ぴょんぴょんの「ロシア産のカニ」 ~カニもウニもイクラも数の子も、ロシアの恩恵を受けている日本

 最近、テレビ通販で、有名人がタラバガニやズワイガニを宣伝しているのを見かけます。私はカニがなくても生きていけますが、りっぱなタラバガニの身を見ると、思わず「ゴクリ!」となります。
 でも、お正月でもないのに、なんで今ごろカニ?それに、ロシア産だと言うではないですか。ロシアとは、絶交状態じゃなかったの?
(ぴょんぴょん)
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ぴょんぴょんの「ロシア産のカニ」 ~カニもウニもイクラも数の子も、ロシアの恩恵を受けている日本

ロシア水産物は輸入禁止になっていない日本



カニ! おいしそう!

そうかあ?

あれ? 興味なさそうだね。そうそう、こないだテレビ通販で、でっかいタラバガニを売っててね、あやうく電話しそうになった。

タラバガニなら、高いだろ?

それが、そうでもないんだ。ロシア産だからかな?

は? ロシア産? ロシアとは現在、絶交中じゃなかった?

いやいや、ロシア産の水産物は、ふつうに北海道の港に入って来てるって。北海道の水産関係者も「問題ないよ。水産物は輸入禁止の対象になっていないからね」って。(NHK

なんだ、ロシアからの水産物は輸入禁止になってないのか。

農水省に聞いたら、2022年5月時点で、ロシアからの輸入禁止の対象となっているのは、ウォッカなどのアルコールや木材、自動車の部品などあわせて38品目で、水産物は輸入禁止の対象じゃないから、輸入しても問題ないって。(NHK


おかしい! 石油や石炭は輸入禁止で、水産物は輸入できるだと? 全国カニ・ファンクラブから脅迫でもされたのか?

さあね、ロシアからの輸入を止めたら、日本の水産加工業界への影響が大きいということで、水産庁が決めたらしいよ。(蟹通販お取り寄せ

水産庁が、そんな権限を持っていたとは。


日本が輸入したロシア水産物は過去最高額に達した


一方、ウクライナ戦争の前までは、世界で一番、ロシアのズワイガニを輸入していたのはアメリカだよ。なのに、今のアメリカはカナダのズワイガニしか輸入していない。アメリカは、ウクライナ戦争開始後まもなくの2022年3月に、ロシア産水産物すべてを禁輸にしたからね。

なら、日本もマネしないといかんだろ。後がコワいぞ。

大目に見てくれてるのか、気づいてないのか。でもね、2022年のG7でロシアに対する「最恵国待遇の取り消し」が決まって、ロシア産水産物の関税率が引き上げられたんだ。

これでもか、って感じだが、ロシアはそれほどこたえてないぞ。

そうなんだよ。なんと、2022年に日本が輸入したロシアの水産物は、ソ連がロシアになって以来の最高額に達したらしい。読売新聞

関税上げても、輸入量が増えた?

実はこれ、アメリカがまいたタネなんだよ。アメリカには申し訳ないんだけど。

なんだって?

アメリカがロシアのカニを禁輸にしたせいで、ロシアのカニがあぶれて、値段が下がったんだ。しかも日本は、カナダから輸入するよりもロシアのほうが近いし、輸送コストもかからないから、いっぱい入ってきたってワケ。

そうか、アメリカがロシア水産物を禁輸にしたのは、日本にとってラッキーだったんだ。だが、アメリカの歯ぎしりが聞こえてきそうだ。

逆に、ロシア制裁のあおりを受けたのは、ノルウェーサーモン。


ああ、あの色鮮やかな、養殖のサケだな。見た目もきれいだし、油ものってうまそうだが、養殖に多くの薬が使われているから要注意のサーモンだ。(Business Journal

だけどね、日本じゃあまり知られてないのか、人気があるんだよ。そのノルウェーサーモンは空輸で送られてくるんだけど、ロシアが制裁の対抗措置で、EUの飛行機がロシア領空を飛べなくなったせいで、ノルウェーサーモンの価格が上がったんだよ。

ほお、アメリカの制裁のおかげで日本のカニは安くなった。だが、ヨーロッパからの薬漬け養殖サーモンは値上がりした。おれにはどっちも関係ねえが。

回転寿司屋さんは、困るだろうね。


ロシアと漁業交渉をしている「大日本水産会」


ところで、さっきからふしぎに思ってるんだが、アメリカに右へ倣えもせず、ロシア水産物の輸入を認めさせたのは、ほんとに水産庁か?

わからないなあ? 鈴木宗男、という意見もあるけど?

え? ないない、それは、ないだろ。

それなら、ふだんから、日本とロシアの漁業交渉をしてきた人たちじゃない?

サケ・マス漁業交渉とかやってる?

そうだね、ロシアが領海と主張する北方四島周辺の水域で、日本漁船が安心して操業できるようにする、取り決めを作る人たちじゃないかな。

やっぱ、鈴木宗男?

鈴木宗男
Author:Federation Council [CC BY]

たしかに、鈴木宗男氏は北海道の漁業にくわしい。彼によれば、「戦後、貝殻島水域は旧ソ連によって実行支配されましたが、貝殻島周辺は好漁場で、昆布採取を生業とする漁民は危険を冒してでも出漁しなければ生活が成り立たず、無理な操業を続けざるを得ませんでした。そのため、旧ソ連による日本漁船の拿捕(だほ)が多発し、大日本水産会が努力して旧ソ連と交渉し、1963年に異例の民間協定が締結されたのです。」(PRESIDENT Online

「大日本水産会」? 右翼団体みたいな名称だな。

この団体こそ、ロシアと漁業交渉をしている人たちだよ。2014年の「日ロさけ・ます漁業交渉の結果」にも、「大日本水産会」の専務理事が協議に出席している。

どんな団体なんだ?

明治15年(1882年)に設立された古い団体で、目的は水産業の振興、経済的、文化的発展。「マルハニチロ」「ニッスイ」「ニチレイ」と言った、500余りの水産関連団体から構成されている。

なるほど、政府も、大企業集団から「ロシア産の水産物の輸入を止めるな」と言われたら、聞くしかないか。

それにね、「大日本水産会」の会長は歴代、農水次官経験者の「天下りポスト」なんだ。(現代ビジネス

農水次官?

農水省官僚のトップだよ。


そういうことか。元官僚のトップを会長にいただく「大日本水産会」の言うことを聞かねえと、未来の農水次官の天下り先が消えるってんで、政府も話を飲んだ?

わかんないよ。「大日本水産会」より、もっとロシアと太いパイプがある人が、一声吠えたのかもしれない。

そういう、ロシアと太いパイプを持ってる人がいるなら、日本とロシアのつながりが消えないように、積極的に働いてほしいな。


日本の食卓を支えているロシア水産物


そうだね。欧米の流れに従う風潮を変えて、日本の利益のためにロシアと対等につき合える人がいてほしいよね。ロシアからの水産物輸入だって、許可はされてるけど、支払いに不自由な思いをしているからね。

ロシアは、国際的な決済ネットワーク「SWIFT」から締め出されているからな。

だから、日本円の現金払いしかできないんだ。しかも、ロシア企業に現金払いするには国の許可が必要で、2週間くらいかかるそうだよ。ロシア水産物の輸入会社はこう言う。「制裁強化にともない、支払いには苦労しています。国内では需要が多いので引き続きロシア産のウニを届けたいのですが、状況は厳しく、ロシアの漁師たちも制裁のことを知っているので複雑な気持ちでしょう」。(NHK


おいおい、ウニまでロシアから輸入しているんか?

ウニだけじゃないよ〜。タラコも、イクラも、数の子も。農水省のデータによると、2021年に日本が輸入した水産物はトップが中国、第2位がチリ、第3位がロシアで、特にタラバガニは94%がロシア産(輸入額108億円)、タラコも56%(130億円)、ズワイガニも50%(266億円)、ウニも46%(97億円)がロシア産だった。毎日新聞

ヒョエー! 日本人の大好物はほとんどがロシア産か!

でもね、こんなことつぶやいてる人もけっこういるんだ。


う〜ん、ウクライナに侵攻したロシアは悪者だという迷信を、まだ信じてるんだな。

きっとこういう人たちも、気づかないうちに、ロシア産水産物をたくさん食べてるはず。

日本人は、ロシアの最高のお得意だってこと、自覚しないとな。ロシアのタラコが入ってこなくなったら、明太子も値上がりして食えなくなるぞ。

かまぼこやさつま揚げの原料の、スケソウダラのすり身もロシア産に頼ってるからね。

おでんも、値上がりする。


もちろん、お寿司屋さんも商売上がったり。

回転寿司は即アウトだな。

国産品が豊富にあればいいけど、どれも品薄で、高級すぎて庶民の手には届かないからね。

しかし、これほどまで、日本の食がロシアに依存していたとは驚きだ。

でも、ロシアも日本に助けられているんだよ。だってロシア人は、日本人ほどカニやウニが好きじゃないからね。「ロシアでは日本と違って、カニは特別な食べ物ということではなく、それほど食べません。獲ったカニのほとんどは輸出しているようです。」(蟹通販お取り寄せ

ロシアで売るより、輸出した方がカネになるんだ。

それに、北方領土の海域で日本の漁船が漁をするための、入漁料(にゅうぎょりょう)も入るしね。 ちなみに、ロシアの200海里水域でのサケ・マス漁で、2014年に日本がロシアに支払った入漁料は、約20億円だった。外務省

すごい!そんなに支払っているのか!


予断を許さない状況は続く


でもさ、ロシアはうらやましいよね。石油や天然ガスの資源もあるし、農業も自給自足できているし、オホーツク海はタラバ、ズワイの2大高級ガニの産地で、海洋資源も豊富だし。

ロシアは強いはずだな。

それに比べて、日本は何もないよ。

せめて、知恵があればなあ。

アメリカとは早く縁を切りたいけど、ロシアとはいつまでも仲良くしたいよね。

だいじょうぶ、アメリカも死に体だから、いつ消えるかわからない。だから、そのときの余波に備えろ、だな。とは言っても、ロシアからの水産物輸入だって、いつ切られてもおかしくはない。

「現状、日本政府は『ウクライナの人々を、断固たる決意で支援』するとしつつ、国内経済への影響に配慮し、ロシア産水産物の輸入禁止措置には踏み込まないとするが、アメリカのロシア産水産物の輸入禁止方針もあり、関係者にとっては予断を許さない状況が続きそうだ。」(JIJI.COM

やっぱ、水産物も国内で賄ったほうが無難だな。

今さらそんなこと言ったって、日本の漁業も厳しいんだよ。漁師さんは高齢化して、若い人材も不足しているし、漁船を動かすガソリンも高いし、海洋汚染や海温の上昇で、昔みたいに魚が捕れなくなってるし。

はあ~ 寿司屋のメニューが、かっぱ巻きと、かんぴょう巻きと、卵焼きだけになる前に、日本政府は漁業の立て直しを図らんといかんな。


日本政府、宿題いっぱい。

だけど、やる気なさそう。



Writer

ぴょんぴょんDr.

白木 るい子(ぴょんぴょん先生)

1955年、大阪生まれ。うお座。
幼少期から学生時代を東京で過ごす。1979年東京女子医大卒業。
1985年、大分県別府市に移住。
1988年、別府市で、はくちょう会クリニックを開業。
以後26年半、主に漢方診療に携わった。
2014年11月末、クリニック閉院。
現在、豊後高田市で、田舎暮らしをエンジョイしている。
体癖7-3。エニアグラム4番(芸術家)

東洋医学セミナー受講者の声

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