ぴょんぴょんの「『世界史の原理』より」 ~世界有数の重武装中立国家だった、徳川日本

 映像配信の「アメリカ政権の変遷」シリーズは、今、世界で起きていることを理解するためには、歴史を知る必要があることを教えてくれます。
 ただ、自分で世界史を勉強したいと思っても、どこから手を付けたらいいのか戸惑います。本を選ぶにしても、「教科書みたいな本はムリ」と言う方には、茂木誠・宇山卓栄著「日本人が知らない!世界史の原理 異色の予備校講師が、タブーなしに語り合う」がお勧めです。
 教科書みたいに堅苦しくなく、対話形式で読みやすく、突っ込みどころもあって、おもしろいので、私みたいな遅読家でも、難なく読み終えました。
(ページ番号はすべて、「日本人が知らない!世界史の原理」です。)
(ぴょんぴょん)
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ぴょんぴょんの「『世界史の原理』より」 ~世界有数の重武装中立国家だった、徳川日本

2人の著者について



くろちゃん、これ、読んだ?

おめえ、マンガ以外の本も読むんだな。

失礼だね。ぼくだって本を読むよ。ネットじゃ書けないことまで、書いてあるからね。

で、これは何の本だ?

紹介文によると、「ユダヤとパレスチナ、ロシアとウクライナ、反日の起源、中国共産党、ケルトとアイヌ、アメリカという病・・・現代の『闇』を、通史で解説!ベストセラー著者による決定版【なぜ日本文明は独自性を保てたのか?】教科書に書けない国際情勢の深層に迫る」。ビジネス社

茂木誠なら、YouTubeで知っているが、宇山卓栄って誰だ?

茂木先生によると、「宇山卓栄先生はアーティスト(画家)を本業としつつ、大学受験予備校で世界史を教え、また世界の数十カ国を自分の足で歩き、自分の目で見てきた体験をお持ちの方です(367p)。」実は、茂木先生も宇山先生も、世界史が専攻じゃないんだ。

どっちも異色の世界史教師?

そう、茂木「(二人とも)訳あって大学受験予備校で世界史を教えるようになったという変人です。二人の『変人』が語りあう世界史は、期待通りにぶっ飛んだ内容になったと思います。(367p)」



予備校講師なら、わかりやすくておもしろそうだな。

そのとおり。宇山「本書は古代から現代までの通史を、対談形式で解き明かしていきます。通史の形なので、時代の流れを追いながら、初心者の方にも、世界史を一気通貫、俯瞰することができます(3p)」「『世界史をもっと勉強しておけばよかった』 世界史は何歳からでも勉強できます。定年退職した人も、現役の人も(4p)。」

じゃ、おれみたいな世界史赤点ヤローでも、わかるのかな?

ぼくだって、世界史苦手だったけど、おもしろかった。それに、現在を知るためには、過去を知る必要があるからね。宇山「我々には、歴史という巨視的な文脈が必要であり、その文脈の中で、『現在』の真相もまた浮かび上がってきます。歴史は繰り返す。現在起こっていることは過去に起こったことの再現なのです(3p)。」 

そのことは、竹下先生も言われてる。だから、アメリカの大統領を軸とした歴史を講義していると。

アメリカを軸にすると、世界で起きていることがまるわかりだもんね。宇山「現在、世界を見渡すと中東紛争、ウクライナ紛争、台湾危機、アメリカやヨーロッパの移民問題、迫りくる全体主義の脅威など、危機が連鎖的かつ同時多発的に起こっています。その危機の根源とはなにか。いったい、世界はどのような原理で動いているのか。本書では、その真相に迫ります(3p)。」

てことは、CIAや300人委員会、はたまた黒い貴族、ホワイトハットを騙るグレーハットの話とか、出てくるんかな?

う〜ん、さすがにそこまで書くと、書店に並べてもらえないよね。でも、他の本を知らないけど、かなり、突っ込んでる方だと思うよ。

世界史なんて、受験科目でもない限り、真剣に勉強しないからな。

だよね。年号ばかり覚えさせられて。わざとおもしろくなくしてる、としか思えないよ。

おれなんか、友だちに何度も言わされた、「ホーエンツォレルン家」しか頭に残ってねえわ。

そして、世界史を学ぶとどうなるか? 茂木「危機の時代においてわれわれの祖先がいかに対応し、死に物狂い独立を守ってきたか。諸外国との比較の中でそれを知れば、この国を守っていこうという気持ちになり、あなたの明日からの生き方も変わってくるでしょう(366〜367p)。」

ほお! 愛国心が湧いてくるのか。なら、読んでやろうじゃねえか! で、まさかこの本も、ネアンデルタール人から始まるんじゃねえだろうな?


いやいや、今、世界の人が最も知りたいと思っている、「ユダヤ人とは何か?」から始まっている。

読む気になってきたぞ。


本の中で「へえ!」って思ったところ


じゃあ、目次を見ながら、ぼくのおもしろいと思った項目を上げてみるね。「第1章 古代」は「1.ユダヤ人の正体、中東危機の淵源」、「第2章 中世」は「7.ロシアというやっかいな隣人ーウクライナ戦争の淵源」と「10.『先住民』の世界史」、「第3章 近世」は「15.徳川日本は世界有数の重武装中立国家だった」、「第4章 近代」は「17.イギリスの世界支配、覇権の構造」、「第5章 現代」は全部おもしろかったね。

こらまた、古代から現代まで、よく1冊にまとめられたもんだ。

じゃあ、本の中で、ぼくが「へえ!」って思った部分を、ピックアップしてみるね。たとえば、「イラン」という国名の語源を知ってる?

Author:P30Carl[CC BY-SA]

う〜ん、「アメリカのお節介はイラン」から「イラン」。

もお! まじめに答えてよ! ダジャレゲームじゃないんだから。「イラン」の語源は「アーリアン/高貴な」という意味だよ(66p)。

たしかに、「イラン」はプライドが高そうだな。

ウクライナは「辺境」という意味(106p)。じゃ、ロシアの語源「ルーシ」は、どういう意味か知ってる?

Author:UnixBased[CC BY-SA]

ルーシュ」?

そんな、物騒な話じゃないよ! 「ルーシ」は、北欧スウェーデン出身のノルマン人、ヴァイキングのことだよ(99p)。

なんと、ロシア人はヴァイキングの子孫だったんか?

そう、ヴァイキングが、ロシア先住民のスラヴ人を奴隷にしたから、「スラヴslav」から、奴隷を意味する「slave」になったんだって(100p)。

ひええ!

だから、今のロシア人は、ヴァイキングとスラヴ人の混血らしいよ。(100p)。

祖先がヴァイキング! だから、「おそロシア」!


「イスラム」はアラビア語だけど、なんの意味か知ってる?



「絶対服従」って意味だよ(134p)。

「イスラム」、やっぱ、怖え。

じゃあ、「ジハード」の意味はなんだ?

「聖戦」だろ?

日本では、そう訳されているけど、「異教徒を説き伏せて『変えさせる』、あるいは『改心させる』ということが本来の語義です(144p)。」

そうだったんか? だが、説き伏せ方が過激だから、やっぱ、怖え。


日本関連の情報


と言うことで、ゲームはこのへんでおしまいにして、日本に関係ある部分を抜き出してみるよ。まずは、アイヌが「先住民族」じゃないってこと。

千島アイヌの若者たち
Author:鳥居龍蔵[CC BY-SA]

国連が、アイヌを日本の先住民族と認めたことで、いろいろヤバいのは知ってるが、先住民族じゃなかったんかい?

元々日本に住んでいたのは縄文人。アイヌが北海道に入ってきたのは13世紀、鎌倉時代のことだよ(82p)。

へえ、けっこう、新しいんだな。

アイヌは、もともと樺太の先住民で(160p)、モンゴルの襲撃によって北海道へ移住し、オホーツク人や擦文文化人と混血した。これが、アイヌの起源だって(161p)。 

北海道釧路市北斗遺跡に復元された、擦文時代の竪穴建物。
Author:Midori[CC BY]

サツモン文化人?

土器に縄目の模様をつけた「縄文」に対して、土器にヘラで刻み目模様「擦文」をつけたのが擦文文化。

そんなの、はじめて聞いた。

茂木「つまりアイヌとは、シベリア起源の北方民族と北海道の縄文系擦文文化人との混血と考えるのが自然でしょう(161p)。」ミトコンドリアDNAによっても、このことが証明されているそうだよ。

ほお!

じゃあ、本州にもアイヌ語の地名が残っているのはどうしてか? と言われるけど、本州にアイヌが住んでいた証拠はないって。ここらへんの誤解は、茂木「江戸時代に北海道を蝦夷地(エゾチ)、アイヌを蝦夷(エゾ)と呼んていたことから、古代の蝦夷(エミシ)との混同が生じ」たからだって(163p)。 

早く、このことを国連に知らせて、誤解を解いた方がいいぞ。

そうだね、「アイヌは、日本の先住民族じゃなくて少数民族」だからね(163p)。 

ガッテン、ガッテン!

そのほか、戦国時代の日本の話も意外だった。あの頃の日本人は、戦いに勝つために、火力を欲していた。ポルトガル人が鉄砲を伝来してまもなく、日本の刀鍛冶は、鉄砲を解体し、パーツをコピーして、国産化が始まった(226p)。

鉄砲と言えば種子島。

種子島火縄銃(愛知万博のポルトガル館展示物)
Author:Gnsin[CC BY-SA]

そう、種子島で大量に複製された火縄銃に目をつけたのが、織田信長。信長は鉄砲隊を編成して、1575年の長篠の戦いで、家康との連合軍で武田軍を迎え撃ったとき、最前線に鉄砲隊を配備して、武田軍をボコボコにした(227p)。

長篠合戦図屏風(徳川美術館蔵)
Wikimedia_Commons[Public Domain]

鉄砲にはかなわんからな。

このように、鉄砲の量産体制ができていたおかげで、日本は、西欧列強に植民地にされなかったんだって(228p)。

へええ? 知らんかったわ。

ただし、茂木「黒色火薬の原料はインドからの輸入に頼っていたため、これをもたらすポルトガル商人を誘致するため、大村氏、有馬氏、大友氏など九州の諸大名は進んでカトリックに改宗し、土地を教会に寄進しました(キリシタン大名)(228p)。」

へえ、信仰とかじゃなくて、火薬が目的でキリシタン大名になったんか。

イエズス会の日本準管区長の手紙によると、「もしも(中略)...日本66カ国すべてが改宗するに至れば、(スペインの)フェリペ国王は日本人という好戦的で怜悧な兵隊を得て、いっそう容易にシナを征服することができるであろう(229p)。」

え! イエズス会は、日本人の兵隊を使ってシナを征服しようとしてたんか?

そう、イエズス会が、日本人をカトリックに改宗させたがったのは、日本の軍事力で明を征服させるためだった。茂木「明国征服計画はイエズス会が立案して信長に吹き込み、のちに秀吉が(朝鮮出兵という)独自のプランとして実行したと考えられるのです(229p)。」

驚きだ。イエズス会が当てにするほど、日本の軍事力が強かったとは。

オランダ、イギリスが日本に接近したのも、軍事大国日本をポルトガルから切り離し、彼らの同盟国にする思惑があったそうだよ(229p)。

軍事大国日本、引っ張りだこかよ。

家康は、関ケ原の半年前に、漂着オランダ船から救助された、イギリス人ウィリアム・アダムズと、オランダ人ヤン・ヨーステンを外交顧問として取り立て、彼らに江戸の屋敷を与えた。東京駅東口の『八重洲』という地名は、ヤン・ヨーステンの屋敷跡を意味するのです(230p)。」

東京駅八重洲口から見た八重洲通り
Author:Yasu[CC BY-SA]

ひょえ〜! 「八重洲」って、オランダ人の名前が元だったんか!

以降、オランダは徳川幕府を支え、徳川は長崎での対日貿易の独占権をオランダに与えた(232p)。また、徳川幕府は、オランダによって、世界の最新情報をキャッチしていたから、ペリーが来ることなんか、とっくに知ってたそうだよ。

でも、オランダって東インド会社の支店だよな? へたすると乗っ取られるのに、日本は、悪徳侵略野郎を利用してたんか? 江戸幕府、すげえ。

だよね、2代将軍秀忠なんか、オランダから「フィリピン攻略に日本軍を借りたい」と要請されたのを拒絶したんだよ。そうやって「重武装中立」を維持したんだって(232p)。

ひええ〜! 東インド会社の要請を、よく拒絶できたな。

つまり、東インド会社が文句を言えないほど、日本が強かったってことだね。

「重武装中立」日本が、ヤツらをビビらせたのか。

そう、そこが、この本の言いたいところじゃないかな? 日本は島国だし、神風が吹くと言っても、まったく安全じゃない。茂木「徳川期の日本は、世界有数の重武装中立国家でした。圧倒的軍事力が平和(ラテン語で“パクス”)をもたらす。これが世界史の教訓です。(中略)...200年続いた「江戸時代の平和(パクス・トクガワーナ)」も、その圧倒的な軍事力が支えていたのです。このことは、将来の日本の安全保障を考える上で、教訓になると思います(234p)。」

う〜ん、今の日本も、徳川幕府にならって「圧倒的軍事力」を持ちつつ中立であれ、と言いたいんだな?

そう、徳川幕府みたいな「重武装中立国」になることが、日本のあるべき姿だと。

「重武装」というワードにはもちろん、「核」も含まれてるよな。


たしかどっかで、茂木先生は、「日本も核武装すべきだ」と言ってたような。

う〜ん、それは同意しかねるが、にらみをきかせるくらいの「武装」は必要だな。だが、「重武装中立国」の江戸幕府だって、たった200年しかもたなかったぞ。

だよね。結局、外部からの力に負けて、転覆された。

なんたってこれからは、外交力が必要だ。武力には、限界があるのは明らかだからな。

はあ〜、むつかしい話ししてたら、疲れちゃった。お茶にしよう。

あれれ? 今日はもう、おしまいか?

実はね、ぼくが一番おもしろいと思ったのは、最後の章「第5章〈現代〉アメリカの世紀と共産党の野望」なんだ。

なんだと? 「イラン」の意味とかより、そっちを先に話せよ。

ごめん、重たい話になるから、またいつか。

わかったわかった、おやつにしてやるよ。はい、アーンして・・。



Writer

ぴょんぴょんDr.

白木 るい子(ぴょんぴょん先生)

1955年、大阪生まれ。うお座。
幼少期から学生時代を東京で過ごす。1979年東京女子医大卒業。
1985年、大分県別府市に移住。
1988年、別府市で、はくちょう会クリニックを開業。
以後26年半、主に漢方診療に携わった。
2014年11月末、クリニック閉院。
現在、豊後高田市で、田舎暮らしをエンジョイしている。
体癖7-3。エニアグラム4番(芸術家)

東洋医学セミナー受講者の声

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