ぴょんぴょんの「ニューカレドニアの光と影」 ~フランスはなぜ移住者に投票権を与えて、先住民を怒らせるのか

 ニューカレドニアと言えば、時事ブログ紹介された動画を思い出します。おっさんたちが、海辺のヤシの木陰でのんびり夕日を眺めている、あの光景です。
 「彼らは、幸せを感じるのに酒や麻薬を必要としないのです。自然と共に居て、ただ幸せなのです。これが本当の豊かさです。現代人はあまりにも真の幸福から遠い所にいるのではないでしょうか。
 こんな幸福な島で暴動が起こるなんて、旅行客も想像しなかったでしょう。
 ところが歴史をさかのぼれば、フランスの植民地になって以来、ここではたびたび原住民と移住者の間で暴動が起きていたのです。
 宗主国フランスは、暴動の背後に中国や、ロシア寄りのアゼルバイジャンがいる、と騒いでいますが、本当の理由を隠す言い訳としか聞こえません。
(ぴょんぴょん)
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ぴょんぴょんの「ニューカレドニアの光と影」 ~フランスはなぜ移住者に投票権を与えて、先住民を怒らせるのか

ニューカレドニアでの暴動の影響


 
字幕DeepLe翻訳:フランスは、海外領土ニューカレドニアの暴動を取り締まるため、数百人の警察官と国家憲兵を派遣した。首都ヌメアでは、数日にわたる暴動の後も、緊張状態が続く。オーストラリアとフィジーに挟まれた群島で、フランスの新たな投票規則の変更への反対は、致命的な暴力に発展した。ニューカレドニアはフランスの管理が及ばないと、フランス政府は言う。暴徒は住居を焼き、車を放火し、商店を略奪した。投票規則の変更によって、より多くのフランス系住民が投票できるようになるが、独立支持派は先住民族カナック族の票が薄まることを恐れている。パリのカナック人組合指導者たちは冷静さを訴え、暴動よりも政治的な強い声明を求めた。この暴動で5人が死亡、数百人が逮捕された。

美しいサンゴ礁の島、ニューカレドニアで暴動があったね。

ことの始まりは5月13日夜、原住民カナック族の若者たちが、首都ヌメア郊外の幹線道路を占拠し、車に火をつけ、店の品物を略奪したことで治安部隊が出動。7人が死亡、警察官など90人以上がケガ、350人が拘束された。

あのとき現地には、日本人観光客が50人くらいいたらしいよ。でも、空港が閉鎖されて、出国できなくなったって。(NHK

その中の一人が、ようやく日本に帰れたというご報告。



3泊5日の予定が15泊18日になった?! 大変だったねえ。

「なつみ氏」は友人と、ニューカレドニア本島から飛行機で30分の離島イルデパン島にいたが、5月15日の暴動で飛行機もフェリーも止まって、本島に戻れなくなってしまった。X

でも、本島より離島にいた方が安全じゃない?

いやいや、暴動の影響は離島にも。「イルデパンでは道を倒木で塞いで通れなくしていたり、焚き火をして煙をあげていました。私たちも乗っていた車のタイヤに穴を開けられそうになったけど、運転手の兄ちゃんが交渉してくれて、ホテルまで無事辿りつけたのよ〜〜 ちなみに通行のための賄賂は大量のジュース。学びだ。」(X

本島だけの騒ぎじゃなかったんだね。

だが、5月17日の時点で離島のガソリンは尽きてしまい、なつみ氏「移動手段が本当になくなった。あとは食糧が尽きるまで、救援が来るか国内線が復旧するまで持ち堪えるしかないとのこと。」(X

絶体絶命! こんなときこそ、平常心が試される。

それを助けてくれたのは、この美しい自然だよ。


はあ〜、ため息が出るくらいきれいな海。日本からは直行便で9時間、しかも時差はたったの2時間。新婚旅行で選ばれるのもわかるね。

だが、帰れないのも困る。14日目の朝「なつみ氏」は決断する。「離島に取り残された私たちはこのままでは埒が明かないと思い、同じホテルに泊まっていた豪夫婦がチャーターした、個人で運行している海賊ボートと呼ばれるものに乗り、本島へ辿り着きました。 命の保証なし、ゴムボートでの太平洋100km横断、死ぬかと思った…」(X) 「死ぬほど揺れて、5回ほど吐きかけましたが3時間かけてなんとか到着。」(X

太平洋をゴムボートで3時間!

ああ、たとえ遭難しても、こんな状況だから誰も助けに来れない。まさに命がけだ。


暴動が起きた理由


でも、なんで、ニューカレドニアで暴動が起きたんだろう?

要するに、フランス系移住者に対する、先住民カナック族の不満が爆発したんだな。「ニューカレドニアでは、独立を求める先住民族・カナックの人々と、この島がフランス領であることを望む植民地時代の入植者の子孫との間で、数十年にわたり緊張が続いてきました。」(Pars Today


「ニューカレドニアの抗議活動指導者の一人は、この島で今日起きている暴力は実のところ、植民地時代から現在まで行われてきた暴力への反応であると考えています。また、ニューカレドニアの若者にとって植民地主義は過去のものではなく、彼らはフランスを自分たちの機会を奪う存在と捉えています。」(Pars Today

先住民て、どのくらいの割合いるの?

最新の国勢調査によると、先住民は40%以上、ヨーロッパ系移住者の子孫は約25%と言うが、もともとは先住民が100%だったんだよな、250年前の1774年に、イギリスのキャプテン・クックが来るまでは。(Reuters

キャプテン・クックのせいで、楽園がぶち壊された。

クックの肖像画
Wikimedia_Commons[Public Domain]

ニューカレドニアという地名だって、クックがつけたんだよ。理由は「スコットランド(カレドニア)に似てるから」。(Wiki

ひどい! 先に住んでる人がいるのに。

とにかく、クックの侵略以来、先住民はだまされ、病気をうつされ、奴隷にされ、宣教師には「裸はよくない」と強制的に服を着せられ、独自の風習や伝統が根絶やしにされた。

さんざんな目にあったね。

そして、その結果が今の現状だ。先住民の失業率はフランス系移住者の4倍以上。 先住民の大学就学率はフランス系移住者の7分の1。先住民の所得はフランス系移住者より32%低い。先住民の貧困率は32.5%で、先住民以外の貧困率は9%。X

これじゃ、不満が出ないほうがふしぎだ。

法的には、先住民にもフランス系移住者にも対等の権利が与えられているが、経済的・社会的には、先住民はニューカレドニアの一番底辺に置かれている。独立派のカレドニアン・ユニオン事務局長ドミニク・フォチ氏は言う。「略奪や略奪が行われていますが、社会の片隅にいる人々、仕事もなく、食べるものもなく、学校にも行けず、スラム街で暮らし、その隣には裕福な地区がある。カレドニアの人々は尊厳を守るために戦っているのです」。(YAHOO!ニュース )(X

へえ〜、あの美しい島にスラム街があるなんて、想像もつかない。

特に、ニューカレドニアの首都ヌメアは格差が歴然だ。町の南部には高級マンション、ヨットハーバー、観光客に人気の観光ビーチがあり、北部には貧しい労働者階級の工業地帯がある。NHK

首都ヌメア
Author:Thomas@RUN[CC BY]


ニッケルやコバルトなどの資源が豊富な島


ニューカレドニアに工業地帯なんかあるの?

実はニューカレドニア、ニッケルやコバルトなど資源の島なんだ。1853年にフランス植民地になり、一時は流刑地だったが、ニッケルが採れることがわかると、ヨーロッパやアジアから人が押し寄せた。

意外だね。あの島は観光業だけで回ってるかと思ってた。

今でも、ニューカレドニアの輸出のほとんどがニッケルで、地元の雇用のおよそ25%がニッケル関連の仕事だ。知っての通り、ニッケルは1円玉の材料だが、それ以外に、ステンレス、電子機器の部品、EVの蓄電池など需要が多い。ニューカレドニアのニッケル生産量は、インドネシア、フィリピンに次いで世界3位だ。NHK

ニューカレドニアのニッケル鉱山
Author:Barsamuphe[CC BY]

そして、先住民がそこで働いているんだね。

だが、状況が変わった。と言うのも、中国企業がニッケル生産量世界1位のインドネシアに投資したことで、ニッケルが供給過剰になり、価格が下落してしまったんだ。NRI

はあ~ 外国の事情で国内の雇用が減る。グローバルのイヤなとこだね。

ニッケル下落のせいで、ニューカレドニアの3つの精錬工場の1つが生産ストップ。
工場で主に働く先住民は失業してしまった。


それが、暴動につながったんだね。


先住民とフランス系移住者の長い長い確執


これだけじゃない、ここに至るまでの、先住民とフランス系移住者の長い長い確執も、暴動につながっている。だが、もう一つ大きな要因があるんだ。それが「ヌメア協定」の違反。

ヌメア協定?

1998年、先住民とフランス系移住者の険悪ムードに、終止符を打つために結ばれたのが「ヌメア協定」。これは、20年の移行期間をかけて、政治的権限を先住民に与えるという約束だった。この協定には、先住民とフランス系移住者に、ニューカレドニア独立の賛否を問う住民投票も含まれていた。

住民投票をやったんだ?

独立を問う住民投票は、2018年、2020年、2021年の計3回行われたが、いずれの結果も、過半数がフランスに留まることを選んだ。ただ3回目は、コロナで投票に来られない人を想定して、独立派が投票をボイコットしたので、真の結果はわからない。

過半数は、今のままのフランス支配でいいってことだね。

ニューカレドニアの旗
Author:Axtoche[CC BY-SA]

ところが、「ヌメア協定」には、もう一つ重要なことが決められていた。「1998年以降にニューカレドニアに移住した者には、参政権を付与しない」。つまりこれは、先住民の権利を尊重するための法律なんだ。それを今年5月、こともあろうにフランス議会は、あっさりと改正してしまったんだよ。

何を改正したの?

「1998年以降にニューカレドニアに移住した者には、参政権を付与しない」を、「現地に10年以上暮らす住民にも参政権を拡大する」にしてしまった。

つまり、今の時点で言うと「2014年までに移住した人は参政権がもらえる」ってことだね。

「参政権拡大をめぐる憲法改正は、この島の非先住民族の有権者数を増やすことを目的とするものであり、独立支持派からは非難されていました。」(Pars Today)それに、これが通ると、移住者票が14%増えて、先住民を上回ってしまう。NHK

先住民の主張が通りにくくなるね。それで、暴動になったのかあ。

自分たちより収入も学歴もある移住者に投票権を与えたら、自分たちの意見はますます通らなくなる。先住民の「独立した主権国家」という夢が消えてしまう。

でも、5月23日にマクロン大統領が来て、話し合ったんでしょ?

マクロンは「現在の状況で改正を強行することはない」と述べ、改正に向けた手続きを延期する考えを明らかにした。NHK

マクロン大統領
Wikipedia[Public Domain]

延期するだけ・・。

つまり、パリ・オリンピックが終わるまでは保留ってことだな。だが、これに対して、「南太平洋の仏領ニューカレドニアで独立派をまとめるカナク社会主義民族解放戦線(FLNKS)は、マクロン仏大統領に対し、仏系住民の地方参政権を拡大する憲法改正案の撤回を明言するよう求めた。」Reuters

そうだよ、撤回すると言ってくれないと、先住民も安心できないよ。

だが、今のニューカレドニアではどうあがいても、最終的な決定権を握っているのはフランス政府だ。


フランスにとっての太平洋における重要な軍事ポイント


でもさ、フランスも、なんであんな自国から遠い所に、植民地が必要なのかな?

それは、フランスにとってニューカレドニアは、太平洋における重要な軍事ポイントだからさ。

太平洋で? フランスはどこと戦うの?

中国。

へえ? ついこないだ、習近平はフランスを訪問してたよ。


だがマクロンは、「フランスがニューカレドニアから撤退すれば、中国やオーストラリアが空白を埋める」と、中国を牽制する言い方をしている。Reuters)中国ににらみを効かせるための軍事基地として、ニューカレドニアは手放せないんだ。

きっと、アメリカから、そうしろって言われてるんだね。

だと思う。

なるほどねえ、そういうことだったんだ。フランスの植民地支配を終わらせたい先住民。ニッケルなどの資源と、太平洋での立ち位置を確保したいフランス。このせめぎ合いが今の暴動の正体なんだね。

だが、フランスを侮ってはいけない。「フランス当局はこれまで、ニューカレドニアに対し自治を与えると約束し続けてきたが、それらはすべて最終的に、抗議運動への暴力的弾圧へとなっている。」(Pars Today

どうか、暴力ではなく、「天国に近い島」に似つかわしい平和的な方法で、解決に向かいますように。


Writer

ぴょんぴょんDr.

白木 るい子(ぴょんぴょん先生)

1955年、大阪生まれ。うお座。
幼少期から学生時代を東京で過ごす。1979年東京女子医大卒業。
1985年、大分県別府市に移住。
1988年、別府市で、はくちょう会クリニックを開業。
以後26年半、主に漢方診療に携わった。
2014年11月末、クリニック閉院。
現在、豊後高田市で、田舎暮らしをエンジョイしている。
体癖7-3。エニアグラム4番(芸術家)

東洋医学セミナー受講者の声

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