【第3回】きっと役立つ乳酸菌学 〜メリーベのために〜 乳酸菌の機能性①整腸作用(後半)

 長い沈黙を経て(申し訳ありません)、第3回目の「乳酸菌学」となります。まずは第1回第2回のリンクを貼っておきますので復習していただけると理解が深まるかと思います。今回は腸内フローラと、何故快便が重要なのかについて簡単に説明しました。
(地球に優しい方の微生物学者)
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きっと役立つ乳酸菌学 〜メリーベのために〜 乳酸菌の機能性①整腸作用(後半)

Bifidobacterium adolescentis
Author: Y-tambe


腸内フローラとは?

 以前は100種類と言われていた腸内細菌は、遺伝子解析技術の発展により現在では500〜1000種類と言われるようになってきました。その数は100兆個にも及びます。世界の人口が70億人、人の全細胞数が37兆個と言われていますからその数の多さに驚かれると思います(人の細胞数も60兆個というのが定説でしたが、もう少し厳密に調べた論文が出たことにより現在では37兆個とされています)。

 腸内において細菌は分裂・増殖し、コロニーを作って生存しています。多種多様な細菌がそれぞれのコロニーを作っていることから、それらコロニーの様子を「お花畑」に喩え、腸内細菌叢のことを「腸内フローラ」と呼ぶこともあります。腸内フローラは各個人で異なっており、一人一人違う「お花畑」を腸内に持っています。この腸内フローラが私達に多大なる影響を与えていることが最近次々に明らかにされています。



ビフィズスフローラ

 授乳期の赤ちゃんのうんこに含まれる菌は99%がビフィズス菌です。これをビフィズスフローラと呼びます。これは母乳に含まれるオリゴ糖のお陰です(その数100種類以上)。オリゴ糖は小腸では吸収されず、大腸まで届きビフィズス菌を増やします。ビフィズス菌はオリゴ糖を食べることができるのですが、他の細菌はオリゴ糖を食べることができないのでビフィズス菌だけモリモリ増えることができます(このような物質をプレバイオティクスと呼びます。※プロではなくプレです)。

 ミルクというのは本当に凄い食品で、栄養素以外にも赤ちゃんを病原菌やウィルスから守るために様々な成分が入っています。子供の成長のために考え尽くされた食品と言っても良いと思います。母親の愛を感じますね。ところが、人工のミルクで育った赤ちゃんはビフィズス菌の割合が90%と少し低くなります。これが将来どのような影響を与えるのかは分かっていませんが、母親から直接授乳する行為は心の栄養となるので、腸内細菌と心の両面から母乳で育てることを推奨します。


年を取るとビフィズス菌が減る

 年を取るとビフィズス菌が減り、悪玉菌であるウェルシュ菌が増えるというのは随分前からよく知られています。悪玉菌の増加は老化や疾病の原因にもなりますので、腸内腐敗を放っておくと、老化が促進され、疾病を引き起こす要因となります。また、免疫力も年を取ると落ちてきます。
 腸内細菌と免疫は非常に密接な関係がありますので、健康な状態をキープする上で、老年期では特に腸内環境を気にして欲しいと思います。若い時はみんな若く見えますが(当たり前)、中年期から「見た目年齢」は大きく変わってきますね。恐らくそれには腸内細菌もかなり影響しているのではないかと思います。


何故快便が重要なのか

 長い前置きとなりましたが、実はここからが前回の続きです(笑)。前回、快便が重要で毎日のお通じの状態をチェックして下さいと書きました。では何故快便が重要なのでしょうか?
 理想のうんこは適度に空気や水分を含み気張らずにストンと出るうんこです。そういううんこは、臭いもそれほど臭くありません。逆に臭くて硬いうんこや下痢状のうんこは、悪玉菌が多い証拠です。悪玉菌はインドール、フェノール、ニトロソアミンなどの有害物質(発がん性物質を含む)を出します。それらは腸から吸収されて各種臓器にダメージを与えます(もちろん、腸にも)。また、それらが口や汗腺から放出されると、口臭や肌荒れの原因となります。逆にいうと、口臭や肌荒れも腸内腐敗をなくせば改善できる可能性があるということです。

 日本人は昔から穀物中心で生きてきた民族ですので、肉食をしてきた西洋人に比べて腸が長いと言われています。つまり、日本人は、穀物を腸内細菌により分解してエネルギーを獲得するために腸が長くなり、肉食をする西洋人は肉食によってできる毒素をあまり吸収しないように腸が短いと考えられるのです(真偽は定かではありませんが)。つまり、腸が長い日本人には肉食は向かない可能性があります。野菜や穀物中心で肉や魚はサブ的に食べるのが理想なのかもしれません。

 これだけでも毎日のうんこチェックが重要なのが分かってもらえたと思いますが(実はもっと腸内細菌との関係は深い)、最後に 「踏ん張り方」について 書いて第3回目を終了したいと思います。


実は和式便器の方が良い

 現在は洋式の便器が主流ですが、うんこを出すという意味では和式便器の「ウンチングスタイル」(死語?通じる?)の方が、便座に座ってやるより良いと言われています。それは、洋式便座では直腸が恥骨括約筋という筋肉に圧迫されて十分な便の通り道を確保できないためです。洋式便座は体勢は楽ですが、出にくい人にとっては出すのが楽じゃないのです。

 洋式の便座でも足元に台座を置くことで和式でやるような体勢にするグッツも販売されているようですので、便秘の人は使ってみるのも良いかもしれません(こちらを参照。※本商品を勧めているわけではありません。動画と写真は非常に参考になります。多分、捻じれの人が作っています。笑)。





 それと便意を我慢すると便秘になりやすいので、恥ずかしがらずに出せるときに出しましょう。次回以降は更なる乳酸菌の機能性について書きたいと思います。気長にお待ち下さい(汗)。

Writer

地球に優しい方の微生物学者

主に自然科学関連の記事へのコメントと「きっと役立つ乳酸菌学 〜メリーベのために〜」という記事を寄稿しています(滞りがちでスミマセン)。大学で微生物(乳酸菌)の機能性研究を行っています。最新の知見もご紹介しながら、魅惑の菌ワールドに皆さんをお連れしたいと思います。

何故か「う○こ」担当みたいになっていますが、非常に不本意です(※)!!専門は乳酸菌ですので、汚くないスマートな記事をお届け致します。できるだけ専門用語は避け、解説をしながら分かりやすくお伝えできるように頑張ります。
※私は8種体癖です(笑)


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