映画にもなっていたグリコ・森永事件
グリコ・森永事件。おめえなんか生まれてないから、知らねえだろ?

知ってるよ。
「罪の声」の元ネタになった事件でしょ?

知ってる? 「罪の声」? なんじゃそら?

映画だよ。ほら、これ。
映画『罪の声』予告

お、ガーシーが叩いていた小栗旬が主役だ。

あのグリコ・森永事件が、映画になっていたとはな。だがあれから40年。今の世代に伝えるには、小説や映画が手っ取り早い。おれなんか、リアルタイムで知ってるが、連日、テレビも新聞も週刊誌も大騒ぎだったわ。

映画でも、そんな感じだったよ。
江崎グリコ社長の誘拐で幕が開いた

じゃあ、事件の大筋は知ってるな。

だいたいわかる。お菓子会社の社長さんが誘拐されて、身代金を要求されて、脅迫状がマスコミに送られて、お菓子に毒が入れられて、スーパーからその会社のお菓子が消えて、会社は大損害で、警察もがんばるんだけど、犯人はなかなかつかまらなくて・・。

まあ、そんな感じだが、この動画でおさらいしてみよう。
【グリコ森永事件】黒幕と疑われた人物の血縁者より情報提供がありました
1984〜85年、江崎グリコ社長の誘拐をはじめ、複数の食品メーカーなどに対する脅迫、毒入りの食品を小売店への放置するなど全28件の事件。
犯人から報道各社に「かい人21面相」の名で声明が送られ、警察の捜査が撹乱。
また、メディアを経由し多くの国民の注目を集め、劇場型犯罪と呼ばれた。
(
YouTube 4:00〜)
まずは、江崎グリコ社長の誘拐事件で幕が開く。
1984年3月18日:3人組の犯人は、江崎グリコ社長宅敷地内の母親宅に侵入し、社長宅の合鍵を奪った。その鍵で社長宅に押し入り、入浴中の社長を全裸のまま誘拐した。
3月19日:犯人グループは、身代金10億円と金塊100kgを要求。

かわいそうに社長さん、まだ寒い3月の夜に素っ裸で誘拐されるなんて。寒いし、恥ずかしいし、大変だったね。

そこかよ。それよか、おかしいと思わねえか?
なんで連中は、直接社長宅に侵入しなかったんだ?

そうだね、わざわざ母親宅に侵入する必要があったのかな?
それはな、社長宅にはセコムがついていたからだ。いきなり、ガラスを破ったら、直ちに警備会社が駆けつける。
一方、母親宅にはついていなかった。

犯人は、そんなことまで知ってたんだ!
犯人は、ずいぶん前から江崎宅の敷地に潜んで、家族の行動を監視していたらしい。

本気で計画してたんだね。

それと、身代金の10億円と金塊100kg。

運ぶのが大変そうだ。

「
現金10億円は高さ9.5メートルで重量は130キログラム、これに加えて金塊100キログラムでは運搬が困難であり、合同捜査本部ではどこまで犯人グループが本気で要求していたのかいぶかる声もあったが、要求に従ってグリコはそれらを用意した。」(
Wikipedia)

グリコは用意した!?

母親も社長夫人も「お金なら出します」と言ったのに、犯人は「金はいらん」と答えたそうだ。

お金が目的じゃなかったのかな?

それに、
身代金目当てなら、7歳の長女を誘拐するほうがリスクが少ないのに、なんで江崎社長だったのか?ここも、身代金目的よりも、グリコへの怨恨説が浮上した。(
Wikipedia)
江崎グリコ本社

グリコを恨んでた人がいる?
失態に次ぐ失態だった警察
3月21日:誘拐から3日後、社長は監禁されていた倉庫から自力で脱出。
4月:マスメディアに犯行声明が届いた後、グリコの敷地で連続放火事件。
グリコの監査役宅に1億2千万円を要求する脅迫状が届く。
4月24日:監査役宅に犯人からの電話。女性の声を吹き込んだテープで「名神高速道路を85キロで吹田SAへ走れ」。

そう言えば映画でも、事件に女の人が巻き込まれていたよ。
5月:犯人グループはメディアに「グリコ製品に青酸ソーダを入れる」という手紙を送る。
その内容は新聞に掲載され、グリコ製品は店頭から撤去され、製造工場も停止。数十億円の損害となった。
5月末〜6月:犯人からグリコへ3億円の要求。指定された受け渡し場所に現われた男を確保したが、男は犯人ではなかった。男は女性とデートしていた所を、犯人グループに襲われ、女性を人質に取られて、現金の受け渡し場所に行かされた。

せっかく捕まえたと思ったら、犯人じゃなかったのか。

警察は犯人に、一杯食わされたんだよ。
犯人じゃないとわかった警察は、慌てて犯人グループが待機する所まで車を走らせたが、犯人グループは立ち去った後だった。しかも、後からわかったことだが、警察は、犯人グループの車とすれ違っていたのに気づかなかったのよ。

なんというマヌケ!
6月:丸大食品に5千万円の要求があった。受け渡し場所を張り込んでいた捜査班が、不信な人物を目撃するが、駅の雑踏で見失う。

この時も、万全の体制で臨んだにもかかわらず、警察はマヌケぶりを発揮してしまう。

あ、犯人と捜査員が電車に乗るシーン、映画にあったよ。

犯人グループは「大阪の高槻から、京都行きの各駅電車に乗れ」と指示してきた。
現金持参人も含め、数人の捜査員が張り込んでいる電車に、次の駅からキツネ目の男が乗ってきた。
彼は、隣の車両の現金持参人をチェックしている。怪しい。京都駅に着くと、キツネ目は現金持参人の後をつける。6人の捜査員もキツネ目を尾行する。キツネ目は電話ボックスに入り電話をかけるが、
電話ボックスから出たキツネ目を、捜査員は見失ってしまった。

なんたる、失態! どうして、警察手帳を見せながら、「ちょっと来てもらおうか」とか、やらないの?!

そこそこ、それができなかったのよ。普通の捜査なら一発で職務質問だ。だが、
グリコ・森永事件はただの事件じゃなかった。常に本庁に報告して、本庁の指示を受けて動くロボット状態で、捜査員は指揮官にお伺いを立てたが、答えは「待て」だった。

あ〜あ、それで、キツネ目を逃してしまったのか〜。

さらに、失態はつづく。
キツネ目がかけた公衆電話。ふつうなら、指紋を取るのに、取っていない。

なんでだー??

もうひとつある。
公衆電話の記録は一定期間保管される。だから、直ちに電話局に問い合わせれば、キツネ目がどこにかけたかを知ることができた。だのに、警察は保管されてることを知らなかった。気づいて問い合わせたときには、保存期間が過ぎていた。

アホ―!!

てゆうか、犯人の悪運が強すぎる。
9月:森永製菓へ脅迫状が届く。
10月:京阪神や名古屋の店頭で、青酸入りの森永の菓子が発見される。
森永製品は店頭から撤去され、株価も大暴落。被害額は数十億円と言われる。
11月:ハウス食品へ脅迫状。
12月:不二家へ脅迫状。
本社森永プラザビル
実は、キツネ目はすべての現金引き渡しの現場にいた。2度めに目撃されたのは、ハウス食品の現金引き渡しの時。場所は滋賀の大津サービスエリア。ここでも、警察の大チョンボがあった。

またあ〜〜??

11月14日、指定されたレストランの駐車場に、1億円を積んだ車を待機させ、車内にはハウス社員に変装した警官、周囲には刑事が多数配置された。 犯人からの電話で、何度か受け取り場所を変更されながらも、名神高速インター付近で、
刑事がキツネ目を発見。次に向かった大津サービスエリアでも、刑事がキツネ目を発見。なのに、職務質問は禁じられていたため、そのままスルー。

接触するチャンスだったのに!
そして、キツネ目はそのまま一般道路へ走り去る。一方、現金輸送車は、指示通りに高速を走り、道路脇の白い布を探す。その下に次の指示書が入った缶があるはず。
しかし、缶が見つからない。犯人らしい男も姿を見せない。22時20分に捜査は打ち切られた。

なんだ、空振りだったんだ。

実は、その裏で大変なことが起きてたのよ。高速の白い布があった場所の真下には県道が走っている。そこはすでに滋賀県で、滋賀県警もこの大捜査網は知っていた。ところが、それを知らないパトカーがいた。
たまたま県道をパトロールしていると、夜なのに無灯火の不審な白いライトバンが止まっている。場所は、高速のあの白い布の真下だ。職務質問のために止まると、白のライトバンは急発進。その後、パトカーと激しいカーチェイスになったが、振り切られてしまう。21時25分、白いライトバンが発見されたが、男の姿はなかった。
(
Wikipedia)

うわあ〜、キツネ目さん、ツイてるだけじゃなくて、すごいドラテクの持ち主だ。

だが、惜しかったよな〜。
1985年1月:警察は「キツネ目の男」の似顔絵を公開。
2月:東京、名古屋の店頭で青酸入り菓子が発見される。
事件の収束
その後も犯人は他社への脅迫を続けたが、カーチェイスで犯人を取り逃がした滋賀県警の本部長が8月、退職の日に自宅の庭で焼身自殺してしまう。

なんてことだ!

そこら辺の状況は、岩瀬達哉著「
キツネ目」の第6章に詳しい。

これが原因なのか、
本部長自殺の5日後、犯人グループは食品メーカーへの脅迫をやめると宣言。以後、脅迫はピタッと無くなる。

人が亡くなるのは、計画になかったんだね。
そして、2000年2月12日、グリコ・森永事件に関する全事件の時効が成立した。

いったい、犯人はどんな人たちだったんだろう?
(つづく)
Writer
ぴょんぴょん
1955年、大阪生まれ。うお座。
幼少期から学生時代を東京で過ごす。1979年東京女子医大卒業。
1985年、大分県別府市に移住。
1988年、別府市で、はくちょう会クリニックを開業。
以後26年半、主に漢方診療に携わった。
(クリニックは2014年11月末に閉院)
体癖7-3。エニアグラム4番(芸術家)
1984年に起きた「グリコ・森永事件」を、2回に分けて取り上げます。
当時、テレビで、毎日うるさいくらいに報道されていたのは覚えていますが、グリコや森永のお菓子が店頭から消えても何も困らなかったので、ただの傍観者でした。
それにしてもナゾの多い事件です。今なおこの事件の真相を追い求めるジャーナリストもいるし、事件を元にした小説は4年前に映画化されています。