臨場感!孫たちは新しい環境で臨場感にあふれた毎日を過ごしています。子どもには良い体験を!と言われますが、孫たちは言葉もわからないクラスの中でよく頑張っていると思います。それでも「楽しい!」と言えることが凄い!言葉ではないコミュニケーションの方がずっと豊かであり、子ども達の世界では一緒に遊んでいるうちに仲良くなるという魔法のような方法があったのです。目に見える形で測れる学力、語彙力などではない基本的な安心感や信頼感で育つ非認知能力が力を発揮するのです。それはやはり愛によって育つ力です。
————————————————————————
「おにぎり1個だけにして!!」
「おにぎり1個だけにして!!」と、初めて登校する日の朝に泣き出した孫。「おにぎり1個だけじゃお腹すくよ。用意しているから持っていきなさい」と娘が言っても納得しません。「なぜそんなこと言うの?おにぎりが嫌なの?」と聞くと「食べ残したら絶対に怒られる!時間内に食べられない!」と大泣きです。
「わかった!先生は怒ったりしないと思うけど心配ならおにぎり1個にしよう。その方が安心なのね。お腹すいたら帰ってきてから食べればいいよ」と、私は小さなおにぎり2個のうちの1個とおかずを抜きました。
実は昨日の夜も「時間割を聞いていない!何を用意すればいいのかわからない!」と焦って泣いたのです。「大丈夫。何も持って行かなくていいのよ。お弁当だけでいいのよ」と何度も説明して落ち着かせていたのです。
その姿を見ながら日本の学校で毎朝繰り広げていた光景を思い出しました。周りがいくら大丈夫と言っても「お母さんが大丈夫って言っても先生は、ダメ!きまりです!と言って怒る。全然大丈夫じゃなかった。嘘つき!」と信じないのです。友達が怒られているだけでも敏感に感じ取る孫です。
だから日本では毎日寝る前と朝、宿題はしたか?教科書、ノート、ドリル、筆箱、体操服、給食袋、ランチョンマット、ハンカチ、チリ紙をランドセルに入れたか?爪も切って、体温も測って(私はいつも子どもの顔を見て適当に書いていました)記入して持って行きます。ランドセルはとても重たくなります。
その上、忘れ物をしたら厳しく叱られます。それどころか忘れ物をした子に貸してあげた子も叱られていました。先生は忘れ物をしないという決まりを守る子に育てるために「忘れることもあるさ」「一緒に使っていいよ」「助けてくれてありがとう」という優しさや感謝の気持ちを葬り去るのでしょうか?
そもそも家で使わない教科書を毎日持ち帰らせる必要があるのでしょうか?給食時間(15分!)のたびにエプロンと帽子を着なければいけないのでしょうか?お茶を飲んでいい時間も決められていてタイミングが合わなくて我慢する子も多いと聞きます。どうせ飲めないし重たくなるからと、お茶の量を減らして持って行っていました。
親も朝の忙しい時に目の前の子どもの抵抗に向き合っている暇はありません。疑問に思いながらも「学校の決まりだから」と責任を逃れ「決まりを守れなかったら大人になって信用されない人になるよ」「好きなことばかりしていたら生きていけないよ」「あなたのためです」等のわけのわからないことを言って強制的に従わせるのです。
まじめなお母さんは早く宿題を済ませておきたくて、子どもが学校から帰るなり矢継ぎ早に「宿題」「時間割」と畳みかけます。いつホッとできるのでしょうか?
結果、子どもは何故そうしなければいけないのかを理解することもなく自由を奪われて「どうせ何を言っても聞いてもらえない」という気持ちになり、やる気が失せてしまいます。学校の先生自体がそんな人になってしまっているので気が付かないのかも。
対極にあるアメリカの教育
「問題を起こさないため」「大人になって困らないため」・・・と言いながら先にきまりを作って、一つ一つ細かいことで子どもの自由を縛り、一律でないと不安にさせる教育、できないと自分が悪いと思い込む教育って何なのだろう?と思ってしまいます。アメリカ滞在で、この対極にあるのがアメリカの教育かもしれないと思いました。
さて、「初日は15分前に来てください。担任の先生を紹介します」と言われていたので家族中で付いて行くことにしました。おにぎり騒動が落ち着いても孫は不安でいっぱいです。そんな気持ちを抱えながら歩いていると・・・通学路でリスやウサギを見つけるたびに目が輝いていきます。小鳥がさえずると「あ!ロビンだ!」と名前を言って生態まで解説してくれます。生き物博士です。
「あー!!ワイルドターキーだ!」今日は孫の気持ちを持ち上げてくれるように大きなゲストが顔を出してくれました。そのころにはすっかり元気になってターキーを追って走っていきました。
さて、事務室に入ったらそれぞれの担任の先生が来て満面の笑みで自己紹介をしてくれました。そして、孫たちを自分の教室に案内してくれました。学校には職員室がなく、教室が先生の部屋です。まず、個人のロッカーにバックパックや上着を入れて、教室にはスナックと水筒だけ持っていきます。
教室は広くて机と椅子がありますが日本のように黒板を前にして並んでいません。あれ?黒板自体がない!グループに分けられた机と椅子に座ったり、絨毯に寝転んだり、ソファーに座ったり自由に移動するようです。
この日は孫のウェルカムボードが用意されていました。ようこそ!みんなで仲良くしよう!と書かれていました。孫も自分のことを英語で話せるように練習していました。真剣です。言葉がわからなくて困った時のために日本語を英訳したカードを持たせています。「トイレに行ってもいいですか?」「お腹が痛い」「意味が分かりません」などなど想定できることを話し合って作りました。そのお守りカードをしっかり握りしめての初日です。頑張れ!!
始業時間が来て校庭で待っていた生徒が一斉に教室に入ってきました。みんな孫たちを見つけると大喜びで寄ってきて歓迎してくれました。取り囲まれて次々に話しかけられたので4年生のお姉ちゃんは・・・どう表現していいのか、緊張と喜びが交差して涙が出てしまいました。弟は下を向いてしまいました。ばあばも涙が出そう。
時間割がわからないまま学校に行ったのですが、音楽や体育の日が決まっているだけで他の授業は先生が自由に変えられるとのこと。先生が物語を読んでくれる時は絨毯やソファーに座って聞き、その後はスナックを食べながらいろいろな考えを自由に話し合うのだそうです。
クラスの70%が白人、15%がアジア系、10%ヒスパニック系、5%アフリカ系なので自ずと言葉も文化も違う子ども達です。正しい答えを求めるのではなくお互いの考えを認め合うことに意味があると思っているようです。
体育は体操服に着替えたりしないでエクササイズをした後、自由に外遊び。球技や水泳などは近くに会員制のスポーツジムがたくさんあるので放課後や長期休みに専門のコーチが教えてくれるそうです。冬が長くて遊ぶ場所がないせいか家族中で安く使えます。
ランチはカフェテリアのあるランチルームで食べます。自由に座ってお弁当や買ったホットランチを食べるそうですが子ども達はいろいろな国から来ているのでお弁当も国際色豊かです。ここでは全てにおいて違いを尊重しなければ生きていけない社会です。誰が何を食べようが自由。
食べるのが遅くても誰も気にしないことがわかったら孫も安心することでしょう。ただ、スナックもお弁当もヘルシーなもの、という大きなきまりはあるようで肥満の子がいないのにはびっくりしました。
食後にクワイエットタイムがあって、その時間は照明が落とされて本を読んだり昼寝をしたり、好きなことをするのだそうです。先生はその時間に授業の準備をするとのことでした。孫達は授業があっている時間に週に3回くらいELLのクラスに行って英語を教えてもらっていました。ロシア人、フランス人と一緒に習っていました。
さて、お迎えの2時半になりました。どんな顔をして学校を出てくるかとドキドキしながら待っていました。担任の先生に連れられてクラス全員が出てきました。孫はみんなから親しそうに名前を呼ばれて「バイバイ!」と声をかけられていました。明るい顔でホッとしました。
2人とも学校では思うようにしゃべれなかったのでしょう。「母さん、お母さんあのね・・」と堰を切ったように娘に話し始めました。今日ばかりは、弟たちやばあば、動物のことなど目に入らないようです。
学校でした事、思った事、うまく表現できなかった事など次から次へと止まりません。お姉ちゃんの話を聞いていると「もう!僕の話を聞いてくれない!」とお母さんの取り合いです。
第一関門を自分で乗り越えたのです。しっかり共感してあげて認めてあげたいと思いました。私は少し距離を置いて2人の小さい弟たちをお世話しながら歩いて帰りました。
ひとしきり話したら急にお腹がすいてきました。途中の公園で残りのスナックを食べました。すると思い出したように「perfect!って、どういう意味?」と流暢な発音で聞くのです。「完璧ってことよ。どうして?」と聞いたら「先生は僕が鉛筆握っただけでperfect!って言うよ。たいしたことなくても何度もperfect!って言うんだ」と、まんざらでもない顔で報告してくれました。
お姉ちゃんはスナックを食べながら「明日も行く!」と元気に言いました。弟は「まあ普通」と言いながら恥ずかしそうにバックパックから手紙を出して見せてくれました。初日なのに2人の女の子からラブレターを貰ったのです。かわいい絵の横に「I LOVE YOU!〇〇」と孫の名前が書いてありました!!