ぴょんぴょんの「賞品はジブラルタル海峡」 ~スペイン、モロッコ、アメリカ、イスラエルのゲーム

 リゾート客のくつろぐビーチに、突然、難民の船が続々と到着する。われ先にと上陸していく難民は若い男性ばかり。うわ〜!こんなのが日本で起きたらエライコッチャ、というような震え上がるような光景。これは実際、7月30日にスペイン領セウタで起きたことでした。
 難民、移民を無制限に入れ続けるEUが悪い、日本も慎重にならないと、というコメントももっともですが、背景を知れば、「そういうことだったのか〜!」とガッテンするでしょう。参考:「世界の裏側ニュース
(ぴょんぴょん)
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ぴょんぴょんの「賞品はジブラルタル海峡」 ~スペイン、モロッコ、アメリカ、イスラエルのゲーム

スペインのセウタはモロッコと陸続き


知ってた? 難民が、モロッコから海を渡ってスペインに上陸した話。


それも、兵役適齢期の若い男性ばっかし。その数、5万人!そのうち、何十人か、溺れて亡くなったらしいよ。

5万人てのは、ちょっと、盛りすぎじゃね? おれの聞いた話だと、

2026年7月30日、数千人の移民、主に若い男性が、北アフリカにあるスペインの飛び地セウタに殺到した。わずか数日で1,500人から2,000人の移民が到着し、セウタ人口の約2%に相当する。少なくとも9人が泳いで渡ろうとして死亡した。

あれ? 1,500人から2,000人? でも、こんな光景が日本だったらと思うと、コワイよね。

そのために、日本海と太平洋がある。

だーかーらー、海に囲まれてたって、安全じゃないんだよ。セウタは、スペインだよ。難民の故郷、モロッコとスペインの間にはジブラルタル海峡があるから、彼らは船でやって来たんだよ、泳いできて、溺れた人までいるんだよ。

あのなー、セウタはスペイン領だが、スペイン側じゃなくて、モロッコ側にあるの。

え? どうゆうこと?

これを見よ!



な〜んだ、セウタって、モロッコと陸続き? 難民は海を泳いで、スペインに渡ってきたんじゃないの?

もっとわかりやすく、図で表すと、


なにこれ! となりの浜から、国境の柵を越えて泳いできただけ?

そうゆうこと。セウタは、アフリカ大陸北岸の、ジブラルタル海峡に突き出した小さな半島だ。モロッコと陸続きの海岸線にありながら、海を挟んだスペインの飛び地領土だ。

へえ? 海の向こうのスペインの領土だけど、モロッコと陸続き? じゃ、なんで、こんなに大勢の難民が、一斉にセウタに越境したの? 死者まで出して。

スペイン領の飛び地には、セウタ以外にメリリャなどがあるが。


2026年6月末に、スペイン最高裁が、こんな判決を下した。「海から泳いで、セウタやメリリャへ到着した移民は、即時にモロッコへ強制送還することはできない。」悪徳ブローカーがこいつを利用して、「今ならスペインに移住できるチャンス」とSNSで煽ったらしい。

そっかー、泳いで渡ればすぐには追い出されないから、行くなら今だって感じだね。

だが、実際はそんなことなくて、ほとんどの難民は数日で帰国させられたがな。

ジブラルタル海峡を通る船を監視できる天然の要塞


帰らされた人たちは、船で返されたと思ったけど、みんな歩いて帰れたんだね。でもさ、スペインも、セウタみたいなちっちゃな領土、モロッコにあげちゃえばいいのに。

いやいや、セウタは、地中海と大西洋の出入り口を見張る、天然の要塞。ここを押さえれば、ヨーロッパとアフリカを結ぶ交易と、ジブラルタル海峡を通る船を監視できる。古代はフェニキア人、カルタゴ、ローマ、イスラム勢力なども、この港を奪い合った。そんなかんたんに手放せるようなお安い場所じゃねえのよ、セウタは。

へえ、そうなんだ。

ここらへんの歴史は、この動画がわかりやすい。

なぜセウタはアフリカにあるのにスペイン領なのか

かんたんにまとめると、

1415年:ポルトガル王ジョアン一世がセウタを攻略した。しかし、セウタは不便で維持費のかかる港だった。食料や兵士は海の向こうのポルトガルから運ぶしかない。
1580年:ポルトガル王家に跡継ぎがいないため、スペイン王フェリペ二世がポルトガル王位につく。セウタはポルトガル領のままだが、兵士や物資はより近いスペインから運ぶようになる。
1640年:ポルトガルで反乱。ポルトガルとスペインのどちらかにつく選択を迫られたセウタは、スペインにつくことを選んだ。
1688年:ポルトガルは独立し、セウタはスペイン領となる。
20世紀:フランスとスペインはモロッコを保護領として分割したが、セウタは保護領に組み込まれなかった。
1956年:モロッコ独立。セウタは保護領ではないのでスペインのまま。
1995年:セウタは、スペインの一部である自治都市と位置づけられる。
YouTube

モロッコ側にセウタを所有するスペインだが、スペイン側にはイギリス領ジブラルタルがある。

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スペインが、「ジブラルタルをスペインに返してくれ」と言っても、イギリスはもちろん「ノー」だ。

海峡を見張るための要衝だからね。と言うか、ジブラルタルもセウタもスペインのものになったら、スペインは、海峡の通行料を取ったり、やりたい放題になるかもしれない。

スペインとイスラエル・アメリカの現在の関係


一方、モロッコは「セウタをモロッコにくれ」と言うが、スペインはうんと言わない。ところが最近、「モロッコにセウタとメリリャをくれてやれ」という国が現われた。

え? どこの国?

それを話す前に、スペインの事情がわかってる方が説明しやすい。スペインの現在の首相は、このお方。

ペドロ・サンチェス首相(1972年2月29日生、2018年からスペイン首相)
Author:来源[CC BY]

サンチェス首相は、日本のぼんくら政治家と違って、気骨ある政治家だ。たとえば、2023年10月に始まったイスラエルのガザでの軍事作戦を、彼は「ジェノサイド」と呼び、2024年5月にはパレスチナを国家承認している。

うわあ、イスラエルに嫌われる。

その通り。この結果、イスラエルは駐スペイン大使を引き揚げた。また2025年9月には、ガザの「ジェノサイド」に終止符を打つために、武器の禁輸措置、イスラエル軍への燃料輸送の禁止、ガザの違法入植地からの輸入制限を訴えて、スペインも駐イスラエル大使を引き揚げた。

うわあ、スペインとイスラエルってそんな関係だったの?

イスラエルを怒らせた、ということは当然、イスラエルの尻に敷かれた、アメリカも怒らせた。2026年のはじめの、アメリカによるベネズエラへの軍事作戦にも、サンチェス首相は反対した。BBC2026年2月28日に始まったアメリカ・イスラエルの対イラン攻撃についても、開戦当初から「無謀」かつ「違法」と批判し、強く反対した。BBC

ことごとく正しい!

さらに、3月上旬、スペインとアメリカが共同運用している2つの基地を、米軍が使用することを拒否した。3月25日には、スペイン領空を、イラン戦争に関与する米軍機が飛ぶことを禁止した。BBC)サンチェス首相はこう述べている。

ご存じの通り、スペインは核爆弾を保有していない。空母も、豊富な石油埋蔵量もない。スペイン単独でイスラエルの攻撃を阻止することはできないが、だからといってその試みをやめるわけではない。(AFP)我々は、違法な戦争に関わるつもりなどない、主権国家だ。(BBC)スペイン政府の立場は、「戦争反対」の一言に尽きる。(BBC

かっこいいなあ〜、こういう政治家、日本にも欲しいなあ。

セウタへの難民流入に絡むモロッコの事情


国民が違うんだよ。彼を選んだスペイン国民が賢いんだよ。さて、スペインとイスラエル、アメリカの事情がわかったところで、お次は、モロッコの事情だ。

モロッコと言えば、カサブランカだよねえ。ロマンチック〜!

そうゆう、古き良き、みたいな話じゃなくて、もっとドロドロした話だよ。まずは、この地図を見てくれ。


いいか、モロッコと国境で接しているのは、アルジェリアと西サハラだ。が、モロッコはアルジェリアとは敵対関係、西サハラとも国境でもめている。

ああ〜、ご近所さんと仲良くさせてもらえないのは、日本だけじゃなかった。

2019年、ネタニヤフ首相の息子、ヤイル・ネタニヤフが明かしたところによると、スペインに対して、セウタとメリリャをモロッコに譲渡するよう求める、スペイン国内の分離独立派NGOに、イスラエルが資金提供していたと言う。

なるほど、イスラエルは、スペインがお嫌いだからねえ。

一方、スペインがアルジェリアとの関係を改善しようとするたびに、モロッコは、今回のように、セウタとメリリャへの国境の門を開放して、移民を流入させるという対抗措置をとってきた。

モロッコはアルジェリアと仲が悪いからね。

実は、セウタに難民が押し寄せた7月30日の10日前、スペインのサンチェス首相が、4年ぶりにアルジェリアを訪問していた。

それで、モロッコからセウタに難民が押し寄せたんだね!

2021年、新型コロナにかかって重症になった、西サハラ独立を掲げる「ポリサリオ戦線」の指導者に、スペインが医療提供した時も、モロッコが反発して、セウタへ8000人の移民を送り込んだ。2022年、スペインは、西サハラ問題に対する中立の立場を捨てて、モロッコの領有権を支持した時は、モロッコの敵、アルジェリアの怒りを買った。

スペイン、モロッコ、アルジェリア、西サハラ、めんどくさー。

そこに、アメリカとイスラエルが首突っ込んで来たら、どうなるか?

もっと、めんどくさくなるに決まってる。

実は、モロッコで権力を握るモロッコ国王は、トランプとベッタリで、イスラエル寄りだ。「2020年、トランプ政権は、それまで国際社会が認めてこなかった『西サハラはモロッコ領』という立場を支持しました。その見返りとして、モロッコはイスラエル🇮🇱との国交正常化を進め、トランプはモロッコ王室から最高位の勲章まで授与されています🎖」(Threads

わーお、モロッコはイスラエルと仲良しだったんだ。

2026年1月、イスラエルとモロッコは、共同軍事行動計画に署名しているし、現在、モロッコのミサイルの51%以上は、イスラエルから供与されたものだ。

なんとなく、見えてきたよ。今回のモロッコからスペイン領セウタへの難民流入は、アメリカ、イスラエル、モロッコが手を組んでいたことが。

これは移民危機ではない。モサドとCIAが指揮し、モロッコが実行する、多正面の戦争であり、帝国の従属国になることを拒否する国家(スペイン)に対するものだ。(中略)...本当の標的は移民ではなくスペインだ。


そして、アメリカが陰で動いていたことはバレバレだ。モロッコからセウタへの難民流入の2週間前、トランプの共和党は、モロッコに2,000万ドルを出す法案を可決していた。

以下は、4月に発表された米国議会報告書の一節であり、その中で初めて次のように述べられている。「セウタとメリリャはモロッコ領内に位置しており、依然としてモロッコによる長年の領有権主張の対象となっている」。同報告書は、マルコ・ルビオ国務長官に対し、この地位の変更を促進するよう求めている。

このツイートに引用されている、米国議会報告書の88ページの青枠を翻訳すると、

委員会は、米国の国家安全保障上の利益に資する場合に限り、対外軍事援助プログラム(FMF)の下で20,000,000ドル(31.8億円)未満の資金を拠出し、モロッコへの支援を継続する。
委員会は、1786年に『モロッコ・アメリカ平和友好条約』によって正式に締結された、米国とモロッコ間の歴史的な同盟関係に留意する。委員会は、スペインが統治するセウタおよびメリリャの2都市がモロッコ領内に位置しており、依然として、モロッコによる長年の領有権主張の対象となっていることを認識する。委員会は、セウタおよびメリリャの将来的な地位について、モロッコとスペイン間の外交的対話を促進するための国務長官の取り組みを支持する。

モロッコに軍事援助を31.8億円出すと言った後に、スペイン領のセウタとメリリャがモロッコの領地になるよう、アメリカも後押しすると言ってる。

イラン作戦で、スペイン基地の利用を拒否られ、スペイン領空も飛べなくされたアメリカの仕返しが、これよ。

ガザいじめを「ジェノサイド」と呼ばれ、パレスチナの独立を認めたスペインに対しての、イスラエルの復讐でもあるね。

ジブラルタル海峡の主導権を握ろうとしているイスラエル


しかし、イスラエルのたくらみはその先にあった。ジブラルタル海峡だ。


ホルムズ海峡は封鎖された。紅海は戦場と化している。ジブラルタル海峡は争奪戦となっている。地中海での輸送はすべて遮断された。世界大戦は、常に重要な貿易ルートの封鎖から始まる。

イスラエルは、ジブラルタル海峡の主導権を握ろうとしているんだ。

ああ、イスラエルとアメリカは共謀して、モロッコを軍事支援し、「セウタとメリリャ」という餌をぶら下げて、スペインを叩かせて、ジブラルタル海峡を支配しようと考えている。

でも、ジブラルタルはイギリス領だったはず?

イギリスなんざ、アメリカとイスラエルにとって、親玉やんか。

そうだった。

ホルムズ海峡とバブエルマンデブ海峡は紛争状態。ジブラルタル海峡がイスラエルの思いのままになれば、中東のオイルの海上輸送は、イスラエルの支配下におかれてしまう。

より大きなゲームはジブラルタル海峡をめぐる闘争だ。 (中略)...本当の賞品はジブラルタル海峡であり、年間のグローバル海上貿易の約10%と約10万隻の船舶が通過する要衝だ。

スペイン、がんばれ!! スペイン、負けるな!! セウタはスペイン領のままがいい。



Writer

ぴょんぴょんDr.

ぴょんぴょん

1955年、大阪生まれ。うお座。
幼少期から学生時代を東京で過ごす。1979年東京女子医大卒業。
1985年、大分県別府市に移住。
1988年、別府市で、はくちょう会クリニックを開業。
以後26年半、主に漢方診療に携わった。
(クリニックは2014年11月末に閉院)
体癖7-3。エニアグラム4番(芸術家)


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