ぴょんぴょんの「『種なし』世界」 ~精子数や精子の染色体に影響する、ジベレリン

 今年はブドウが豊作だったのでしょうか? 10月になるのに、道の駅ではシャインマスカットがズラっと並んでいました。お目当ての種あり巨峰は、隅っこに申し訳け程度に並んでいるだけ。
 そう言えばこの夏、道の駅で買ったスイカを家で切ってみたら、完全種なしだったのには驚きました。スイカは真っ黒な種のまわりの、ザラザラの部分がおいしいのに、種がないので、ただの大きな瓜でした。かぼすは「種あり」を求める客が多いのでしょう、「種あり」売り場の方が広くなっていました。
(ぴょんぴょん)
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ぴょんぴょんの「『種なし』世界」 ~精子数や精子の染色体に影響する、ジベレリン

甘くて、種もなく、皮ごと食べられるシャインマスカット


くろちゃ〜ん、見て見て、おいしそうだよう。


まーた、食いもんの話か。どれどれ? あ! シャインマスカット? ムリ!

ええ? 甘くて、種もなくて、皮ごと食べられるのに?

いいか? なんで、果物は甘くてうまいんだ?

食べてもらうためでしょ?

なんのために、食べてもらうんだ?

あ! 動物に種を運んでもらうため。

だろ? だから、動物は、一番おいしいタイミングをねらってる。なのに、なにを好んで人間は、種なしのまずい果物を食いたがるんだ? それに、当たり前のことだが、種ありの方がうまい。と言うのも、種なしは早く実が落ちるから、早めに収穫される。種ありの方が、完熟まで樹にぶらさがってるから、うまいんだよ。道の駅なえぎ


でも、シャインマスカットは、種はないけど甘いよ。皮もむかなくていいし。「ぶどうは好きだけど皮をむくのが面倒だと思っていた人、種があるのが嫌だと思っていた人、酸っぱいから嫌いと思っていた人がぶどうを食べるようになったんです。めんどくさい要素がなくなった高級なマスカット。それがシャインマスカットとして全国に広まっていって、現在のように人気になりました。」(フルトビ

そうかあ? 一度皮ごと食ったが、口の中に皮が残ったぞ。皮をむこうと思っても、むけないし。ふつうの巨峰の方が食いやすい。

う〜ん、でも、種はないほうがいいよ。お年寄りや小さい子でも、誤嚥することがないから、安心して食べさせられる。


種なしを作るためのジベレリン処理


じゃあ、植物にとって子孫を残すことが一生の仕事なのに、なんで、種なしができるんだ?

う〜ん、たぶん、品種改良して、種なしブドウができる樹を作った?

ブッブーッ! 農薬で処理して、種なしにしてるの!

農薬?

ブドウは「被子植物」だ。受粉してしまうと、ブドウの実が成長して、その中に種ができてしまう。だから、受粉する前に、花粉の代わりに〈ジベレリン〉を吹きかけることで、実は成長するが、種のない種なしブドウが誕生する。

ジベレリン?

「ジベレリン処理とは、植物ホルモン由来の農薬であるジベレリンを水で希釈したものをカップに入れ、ひと房ずつ花房を浸す作業です。」(道の駅なえぎ


ひと房ずつ? めんどくさいね。そうか、だから、シャインマスカットは高いんだ。

おい! 感心するところがズレてるぞ。問題は、農薬だ。


ジベレリンを発明したのは日本人だった


ジベレリンて、どんな農薬なの?

知りたいか? では、教えてやろう。今や、世界の農業で使用されるジベレリン、元をたどれば、発見したのも命名したのも日本人。

農業用 ジベレリン製剤(粉末/液剤)

へえ?

今から70年前、日本統治下の台湾では、 「馬鹿苗病」という稲の病気が猛威をふるっていた。

アハハハ!「ばか苗病」? ネーミングがいいねえ。

笑ってるバヤイじゃねえ、「馬鹿苗病」はやっかいな病気だ。水田にヒョロヒョロ伸びすぎた稲ができて、それが枯れると次の稲に伝染して、またヒョロヒョロ伸びて枯れて、田んぼ全体を枯れさせてしまう。この「馬鹿苗病」について研究していた日本人技師、黒沢英一氏は、ヒョロヒョロの原因は、「馬鹿苗病」菌の出す毒素だと気づいた(1926年)。 (JATAFF

菌の毒素かあ。

その後、東大の藪田貞治郎教授らが、原因物質の化学構造を明らかにし、「馬鹿苗病」菌の学名〈ジベレラ〉から〈ジベレリン〉と命名した(1938年)。

ほんとだ、発見したのも、命名したのも日本人だった。

ジベレリンは、もともと植物にある植物ホルモンで、主な作用は3つある。 1.植物を成長させる 2.果実を大きくする 3.休眠中の種子の発芽を促す。「ジベレリンは、(中略)...ぶどうだけでなく、柿やトマト、なすなど他の果物や野菜の栽培にも使用されており、現在の農業全般に欠かせないものです。」(Nini

でも、種なしにするとは、言ってないよ。

ジベレリン処理で、種なしブドウができることを発見したのは、山梨の農業試験場の岸光夫氏。彼は、密生しすぎて実が崩れやすいデラウェアを、縦に長くするためにジベレリンを試した。するとデラウェアは、早く熟しただけでなく、種なしぶどうになっていた(1959年)! (JATAFF

食紅で着色されたジベレリン溶液(デラウェアに対して)
Author:さかおり[CC BY-SA]

偶然の発見だったんだね。

だが、困ったことに、ブドウの実が小さかった。そこで、ジベレリンの「果実を大きくする」作用 を使って、開花後にもう一度ジベレリン処理を行なったら、ふつうサイズの実ができた。JATAFF

手間が倍になるけど、種なしの大きなブドウができたんだね。

おれは、ジベレリンを2回も散布していいのか、と思うが。


ジベレリンは安全なの?


でも、「ジベレリンはもともと植物にある植物ホルモン」て言ったでしょ。心配ないんじゃない?

だが、ジベレリンを使用したら有機栽培と認められない。

へえ?

「野菜にジベレリンは植物本来の成分と聞きました。有機栽培に使用できると思うのですが、いかがでしょうか?」答えはNO。有機栽培に使用可能な農薬の一覧表に、ジベレリンは含まれていない。つまり、ジベレリンを使用した作物は、有機栽培とは言えない。i−農力

やっぱ、自然じゃないのか。でもさ、1950年代から、世界中のいろんな野菜や果物、樹木に使われてきたでしょ? 日ごろ目にする野菜、果物のほとんどが、ジベレリン処理されているのに、これまで、大きな問題は起きてない。

う〜ん?

それに、農林水産省だって言ってるよ。「ジベレリンはもともと植物が持っているホルモンで、安全性が確認されています。」


はあ? 「びわの種を食うな」とか言ってる農林水産省の言うことなど、おれは信用できねえ。

じゃあ、こういう意見は?「実際にジベレリン処理をする際は希釈して使われることや、収穫直前などに使われることがないことから、残留農薬の可能性も低く、食べたからと言って何か影響を受ける心配はなさそうです。 」(お役立ち!季節の耳より情報局

う〜ん? だが、こういうのもあるぞ。「ジベレリンは通常、無害と考えられていますが、特に適切な用量を適切な期間使用した場合に限られます。高用量や不適切な使用は、人間や動物に悪影響を及ぼす可能性があります。」(NIH

どのくらいが適切な用量なのか、何が不適切か、わかって使ってるのかな?

果樹園だって、トリセツ通りに使ってるだけだろうな。

じゃあ、これは?「種無しぶどうを作る過程で重要な役割を果たしているのが『ジベレリン』。農薬と聞くと気になるのが安全性ですよね。結論から言うと、日本での農薬は使用基準が厳しく設けられているため正しく使用していれば体に害を与えることはありません。安心して皮のまま食べていただけます。」(macaroni

おいおい、日本の農薬の使用基準は、世界一ユルユルなのを忘れたか? これを見よ。


なにこれ?

文章中の、「ジベレリン0.01pm」はミス、正しくは「0.01ppm」。(FDA

ゲゲッ! 台湾は0.01ppmのジベレリンで破棄して積み戻し。一方、日本のジベレリンの残留基準値は0.2ppm。台湾は日本の基準値の20分の1で廃棄したんだ。

そうゆうこと。サンキスト・レモン。日本にも入って来てるよな。台湾が受け取らなかった分、基準がゆるい日本に回されたかもよ。

げえ〜〜〜?

コワいだろ? だが、「ジベレリン」の人体に対する害を検索しても、ほとんど論文が見つからないのよ。

妨害されてる?

ジベレリンの世界市場は5億米ドルに達しており、中国におけるジベレリンの年間生産量は4000トン以上と推定されている。」(NIH

やっぱり〜。

やっと見つけた、ラットを用いたイランの研究論文(2013年)には「GA3(ジベレリン)を経口投与することで、精子数および精子のクロマチン(染色体)の質に影響を与え、ラットの生殖能力を低下させる可能性が示唆された。」NIH

ラットの精子に影響あり?

さらに、新生児ラットに、ジベレリンを1回与えただけで成長が早まったが、精巣の重量は減少して、血中のテストステロンが著しく低下した。ジベレリンを与えたラットの精子は、頭部が異常に大きかったり、不規則な形のもの、頭部や尾がないものなどがあった。NIH

ヤバイヤバイ! ラットくんの精子に奇形? となると、人間も?

そう考えるのが当然だな。そこで、ヒトのサンプルを使った中国の研究論文(2019年)を見つけた。聞いて驚くな。

???

ヒト精液サンプルを異なる濃度のジベレリンに曝露したところ、in vitro(試験管内)で精子運動性が低下した。」(NIH


あ〜〜〜〜、やっぱ人間も、ジベレリンで「種なし」にされるんだ!

「ジベレリンへの曝露は、ヒト精子の運動性を著しく阻害し、(中略)...ヒト精子に酸化ストレスを引き起こすことを示している」「ジベレリンは肝毒性、腎毒性、遺伝毒性、神経毒性、さらには発がん性や催奇形性を有することがわかっている。 ジベレリンは、さまざまなモデル動物で精子産生を減少させ、未熟な精子や異常な精子の数を増加させる。さらに、ジベレリンは精子形成を阻害し、精巣組織を損傷することで、(中略)...不妊症を引き起こすこともわかっている。」(NIH

ひょえ〜! こんなに害があるのに、なんで使い続けてるんだ?

決まってるだろ! 人口削減よ。だが、これは、ジベレリン処理された種なし作物を食ってる方だけじゃなく、散布する人間にも影響があるかもしれない。だが、噴霧されたジベレリンは、市場に出るまでに雨や水で洗い流されてしまうから、消費者への影響は微々たるものかもしれない。

じゃあ、地面に染み込んだジベレリンは?

水道水や井戸水に入るかもしれない。川、海に流れて、ふたたび雨になって、地上に降り注がれるかもしれない。

となると、地球がまるごと、ジベレリンで汚染されるよ。


「種なし100%」を達成するために併用している〈ストレプトマイシン〉


実は、こんな危険をはらんだジベレリンだが、「種なし」を作る秘密兵器は、ジベレリンだけじゃない。

なんと!

想像してみろよ。自分が「種なしブドウ」の栽培農家だったら?「種なしブドウと思って買って、食ったら種が入ってて、それを噛み砕いて歯が折れた、弁償しろ」とか、クレームが来たらどうする?

それは、コワいね。

だから農家は、シャインマスカットの「種なし100%」を達成するために、ジベレリンに〈ストレプトマイシン〉を併用している。「シャインマスカットの種無しで作る研究では、先ほど説明したジベレリン処理を行いストレプトマイシンを浸漬処理を行うと、より種無しフルーツが出来上がることが判明しました。」(お役立ち!季節の耳より情報局


ストレプトマイシンて、聞いたことある。

結核に使う抗生物質だ。かつて、ストレプトマイシンの副作用で、多くの結核患者が難聴になった。

ノオ〜〜!! 「種なし」がコワくて食べられなくなった。つうか、八百屋さんに並んでる野菜のほとんどは、種のできないF1種だし。


だが、考えてもみろよ。店に入って、種なしでまるごと食える、ピッカピカのシャインマスカットの横に、色も形も悪くて、種がジャラジャラ入ってる、有機栽培のブドウが並んでたら、どっちを買う?

・・・結局、ぼくたち消費者が、不自然な食べ物を支持して、増産させているんだ。

ああ、有権者が、日本を売り飛ばすようなサイテーの政治家に投票して、政治を任せてるのと、どっか似てねえか?

すべての原因は、ぼくらにある。(ため息)


Writer

ぴょんぴょんDr.

白木 るい子(ぴょんぴょん先生)

1955年、大阪生まれ。うお座。
幼少期から学生時代を東京で過ごす。1979年東京女子医大卒業。
1985年、大分県別府市に移住。
1988年、別府市で、はくちょう会クリニックを開業。
以後26年半、主に漢方診療に携わった。
2014年11月末、クリニック閉院。
現在、豊後高田市で、田舎暮らしをエンジョイしている。
体癖7-3。エニアグラム4番(芸術家)

東洋医学セミナー受講者の声

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