注)以下、文中の赤字・太字はシャンティ・フーラによるものです。
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スティーブ・バノン - トランプのホワイトハウスでの最高実力者
転載元)
カシオペアンとSOTTのご紹介 17/2/9
SOTT パペットマスター
https://sott.net/en341556
デイビッド・フォン・ドレル
タイム
2017年2月2日
(中略)
ドナルド・トランプの最初の一歩はあたかも、彼の首席戦略官で分身であるスティーブン・K・バノンが製作したドキュメンタリー映画という感じだ。(中略)…
トランプ政権は混乱の幕開けとなったが、これはトランプが約束していた通りであり、計画したのはバノンだ。これに応じて、政府内外の多くの人々が抵抗している。これはおそらく驚くべきことではないのだろう。トランプは国民に対して去年のうちから何度も、自分の施政はありふれたものではないと言っていたのだから。(中略)…バノンこそが政策を純粋に保つ献身的な支持者である。彼がトランプの側近を務めるのは、カネや地位のためではない。歴史を変えるためなのだ。「我々が今、目の当たりにしているのは、新しい政界秩序の誕生なんだ」と、バノンはワシントンポスト宛てのメールで述べている。
(中略)
一度に大統領になれるのは1人だけであり、ドナルド・トランプは官職を譲った訳ではない。だが、政権発足以来数日の、太った皺だらけのバノン(ホワイトハウスで、ネクタイとスーツを身に着けずにトランプ氏の執務室に入ることができる唯一の男性側近)は、思い出せる限り、これまでのどの側近スタッフよりも影響力を行使できる才能を持っている。彼の同僚たちはバノンを「百科事典」のあだ名で呼ぶ。彼の頭の中の情報の幅広さのためだ;だが、それよりも何よりも、バノンはトランプとマインドメルドが出来るのだ。
(中略)… 民主党支持の家系に生まれながら、自分の意志で共和党を選んだバノンは、どちらの党も相当程度に堕落していると見做すようになったが、このような信念から近年は、論争を巻き起こす映画の製作者や物議を醸すニュースサイトの運営者というキャリアを築くことになった。私人としてのバノンにパーティーで会ったことがあるという人物は、その時の様子を思い出してこう述べる。「バノンは私に、『自分はレーニンみたいなものだ。こんにちの支配者層の全員を打ち倒し、破滅させてやりたいんだよ』と言ったのです」
辿り着くまでの道は違ったものの、バノンとトランプは、貿易や移住、公安、環境、政治腐敗等々の問題に関して思想的に同じ目標を持っていることに気付いたのだ。
それにしても政権発足から10日間のバノンの傑出ぶり ― そして、彼の破壊的なお家芸である、混乱と無秩序に満ちた場面の数々 ― は、ホワイトハウスを狼狽させたし、おそらくは大統領さえもが仰天したのではないだろうか。政府高官によれば、トランプは彼をキビキビと諌めてくれる重要なアドバイザーを6人程召喚しているという。(中略)…
それでもバノンは、大切なワシントンの流儀を保っている:大統領執務室にアポなしで入って行ける特権だ。そして彼こそは、トランプを勝利に招くメッセージに集中させることが実にうまい人物なのだ。他のアドバイザーたちがトランプを変えようとしてきたのに対して、バノンはトランプにスピードを上げるよう勧めてきたのである。
(中略)
ドナルド・トランプお気に入りの著書である『トランプ自伝: 不動産王にビジネスを学ぶ』をじっくり読んだことのある人はお気付きだろうが、彼はスタンドプレーやたわいない会話、大言壮語や論争を、成功を追求する上で有益な要因と見ている。「私が取引を決定するスタイルは極めてシンプルかつ率直なものだ」と彼はこの著書で宣言している。「私はとても高いところに狙いをつけ、狙ったものを手に入れるべく、押して押して押しまくるんだ」
(中略)
だが、(中略)…ビジネスマンとしての長い経歴を持つトランプは、常に混乱を狙うが、最終的な目標は握手することである:取引だ。これに対して映画やラジオショーでのバノンからは、もっと終末論的な性向が窺われる。
2000年代初頭のある時期バノンは、世代論者のウィリアム・ストラウスとニール・ハウの書いた『第4の曲がり角』という本に魅了された。この本によれば、アメリカの歴史は、4段階サイクルの繰り返しなのだという。ある世代が危機に陥ると、次の世代が制度を採用し、その次の世代が制度に反旗を翻す。すると、次の世代は過去の教訓を忘れてしまい、その次にはまた危機が訪れるのだ。1サイクルは大体80年で、独立戦争(1775-1783年)の時期から南北戦争(1861-1865年)期、その次は第2次世界大戦(1939-1945年)期が80年のサイクルを成していると、バノンは指摘する。第4段階の転換期において、制度は破壊され定め直されるのである。
タイムとのインタビューで著者のハウは、10年以上前に、この本を原作とした映画を作らないかと、バノンから打診されたことを思い出している。最終的にこれは、2010年にリリースされた『ジェネレーション・ゼロ』につながった。
http://kurokiyorikage.doorblog.jp/archives/68603754.html
この映画でバノンは、2008年の金融危機を転換期の兆候になぞらえている。ハウはこの分析に、部分的に同意している。どのサイクルでも危機後の世代が出てくる。今回はベビーブーマー世代がそうで、ついにはこの中から、「前回の危機の記憶を持たないリーダーたちが出て来るのだが、このリーダーたちがいつものように、次の危機へと社会を導くのだ」とハウは言う。
バノンはかつて、「庶民の守護聖人」と称していたぐらいで、歴史的な極めて差し迫った危急時=世界の転換期に、国家的な政治イベントを起こして、古い秩序を一掃し、新しいものを打ち立てて楽しんでいるのだろう と思われた。ジェネレーション・ゼロでは、歴史家のデイビット・カイザーがフィーチャーされているのだが、カイザーの記憶では、映画の中でバノンからインタビューを受けた際、バノンは楽しそうにやり取りに夢中になっていたという。
しかし、歴史の現フェーズは、来たるべき大戦争の予兆であるとバノンが論じ始めた時、カイザーはギョッとしたものだと、タイムに語った。「彼がこう言ったのを覚えています。『ご覧なさい。独立戦争があって、その後南北戦争がありましたが、それは独立戦争より大規模なものでした。その次が第2次世界大戦ですが、これは南北戦争より大規模だったのです』」とカイザー。「彼は映画の中で私にそう言わせようとすらしたのですが、私はその気になれませんでした」
ハウもまた、バノンの「今後のアメリカについてのかなり深刻な展望」には衝撃を受けていた。バノンは自分のラジオショーの中で繰り返し、世界の至る所で、「私たちは過激なジハーディストと戦争しているのだ」と述べている。これは「世界的な存亡をかけた戦い」であり、「中東では再び、大規模な武力戦争」に発展するだろう。中国との戦争も迫っている、とも彼は述べている。このような確信は、ブライトバートのミッションの骨格を成している。2015年11月に、彼はこう説明していた:「我々の大きな信念=当サイトの中心的な組織化原理は、私たちが戦争中であるということだ」
スティーブ・バノンを理解するには、彼の父親に起きた出来事を理解する必要がある。「私は、ブルーカラーの、アイルランド・カトリックを信仰し、ケネディーと組合活動と民主党を支持する家庭の出だ」と、彼は以前、ブルームバーグ・ビジネスウィークに語った。父のマーチン・バノンは最初、電話会社のアシスタント中継手に就職し、その後架線作業員として苦労を重ねた。マネジメント層に昇格した父バノンは働いて得た給料で妻と5人の子供たちから成る快適な中流生活を手に入れた。友人たちによれば、バノンは頻繁に、リッチモンドのジンター・パークにほど近い実家に住む、現在95歳となり妻に先立たれた父親を訪れるという。
前回の金融危機は、父マーチンの老後の蓄えに大打撃を与えた、と一家に近しい人々は言う。バノンは、ゴールドマン・サックス時代のウォールストリートで働くかつての同僚たちに怒りの目を向ける。彼らはほとんど無傷で、支払いを免れて再浮上したが、彼の父親のような、かつては偉大だったアメリカの中間層が、ダメージを吸収させられたのである。
「急激な変化が起きたのは2008年のことだったと思う」と語るのは、元共和党バージニア州責任者で家族との古くからの友人であるパトリック・マクスイニーだ。バノンはこれを「根本的な不公平」の問題として見ていた:彼の父親のような勤勉な人たちが疲弊してしまったのだ。しかも銀行家たちは救われたのである。
(中略)
トランプの中にバノンは、自分と同じ、究極のアウトサイダーとしての特質を見出した。バノンは大統領候補だったトランプを彼のラジオショーに度々出演させており、元スタッフたちは、トランプを支持する物語を、バノンが定期的に流し続けるよう命じたと言っている。今やバノンがトランプに刷り込んだ内容は、ホワイトハウスの重要なポジションに元ブライトバートのスタッフを雇うということから、大統領の机の傍に飾るのに、アンドリュー・ジャクソン― バノンが崇拝する人物の1人 ―の肖像画を選ぶことに至るまで、大統領の決定に影響を及ぼしている。
「バノンが真に本能を発揮するのは政策面においてだ」と、トランプの昔からの支持者の1人は言う。どんな政策だろうか?「全部だよ。バノンはトランプの世話役なんだ」。トランプのホワイトハウスでは、大統領が持たせたいと思うだけのパワーを人は手に入れ、保つことができると、このアドバイザーは言う。だが、トランプとバノンは、「大統領選の前に、一緒に座り、彼らが大統領執務室ですぐに行いたいことのリストを作ったんだ」とアドバイザー氏。トランプはどのアイテムに印を付けるか決める方だった。「バノンは賢いから、トランプにリストを与えたんだ」
破壊的なトランプがどれだけ支配層エリートの激怒を買うことを喜ぼうと、彼の焼き畑農業スタイルはホワイトハウス内に緊張を生み出した。トランプは首席補佐官のプリーバスに対して、これからは、もっと指揮系統を強化し、コミュニケーションを活発にするよう命じたと、上級スタッフは言う。大統領顧問/カウンセラーのケリーアン・コンウェイは、ホワイトハウスから、政策/法律立案作業者に対する連絡を行う役割を強化する計画に同意した。
この数週間における政権内部の苦悩は、明らかに心配の種だ。政権関係者によれば、入国禁止令を大急ぎで出すという決定は、関係文書を回覧していたNSCの専門スタッフがプレスにリークしようとしていることに気付いたバノンとステファン・ミラーが、比較的秘密のプロセスに従って行ったものだという。バノンとミラーは、今回の大統領令のメモ/原案に目を通す人数を減らす方向で動いた。議員、そして閣僚ですら蚊帳の外に置かれ、あるいは、原案へのアクセスを厳しく制限された。
結局、賛否両論の中、入国禁止令はサインされ、大混乱が起きたのだと、この関係者は言う。有効なグリーンカード(永住ビザ)でアメリカに入国しようとしている人々の数は未確定である。最初にホワイトハウスが行った指導は、この人々全員も引き返すべきだというものだった。だが、入国や市民的自由を専門とする弁護士たちが、大統領令に異議を申し立てようと連邦裁判所に大挙して押しかけたため、ホワイトハウスも前言を撤回し、グリーンカードを持つ人々は禁止を免除されるとの声明を出した。レポーターたちは、入国が禁じられる出立国の名前のような基本的な事実ですら調べるのに苦労した。数日後には、大統領までもが、バノンをNSCの常任メンバーに任命する命令を修正するよう介入した。トランプは、CIA長官のマイク・ポンペオもそこに加えたかったのだ。
入国禁止令が出されてから4日後の1月31日の夜には、ホワイトハウスは通常の姿勢を見せようとしていた。トランプはゴールデンアワーのニュースで、最初の最高裁判事にコロラド出身の保守的なニール・ゴーサッチを指名したアナウンスが流れるよう画策した。だが、もしトランプ政権がついに堅実さを示したのなら、きっとバノンが追放されたということではないだろう。
大統領はまたしても軌道修正を行った。だが、彼の中心的な、ポピュリスト的メッセージと方法=バノンとの会話で生まれたそれは残ったままだ。忘れられた人々のための戦いにおいて、混乱は悪い事ではない ― より深い思慮と最終仕上げを伴って行われることは必要だが。
支配者層を解体し、それを指揮しようとしての悶着は、トランプが政権の座にある限り続くことだろう。それは、内部で目覚めたアウトサイダーなら誰もが直面する矛盾だ。
(以下略)
https://sott.net/en341556
デイビッド・フォン・ドレル
タイム
2017年2月2日
(中略)
ドナルド・トランプの最初の一歩はあたかも、彼の首席戦略官で分身であるスティーブン・K・バノンが製作したドキュメンタリー映画という感じだ。(中略)…
トランプ政権は混乱の幕開けとなったが、これはトランプが約束していた通りであり、計画したのはバノンだ。これに応じて、政府内外の多くの人々が抵抗している。これはおそらく驚くべきことではないのだろう。トランプは国民に対して去年のうちから何度も、自分の施政はありふれたものではないと言っていたのだから。(中略)…バノンこそが政策を純粋に保つ献身的な支持者である。彼がトランプの側近を務めるのは、カネや地位のためではない。歴史を変えるためなのだ。「我々が今、目の当たりにしているのは、新しい政界秩序の誕生なんだ」と、バノンはワシントンポスト宛てのメールで述べている。
(中略)
一度に大統領になれるのは1人だけであり、ドナルド・トランプは官職を譲った訳ではない。だが、政権発足以来数日の、太った皺だらけのバノン(ホワイトハウスで、ネクタイとスーツを身に着けずにトランプ氏の執務室に入ることができる唯一の男性側近)は、思い出せる限り、これまでのどの側近スタッフよりも影響力を行使できる才能を持っている。彼の同僚たちはバノンを「百科事典」のあだ名で呼ぶ。彼の頭の中の情報の幅広さのためだ;だが、それよりも何よりも、バノンはトランプとマインドメルドが出来るのだ。
(中略)… 民主党支持の家系に生まれながら、自分の意志で共和党を選んだバノンは、どちらの党も相当程度に堕落していると見做すようになったが、このような信念から近年は、論争を巻き起こす映画の製作者や物議を醸すニュースサイトの運営者というキャリアを築くことになった。私人としてのバノンにパーティーで会ったことがあるという人物は、その時の様子を思い出してこう述べる。「バノンは私に、『自分はレーニンみたいなものだ。こんにちの支配者層の全員を打ち倒し、破滅させてやりたいんだよ』と言ったのです」
辿り着くまでの道は違ったものの、バノンとトランプは、貿易や移住、公安、環境、政治腐敗等々の問題に関して思想的に同じ目標を持っていることに気付いたのだ。
それにしても政権発足から10日間のバノンの傑出ぶり ― そして、彼の破壊的なお家芸である、混乱と無秩序に満ちた場面の数々 ― は、ホワイトハウスを狼狽させたし、おそらくは大統領さえもが仰天したのではないだろうか。政府高官によれば、トランプは彼をキビキビと諌めてくれる重要なアドバイザーを6人程召喚しているという。(中略)…
それでもバノンは、大切なワシントンの流儀を保っている:大統領執務室にアポなしで入って行ける特権だ。そして彼こそは、トランプを勝利に招くメッセージに集中させることが実にうまい人物なのだ。他のアドバイザーたちがトランプを変えようとしてきたのに対して、バノンはトランプにスピードを上げるよう勧めてきたのである。
(中略)
ドナルド・トランプお気に入りの著書である『トランプ自伝: 不動産王にビジネスを学ぶ』をじっくり読んだことのある人はお気付きだろうが、彼はスタンドプレーやたわいない会話、大言壮語や論争を、成功を追求する上で有益な要因と見ている。「私が取引を決定するスタイルは極めてシンプルかつ率直なものだ」と彼はこの著書で宣言している。「私はとても高いところに狙いをつけ、狙ったものを手に入れるべく、押して押して押しまくるんだ」
(中略)
だが、(中略)…ビジネスマンとしての長い経歴を持つトランプは、常に混乱を狙うが、最終的な目標は握手することである:取引だ。これに対して映画やラジオショーでのバノンからは、もっと終末論的な性向が窺われる。
2000年代初頭のある時期バノンは、世代論者のウィリアム・ストラウスとニール・ハウの書いた『第4の曲がり角』という本に魅了された。この本によれば、アメリカの歴史は、4段階サイクルの繰り返しなのだという。ある世代が危機に陥ると、次の世代が制度を採用し、その次の世代が制度に反旗を翻す。すると、次の世代は過去の教訓を忘れてしまい、その次にはまた危機が訪れるのだ。1サイクルは大体80年で、独立戦争(1775-1783年)の時期から南北戦争(1861-1865年)期、その次は第2次世界大戦(1939-1945年)期が80年のサイクルを成していると、バノンは指摘する。第4段階の転換期において、制度は破壊され定め直されるのである。
タイムとのインタビューで著者のハウは、10年以上前に、この本を原作とした映画を作らないかと、バノンから打診されたことを思い出している。最終的にこれは、2010年にリリースされた『ジェネレーション・ゼロ』につながった。
http://kurokiyorikage.doorblog.jp/archives/68603754.html
この映画でバノンは、2008年の金融危機を転換期の兆候になぞらえている。ハウはこの分析に、部分的に同意している。どのサイクルでも危機後の世代が出てくる。今回はベビーブーマー世代がそうで、ついにはこの中から、「前回の危機の記憶を持たないリーダーたちが出て来るのだが、このリーダーたちがいつものように、次の危機へと社会を導くのだ」とハウは言う。
バノンはかつて、「庶民の守護聖人」と称していたぐらいで、歴史的な極めて差し迫った危急時=世界の転換期に、国家的な政治イベントを起こして、古い秩序を一掃し、新しいものを打ち立てて楽しんでいるのだろう と思われた。ジェネレーション・ゼロでは、歴史家のデイビット・カイザーがフィーチャーされているのだが、カイザーの記憶では、映画の中でバノンからインタビューを受けた際、バノンは楽しそうにやり取りに夢中になっていたという。
しかし、歴史の現フェーズは、来たるべき大戦争の予兆であるとバノンが論じ始めた時、カイザーはギョッとしたものだと、タイムに語った。「彼がこう言ったのを覚えています。『ご覧なさい。独立戦争があって、その後南北戦争がありましたが、それは独立戦争より大規模なものでした。その次が第2次世界大戦ですが、これは南北戦争より大規模だったのです』」とカイザー。「彼は映画の中で私にそう言わせようとすらしたのですが、私はその気になれませんでした」
ハウもまた、バノンの「今後のアメリカについてのかなり深刻な展望」には衝撃を受けていた。バノンは自分のラジオショーの中で繰り返し、世界の至る所で、「私たちは過激なジハーディストと戦争しているのだ」と述べている。これは「世界的な存亡をかけた戦い」であり、「中東では再び、大規模な武力戦争」に発展するだろう。中国との戦争も迫っている、とも彼は述べている。このような確信は、ブライトバートのミッションの骨格を成している。2015年11月に、彼はこう説明していた:「我々の大きな信念=当サイトの中心的な組織化原理は、私たちが戦争中であるということだ」
スティーブ・バノンを理解するには、彼の父親に起きた出来事を理解する必要がある。「私は、ブルーカラーの、アイルランド・カトリックを信仰し、ケネディーと組合活動と民主党を支持する家庭の出だ」と、彼は以前、ブルームバーグ・ビジネスウィークに語った。父のマーチン・バノンは最初、電話会社のアシスタント中継手に就職し、その後架線作業員として苦労を重ねた。マネジメント層に昇格した父バノンは働いて得た給料で妻と5人の子供たちから成る快適な中流生活を手に入れた。友人たちによれば、バノンは頻繁に、リッチモンドのジンター・パークにほど近い実家に住む、現在95歳となり妻に先立たれた父親を訪れるという。
前回の金融危機は、父マーチンの老後の蓄えに大打撃を与えた、と一家に近しい人々は言う。バノンは、ゴールドマン・サックス時代のウォールストリートで働くかつての同僚たちに怒りの目を向ける。彼らはほとんど無傷で、支払いを免れて再浮上したが、彼の父親のような、かつては偉大だったアメリカの中間層が、ダメージを吸収させられたのである。
「急激な変化が起きたのは2008年のことだったと思う」と語るのは、元共和党バージニア州責任者で家族との古くからの友人であるパトリック・マクスイニーだ。バノンはこれを「根本的な不公平」の問題として見ていた:彼の父親のような勤勉な人たちが疲弊してしまったのだ。しかも銀行家たちは救われたのである。
(中略)
トランプの中にバノンは、自分と同じ、究極のアウトサイダーとしての特質を見出した。バノンは大統領候補だったトランプを彼のラジオショーに度々出演させており、元スタッフたちは、トランプを支持する物語を、バノンが定期的に流し続けるよう命じたと言っている。今やバノンがトランプに刷り込んだ内容は、ホワイトハウスの重要なポジションに元ブライトバートのスタッフを雇うということから、大統領の机の傍に飾るのに、アンドリュー・ジャクソン― バノンが崇拝する人物の1人 ―の肖像画を選ぶことに至るまで、大統領の決定に影響を及ぼしている。
「バノンが真に本能を発揮するのは政策面においてだ」と、トランプの昔からの支持者の1人は言う。どんな政策だろうか?「全部だよ。バノンはトランプの世話役なんだ」。トランプのホワイトハウスでは、大統領が持たせたいと思うだけのパワーを人は手に入れ、保つことができると、このアドバイザーは言う。だが、トランプとバノンは、「大統領選の前に、一緒に座り、彼らが大統領執務室ですぐに行いたいことのリストを作ったんだ」とアドバイザー氏。トランプはどのアイテムに印を付けるか決める方だった。「バノンは賢いから、トランプにリストを与えたんだ」
破壊的なトランプがどれだけ支配層エリートの激怒を買うことを喜ぼうと、彼の焼き畑農業スタイルはホワイトハウス内に緊張を生み出した。トランプは首席補佐官のプリーバスに対して、これからは、もっと指揮系統を強化し、コミュニケーションを活発にするよう命じたと、上級スタッフは言う。大統領顧問/カウンセラーのケリーアン・コンウェイは、ホワイトハウスから、政策/法律立案作業者に対する連絡を行う役割を強化する計画に同意した。
この数週間における政権内部の苦悩は、明らかに心配の種だ。政権関係者によれば、入国禁止令を大急ぎで出すという決定は、関係文書を回覧していたNSCの専門スタッフがプレスにリークしようとしていることに気付いたバノンとステファン・ミラーが、比較的秘密のプロセスに従って行ったものだという。バノンとミラーは、今回の大統領令のメモ/原案に目を通す人数を減らす方向で動いた。議員、そして閣僚ですら蚊帳の外に置かれ、あるいは、原案へのアクセスを厳しく制限された。
結局、賛否両論の中、入国禁止令はサインされ、大混乱が起きたのだと、この関係者は言う。有効なグリーンカード(永住ビザ)でアメリカに入国しようとしている人々の数は未確定である。最初にホワイトハウスが行った指導は、この人々全員も引き返すべきだというものだった。だが、入国や市民的自由を専門とする弁護士たちが、大統領令に異議を申し立てようと連邦裁判所に大挙して押しかけたため、ホワイトハウスも前言を撤回し、グリーンカードを持つ人々は禁止を免除されるとの声明を出した。レポーターたちは、入国が禁じられる出立国の名前のような基本的な事実ですら調べるのに苦労した。数日後には、大統領までもが、バノンをNSCの常任メンバーに任命する命令を修正するよう介入した。トランプは、CIA長官のマイク・ポンペオもそこに加えたかったのだ。
入国禁止令が出されてから4日後の1月31日の夜には、ホワイトハウスは通常の姿勢を見せようとしていた。トランプはゴールデンアワーのニュースで、最初の最高裁判事にコロラド出身の保守的なニール・ゴーサッチを指名したアナウンスが流れるよう画策した。だが、もしトランプ政権がついに堅実さを示したのなら、きっとバノンが追放されたということではないだろう。
大統領はまたしても軌道修正を行った。だが、彼の中心的な、ポピュリスト的メッセージと方法=バノンとの会話で生まれたそれは残ったままだ。忘れられた人々のための戦いにおいて、混乱は悪い事ではない ― より深い思慮と最終仕上げを伴って行われることは必要だが。
支配者層を解体し、それを指揮しようとしての悶着は、トランプが政権の座にある限り続くことだろう。それは、内部で目覚めたアウトサイダーなら誰もが直面する矛盾だ。
(以下略)
また記事には、混乱を作り出し最後には握手(取引)して目的を達成するトランプ大統領に対して、バノン氏には「終末論的な性向が窺われる」とあります。バノン氏は、独自の歴史観から「来たるべき大戦争の予兆」を掴んでいるようです。バノン氏の発言からそれは、中東での大規模な戦争や中国との戦争のようです。
こうした危機を察知し未然に防ぐべく動いてくれると素晴らしいのですが、記事には"バノン氏はかつて、「庶民の守護聖人」と称していたぐらいで、歴史的な極めて差し迫った危急時=世界の転換期に、国家的な政治イベントを起こして、古い秩序を一掃し、新しいものを打ち立てて楽しんでいる"とあり、もし本当にそうなら、小学生が自分がヒーローになるために、悪と混乱を作り出し、それを懲悪して酔いしれるのと変わらない危うさを感じます。