[マスコミに載らない海外記事 ]レジェップ・タイイップ・エルドアン:突然背後から人を刺すパシャの肖像 〜エルドアン大統領の政治的な経緯を知る上で、大変優れた記事〜

竹下雅敏氏からの情報です。
 少々長い記事なのですが、エルドアン大統領の政治的な経緯を知る上で、大変優れた記事だと思います。これまで断片的に時事ブログ上で取り上げて来た事柄と一致していると思います。
 専門家はもちろん、情報に通じた人たちにとって明らかな事実が、残念ながら大手メディアでは報じられません。
 記事を見ると、エルドアンは新自由主義で、IMFが設計した“安定化と回復”プログラムを奉じているとあります。これらの経済政策は、エルドアンの独裁と実にうまく調和するようです。エルドアンと安倍の顔が重なって見えます。
 これまで新自由主義者が推し進めるTPPは、経済的な植民地支配であると指摘して来たのですが、要するに新しい形の奴隷制度なのです。ファシズムとよく調和するのは、明らかではないでしょうか。
 このような野望が成立すると考える方がどうかしています。後の歴史家は、こうした野望がリーマンショックによって崩壊したということを理解するようになると思います。
(竹下雅敏)

注)以下、文中の赤字・太字はシャンティ・フーラによるものです。

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レジェップ・タイイップ・エルドアン:突然背後から人を刺すパシャの肖像
転載元より抜粋)
James Petras
インティファーダ
2015年12月15日


エルドアンは、自分のことを、欧米に必要不可欠な地域覇権を握る日の出の勢いの人物だと思い込んでいる。シリアとイラクにおける暴力から逃れる難民の大群で、彼はEUをゆすり、難民をトルコの強制収容所に放り込むという約束で、何十億ユーロもせしめた。

トルコ大統領のレジェップ・タイイップ・エルドアンは、政治上の盟友、貿易相手や、軍事同盟を裏切る上で、長く、卑しい実績を誇っている。友情を誓って、‘友人たち’を爆撃し、市民を殺害する。‘真摯に’交渉し、ライバルを殺害する。民主主義者を演じておいて、ありきたりの扇動的独裁者になる。

エルドアンは、アナトリア州プチブルの平民的で厳格な価値観に訴えながら、21世紀のパシャにふさわしい世界最大の豪華大統領宮殿を建設する。彼は何度となく‘トルコ国家’への忠誠を誓いながら、公共資金によるプロジェクトに二重請求する建設業者から、何度となく賄賂やリベートを得て、トルコ国庫を略奪している。

最近では、エルドアンは、テロに反対し、ISISと戦うと主張しているが、トルコの主要新聞や地方新聞、ジャーナリストや大半の国内評論家たちは、トルコ-シリア国境を越え、ISISテロリストに向かう、膨大な量の違法な兵器の流れを実証している。


エルドアンは、聖戦傭兵に抵抗するシリア・クルド戦士を爆撃し、テロリストに対して、ダマスカス政府を守っているロシア戦闘機を撃墜し、ISISがイラクとシリアから盗んだ石油を密輸し、販売し、負傷したISIS戦士に対して医療支援をし、更に、トルコ基地で、ISISテロリストを訓練し、武器を与えて、ISISを支援している。

ここには互恵関係がある。
2015年7月20日、33人を死亡させた、スルチでのクルド‘社会主義青年’集会へのテロ爆撃や、10月10日、アンカラの‘平和と公正’行進会場で、組合活動家、専門職団体幹部や、民主的なクルド政党の活動家や党員を標的に、100人以上を死亡させ、何百人も負傷させたの大規模爆発を含め、自国内の反対派にテロをするのに、エルドアンは、ISIS工作員を利用している。

2015年の国政選挙では、ISISテロリストや、エルドアンの公正発展党(AKP)の暴漢が、エルドアンが、圧倒的多数を必ず勝ち取れるようにすべく、野党、特にクルド人民民主党(HDP)の事務所、集会や候補者を襲撃した。

言い換えれば、エルドアンの外国と国内における権益にとって、ISISは一石三鳥だ。

(1)シリアとイラクで、ISISに反対している非宗教的なクルド勢力を攻撃し、破壊して、トルコ国境に独立したクルド国家ができるのを防ぐ。

(2)シリアのバッシャール・アル・アサド指揮下の独立したバース党政府を攻撃し、破壊し、多文化的な非宗教的国家機構を解体し、エルドアンのAKPに従属するスンナ派イスラム主義傀儡をダマスカスに据える。

(3)広範な支持を得ているクルドHDPや、左翼の労働組合連合(DISK)を含め、トルコ国内世論を攻撃し、恐怖に陥れる。

エルドアンは、現在ISISを構成している過激ワッハーブ派テロリストと十数年にわたり、戦略的同盟関係にある。彼は中東地図を、彼自身の拡張主義の野望に役立つように‘書き換える’つもりなのだ。これは、エルドアンが、一体なぜ大量の武器や物資を、テロリストに供給し、何千人もの傭兵を訓練し、負傷したISIS戦士に医療支援を提供したのかという理由の部分的説明になる。これはまた、エルドアンが一体なぜ、シリア領空で、エルドアンの同盟ISISを爆撃していたロシア戦闘機を撃墜するという未曾有の極端に挑発的な手段に出たかという説明にもなる。ロシアとシリアの軍のISISに対する成功が、彼の野望を脅かしたからだ。

1970年代、彼は、巨大な多民族非宗教国家トルコを、神権政権(現代のISISの方針通りだ)に変えることに専心している、強烈な反共産主義で、非宗教的政党に反対する政党、国民救済党(MSP)青年部のトップだった。

1980年の軍事クーデター後、MSPは解党され、福祉党として再登場した。エルドアンは新たな(改名した)イスラム主義政党の指導者になった。

エルドアンと福祉党は、腐敗して、独裁的な軍へのトルコ大衆の不満につけこんだ。1994年、エルドアンはトルコ最大都市の知事に選ばれた。

知事として、エルドアンは、過激イスラム主義を説いて失敗し、1998年に非宗教国家に対する扇動罪のかどで有罪判決を受けた。彼は、10か月の刑で、4か月服役した。

この時点から彼は戦術を変えた。彼のイスラム主義狂信は隠蔽された。彼は、党名を福祉党から、現代風な響きの公正発展党(AKP)へと変えた。

‘改心した’エルドアンは、2002年、彼の政治参加に対する軍の禁止を覆すため、ケマル主義で、非宗教的な共和人民党(CHP)と連携した。2003年に、彼は首相に選ばれた。AKPは、総選挙に勝利した後、CHPとのつながりを切った。2007年と2011年、エルドアンは首相に再選された。

エルドアンは、司法体制、警察と軍内部で影響力が強かった親米派のイスラム主義指導者フェトフッラー・ギュレンのヒズメットまたはジェマート運動と提携した。二人は非宗教的な軍や司法幹部、ジャーナリストや評論家の粛清を開始した。

エルドアンとギュレン主義者の国家機関が、300人の非宗教的な軍幹部、裁判官やジャーナリストを逮捕・投獄し、全員、イスラム主義者のエルドアンとギュレンに忠実な連中に置き換えた。

“大ハンマー作戦”と呼ばれた粛清は、全て反逆罪と陰謀の冤罪に基づいていた。

粛清はエルドアンの個人的権力を強化し、司法関係者の粛清は、益々エルドアンが取り巻き資本家連中や家族を富ませることを可能にした。

エルドアンは、賃金、給与や年金を引き下げる一方、公共企業や活動を民営化するIMFが設計した‘安定化と回復’プログラムを奉じている。これが資本の大量流入を招き、外国投資家と取り巻き連中が、おいしい所を叩き売り価格で手にいれた。

エルドアンによるイスラム教と、残酷な新自由主義の組み合わせは、ブリュッセル、ウオール街やロンドンのシティーの支持を惹きつけた。


資本ブームが続いている間、彼の権力も増大し、エルドアンは、トルコ救世主という役に益々とりつかれるようになった。2010年には、権力の分担を巡って、エルドアンと、ギュレン主義のパートナーとの間で深刻な違いが広がった。エルドアンは素早く残虐に行動した。

エルドアンは、他のいかなる政党、運動や、集団とも権力を分け合うのがいやだった。彼は‘ギュレンが支配している’と主張して、批判的な新聞や企業やコングロマリットを攻撃した。エルドアンは、彼に対して完全に忠実な資本家しか、政権からの恩寵を受けられないようにした。

彼の恣意的で破壊的な政策は、継続的な市民団体の抗議行動、特に、2013年5月に始まった、イスタンブールの中央、ゲジ公園での抗議行動を引き起こした。

エルドアンは‘現代的民主主義者’の仮面をはぎ取り、イスタンブール中心部で、平和な抗議行動参加者を残虐に弾圧し、22人の死者、何百人もの負傷者、更に多数の逮捕者と長い刑期が宣告されることになった。エルドアンは次に、彼の残虐な暴力行使を批判した、リベラルな批判者や財界幹部を標的にした。

エリート階級からも、庶民階級からも、反対に直面し、エルドアンは一層熱狂的な‘イスラム主義’、愛国主義、誇大妄想、つまり‘新オスマン帝国主義’となった。

間もなく、彼はトルコ・クルド人に対する攻撃を再開し、後にISISとなる連中も含め、シリア国内のイスラム主義テロリスト支援を増強した。

2011年までには、後にシリアにおける残虐なイスラム主義者の反乱となるものの基盤をととのえるのに、エルドアンは深く関与していた。早くから、何百人もの武装外人イスラム主義テロリストが、トルコ国境を越えて、シリアに入国していた。エルドアンは、日ごとに、隣国シリアの愛すべき友人から、宗派暴力テロによる‘政権転覆’を要求する不倶戴天の敵へと変身したのだ。

ISISや他のイスラム主義テロ集団とエルドアンの秘密同盟の動機は、いくつかの戦略的配慮によるもので、その概略は下記だ。

1) 同盟は、ダマスカスが敗北した場合に、武装したシリア・クルド人が、南東トルコの不満を抱いた膨大なクルド住民と連帯して、非宗教的な自治クルド国家形成に到るとエルドアンが恐れている、自治クルド居住地がシリア-トルコ国境で樹立されるのを防ぐのに役立つ。

2) シリア内の聖戦戦士とエルドアンの同盟は、ダマスカスに、傀儡スンナ派-イスラム主義政権を押しつけるというアンカラの野望に役立つ。

3) シリアとイラクの油田を支配しているISIS政権は、トルコに対する安価な燃料源で、政権にとって美味しい儲けを与えてくれる。レジェップの息子ネジメッティン・ビラル・エルドアンは、密輸されたシリアとイラクの石油をトルコで購入し、海外(特にイスラエルに)で販売し、年間約10億ドルを‘家族’に稼ぐBMZグループを所有し経営している。

情報に通じたトルコ専門家たちは、エルドアンの諜報機関の職員が、トルコ国内で活動し、国内の反エルドアン勢力、特にクルド政党のHDPや、広範なトルコの左翼や労働組合運動を攻撃するISISテロリストの徴募に直接関与していると考えている。トルコ諜報機関の作戦が、エルドアンに反対する百人もの人々や、市民社会活動家を殺害し、四肢を奪った今年のスルチとアンカラでの‘ISIS’爆弾攻撃に直接関与していると専門家たちは主張している。

シリアの聖戦戦士やISISテロリスト・ネットワークに対するロシアの極めて効果的な空爆作戦は、バッシャール・アル・アサド大統領の正統な政府からの正式な軍事介入要請に答えたものだ。介入は、シリアにおける、エルドアン地域的権力への野望と、違法な事業活動を損なう脅威だったのだ。何よりも、北シリアの広大な部分を併合し、‘飛行禁止空域’と呼ぶエルドアンの計画を終わらせてしまった。

戦略的なエルドアン-ISISの石油密輸作戦をめったに爆撃しなかったアメリカと違って、空爆の最初の一カ月で、ロシアは何千台もの石油輸送トラックや、無数のISIS石油貯蔵所や、兵站センターを破壊した。密輸石油の流れを減らすことで、ロシアはビラル・エルドアンのBMZ社と、トルコの武器業者にとっての膨大な利益の主要な源を断ち切った。

2015年11月24日の、ロシア戦闘機をシリア領空で撃墜するというエルドアンの決定は、ISIS石油車列介入にロシアが成功したことに対する彼の怒りが主な動機だった。自分の家族の権益を守ることによって、エルドアンはより多くの同盟者の背中を刺してしまったのだ。ロシアだけでなく、トルコの資本家階級の多数までも!

ゲジ公園からギュレンに到る次から次の粛清によって、かつて新自由主義トルコ資本の‘広告塔’だったエルドアンは、腐敗した家族と取り巻き資本家連中というメンバーが限られた集団のために行動する、身勝手な独裁者と化した。

エルドアンはロシアに対する彼の病的な怒りの発作による損害が外国をおこらせ、トルコ国内で孤立化しつつあることを悟るやいなや、彼は膝を屈して、NATOに向かい、支援を求めた。

エルドアンの専制主義への道は、無差別粛清、テロと欺まんで敷きつめられている。

彼は個人的な権力は強化したが、トルコ国家と国民の利益を損なっている。

彼のISISとの石油取り引きはぼろぼろだ。エルドアンが他の違法な利益源を探さなければならなくなるのは確実だ。

どのような状況でパシャ・レジェップ(‘誇大妄想狂’)が取って代わられるかを一体誰が知ろう?

James Petrasは、ニューヨーク州立大学ビンガムトン校社会学名誉教授。

記事原文のurl: http://www.intifada-palestine.com/2015/12/recep-tayyip-erdogan-portrait-of-a-backstabbing-pasha/
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