ぴょんぴょんの「カオスな盆休み」 ~帰りの飛行機が欠航しちゃったよ!

 台風7号の影響で、盆休みの新幹線のダイヤは大幅に乱れ、帰省客も外国人旅行者も大きな影響を受けました。深夜に出発、早朝に到着という「夜行新幹線」まで出現したようです。
 こういう混乱の風景を見るたびに、「こんな人出の多い時に外に出るからだよ、ば〜か!」と思ったものでしたが、そんな嵐の中に、まさか自分もノコノコ出ていくことになろうとは・・。
(ぴょんぴょん)
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ぴょんぴょんの「カオスな盆休み」 ~帰りの飛行機が欠航しちゃったよ!

帰りの飛行機が欠航に


くろちゃん、来たよ〜! どうだった、関東のイベントは?

おう! すまんな、わざわざ来させちまって。おれの方から、みやげ持って行こうと思ってたんだが。

いいよ、いいよ・・って、くろちゃん、顔色?

これでも、ましになったのよ。ちょっと前まで、カーキ色だったからな。自分でも鏡を見てビックリしたわ。

カーキ色?! そう言えば行く前、体調悪いって言ってたよね。

食ったもんが、古かったらしい。

夏だから、気をつけてよね。しかも、お盆休みは混んでて大変だったでしょ。

たしかに行く前は体調が良くなかった。だが、行けば、アドレナリンが出て元気になるって思ったのよ。それに、盆休みと言っても東京は空いてるって聞いてたし。順調に行けば、スムーズに帰れる・・はずだったんだが。

何かあったの?

あと一歩というときに、帰りの飛行機が欠航になっちまってさ!

やっぱり〜、台風のせいだねえ。あの時は新幹線もボロボロだったし。

いやいや、台風のせいじゃねえ。話すと長くなるが、いいか?

うん、聞かせてよ。

最終日、11時20分のハネダ発オオイタ行きに乗る予定だった。1時間以上前に空港に到着して、大混雑の保安検査場を通過、本館ターミナルからバスに乗って、ボーディングブリッジの着いたサテライトという建物に到着。さあ、ここまで来たら、あとは飛行機に乗るだけと思ったら、なんやらアナウンスが頻繁に流れている。一生懸命聞くが、音が響きすぎてよく聞こえねえ。どうも、「11時10分に何かが決定する」らしい。


なにが、決定するんだろう?

決定があったのは11時30分で、オオイタ行きが、なんといきなり「欠航」になってしまったのよ!

「欠航」って、よっぽどの悪天候とか? でも、故障した飛行機に乗って落ちるよりはいいよね。

おれもそう思った。盆休みで、取り替える飛行機も足りないのかと思った。が、真相はもっと深刻だった。

なんだって?

ふたたび、聞こえにくいアナウンスで「フクオカ」という一言が聞こえたとたん、ほぼ全員が一斉に立ち上がり、1列に並び始めた。これは、フクオカ便のチケットを差し替える手続きのためらしい。おれも、あわてて並んだが長く立っていられず、あきらめて席に座った。席に座っているのは母親と子どもたちだけ。見れば、終わりが見えないくらいの長蛇の列になっている。

ほぼ満席だったんだねえ。

次のアナウンスで、フクオカではなく、オオイタ空港への着陸を希望する列が設けられた。おれは以前、強風のためにオオイタ空港に下りられず、フクオカで降ろされたことがあったが、めちゃくちゃ疲れたのでオオイタの列に並んだ。が、5人しか並んでなかった。

なんで、そんな少ないの?

おれも思った。なんでだ? 後ろに並んでいた上品な老婦人に聞いて、初めて事情が見えてきた。オオイタ空港は現在、着陸不能だったのだ。再開の見通しは立っていないとのこと。

あ! 思い出した! ニュースでやってたよ!



そうそう、これこれ。おれたちは「着陸不能」としか聞いてなかったが、訓練飛行機の胴体着陸が原因だったとは、やってくれたなあ。

でも、冷静に見ると、きれいに胴体着陸してるよね。おかげで、誰もケガをしなかったし。よっぽどの熟練パイロットさんだったと思うよ。

わかるが、乗るはずの飛行機を欠航にされた身としては、このツイートみたいに、「お盆に練習はやめとき〜」と叫びたい。


盆休みのカオス


で、それから、どうなったの?

しばらく、そのまま並ばされていたが、「専門の係員が参りましてから、チケット差し替えの手続きを始めます。今しばらくお待ちください」とのことで待っていると、「専門の係員」が登場し、最新兵器「QRコード」を人々のスマホに読み込ませた。QRコードを写し取った人々は、次々とバスのりばに急いだ。


くろちゃんも、フクオカ行きに換えてもらったの?

ああ、オオイタはあきらめて、14時20分発のフクオカ行きの席をゲットした。そのフクオカ便は、おれたち「難民」を乗せるために、わざわざ機種変更してくれたのよ。「ボーイング787-8 」という、これまで乗ったこともないような、でっかい飛行機だったわ。

ひとまず、乗り込めて良かった。

いや、乗るまでがまた大変だったのよ。だって、バスでターミナルまで戻って、預けた荷物を引き取って、そこからまた搭乗手続きだよ。係員からは「ターミナルの1階の8番カウンターで手荷物を引き取ったら、次は2階の4番カウンターに行ってください」と、言われていたのに、いつも通りに保安検査場に入ろうとしたら、ストップかけられちまって。めんどくせえよな、一度外に出たら、入れない仕組みになっているのよ。


それも、安全のためだよ。言われたとおりに「2階の4番カウンター」に行けばよかったのに。

だからね、こっちもいっぱいいっぱいで、覚えられないの。紙にでも書いといて欲しかったわ。一生懸命説明して、わかってもらえたから良かったが。

なんか、罰ゲームみたいなこと、させられてるね。

いったい、なんの罰だよ? そんなことより、おれの頭は次の作戦に向かっていた。フクオカに着いたら次は車が停めてあるオオイタ空港だ。以前の経験ではハカタからの特急が満席で、混雑の中で1時間以上立ちんぼだった。今回は体力的に、それはムリ。そこで、新幹線でコクラまで行くことにした。

でも、新幹線だと料金がかかるよ。

だいじょうぶ! 後から航空会社に請求すれば、15,000円までの必要経費を出してもらえることになっている。


へえ、15,000円なら、宿泊もできそうだね。

そこで、搭乗を待ってる間にナビで調べて、ちょうどいい乗り継ぎルートを見つけた。問題はその新幹線に間に合うかどうかだ。フクオカ空港に着陸したのは4時近く。そこから地下鉄でダッシュでハカタ駅へ。そこで、おれが見たものは?!

え?

盆休みのカオスだった! !ものすごい人の波! 改めて、おれは盆休みの現実を見せつけられた。人、人、人をかき分けて、新幹線の切符を買わなければならない。あと15分しかない・・なんとかコクラまでの切符を買えたのが5分前、ギリギリ間に合った。


体調不良だったのに、よくがんばったね。後は、コクラから特急に乗り換えて、オオイタ空港最寄りのキツキで降りればいい。

そう。キツキからはタクシーで空港バス停留所まで行って、空港まで乗る。そして、車を停めてある「まほろば駐車場」に電話して、迎えを頼めばゲームオーバーだ。

キツキから、タクシーで直接空港に行った方が早いよ。

実は、現金が手元に残ってなくて。財布に残ってるのは千円札が2枚と小銭がちょっとだけ。カードは使いたくないし。


「まほろば駐車場」のおっさんの臨死体験


それは、心細かったね。そうだ、キツキの高速バスの停留所って、高速道路まで上るんじゃなかった?

知ってるさ。前にフクオカで降ろされた時に体験済みだ。あの階段は、建物だと3階以上はありそうだ、しかも急勾配で、そこを重い荷物をひきづって上るのよ。

エレベーターはないの?

あるかい、利用者もほとんどいねえのに。また、あそこを上るかと思っただけでゆううつになったが、まずはタクシーを、と改札を出ると、見慣れた車が止まっていた。「まほろば温泉、まほろば旅館、まほろば駐車場」と書いてある。

まほろば駐車場?

あ、今回、おれがオオイタ空港で車を停めた駐車場だよ。空港の駐車場は1日500円なのに、「まほろば」はたったの200円だった。

ヤスい!なんでそんなに安いの?

それは、あとからわかる。

ふうん、じゃ、なんでそこの車がキツキ駅前に停まってたの?

温泉や旅館の客を迎えに来てるんだろう、と思った。

乗せてもらって、空港の駐車場まで連れてってくれたら、楽だったのにね。

そんな虫のいい話、あるはずねえし。そうこうするうちに、駅前に停まっていた唯一のタクシーは先客に乗られてしまった。そこに客を乗せた別のタクシーが到着したので、乗せてくれと頼むと、キツキ市内では客を乗せられないと言う。

タクシー会社同士のルールがあるからね。


しかたねえ、タクシー会社に電話するか、と思ってふと後ろを振り返ると、さっきの「まほろば駐車場」のおっさんが、ニコニコこっちを見ている。おれが礼すると向こうも返してくれる。もしかして、おれのこと覚えてる?

え?!駐車場で会っただけなのに、くろちゃんのこと覚えてた?

おれはおっさんに話しかけた。「この車は、旅館のお客さん用ですよね?」「いや、お客さんが、フクオカまわりでオオイタ空港に帰るって電話くれたんで、キツキまで迎えに行きますって言ったんですよ。」

キツキ駅からオオイタ空港まで、高速で20分はかかるのに迎えに来てくれたんだ?

おれも電話しとけばよかったと言うと、「どうぞ、乗ってください」と言う。

え?!乗っていいの?

おれも、夢でも見てるのかと思ったわ。乗り込んで数分、電話した客が現れた。見ると4人いる。おれは下りようとしたが、よく見たら、おっさんの車は4人乗りだった。

アチャ〜!

おっさん、別に悪びれもせず、「引き返して、別の車で来ます」と言った。彼らはタクシーで行くからいいと言い、結局、おっさんはおれだけを乗せてオオイタ空港、いや駐車場までゴールインしてくれたのよ。

なんとまあ! ラッキーな! 心臓破りの階段も上らなくてすんだし。乗れなかった人たちには気の毒だけど、まるでくろちゃんのために待ってたようなもんだ。

しかも、オマケ話をすると、車中で聞いたおっさんの話がおもしろかった。「おれ、1回、死んでますからね」って言うんだよ。5年くらい前、心筋梗塞で担ぎ込まれて意識不明の重体だったらしい。「そういう時って、お花畑が見えたりするのはホントですか?」と聞くと、「いや、花畑も見えんかった、先祖や親戚も迎えに来んやった、おれ、ずうっと周囲の話、聞いてたもん。」

へえ! 耳だけは聞こえてたんだ。

耳は最後まで聞こえているというのは本当。おっさんは言う、「まわりで、家族や親戚が、葬式はどこでするだの、あの伯父さんは呼ばないとうるさいから、とか話してるのが聞こえるのよ」「一番頭に来たのが、看護師が入ってきて『支払いをするのはどなたですか?』と聞いてたときだった。」

本人が亡くなった後に誰も払ってくれないと、病院も困るからね。

耳だけ聞こえて、目も開けられない状態で、ICUで3日間を過ごしたおっさんの耳に聞こえたのは、医者の最終宣告だった。「このAEDで最後にします。」そして、最後の電気ショックでおっさんは復活した。


うわあ!ギリギリセーフじゃん!

めでたく退院し、貴重な体験もした。いずれ死ぬならそんなにカネもいらない。てことで始めたのが、まほろば駐車場を含むグループ施設だったらしい。

だから、駐車料金が1日200円だったのか。

降りる時、おれは、財布に残していた最後の2千円を渡した。おっさんは、「ならば、いただきます!」と言って、気持ちよくもらってくれた。そして、駐車場を出る時、「まった、来ってねえ〜!」と、あのニコニコ顔で手を振ってくれた。

あかるい!

夕闇迫る海岸線を走りながら、家にたどり着いたのは予定時刻の6時間後。疲れたが、なんかおもしろい旅だったなあ。

終わり良ければ、すべて良し。チャンチャン♪


Writer

ぴょんぴょんDr.

白木 るい子(ぴょんぴょん先生)

1955年、大阪生まれ。うお座。
幼少期から学生時代を東京で過ごす。1979年東京女子医大卒業。
1985年、大分県別府市に移住。
1988年、別府市で、はくちょう会クリニックを開業。
以後26年半、主に漢方診療に携わった。
2014年11月末、クリニック閉院。
現在、豊後高田市で、田舎暮らしをエンジョイしている。
体癖7-3。エニアグラム4番(芸術家)

東洋医学セミナー受講者の声

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