を山ほど持っていた。「持っていた」と過去形にしたのはアベノミクスの異次元金融緩和で、日銀が銀行から山ほど国債を買ってしまっている。半分以上の500兆円ほど買ってしまっている。それでなにが起きたかといえば、なにも起きていない。インフレにもなっていないし、金融的になにも起きていない。それなら全部買ってしまえばいい。
それで何が起きるかといえば、日銀の金庫の中に900兆円の国債が入っている。これは政府に貸している分だ。日銀の政府預金口座に900兆円があり、政府から借りた900兆円の国債と政府から預かった900兆円が同じ日銀の中に両方あるという状態になる。相殺して消してしまえばいい。これは消したところでみなさんなにも感じない。おそらく蝶が羽ばたいたくらいの感覚しかない。
だが、このバタフライイフェクトは必ず大きな変化を起こす。なぜかといえば年間9兆円発生していた利息が消滅する。この30年で300兆円もの所得を移転してきた巨大な格差拡大マシーンが止まる。誰が一番困るかと言えば、それでもうけ続けてきた銀行だ。銀行はこの仕組みによって、いままで900兆円、半分買われて400兆、500兆円という利息を得てきた。
(中略)
無税国家にすることも可能だ。政府通貨でお金をつくって全部の政府支出を賄えばいい。税金をゼロにするとみなさんが余計にお金を手にして余裕が生まれ、働く時間を減らし、そのお金と時間を使って休んだり、より文化的な生活が送れる。すると消費が増え、輸入が増える。赤字になるかもしれないが、もしそれで大した赤字にならなかったら、そのまま無税国家ができる。日本は世界一の黒字国だから赤字にしていい国なのだ。
(中略)
みんなが2000万円を目指して貯金などはじめると大変なことになる。これではお金が動かず、人が動かなくなる。(中略)… 例えば、これから介護産業にものすごい人数が必要になる。この産業を大きくする必要がある。そこにはたくさんの仕事がある。若者たちに行ってほしくても、お金がなく十分な給料がもらえないからみんな行かない。そこにお金を作って投入すれば、そこで働く人が増えて、実際にそこで人が動き始め、そこではじめて価値が生まれる。価値が生まれるなら、その分のお金を先につくって注ぎ込めばいい。
(中略)
政府がやるべきは中長期的な価値の創造だ。例えば、子どもの教育や環境の保護。こういったものはすぐに利益が返ってくるものではない。子どもの教育にいくら人を使い、お金を投入しても、それが実際にお金として返ってくるのは20年後か、30年後か、50年後かわからない。そんな長期的な投資は民間企業はできない。だが教育の充実は必ず国を豊かにする。そこに絶対に価値が生まれるという信念のもとに政府がお金を作って投入しなければ、その価値は生まれない。
環境保全でもお金など戻ってこない。その価値は計算できない。だがそれは絶対に価値があるものだと信義をもってお金を投じなければいけない。そのためならお金などいくらでも作って突っ込めばいい。そういう発想をもって政府は動かなければいけない。お金で考えるから本質を失う。
(中略)
国家経営にとって大事なのはGDPでも株価でもなく、最も大事なのは人の時間と労力と貴重な資源だ。(中略)… 貴重な時間と労力をいかに大事に無駄なく使って、本当に意味あることに役立てるかというのが国家経営だ。
(中略)
なんのために働くのかという新しい価値観
もう一つ大事なのは、明確な方向性だ。国家経営の仕事として、国を成り立たせるために必要な仕事をみんなに分担してもらう必要がある。食糧の自給、エネルギーの自給、この国に無い物を買ってくるだけの十分な外貨を稼ぐことだ。この3つがなければ基本的に国として自立できない。残念ながら食料の自給とエネルギーの自給ははるか遠く及ばない。これはなんとかしなければならない。それでも外貨は世界一稼いでいる。もうやりすぎたので、お金を配って返すことによって生活を楽にし、みなさんから取り過ぎた時間を返すべきだ。
それをやったとしても、みなさんは「遊ぶより人のために役立ちたい」といって休まずに働き続けるかもしれない。それなら今まで通りの働き方ではなく、何のために働くのか(中略)… これだけの経済大国で、世界一の黒字を稼ぐ生産性を持つに至ったわれわれとしては、もはやそれを自分たちのためだけに役立てるのではなく、もっと世界中の困っている人たち、餓死寸前に置かれている10億人の人たち、壊れゆく地球環境を保全する技術、そのための生き方や社会のインフラなど、世界の問題を解決するようなモデル社会をつくるために使わなければいけない。われわれの社会が大きな使命を帯びたときに、人の生き方や働き方が変わり、何が不必要で何が必要かがみなさんの中で選別されていくだろう。カジノやパチンコ産業などがいかに無用なものであるかがはっきりしてくる。
(中略)
世界のあらゆる問題を解決するには、いまの世界がいかにおかしいかをちゃんと認識する必要がある。残念ながらいまの世界経済はすでに狂気だ。本質から経済システムがかけ離れている。経済とは、価値の生産と価値の交換だ。みなさんに必要な価値があるからそれを作り、それを互いに交換する、それだけだ。必要ないものは作らなくていいし、売らなくていい。なのに私たちは必要ないものを膨大に作り、捨てさせ、壊し続けている。いつの間にかお金を貰うために経済を動かしている。
(中略)
お金には何の意味もないことに気づかなければいけない。お金とは、交換できる実態(価値)があって初めて意味を持つ。でも実態物は、金利でお金が増えるように時間とともに増えるものではない。普通のものは時間とともに壊れたり、腐ったりして減っていくのが自然だ。だがお金が金利で増えていけば、変わらない実態物(価値)の量に対してお金が膨大に増えてバランスがとれなくなる。バランスを取るために無理矢理作って売ることをやっていれば当然地球は破壊される。追いつくはずがないのだから。
(中略)
いますべきことは、この金融資本主義の仕組みを根こそぎ変えることだ。これ以上に重要な政治課題はないと思う。すべての政治家が命をかけてとりくむべき課題だ。地球規模の大転換が迫られている。
(以下略)
私は、大西つねき氏が「信用創造の仕組み」を多くの人々に説明している人物だということくらいしか、氏のことを知りません。動画も見たことがありません。しかし、顔を見ただけで、氏が、通貨の発行の仕組みを知っており、その対策も知っていることはすぐにわかりました。なので、以前の記事で、氏は覚醒者だとコメントしたのです。
記事を見ると、現在の通貨システムが諸悪の根源であり、それをどうすれば良いかがよくわかります。通貨のことを十分に吟味し、調べれば、誰もが同じ結論に辿り着きます。
私は、通貨の仕組みの根本を、リチャード・ヴェルナー氏の「円の支配者」で教えてもらいました。たった1人の天才が通貨の本質を理解すると、次々と世界中の人々が、その本質を理解するようになります。
今回の記事は少々長いのですが、ぜひ赤字部分だけでもざっと目で追ってください。記事では、税制の部分など、重要な内容を省いています。あくまでも、“現代のお金の発行の仕組み”がよくわかるように編集しました。なので、この記事を読んで、興味を持たれた方は、ぜひ転載元の長周新聞の全文をご覧ください。
1人でも多くの人が通貨の発行の仕組みを理解すると、世界に大きな影響を与えます。仕組み自体は大変簡単なものなのですが、この仕組みによって銀行がボロ儲けをしていることを、ほとんどの人は理解していません。
国の財布と個人の財布は、全く別です。もしあなただけにコピー機でいくらでもお札を印刷する権利が与えられたなら、皆さんは働いてお金を稼ぐとか、誰かから借金をするとか、懸命に節約するとかするでしょうか。欲しいものがあれば、必要なだけ1万円札をコピーして、そのお金を使って物を買うでしょう。もし、あなたがこのような身分なら、世の中で成功することは保障されており、貧乏とは無縁で、人々を買収することも容易でしょう。
国はお金を自由に刷る権利を持っているのに、なぜ国債を発行してお金を借りる必要があるのでしょう。また、税金を絞り取る必要があるのでしょう。また、緊縮財政で節約をする必要があるのでしょう。
通貨を発行して、通貨発行益を得るということは国の経営の基本だと思うのですが、これをわざわざ放棄して、どうして、国債を発行してお金を借りる必要があるのでしょう。利息の利払いが馬鹿らしいわけですが、その利息は銀行家の懐に入るのです。国債発行がいかに馬鹿げているかがわかるはずです。
世界を銀行家の好きなようにさせるのは、もうやめましょう。