日米貿易協定は、このままでは事実上の日米FTAへと発展する〜私たちの暮らしにかかわるあらゆる分野がグローバル企業の市場として再編されてしまう!

 日米貿易協定について、時事ブログでは鈴木宣弘教授の記事をすでに紹介していますが、先日開催された、「ここが問題、日米FTA ~各党・各議員に聞く~」における同教授の話も、この日米貿易協定を理解する上で、とてもわかりやすかったので、要点を記します。
 今回の交渉では、トランプ大統領の選挙キャンペーンのために、「自動車に25%関税をかけられるよりはましだろう」と自動車の関税撤廃を反故にされ、対日農畜産物輸入は1.5倍にまで拡大させられ、米中貿易戦争の尻拭いに余剰トウモロコシまで買わされました。また協定自体が、貿易額の6割にも満たないため、WTO違反協定でもあります。「犯罪者に金を払って許しを請う」ような「失うだけの交渉」というのが実態といわれる日米貿易協定ですが、日本政府はなぜいいなりなのでしょう。
 もちろん植民地だから、“戦後の米国の占領政策の総仕上げ”に従っているということでしょうが、現日本政府自体がグローバリズムのうまみを最大限に享受しようと、大企業を優遇し、オトモダチで支配を固める意向で政治をしています。つまり、アメリカ政府や巨大企業には逆らえずにATMと化すのだが、日本国内やアジア(RCEP)に対しては同じ手法を踏襲し、合法的?に支配するという、まるで時代劇の越後屋!のようなことをしているのです。上にやられたことを、同じように下にする、という、鬱憤晴らしのいじめの構造のようにも見えます。おどろくべきことに、こうした負の連鎖は今もって続いているのです。
 まずは、根性の悪い、こんな残念な政権は、早いところ交代させないといけないわけですが、肝心の野党はといえば、これまた同じ穴のムジナのような情けない有様です。これでは、国会もただの通過儀礼になってしまいます。こうしたことを、山本太郎氏はお見通しです。
 今回の合意は終着点ではなく、アメリカはすでに22項目の「対日交渉目的」を明らかにしており、このまま第2ステージへと交渉が続けば、私たちの暮らしにかかわるあらゆる分野が、グローバル企業の市場として再編されていくことになってしまいます。先住民族をジェノサイドするような優生思想が、こうしたグローバリズムを正当化しています。本当の顔を隠したまま、経済的にあたかも合法であるかのように推し進められているのが、メガ貿易協定なのですから。まさに悪魔の所業です。ツイートにあるように、最大級の危機です!トランプ大統領がただのアメリカ・ファーストであるはずがない!とおもいたいところです。
  ディスクロージャーがすすみ、エネルギー革命が起き、まともな政治家によってインフラが整備されたら、あっという間に世界は薔薇色になるのですが。心の成熟とともに。
(しんしん丸)

注)以下、文中の赤字・太字はシャンティ・フーラによるものです。

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【前半】鈴木宣弘「ここが問題、日米FTA―各党・議員に聞く」
配信元)

◯TPP11(米国抜きのTPP)が2018年12月30日に発効した。そこで、米国は自分の分はどうしてくれるとばかりに、日米FTA(自由貿易協定)交渉がはじまり、8月25日に基本合意をして、9月末に署名がされた。ルール逸脱の中で、しかも内容を隠しての無謀なスケジュールで進められた。

◯かつてTPPが頓挫した時に、官邸が急がせた日欧EPA(経済連携協定)も、2019年2月1日に発効した。EUにはTPP以上(チーズの全面関税撤廃など)を譲る。

◯さらに官邸は、RCEP(東アジア地域包括的経済連携)も「TPPプラス」にしようと邁進している。

◯これらを合わせると、現状は大問題になったTPP12より事態が悪化している。
しかしその深刻さは、国民に認識されていない。


鈴木宣弘氏 撮影:しんしん丸

◯今回の協定は、米国へ輸出される自動車や牛肉の関税撤廃は反故にされるという、日本にとっては非常に「片務的」なものとなり、ただトランプ大統領の選挙対策のためだけという「つまみ食い」協定である。

◯また、今後の第2ステージでの交渉では、「自動車のために農産物をさらに差し出す」ことを、交渉責任者は実質認めている。

◯米の追加輸入枠がとりあえず回避されたのは、コメ主産州のカリフォルニアは初めから大統領選で勝てる州ではないからトランプ大統領は捨てているので、とりあえずは関心外だというだけ。

◯WTOは、特恵的貿易ルールの締結を禁止しているが、「実質全て(9割以上)の貿易」が含まれることを条件にFTAを認めている。

今回、対米輸出の4割を占める自動車の関税撤廃はしなかった。
つまり貿易額の6割に満たないわけで、WTO違反協定
というわけである。日本政府の84%の関税撤廃という発表は虚偽である。
日本は関税撤廃を明記したというが、ライトハイザー米通商代表は「自動車関税の撤廃はこの協定には含まれていない」とコメントしている。

◯「自動車に25%関税をかけられるよりはましだろう」と自動車の関税撤廃を反故にされ、米中貿易戦争の尻拭いに余剰トウモロコシまで買わされるという、「犯罪者に金を払って許しを請う」ような「失うだけの交渉」というのが実態だ。

◯余剰トウモロコシは飼料用トウモロコシの食害対策というが、そもそも飼料用は粗飼料であって、米国からの濃厚飼料とは用途が違い、代替はできない。
国産米をトウモロコシに代わる飼料にしようと推進しているエサ米政策とも整合しない。

恐ろしいのは、引き続き25%関税をちらつかせて、際限なく日本に様々な「尻ぬぐい」を要求してくることである。
ずるずると米国の要求に応え続ける対米従属的な政治・外交姿勢から脱却できない限り問題は永続することを改めて深刻に認識しないといけない。

◯ウィスコンシン大学の教授は「食料は武器で、日本が標的だ。食料だけでなく、畜産飼料も全部供給すれば、日本を完全にコントロールできる」という趣旨の発言をしていたという。

◯米国産大豆、トウモロコシはほとんどが遺伝子組み換え。
米国産小麦、大豆、トウモロコシには除草剤が残留している。

◯世界的にグリホサートの規制が強まる中、日本は米国の要請のままに規制を緩和。
「日本の安全基準値は、日本人の健康被害のリスクではなく、米国の生産に必要な散布量から見込まれる残留量で決まる」という信じられない事態である。
しかし、これは我々の置かれている立場を象徴している。

◯自動車のために食を差し出し、自動車も守れない、失うだけの交渉になりかねない。

◯食の安全基準もTPP水準を超える譲歩が明白。日米FTAでまず決まるのがBSE月齢制限撤廃とレモンなどの防カビ剤表示の撤廃。
これは「農家の問題」では済まされない国民の命に関わる深刻な問題であり、国民が広く深く認識しないと手遅れになりかねない。

米国は新NAFTA(北米自由貿易協定)にて、遺伝子組み換え食品の貿易円滑化に重点を置いた条約をTPPよりも強化している。この新NAFTAが日米FTAの土台になることは間違いない。

◯そして日豪EPAでは、日本が日豪EPAより有利な条件を他国に提示したときは、それを豪州にも適用する再交渉ができることになっている。つまり「自由化ドミノ」が止まらなくなる危険がある。

◯TPP断固反対として選挙に大勝し、TAGはFTAではないと共同声明と副大統領演説まで改ざんし、悪事を正当化して、国民をごまかせた(まったくごまかせていないが)とする日本政府。

◯ISDS(投資家対国家紛争処理)条項についても、NAFTAで米国がISDSを否定する事態になった。しかし日本だけが死に体のISDSに固執している。今でも米国グローバル企業はISDSを入れたいから、日米FTAでは国際的潮流に逆行してISDSが組み込まれる可能性もある。日本は「飛んで火に入る夏の虫」だ。

※密約といえば、忘れてはならない猿芝居。
・TPPの主な合意内容は、すでに2014年オバマ大統領の訪日時に、一部メディアが秘密合意として報道していた。フロマンさんと甘利さん(典型的斡旋利得罪のはずが不起訴=この国の三権分立は崩壊)の徹夜でフラフラになった演技は見事だった。黒く染めていた頭髪をだんだんに白くしていったと聞いて愕然としたものだ。

「安い食品で消費者が幸せ」のウソ〜食に安さを求めるのは命を削ること、今の基準でも危険な輸入農作物。

◯米国産赤身肉から、日本では生産に認可されていないエストロゲン(成長ホルモン)が600倍も検出されている。「米国と貿易戦争はできない」(所轄官庁)として無検査なのである。

◯オージービーフも安全ではない。
オーストラリアは、EU向けには成長ホルモンを使わないが、日本はOKなので投入している。

◯ラクトパミンという牛や豚の餌に混ぜる成長促進剤も問題ありとして、中国やロシアでは禁止されている。日本でも国内使用は認可されていないが、輸入は素通り。

成長ホルモンが使われている米国乳製品も危ない。米国スターバックス、ウォルマートでは「うちでは使っていません※」と宣言せざるを得ない状況となっているのに、認可もされていない日本には素通り。日米FTAで米国乳製品はさらに増える。

たとえ表示ができなくとも、流通ルートにうったえることは有効となる。消費者からの働きかけで状況は変えられる。

郵政マネーに続き、次なる標的はJAマネーである。規制改革推進会議の答申の行間はそう読める。先方の思惑は「解体」だから、JAが自主的に推進している「自己改革」とは峻別しなくてはいけない。

◯グローバル種子企業への便宜供与。

1.種子法廃止
2.種の譲渡
3.種の自家採種の禁止
4.Non-GM 表示の実質禁止
5.全農の株式会社化
6.グリホサートの残留基準値の大幅緩和
7.ゲノム編集の野放し

グローバル種子企業の世界戦略は、種を握ることである。
・全農の株式会社化も、子会社の全農グレインがNon-GM 穀物を日本に分別して輸入しているのが目障りなので買収しようとしたが、親会社の全農が協同組合なので、日米合同委員会で全農の株式会社化が命令された。
・GM非表示でも、消費者庁の検討委員会には米国大使館員が監視に入っていたという。
・インド、中南米、中国、ロシアでは国を挙げてグローバル種子企業を排除し始めたが、餌食にされつつある日本は、GMとグリホサートで病人も増え、「ダブル儲けの新ビジネスモデル」との声さえ漏れている。

公益的なものをオトモダチ企業の儲けの道具に差し出させるのが、規制改革や自由貿易の本質である。国民の命に直結するライフラインが狙われている。

◯水道、医療、共済事業への攻撃も日米FTAで本格化するだろう。

◯農業、卸売市場、林業、漁業権など、「攻めの農業・林業・漁業」の本質は、既存の農林漁家を農地・山・海から引き剥がし、オトモダチ企業が儲けの道具にするだけだから、このままでは、地域も国民も疲弊し、社会は持続できなくなる。

◯誰が決めたか〜司令塔は未来投資会議、実行部隊が規制改革推進会議

農産物貿易自由化は、農家が困るだけでなく、安全安心な国産の食料が手に入らなくなる危険をはらむ。農家の問題ではなく、国民の命と健康の問題である。

◯このまま自給率が1割になったとしたら、もう選ぶことすらできない。今はその瀬戸際まで来ていることを認識しなければならない

◯「TPPでもうかるのはグローバル企業の経営陣だけで、賃金は下がり、失業が増え、国家主権が侵害され、食の安全が脅かされる」と本質を見抜いた米国民のTPP反対の声は、トランプに限らず大統領候補全員がTPPを否定せざるを得なくした。

いくらグローバル企業が政治的に働きかけようとも、国民の声で情勢をひっくり返したのである。

◯米国の言いなりに武器を買い増すのが安全保障ではない。
食料・農林水産業政策こそ、国民の命、環境・資源、地域、国土・国境を守る最大の安全保障政策だ。
「食を握られることは国民の命を握られれ、国の独立を失うことだ」と肝に銘じて、国家安全保障確立戦略の中心を担う農林水産業政策を再構築すべきである。

◯さらに重要なことは、今回の合意は終着点ではなく、アメリカはすでに22項目の「対日交渉目的」を明らかにしており、このまま交渉が続けば、私たちの暮らしにかかわるあらゆる分野が、グローバル企業の市場として再編されていくことになります。

私たちは、このたびの日米「合意」に断固反対し、臨時国会での承認を許さないために奮闘するとともに、新自由主義的「自由貿易」路線に終止符を打つため、国内外の人たちと連帯して、これからもねばり強く行動する決意を表明するものです。〜主催:TPPプラスを許さない!全国共同行動実行委員会

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